前途多難のはじまり
さっきまでの曇天模様はどこへいったのやら、快晴である。というのも、目の前にいるおそらく神様であろう美少女がそうさせたのである。多分……
とりあえず、帰り支度をやめ、もう一度深く座りなおす。
「え、本当の神様なんですかね?GOD?」
「いえーす!あいあむGOD!」
はああああん きゃわいいいいいい
ふざけている場合じゃない。いやマジで。
現実逃避をしている場合じゃないな。
「音無君、信じてくれましたよね?」
「いや、まあ でももし仮にそうだとして、なぜ声をかけたのが俺なんですか?」
「退屈そうな顔をしていたからですよ!人生楽しんでそうな人に声かけてもおもしろそうじゃなかったんでねえ」
「いや、楽しむ術を知らないからこそ退屈そうなんじゃないですかね?」
つか、そんな顔してんのかよ俺。
「すいません なんか楽しんでいる人みるとムカムカくるんですよねー これが本当の理由です 音無君も退屈しのぎにはなるでしょうから一石二鳥ってやつですよ!尚且つ、願いだってかなうんですよ?」
「え、ちっさ!器ちっさ!モテないモブキャラが言いそうな台詞ですね まあ確かに退屈しのぎができるというのは魅力的ですけども というか、なんかキャラクター崩壊してきてませんか?」
「キャラとかどうでもいいですよ 作画よければすべてよしというでしょう?そういうことなのです」
「まったく意味わかんないんですけど 二次元から出てきたんですかあんた」
「とにかく!恋ってやつを教えてくださいよ!本当にこのまま生きてくの退屈すぎるんですってば!」
それに関しては同意せざるを得ない。本当につまらない。
なにかおもしろいもの探すことさえ億劫で、何事も能動的には動かないこの俺だ。 こんなふうに思わぬ形で手に入れたきっかけ。自分の人生に少しでも花を咲かせることができるならやってみようかと思う。そして彼女の人生?神生?も楽しませてあげたいと心の隅っこにそんな考えがあった。
俺らしくないなと考えながら、俺らしさってなんだよと脳内で問答を繰り返す。
「だいたい、俺だって誰かに恋愛を教えるほどの経験なんてないですよ?それでもいいんですか?」
「ええ!私は音無君がいいんです!」
そういって微笑む彼女の後ろから漏れ出る日が眩しくて、俺は顔を背けた。
心なしか火照る頬をごまかすようにさすりながら、答える。
「わかりました なんとかやってみます」
ラブコメはこんな感じで始まっていくのかな?とくだらないことを考えながら、前途多難なこの先を考えると、いつものため息が漏れた。