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喫煙会

作者: 鬼火

 灯燭に仄暗く、沈鬱な瘴気の込める一室に我らは集まった

 おのがじし愛好する煙草をば持って、嬉々として

 銘酒のまわるのを待ちかねて火をつけるものもおる

 はやるでない、はやるでない

 宴はこれからだ


 骸の盃が配らるる

 あっと驚いたかと思えば歔欷するものがある

 安心せい、それはお前の娘の頭蓋骨

 甘美なる脳髄の、高くむせ返るような香りに酔いしれよ

 銘酒これ即ち処女の生き血

 濃密な粘り気がよく効くぞ


 ゆきわたったか、準備はよいか、では乾杯!


 かたい密約を結ぶのは我らの煙草

 いざ煙と煙を交えようぞ

 濃ゆく半透明の煙の混ざりゆくは卑らしい接吻と思し召せ

 ではここで一句をば、「汝、隣人を愛せよ」


 我らは同志

 密約の同志

 背徳の同志


 席も乱れたところで晩餐の支度を整えようぞ

 晩餐にされるはかの裏切者

 さて、ひっ捕らえたぞ! 皿を運べ!

 テーブルの白磁の皿に裏切者は進んで横たわり、皿ごとぐるぐると荒縄に縛めらるる

 ではどこから切り分ける、早くしろ、狂犬のごとく息の荒い男が群がるわ

 「ここがよいでしょう」

 一人のうら若く美しい青年が胸の肉を切り取った

 野次馬どもの拍手喝采といったら!

 黒髪が血潮に輝いて美しゅうて


 さて、晩餐を頬張りながら喫煙会を続けよう

 我らは同志

 密約の同志

 背徳の同志

 次の裏切者は、くじで決めるかい

 紫煙にまかせ、刹那の享楽に浸ろうぞ……

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