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669 意外に受けがいい?

 俺が最初に用意した滑り台などすぐに飽きられるのは目に見えていた。

 所詮は入門用である。

 レプリカを幾つも用意して皆にも試してもらったが、あえて1人1回に制限した。


「「「「「えーっ」」」」」


 それなりに楽しんでくれたようでブーイングの声も聞こえてきたがね。


「これで満足してもらっては困るな。

 文句はこれから用意する中級用で滑ってから言ってくれ」


 俺がそう言うと、すんなり引き下がってくれた。


「じゃあ、今から中級用に入れ替えるからな」


「「「「「おーっ」」」」」


 拳を突き上げて返事がかえってきた。


『ノリが良くて助かるわ』


 皆が入門用で遊んでいる間に中級用を仕上げるだけでなく改良を加えておいた。


『大きさを変えただけでは面白みに欠けるからな』


 まあ、最初に上がってきた設計のものでも強度や重量などの問題がある。

 単純に入門用を大きくしただけのものではなかったりするんだけどな。


 内部構造を変更して空洞を多くしてみたり。

 魔法で軽量化や構造強化が行われるよう術式を追加したり。

 単なるサイズ変更ではなかったのだが一手間加えてみた。


 とはいえ滑る部分の形状を若干変更するだけだったが。

 滑走面が緩いS字を描くようにした。

 特に最後の部分には拘っている。

 海面に放り出されるように角度を変えた。


 入門用だと海面を滑るように着水し、勢いがなくなるとブクブクと沈んでいく。

 中級用ではフワッと浮くように放り出されて放物線を描いて落下するようにした。

 スキーのジャンプ台に近いと言えるかもしれない。

 アレよりも飛距離より高さが優先される角度になっているけどね。


 そのため滑走感は味わえなくなる。

 仕方あるまい。

 代わりに得られる浮遊感を優先したのだ。

 ドボンと落ちた時の感覚も入門用とは明らかに異なる。

 メリハリがあって良いと思った訳だが。


『あー、それなら入門用も残した方がいいか』


 全取っ替えを考えていたが、予定変更。

 交互に設置されるように置き換えた。


「入れ替えだ、ドン」


 掛け声と共にズラッと並んだ滑り台を入れ替える。

 もはや、この程度で驚く国民は……


「「「「「ふわぁーっ」」」」」


 いたね。

 人竜組だ。

 そういや、先程の入門用を幾つも並べた時も固まっていたっけ。

 声こそ出ていなかったけど。

 いや、逆か。


『驚きすぎて声にならなかったんだな』


 昨日の今日で慣れろって方が無理がある。

 もう少し配慮すべきだったかと思ったが今更だ。


『そのうち慣れるだろう』


 それはともかく、皆の視線が俺に集中しているのを先に何とかしないといけない。

 お預け状態がつらいのだろう。


「いいぞ、中級用も入門用も解禁だ。

 みんな思いっ切り楽しむがいいっ!」


「「「「「わああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!」」」」」


 俺の号令がかかるや、瞬時に飛び出していく一同。

 最初のダッシュで「ドバッ」とか「ボッ」なんて音が聞こえたさ。

 それでも派手に砂を撒き散らさなかったのはさすがである。

 未熟者ばかりの集団だったなら砂浜は酷いことになっていただろう。


「シュババババッ!」


 ダッシュでエスカレーター前に並んでいく。

 滑り台はそれなりの数を出しているので待ち時間は長くないはずだ。

 さっそく1番手が滑り出していく。


「ひゃ─────っ!」


「うわ─────っ!」


「きゃ─────っ!」


「ひょえ─────っ!」


「どわぁ─────っ!」


「お母さぁ─────んっ!」


 入門用の時と違って派手な歓声が聞こえてくる。

 1人変なのが混じっていたが……

 それは気にしてはいけない気がするのでスルーだ。


 とにかく楽しそうな悲鳴といった感じで聞こえてきた。

 遊園地の絶叫マシンで聞こえてくる感じ声に近い。

 それはそうだろう。


『斜面の角度も水の流れも入門用より強くしてるからな』


 ともに最初は緩めだが徐々に加速するようにしてある。

 最大斜度は入門用より明らかに急だし。

 流れる水の速さも最終的には急流のそれになるようにしておいた。

 それを事前に察知されないよう水は滑り台から飛び出さないようにしてある。

 滑った者たちだけが勢いよく宙に放り出されるのだ。


 入門用とのギャップもあって悲鳴かと思うような歓声が出てしまうのも仕方あるまい。

 滑り台の角度とも相まってジェットコースターよりも速くなっているんだし。

 スルッと入ってシューッと加速しズバッと飛び出す。

 そんな勢いで射出されるので──


「ふわっとぉ───っ!」


「飛んでるぅっ!」


「魔法じゃないのにぃっ!」


「凄い────っ!」


「浮遊感─────っ!」


「お母さぁ──────んっ!」


『君らは事前に打ち合わせでもしたのか』


 そう言いたくなるような声が聞こえてきた。

 勿論そのような事実はないのだが。


『本当にノリがいいことで』


 ついつい感心させられてしまう。

 あと、やはり変な声を上げるのが約1名いるな。

 そこは気にしない方向で行こう。


 そして「ドボンドボン」と次々に海へと落ちていく。

 派手に水飛沫が上がる。

 人ひとりをそれなりの勢いで放り出したも同然だからな。

 飛び込み競技のように綺麗に着水とはいかないし。


「「「「「わあっ!」」」」」


 残っている面子から歓声が上がった。

 見ているだけでも、それなりに迫力が感じられて面白いらしい。

 1番手の面子が海面に浮かび上がってきたのを確認して2番手が滑り出した。


『感心感心』


 皆がちゃんと安全確認をしてくれている。

 それが分かったのは収穫だ。

 作業中の俺に業務連絡を入れておく。

 上級用には安全装置を組み込んでいるようだが、更に追加の要望だ。

 スタート地点に信号とゲートを設置するようにメモを作業中の倉の方へ送った。


『下手に話し掛けると煩いからな』


 同じ俺のはずなのに……

 即座に返答のメモが来る。


[了承した]


 シンプルな返事だ。

 が、これひとつではなかった。


『複数の俺が作業しているもんな』


[面白いアイデアだ]


『そりゃ、どうも』


[アレンジして使わせてもらう]


『アレンジって、どういうことよ?』


 自問自答するだけで呼びかけた訳ではない。

 故に返事はない。


 どうやらできてからのお楽しみということになりそうだ。

 そうなると中級用で楽しんでいる面々の状態が気になってくる。

 皆の状態しだいでは他の時間稼ぎを考えねばならないだろう。


『更に大型化させても意味がないだろうしなぁ』


 悩みどころである。

 とりあえず1番手の面々がどうなったかを見てみる。

 海面に浮かんできた後は動きがなかったんだよな。

 表情や反応までは見ていなかったのだが。


 2番手が滑っている間に歓声を上げても無反応。

 宙に舞って再び歓声を上げても無反応。

 無反応すぎて怖くなってきた。


『一発で飽きたとかは勘弁してほしいんだぜ?』


 ずっと沖の方を向いていた面々がクルリと振り返った。

 接近する気配にようやく我に返ったかのような感じである。

 ただ、その表情は呆然としていた余韻のようなものがあった。


『そんなにショックを受けたのか?』


 些か理解不能である。

 海に放り込まれた衝撃で頭を打った、なんてことはない。


「ドボン」


 2番手が海面に落下した音でようやく本格的に我に返ったようだ。

 ボンヤリしていた表情が引き締まったものになっていく。


「いいねーっ」


「面白ぉーいっ」


「すっごーいっ」


「たのしーっ」


「もう1回!」


「お母さぁ──────んっ!」


『なんでだよ、おいっ』


 ツッコミをつい入れそうになったので内心で入れておく。

 とにかく口々にそんなことを言ったかと思うと波をかき分けて泳ぎ戻ってきた。

 いそいそと列の最後尾へと並んでいく。


 2番手の面々も海面に浮かび上がってくると瞳を輝かせていた。

 そして戻ってくる。

 3番手、4番手と続くが結果はほぼ同じ。

 たまに入門用へ浮気する者もいたけどね。

 その辺りは個人の自由なのでとやかく言うつもりはない。


『これなら時間稼ぎも上手くできそうだな』


 それだけである。

 ところが不意に内側から声が掛けられた。


『その必要はないぞ、俺』


『そうだぞ、俺』


『時間稼ぎは不要となったぞ、俺』


『ついに完成したぞ、俺』


『どうだ、俺』


 しかも一斉に。


「……………」


 咄嗟の返事が躊躇われるくらい煩いというか鬱陶しいというか。

 自分で呼び出しておいて、それはないと思うがね。

 しかも急ぎの仕事を任せっきりにしていた訳だし。


 だが、文句を言うのは筋違いというもの。

 自分で自分に頭を下げることはできないがね。

 せめて礼はキチンと言おう。


『すまんな……

 よく間に合わせてくれた。

 礼を言う。

 助かった、ありがとう』


 それに対する返事はやはりサラウンド状態だった。


「……………」


 ひっくるめて言うと『よせよ、水臭い』といったところ。

 脳内会議と違って疲れる気がするのは何故だろう。


 とにかく礼は言ったし解散してもらう。

 全員が引っ込んだのを確認し、俺は内心で溜め息をついた。

 全力で遊ぶのも楽じゃない。


読んでくれてありがとう。

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