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921 秋祭りプレオープンでビックリドッキリ?

 迎賓館の玄関を潜る。


「「「「「ミズホ国ヤクモへようこそ!」」」」」


 玄関ホールを埋め尽くすほどの国民によって出迎えを受けた。

 服装がコスプレ風味の派手な感じなのは、今日のスタッフだからだろう。

 サプライズ的な演出にゲストの何人かは固まってしまった。


「なんと……」


 呆然としているのはイケメン騎士の兄ちゃんだ。

 あの調子だと気配を感じなかったとかで驚愕しているのかもしれない。


『修行が足りないな』


 ゲールウエザー組の護衛騎士たちは表面上は平然としている。

 同じように気付いていなかったのは挨拶を受けたときの足運びで明らかだったが。


『休暇だってのに仕事を忘れられないようだな』


 条件反射だとは思うが、因果なものである。


「驚かせたか。

 すまないな」


 そうは言ったが、俺も事前に知らされていた訳ではない。

 ドアを開ける前から気配で気付いてはいたけど。

 好きにさせたのはサプライズ的なのが面白いと思ったからだ。

 初っ端から秋祭りの雰囲気を盛り上げようという意気込みも買った。


「ハハハ、こういう驚かせ方は意外だよね」


 カーターには受けたようだ。

 それに対して表情を硬くしているのが何人か。

 年を食った者ほど、そういう傾向があるようだ。



『ちょっと驚かせすぎたかな』

 成功半分、失敗半分と言ったところか。

 この様子を確認してスタッフたちはササッと下がっていった。


 会場での演出の参考にするようだ。

 あまりサプライズ的なことはしなくなるものと思われる。


『ひとつ外せないのはあるけどな』


「では、秋祭り会場へ行こうか」


 カラーコインと会場の概要は説明してあるから、ここに留まる理由がない。


 俺の案内で迎賓館の建物を通り抜けていく。

 相変わらず物珍しげな目を向けているオッサンたち。


 さすがに立ち止まりはしなかったがね。

 迷うと困るだろうし。


 そして迎賓館の建物から外に出る。

 だが、まだ敷地内だ。

 日本庭園風の庭が待ち受けていた。


「この庭は……」


「なんという……」


「素晴らしいですな」


 宰相コンビにオルソ侯爵が目を奪われていた。

 必然的に3人だけ足が止まる。


「おいてくぞ」


 短い言葉ですぐに我に返ったが。

 泡を食ったように早足で追いついてきた。

 そうして全員がいることを確認してから裏門を潜る。


『さて、どう反応するかな』


 まあ、日本で遊園地を見慣れている身としては普通の光景のはずなんだが。

 幻影魔法で視界を遮断しているからな。

 会場の様子は門を超えねば見ることができない。


「「「「「おお……」」」」」


 そこは夢の国だった。

 全員の目が奪われている。

 感嘆の声を漏らした後はしばらく立ち尽くすばかりであった。


「大きいですね」


 フェーダ姫がそんな感想を溜め息と共に漏らした。

 同意するように何人かが頷いている。

 それすら覚束無い面々は呆然としていた。


『刺激が強すぎたのか』


 ジェットコースターのレールがうねっているのが特にインパクトが強かったようだ。

 巨大なオブジェに見えたことだろう。


「ハルト殿、これは何だね?」


 クラウドのオッサンが興奮冷めやらぬ表情で聞いてきた。

 ポンプのレバー操作を試したときの子供っぽい表情になっている。


『約1名、掴みはオッケーってとこか』


「ジェットコースターが走るためのレールだ」


「ほう、これがそうか」


 感心したように頷いてレールの先を目で追うクラウド。

 どうやら概要の説明はちゃんと頭の中に残っているようだ。


「これは何と表現していいのか、言葉に困るね」


 カーターが苦笑している。


「後で乗ってみるといい。

 そういうのは、どうでも良くなるぞ」


「それは楽しみだね。

 何処で乗るんだい?」


 待ちきれないとばかりに聞いてくる。

 カーターもクラウドのオッサンと同じように心が子供化しているようだ。


「それをこれから案内するんだよ」


「なるほど」


「じゃあ、乗り物関連から回っていくぞ」


 本格的に案内を開始。

 遊園地では定番の乗り物を説明して回る。


 カーターに催促されたジェットコースターがトップバッターだ。

 それにウォーターコースターや空中ブランコなどが続く。


「あれは何ですか?」


 フェーダ姫が指差さした先にあったのは、これまた巨大オブジェと言える代物だった。

 全員が上を見上げている。


「観覧車だな」


 遊園地のド定番と言える乗り物だろう。

 観光地なんかでも見かけたりするけど。


「これが、そうなのですね」


 事前に説明はしてあったが、画像なしだと想像できなかったらしい。

 感激した面持ちで観覧車を見上げている。

 施設の画像は見せずに説明したのは正解だったようだ。


『事前に見せすぎて興ざめしても困るしな』


 初見のインパクトは大事である。

 それが功を奏したようで、興味を示す者たちが何人かいた。

 フェーダ姫を初めとした女性陣は概ねそんな感じだったのだが。


「些か高すぎませんかな」


「これの半分でも充分では」


 宰相コンビは及び腰だ。


「心配しなくても倒れないよ」


 これも魔道具なのだ。

 そういう対策はちゃんとしてある。


「いえっ、決してそのようなことを言っているのではっ」


「そうですともっ」


 ダニエルも爺さん公爵も息がピッタリである。


「無理に乗れとは言わないよ。

 どの施設を利用するかは各自の自由なんだからさ。

 それとも会場を一望するために今から乗るか?」


 ブルルルルルルルルッと高速で頭を振る爺さんたち。

 まるで水切りしようと体を震わせる犬である。


『飛行機に乗ってきたじゃないか』


 あまりに必死すぎて、そのツッコミは内心だけに留めておいた。

 どうやらモニター越しの映像とリアルな目視とでは見え方が決定的に違うようだ。


 スルーして次の施設へと向かう。

 その頃にはうちの国民たちも入場してきていくつかの施設で並ぶ者が出始めていた。


 徐々に賑わいを見せ始め、ゲスト一同がソワソワし始める。

 あちこちから聞こえる歓声にワクワクした気持ちが押さえきれないらしい。


「これは見張り櫓か何かでしょうか?」


 鉄塔を見たオルソ侯爵が聞いてきた。


「観覧車より低いのにかい?」


 そう疑問を呈したのはカーターだ。


「オルソ侯爵の言うことも分からなくはないけど」


 興味深げに見上げながらも首を傾げている。


「どうも違う気がするなぁ」


「同感だ」


 クラウドがカーターの意見に賛同した。


「見張り櫓ならば外周部に設置すべきだろう」


「それに下では行列ができておりますな」


 そう補足したのは爺さん公爵だ。

 高さに気を取られず全体を観察していたのはさすがである。


「まさか……」


 ダニエルが呻くように声を漏らした。

 嫌な予感がすると言わんばかりの強張った表情だ。


「これも遊戯施設と仰るのでは?」


 ゆっくりと俺の方を振り返って聞いてくる。


「よく分かったな。

 これはバンジージャンプ台だ」


「何ですか、それは?」


 ダニエルに聞き返されたので鉄塔の上を指差した。

 ちょうど安全装具を固定し終わったトップバッターが姿を見せたところだ。


 全員が上を向くと同時に──


「3・2・1、バンジー!」


 その掛け声が聞こえてきた。

 直後に人が数十メートルの高さから飛び降りた。


「「「「「──────────っ!?」」」」」


 驚愕の表情で凍り付く一同。

 強く目を閉じたり呆然としたりと反応は様々だ。

 手を伸ばしかけた感じの奇妙なポーズになっている者すらいる。

 あまりの衝撃に悲鳴すら出なかったのは明白だった。


「ヒャ─────ッ!」


 代わりと言ってはなんだが、落ちてくる国民が悲鳴を上げている。

 ただし楽しそうに笑いながらだが。

 高所恐怖症の人間にとっては絶対に信じられないであろう光景だ。


 あっと言う間に地表近くまで落ちてきてビヨーンとゴムロープの力で制動がかかった。

 もちろん激突なんてことにはならない。

 何度か跳ねるような動きを見せながら飛び込みの勢いを消していく。


 派手な上下動をしなくなると、ゲストたちの時間が再び動き出す。


「とっ、止まったぁ……」


 ホーッと長く息を吐き出すイケメン騎士の兄ちゃん。


「心臓に悪い遊びですね」


 フェーダ姫は手で胸を押さえている。

 心臓の動悸を抑え込もうとしているかのようだ。

 いや、目を白黒させているし実際そうなのだろう。


「これを遊びと呼んでいいものかどうか」


 呆然とした面持ちで呟くダイアン。


「同感です、隊長」


 リンダが表情を強張らせながら頷いていた。

 彼女だけではない。

 護衛騎士たち全員が同じように頷いていた。

 この調子だと冷や汗で背中がビッショリ濡れているかもしれないな。


「ううむ、度胸試しにはもってこいだな」


 クラウドのオッサンはそんなことを言っていた。

 ただし、腰は引けているような状態だ。

 挑戦する気はないだろう。


『やってみたいとは言ってないしな』


 そんな風に思っている面子はいないようだ。

 少しばかり刺激が強すぎたかもしれない。


 約2名ほど地面にへたり込んだ者もいたほどだ。

 あえて誰であるかは語らずにおこう。

 結果として次の場所へ移動するまでにやや時間を要したのは言うまでもない。


読んでくれてありがとう。

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