いちばん
「好きなんだ。たぶん。今までにないくらいに。君が一番だし君の一番になりたいんだ」
そんなこと言われたのは初めてだった。生まれてこのかたモテ期なんて来たことなかった。
だからなんて返せばいいかわからなかったし、どんな顔すればいいのかなんて見当もつかなかったんだ。
「それって、付き合ってほしいってこと?」
恐る恐る口を開いて、やっと出てきた言葉がこれだった。私は目の前にいる男子と目を合わせることができなくて、ずっと床の一点を見つめていた。
「そう。もしよかったら、俺の彼女になって」
緊張していたからか、こんなシュチュエーションに憧れていたからか、私は好きでもない人と付き合うことになった。
「えー?好きじゃない人と付き合うなんて、よくあることじゃん」
私の親友であり唯一恋愛相談できる人。それが真帆だ。
私は彼女を信用しきっていたし、なんとなく返事をしてしまったこの結果を彼女ならなんとかしてくれると思った。
だが、いまどきの女子高生はみんなそうなのか、あるいは真帆だけがそうなのか、私が想像していた回答とは少し違うものだった。
「別れたいの?昨日告白されたばっかりなのに?ちゅーくらいしときなさいよ!」
彼女の価値観と私の価値観が違うことは分かっていた。それは恋愛においても、それ以外のことにおいても。
それを承知の上で相談したのが間違えだった。
「ってかあんた意外にモテるのねー。まあ顔はかわいいし、ミステリアスな雰囲気がいいのかも。謎系女子!」
真帆が言っていることの方が謎だが、やはり彼女と話すこと安心できる。だけど何かが違うのだ。
「ごめん、ありがと。私、今日は帰るね!また明日相談していい?」
そう言って席を立つと、真帆は少し不満そうな顔をしたが頷いてくれた。
学校ではだいたいの時間を真帆とともに行動する。
だから友達と言える人はほぼいないに等しい。
私のことを一番分かってくれる人は真帆だが、今の私に必要なのは真帆ではない。
今の私を一番に受け止めてくれる人が必要だ。
一番に。
そうだ。私が一番だと言ってくれた人がいた。
いつのまにか昨日交換したばかりの電話番号に発信していた。
「あーもしもし?君から電話くるなんてほんと嬉しいわ。正直、昨日は振られるかなって思ってたけど。どうしたの?」
「別れたい」
「そっか。やっぱりね。だけど俺が君を好きなことには変わりないし、君を一番に思ってるってことも忘れないでほしいな。これからは友達として、改めてよろしくな」
私は一言しか話さなかったが、電話越しの声は私の全てを分かってくれているようだった。
今回は文章を書くということに時間をかけました。展開はわかりにくいですが、それぞれの文をがんばって書いたことが伝わっていれば嬉しいです。