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664 久々ってどういうこと?

 丸投げ体質なエリーゼ様も上司は怖いらしい。

 それも俺が考えていた以上に恐れているように見受けられた。

 報告という単語を呟いただけで条件反射的に謝ってくるくらいだし。

 尋常ではないビビりようである。


 そこまでの反応をされると気になって仕方なくなってくる。

 統轄神様がどんな神様なのかと。


 ただ、興味は湧くが対面したいとは思わない。

 あの飄々としたエリーゼ様がビビるほどの相手だ。

 さぞかし怖い神様なんだろうと思ってしまう訳で……

 半永久的に会うのはなしの方向でお願いしたい。


 エリーゼ様が何かやらかした時にメールで連絡するだけなら、ありだと思うが。

 できれば電話や念話も回避したいところである。


『謝るくらいなら、どうにかしてください』


 色々と考えながら苦情をぶつける。


『言っておきますが誰かに丸投げなんてダメですからね』


 釘を刺しておくことも忘れない。

 この女神様は油断がならないからな。


『……了承したわ』


 返事をするまでの間に微妙な間があったのが凄く気になる。


『本当に大丈夫なんでしょうね』


 念押しで確認する。

 気分的にはジト目を向けたいところだった。

 が、念話でわざわざイメージを送るのも面倒だ。

 結局そこまではしていない。


『約束するわ』


 今度の返事は即答であった。

 安請け合いな空気も感じられない。


『さすがに上司としての管理責任を問われかねないもの』


 理由がダメダメな気がするけれど。

 そういやベリルママの従姉であると同時に直属の上司だったか。

 中間管理職って雰囲気がまるでないせいか、今の今まで後者については忘れていた。

 板挟みとかエリーゼ様のイメージとはまるで掛け離れているし。

 まあ、そんなことはどうでもいい。


『とにかく酔っ払った3人をどうにかしてください』


『そうねえ、根本的解決にはそうしないとね。

 こちらで彼女たちの身柄を預かることになるけれど良いかしら』


 何か大事になりそうな返答に俺は即答できなかった。


『ああ、心配いらないわ。

 ルベルス側のフォローもやっておくから』


 それは是非ともそうしてもらわないと困るところだ。

 俺じゃ世界の管理なんてできるはずもないからな。

 前にルディア様たちがベリルママの留守を預かった時でさえ問題があったのだ。

 俺の返事ひとつでルディア様たちに迷惑をかける訳にもいかない。


 それを考えると俺の独断で決めて良いことでもない気がしてきた。

 まあ、ベリルママが酔っ払っている時点で留守にしているも同然かもしれないが。

 それはそれ、これはこれだろう。


 だから俺は逡巡することになった。

 それをエリーゼ様は俺が不安視していると思ったのだろう。


『大丈夫よ』


 なんて言ってきた。

 それなりに安心感を感じさせてくれる一言ではあったのだが……


『久々に本気を出すとしましょうか』


 そんな御言葉まで頂戴しましたよっと。

 ふんすという鼻息が聞こえてきそうな気合いの入りようである。

 本気は大いに出してもらいたいところなんだけどね。


 しかしながら些か気になる単語が発言に混じっていた。

 久々にという言葉を聞いてしまうと逆に不安に思えてくるから不思議である。

 聞かなかったことにしたいくらいだ。


『酔いを覚ますだけじゃないわ。

 アフターフォローもバッチリやっちゃうわよ』


 安っぽいセールストークにしか聞こえないのは俺だけだろうか。

 よくよく考えなくても結果は目に見えている。

 この念話で話しているのは俺とエリーゼ様だけだからな。

 他の面子がいないのに俺だけかと自問自答する時点で間抜けの所業である。

 なんにせよ下らないボケをかましている場合じゃない。


『どうフォローしていただけるので?』


 そこが重要である。

 フォローの結果が更なる混乱じゃ笑い話にもならない。


『酔った3人は明日の朝までにどうにかするわ』


『はあ……』


 思わず生返事になってしまった。

 自由に動ける状態なら天を仰ぎ見ていたことだろう。

 神の酒を抜くにはそんなに時間がかかるのかと嘆きたくなったからだ。


 エリーゼ様と連絡が取れていなかったら、どうなっていたことやら。

 そう思っていたのだが。


『まず、酔いを覚まさせるのは大前提だもの』


 エリーゼ様の発言からすると、神の酒を抜くのはそう難しいことではないらしい。

 俺には無理だったがな。

 チャレンジすらしていなかったけれど。

 挑戦するまでもない難易度だったってことだ。


 そう考えるとエリーゼ様は俺の想像を超える凄い神様なんだろう。

 ベリルママに気付かれない状態の結界を構築していることからも否定しようがない。

 そう考えると頼もしく思えてくるから不思議である。


 が、それでも一抹の不安は残る。

 何処かのタイミングで丸投げされかねないと思ってしまうからだ。


『それだけじゃアフターフォローとは言えないでしょ』


 言っていることは事実なんだが……

 信じるしかないだろう。

 何処かで対応せざるを得ないという覚悟もしながらになるがね。


『明日の朝までには君らの休日に付き合えるような状態に戻しておくから』


 精神的なフォローをしてくれるということか。

 正直、翌朝までに何とかしてくれるとは本当にありがたい。

 俺では泣いているベリルママをなだめるのが精一杯の気がする。

 おそらくは泣くであろうベリルママをどうにか説得できるとかスゲえわ。

 俺は今までにないほどエリーゼ様を尊敬した。


『助かります』


 とはいえ完全に信用した訳ではない。


『ただ、他にもお願いしたいことがあるんですが』


『あらら? なにかしら』


『大広間の可変結界もどうにかしていただけますか』


 俺だとキャンセルも破壊もできない。

 もちろん転送魔法もブロックされる。

 故にこれを忘れると皆と一緒に寝ることができなくなってしまう。


『もちろんですとも』


 その言葉に驚きを禁じ得ない。

 エリーゼ様にしては大盤振る舞いだ。

 そんな風に思っていた俺は読みが甘かった。

 次のエリーゼ様の言葉でそれを思い知らされる。


『あのまま放置すると千年単位で結界が維持されてしまうのよ』


『ちょっ!?』


 せいぜい半日で効果が切れるだろうと思っていたら甘かったようで。

 何やってくれてるんだか、ベリルママ……


 途中で解除なんてことにならないよう安全マージンを取ったつもりなのかもだが。

 どう考えたってやり過ぎだ。

 マージンの域を逸脱しすぎである。


 決着がつけば解除するつもりだったにしてもだ。

 俺はおろか筆頭眷属であるルディア様にも解除できないんだから。

 これでエリーゼ様に解除してもらえなかったら、どうなっていたことか。


『案ずることはないわ。

 ハルトくんの所の国民をケアするもアフターフォローの範疇よ』


『それはどうも、ありがとうございます……』


 何とかお礼を言うことは出来た。

 が、なかば上の空でのお礼の言葉だったことは否定できない。

 呆気にとられてしまったせいだ。


 あの丸投げ体質なエリーゼ様が至れり尽くせり?

 冗談でしょって言いそうになったさ。

 調子が狂うとは、まさにこのことだろう。

 青天の霹靂と言ってもいい。


 とにかく俺は動揺していた。

 それは数秒ほどのことだったとは思う。

 だが、その間に事態は進展していた。


『こんな感じかな』


 エリーゼ様の声に我に返った時には終わっていた。


『ふぁっ!?』


 大広間を映し出す幻影魔法の中で国民たちが倒れ伏している。


『あー、面倒だから眠らせておいたわよ』


 見れば分かる。

 呼吸でわずかに体が動くからな。


『朝になったら記憶もあやふやになってるから、あんまり叱らないであげてね』


 消すんじゃなくて曖昧にするあたり芸が細かい。

 記憶が綺麗に抜け落ちていると気持ち悪いもんな。

 暴れたせいで疲れて眠ったことにするのが無難ってことなんだろう。


 ただし、問題がある。


『雑魚寝状態じゃないですか』


 布団はもちろん敷かれていない。

 おまけに枕は散乱しているし。


『そこんところは上手くやっといてちょうだいね』


 出た、秘技丸投げ攻撃。

 こういうことになるだろうと思っていたので驚きはない。

 あるのは諦観だけだ。


 アフターフォローが聞いて呆れるけどな。

 エリーゼ様にしては頑張った方だとは思うが。


『あと神の酒は回収しておくから』


『エリーゼ様が送られたものなんでしたっけ?』


『そうよ。

 まとめて渡したうちのひとつだけど』


『……どういうことですか?』


『私ね、お酒って飲まないのよ』


 それは人それぞれの事情だ。

 俺がとやかく言うことではない。


『だから、いくつかセットにして身内に配ったんだけどねー』


『つまり偶然ベリルママの所に神の酒が紛れ込んだということですか?』


『そうなのよー。

 目録を作っておくべきだったわね』


 確かにそう思うものの、エリーゼ様が目録なんて作らないことだけは断言できる。

 だって面倒くさがるのは目に見えているから。


『貰った方は何が渡されたか分からない状態だったと?』


『そういうことになるわね。

 私もベリルの所にあるとは知らなかったけど』


 適当に渡したってことなのだろう。

 実にエリーゼ様らしい。


『おまけにあのタイミングで引き当てるとは思わなかったけど』


 どうやらエリーゼ様が渡した酒は山ほどあるようだ。

 その中で神の酒はたった1本のみ。

 よりにもよって今回それを引っ張り出してきて飲んだのは奇跡だと言えるだろう。

 傍迷惑な偶然である。


『いずれにせよ神の酒の回収については判断いたしかねます』


『あら、どうして?』


『ベリルママの持ち物ですので、俺に決定権はありません』


 回収してくれるなら助かるけどね。

 今後のことを考えるとさ。


『そうだったわね。

 じゃあ勝手に回収していくわ』


 俺の体がふと軽くなる。

 同時にベリルママたち酔っ払い組が広間から消えていた。


『あと、よろしくねー』


 そして俺の返事を待たずに念話が途切れた。


読んでくれてありがとう。

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