テンプレは通用しない
とりあえず、恋を教えるとはどういうことをすればいいのか。ジゴロなら難なくこなせるのだろうが、俺は平凡すぎる人間なのだからそういう経験に疎い。だから恋に落とす方法など皆目見当がつかない。それに加え、相手は神様ときた。
もうわけわからん。マジで。
「とりあえず、私が神のまま生活していくってのも色々支障をきたしそうなので、これからはただの女子高生として生活しますね!制服!捗るなー!」
なにがだよ。本当にこれが神様の発言なの?しかし、普通の女子高生として生活してくれるのはありがたいな。こっちとしてもやりやすい。
「でもですね。普通の女子高生はいちいち天界に帰ったりしないじゃないですか?」
「そりゃそうでしょ。人間なんだし。」
「そうなのです。だからこっちの世界で住まいを構えなくちゃなのです!それに音無君の側にいれるほうが私は嬉しいので」
おいおい。そういう発言やめようよ。教える人間の側にいた方がいいって意味なのだろうが勘違いしそうになる。つか計算じゃなしにそういった発言できんなら相当モテそうだなこの人。
「つ、つか住む以前にこっちの世界の知識とか常識とかはどうするんですか?」
さっきの彼女の発言で少し言葉に動揺が混じる。
「それなら問題ありません!あっちの世界で漫画やアニメで腐る程見ているので!」
なるほど、作画どうこうの発言はそこからきたのか。いや、待てよ?あっちにTVとかあんのかよ!それより心配なのは知識の大元が二次元か。知識が偏っていそうだな。
そんな俺の心配を他所に神様は続ける。
「人間の世界のものは大体あっちにもありますよ!説明するのはめんどくさいからしませんけどなかなか便利な世界です!」
おせじでも巨乳とはいえない慎ましやかなまな板を偉そうに張る。しかし、なかなかどうして美乳である。おっぱいマイスターのこの俺が言うのだから間違いない!すいません童貞です。
だが、シャツが浮き彫りにする彼女のまな板は艶かしい。
くっ!俺はまな板にエロさを感じるほどに童貞をこじらせてしまったのか!
「ちょっと!音無君!聞いてますか?」
「ん?ああ、すまんすまん なんでしたっけ?」
「住む場所ですよ!ちゃんと聞いてくださいよ〜 なに考えてたんですか?」
「え、あ、いや、ちょっと戦争をなくす方法を……」
A.本当はおっぱいです。
「まあいいです。話戻しましょう!住む場所はどうしましょうか〜」
「部屋借りるにしてもお金が必要ですよ?お金あるんですか?」
「むうう 無いのですよ。だ、だから音無君のい「おい、まて。それは無理。」」
顔を朱色に染めた彼女の言葉を無理矢理遮る。
「え、なんか突然現れた女の子との同棲はラブコメのテンプレじゃないんですか!」
俺の懸念は当たったようだ。二次元からの知識の流用が多い彼女のことだ。そういうとを心配していた。
「ちげーよ!それは二次元の話。ここは三次元。」
家族四人暮らしだ、ここで同棲を始め、お兄ちゃんをとられたくない気持ちでいっぱいの妹との一悶着は不可避!なんてことは決して起こりえない。まず、妹がいない。空き部屋も無いし、うちで暮らすのは到底無理だろう。
「ええええ じゃあどうしましょうか。お金もないですからねえ」
彼女はあからさまに肩を落とす。しかしいきなり手詰まりとは。どうしようか。
ん?俺の側にいれる家?
「おお!いい考えを思いつきましたよ!」と俺は彼女に告げる。
期待にまな板を膨らませた目をする彼女を連れ、俺たちはカフェをでた。