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665 翌朝のあれこれ(就寝前も含む)

 翌朝ベリルママたちは、かなりしょげた状態で帰ってきた。


「ゴメンね、ハルトくん」


「すまない」


「ごめんなさい」


 ベリルママ、リオス様、アフさんがそろって頭を下げる。


「いえ、自分は気にしていませんので」


 これは偽らざる気持ちだ。

 が、ベリルママは何か言おうとするので言葉を続けることで遮った。


「だからこそエリーゼ様にすべてお任せした訳ですし」


 エリーゼ様にお願いした理由としては俺の能力不足の方が大きいのだが。

 ベリルママが酔っていた件について気にしていないのは事実だ。


 ただ、まったく何も気にしていない訳ではない。

 ベリルママが密かに楽しみにしていたんだよね。

 俺の隣で眠ること。

 まあ、俺にバレているから密かにって訳でも無いんだけど。


 昨晩は俺と一緒にお風呂に入った面子が俺の近くを占拠した。

 片方は頑張って告白してくれたリオン。

 反対側は残りの面々でクジを引いた結果、アニスということになった。

 ノエルに対して申し訳なさそうにしていたけれどね。


 でも、ノエルは頭と頭が向き合う形に布団を敷いて満足そうにしていたよ。

 半分横にズレてレオーネにも気を遣う余裕を見せていたし。


 クジを引く時に、そこまで必死になるものなのかと俺なんかは思ったけど。

 不思議そうな表情をしていたんだろうな。


「鈍感やなぁ、ハルトはんは」


 なんてアニスに言われてしまった。


『そりゃあ[鈍感王]なんて称号を持っているくらいだからね』


 この称号が外れる時は来るのだろうかと自分でも疑問に思う。


『少なくとも1年や2年でどうにかなるもんじゃないな』


「そこはノーコメントで」


 俺がここで何か言ってもややこしくなるだけの気がしたので何も言わないことにした。


「ハル兄はそれでいい」


 ノエルにはそんなこと言われる始末だ。


「うちに気を遣わんでええんやで」


 アニスがノエルに向かってそんなことを言った。

 一瞬、どういうことかと思ったさ。

 ノエルの発言がアニスに対する気遣いにどう結びつくのかってな。

 要はクジの結果を残念がっているように思わせないための言葉だと解釈したようだ。


「ハル兄はそれでいい」


 解釈は違うと言いたいのだろう。

 ノエルは同じ言葉を繰り返した。


『そんなに大事なことなのか?』


 それとも何か他に思うことがあるのか。

 俺には分からんので考えるのは諦めた。

 とにかく入浴組で大広間の中央に陣取った訳だ。


 後の布団は俺が理力魔法でガーッと引いておいた。

 でないと、既に寝ている面子がいるからな。


 ちなみにエリーゼ様に眠らされた面々は外周部から寝かせていった。

 これが罰になるそうだ。

 アニス曰く、俺から遠い位置で寝ることになるとそうなるらしい。


『そんなもん?』


 俺なんかは今ひとつ実感が湧かなかったがね。

 ノエルたちも頷いていたので従っておいたけど。

 起床時には些かションボリ気味だったので正しいことが証明されたのだろう。


 あと、花火組には困惑された。

 布団を敷き終わってノエルたちと雑談している時に帰ってきたんだけど。


「どうしたというんじゃ?

 寝入るのがやけに早いではないか」


 ガンフォールが真っ先にそう言って問うてきた。

 俺としては些か程度だと思ったけどね。

 まあ、早めなのは事実なので何があったかは説明しておいた。


「言葉が見つからんわい」


 説明が終わると溜め息をつかれてしまった。

 呆れてしまうのも無理はないだろう。


「エリーゼママが出血大サービス級で仕事してるわっ」


 マイカは妙なことで感心していたけれど。

 同感ではある。


「仕事じゃなくて……お節介?」


 ミズキは何かピントのずれたことを言っていた。


「いやあ、因果応報というか後始末と言うべきじゃ?」


 トモさんがそれを訂正。

 確かに因果応報で後始末に動かざるを得なくなったと、俺も思う。


 その後は適当にみんなで駄弁って就寝した。

 寝る場所は適当にばらけたね。

 クジは用意していたけど必要なかった。

 人それぞれ思惑が違うということだ。


 その後は特に事件もなく朝を迎える。


『そうそうトラブルが続くのは勘弁願いたい』


 人竜組の件にベリルママが酔った件。

 これで今日まで騒動が起きるなんてことになったら……


『余計なことを考えるのは止めておこう。

 なんとかの法則とやらが発動されても困るし』


 とにかく面倒な話が持ち込まれるのは御免被りたい。

 それはベリルママたちの謝罪についてもそうだ。


「謝ったんだから、もういいじゃないですか」


 これが俺の偽らざる心境である。


「というか、いいことにしてください。

 遊びに来てるんだから切り替えましょう」


 そう簡単には切り替えられないかもしれないが。

 罪悪感が残ったりもするだろうし。

 それが罰というか、今後の戒めになると思ってもらいたい。


「引きずるのはナッシングの方向でお願いしまっす」


 俺はしばし頭を下げた。


「わかったわ、お母さんはちゃんと切り替えます」


「私も約束しよう」


「私も切り替えるよ」


 3人とも納得してくれたようなので俺も頭を上げた。


「じゃあ、朝ご飯にしましょうか」


 腹が減っては戦ができぬ、ではないがね。

 空腹のままだとネガティブな発想になりやすいし。

 美味しいものを食べてリフレッシュしたら今日も遊ぶのだ!



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 本日のメニューは和食。

 自動人形にお任せでお願いしていたので俺も内容は知らなかった。


 白い御飯が艶々と輝いている。

 焼き海苔が添えられていて白と黒のコントラストが絶妙だ。

 おかずはメインが焼き魚。

 大根下ろしがそれられている。


『焼き魚定食だな』


 とはいえ、おかずはそれだけではない。

 ホウレン草のおひたしと具だくさんの味噌汁がついている。


 あと生卵が希望者に配られた。

 そう、卵かけ御飯にするためだ。

 古参組が躊躇いなく生卵を貰い受けていく。


 卵に馴染みのない人魚組などは、ちょっと驚いている。

 俺の近くに座っている面々の声を拾ってみるが拒絶的な感じではなさそうだ。


「ええっ!?」


 普段は眠そうな目をしているユリノエが目を見開いたりはしているが。


「生で食べられるものだったのですか?」


 ヤエナミも確認するように隣に座るハリーに聞いている。


「ああ、生で食べられるのは新鮮な卵だけだよ」


 そう言いながら卵を手に取ってテーブルの上でコンコンと軽く打ち付ける。


「何日かたつと雑菌が入りやすくなるから」


 手を止めずにヤエナミに説明を続ける。

 ヒビの入った卵の下に小鉢を寄せた。


「火を通すことを前提にするなら日持ちする食材だけどね」


 そして小鉢に生卵を割り入れる。


「マヨネーズなんかも新鮮な生卵を使って作っているよ」


 箸で軽くかき混ぜてポン酢を垂らした。


『ハリーはポン酢派だったっけ?』


 あるいは今日の気分で選んだのかもしれない。

 もちろん醤油を使う面子もいる。

 黒猫3兄弟なんかは醤油を使っているようだ。

 自前で山芋を取り出してすり鉢でおろして混ぜてもいた。


「知りませんでした……」


 あたりを見渡しながら呆然とした様子で呟くヤエナミ。

 古参組が思い思いのスタイルで卵かけ御飯を楽しんでいるのが信じられない様子だ。


 ハリーは言うだけ言った後は御飯に集中している。

 おそらくヤエナミの呟きなど聞いてはいないだろう。

 物凄く幸せそうな顔をして御飯を食べている。


 焼き魚の身とホウレン草を少しずつ卵かけ御飯にのせて焼き海苔で包んでパクリ。

 口に運ぶたびに目を閉じてゆっくりと咀嚼。

 何度も何度も噛んで噛んで噛んでからゴクリ。

 じっくりと味わっていた。

 時折、味噌汁を啜って「ほぅ」と一息つく。


『ホントに幸せそうだ』


 人によっては爺くさい食べ方だなんて言う者もいるかもしれないが。

 俺はそんなことはないと思う。


『じっくり味わって食べることの何処が悪いのか』


 逆も悪いとは言わないけれど。

 一生懸命に食べる姿は見ていて清々しく感じるほどだ。

 黒猫3兄弟が丁度そんな感じだった。


「兄者、トロロを入れて正解だったな」


 次男ニャンゾウが御飯をお代わりしつつ、ニャスケに同意を求めていた。

 5杯目の卵かけ御飯をかき込みつつ弟の方を向いてコクコク頷いている。


『動けなくなっても知らんぞ』


 そうなったら消化魔法ディジェストを使わざるを得ないだろう。

 ノーペナルティでとはいかんがね。


『帰ったら反省文かな』


「兄者たち、それくらいにしておくのだ。

 食い過ぎで遊べなくなったら元も子もないぞ」


 ニャタロウが兄たちを注意する。


「「丼で3杯食ったお前に言われたくねえっ」」


『どっちもどっちだよ』


 まあ、賑やかに食べているお陰で人魚組からは注目を浴びているようだ。

 そのうちの何人かが触発されたのかメイド型自動人形に生卵を要求していた。

 どうやら周囲の古参組に影響されたようだ。

 チャレンジするらしい。


 その中にヤエナミもいた。

 器用に卵を割って箸で溶く。

 そしてそのまま御飯に掛けて混ぜ込んでいく。

 ヤエナミは調味料の類いを使わなかった。

 そのまま食べるつもりのようだ。


 それも悪くはない。

 卵の味を純粋に味わう通好みの食べ方である。

 意を決したように目を閉じて一口パクリ。

 そこでしばらく動きが止まっていた。


 恐る恐るといった様子で瞳を見開き咀嚼を始める。

 フンフンと頷きながら。

 お気に召したようで何より。


『よっし、卵かけ御飯の信者ゲット!』


 俺は内心でガッツポーズを取っていた。


読んでくれてありがとう。

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