表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
852/1785

841 つくってみた『ダンジョン設備』

 秋祭りまで1ヶ月あまり。

 そして既に準備は終わっているも同然の状態。

 ヤクモでちょちょっと会場のスペースを確保して設備を作るだけだからな。


 テーマパークを参考に色んな建物を建てたりもしたので遊びもバッチリ。

 実用性の面では城もある。

 けど城壁がない。

 城壁なんて設置したら海が見えるテーマパークが台無しになるからな。

 城は来客用の迎賓館としてしか使わないし。


 防衛的には結界で充分だ。

 迎撃は上空に常駐させている空中空母が担当する。

 しかも秋祭りの当日には、うちの国民が大勢来るからな。

 大型の魔物が集団で襲ってきたとしても瞬殺だ。


 まあ、こういう話を続けているとフラグが立ちそうだから、これくらいにしておく。


 とにかく1ヶ月の時間ができた。

 という訳で物作りをしようと思う。

 作るものは複数ある。


『使う場所はどれもダンジョンの中なんだけどな』


 ぶっちゃけ設備品である。

 まず最初に常設のライト。


 これはダンジョンの壁の中に埋め込んで使う。

 旧スケーレトロで入ったダンジョンがヒントとなって考案したものだ。

 そのまま光る苔を採用という訳にはいかないからね。


 光る苔は湖に囲まれた島にできたダンジョンだからこそ繁殖できていたのだ。

 迷宮核も維持に関わっているはず。

 明確に鑑定していないから断定はできないものの確信はある。


 苔の途切れた箇所がない。

 その上、床面には絶対に生えていないのだ。

 魔物の行き来があるにしても整備されているかのように綺麗な状態は考えられない。

 そうなると苔を移植しても定着しないだろう。


 そんな訳で一定間隔ごとにライトを埋め込むことにした。

 光量はフロアが異なると変化する。

 魔力供給の問題などではなく、攻略難易度に応じたものだ。


 攻略難易度が低めの階層は明るくする。

 この辺りの術式の構築はなかなか苦労した。

 同じ階層のライト同士で同期してフロア全体で評価することで解決したけどな。

 必然的に深い階層ほど暗くなっていく。


 まあ、最初は浅い階層でも暗い状態なんだけど。

 下の階層で設置が進めば少し明るくする仕様である。

 いきなり明暗が切り替わるのは危険なので、こういう仕様にした。


 いずれにせよライトのない階層では自前の照明器具が必要になるだろう。

 すべてのダンジョンのすべての階層にライトを設置するのは無理があるからな。


 そもそも誰がするのかという話でもある。

 世界中のダンジョンに設置に行くとか面倒で仕方がないだろ。

 だから冒険者ギルドに売り込んで設置させる。


『向こうには冒険者という人材がいるしな』


 埋め込みはダンジョンの壁に押し当てればいいだけだし。

 ダンジョン内の魔力を吸収して地魔法が発動し勝手に潜り込むようにしてある。


 誰にでも使える反面、ダンジョン以外では使えないようにもしておいた。

 横流しして儲けようとか考える輩もいるだろうからな。


 後は解析してレプリカを作ろうとする奴も出てくるだろう。

 認識阻害の術式のお陰で読み取ることはできないが。

 それだと変に思われるだろうから関係ないダミーの術式もセットしてある。

 内部にある魔石には接続されていないので動作はしないけどな。


 そのあたりも認識阻害の範疇に含まれるので接続されているように見えるのだが。

 そんな訳でダミーの方はコピーができる。

 ただし、これをコピーしても質の悪い発光体の魔道具にしかならない。


 明るさは光る苔より弱いくらいなので実用性がないし。

 標準的な魔石を用意してもロウソクが燃えつきる程度の時間で消えてしまう。

 それだけ燃費の悪い術式にしてあるからな。


 ちなみにライト内に入っている魔石は簡単に手に入るようなものだ。

 それに込められた魔力を効率よく使って埋め込みや始動するようにしてある。

 ひとたび動き始めれば魔石にダンジョン内の魔力を集めるから消える心配もない。


 ただ、場合によっては人からも魔力を吸い出す。

 ライトを掘り出して盗もうとする不心得者だけだがな。

 すべての魔力を吸い出して気絶させる訳だ。

 ダンジョン内で失神することほど危険なことはない。

 この仕様は販売時に説明しておけば盗もうとする奴も減るだろう。


『まあ、それでも盗もうとする不心得者に情けは無用だよな』


 そんな訳で本来の術式とダミーの術式には天と地ほどの差がある。

 実用性など皆無に等しい。

 コピーで手早く儲けようと考えている奴にはゴミも同然だ。


 しつこく解析を続けようとしても認識阻害は突破されないようガチガチにしてあるし。

 悪意のある相手には呪いを付与するオマケ付き。

 相手の悪意の度合いに応じて疲労しやすくなる代物だ。

 改心すれば呪いは解けるようにはしておいた。


 が、魔が差した程度ならともかく本物の悪党は改心する訳もない。

 慢性的に重い疲労状態になれば、ろくに悪事も働けなくなるだろう。

 病気にもかかりやすくなるし踏んだり蹴ったりである。

 結果として死んだとしても相応の報いを受けたとしか思われない寸法だ。


『俺も因果応報としか思わんな』


 真面目な人間ならコピーを改良するような催眠誘導がかかるようにしてあるし。

 上手くすれば少しはマシな魔道具が出来るだろう。


 え? 真面目な人間は盗んだり盗品を手に入れたりしない?

 そんなことしなくても冒険者ギルドが職人に調べさせたりはするだろうよ。

 ダンジョン内に設置するためだから数多く納品する必要があるのでね。


 いくら人海戦術で設置を急いでも時間はかかってしまう。

 安全性を考慮すれば浅い階層から順に少しずつ進めることになるはず。

 つまり倉庫で眠らせておく時間ができる訳だ。

 その時間を利用して保管中に調べることまで禁じたりはしないさ。


『禁じているようなものではあるけどな』


 悪意がなければ少しは勉強になるかもしれないが。

 とにかく冒険者ギルドなら冒険者に依頼する形でライトを設置していくだろう。

 浅い階層ならすぐに終わるはずだ。

 基本的に危険も少ないからな。


『危険、危険か……』


 ライトのお陰で死亡率は下がると思う。

 思うというのは、どういう影響があるか読めないからだ。

 ライトが普及することで油断する冒険者が増えれば意味がない。


 むしろ悪化するかもしれない。

 そのあたりの懸念はあるのだ。

 うちみたいに学校で冒険者としてのイロハを教えたりなんてしないしな。


『せめて危険な場所では警告点灯するようにした方がいいかもな』


 そんな訳で仕様を追加する。

 もともと無駄に高度な代物だからな。

 今更というものだ。


 湧き部屋の外は色が変わり点滅するようにした。

 数に応じて点滅の間隔が変わる。

 多ければ速くなるようにしておけば危機感を抱かせることができると思う。


 あとは、その階層の平均を超える戦力を持つ魔物が近くに迫ると色を変えることにした。

 点滅はさせない。

 湧き部屋と混同しかねないからな。


 ここまでするのは過保護かもしれない。

 が、これで冒険者の死亡率を下げられるなら儲けものだ。


 え? 俺の得にはならない?

 そんなことはない。

 国民が実技訓練をする場合の安全性が高まるし。

 他所の国の冒険者にも知り合いはいるからな。


『ダンジョンで閉じ込められた時に知り合った面々とか』


 風と踊るのメンバーは特に印象的だった。

 リーダーのフィズとサブリーダーのジニアの背が高かったからな。

 そのせいで名乗る前は内心で勝手にヒョロッとさんと同2号なんて名付けたりしていた。

 あと両者ともポニーテールにしていたのも印象深い。


 残りのメンバーは槍使いが3人に斥候1人。

 魔法使いはいないが、これが西方における標準的なパーティ構成だ。

 全員が女性冒険者だったという点は一般的ではないがな。


 他で知り合いというとブリーズの街の冒険者ギルド長ゴードンがいる。

 現役でも充分に通用するのは俺の目で確かめた。

 肉弾の異名は今も健在だ。


 その養子である岩石3兄弟もいるな。

 まだまだゴードンには及ばないが真面目で好感は持てる奴らだった。


 そしてゴードンとくれば暴風のブラド。

 自称イケてるシチィボーイなジジイだ。

 俺がつけた髭爺の愛称が瞬く間に拡がった。

 本人はジジイではないと主張しているがな。


『まあ、エキセントリックな性格はしているか』


 癇癪を起こすと子供のように地団駄を踏んだりするし。

 ふざけたジジイだが、これでもゲールウエザー王国の冒険者ギルド長を任せられている。

 相応の人望がある証拠だ。

 本人を見たことがある者には信じがたいことだがな。


 冒険者の知り合いってこれくらいじゃないだろうか。

 面識のある相手は他にもいるが、知り合いと言うには弱い。

 せいぜい顔見知りレベルになってしまう。


『そういや決闘騒ぎになった時に審判をしてくれたオッサンがいたっけ』


 面倒見が良くてトラブルに巻き込まれた俺にも親切にしてくれた。

 あのオッサンもギリギリ知り合いの範疇と言えるだろうか。

 名前は知らんけど。

 次に会ったら名前くらいは聞いておくとしよう。


 とにかく知り合いの安全を高めるために俺はダンジョン専用ライトを作ったのだ。

 で、次に作ったのがダンジョン内でだけ有効となる設置型転送機である。


 前に試作した魔石型は不採用にした。

 数が出回るとどうしても詐欺を働く連中が出てくるからな。

 それで人死にが出たら寝覚めが悪い。


 悪いのは紛い物を売って利益を得ようとする悪党どもだがな。

 そういう連中とのイタチごっこは面倒なだけだ。

 出てくるたびに潰すなんてしていられない。


 ならば設置型にして誰にでも使えるようにしようって訳だ。

 緊急脱出には使えない欠点もあるが、そこは仕方あるまい。

 ダンジョンの魔物には反応しないようにしているので乱戦状態でも脱出可能だけどね。


 ライトと同様に掘り出して盗もうとする奴は魔力を抜かれて失神コースである。

 ダンジョン外で使えないし解析もできないので設置前の盗難の恐れも少ない。

 畳とほぼ同じ大きさにしたので盗もうとしても目立つし運びづらいがな。

 設置後は学校の黒板並みに大きくなるけど。


 で、その大きなパネルに触れて微量の魔力を流すと複数のフロアを移動できる。

 基本は5階層分だが、5階層より上は1層目になるのは言うまでもない。

 一方通行なので最初は下から上がる方を優先して試験運用するつもりだ。


 それで問題がなければ下りる方も設置する。

 こちらは下りたことのないフロアには行けないようにしないといけない。

 設置場所は階段付近が適切だろう。

 階段の下側に上へ向かうパネルを上側に下へ向かうパネルを設置すれば混乱もないはず。


『まあ、運用してみれば問題点も出てくるだろうけどな』


 なにより問題なのは誰が設置をするかだ。

 試験運用時は俺たちで設置するけど、空間魔法が使えない西方人には難しい作業だ。

 大きいが故に運ぶだけで動きが制限されてしまう。

 そんな状態で魔物を排除しつつ下の階層へ下りるのは危険だからな。


 指名依頼で高ランク冒険者に頼むしかないだろう。

 場合によっては複数のパーティで連携しながらということも必要になると思われる。


『このあたりエリスに相談した方が良さそうだな』


 小型化を提案されそうだけど。

 それしかないのかもしれない。


 そのあたりも調べる必要はありそうだ。

 ただ、協力してくれそうな冒険者がいないのが難点である。

 最初の運用試験はジェダイトシティのダンジョンでと考えているんだが。

 場合によっては場所の変更も考慮すべきだろう。


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ