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615 幼女を連れ戻すために沖に出た

修正しました。

プレッシャ → プレッシャー

「じゃあ、俺はちょっと泳いでくる」


「おーう」


「お気をつけて」


 波打ち際でトモさん夫婦たちと別れた。

 子供組が沖まで泳ぎに行ってしまったので様子を見に行くことにしたのだ。


 若夫婦はうちの妻組と一緒にボディボードをすることになった。

 というより俺の穴埋めを頼んだ。

 妻と母優先ということで真っ先にそちらへ向かうべきだったんだろうけどね。


 子供組が想定外のことをしてくれたから確認に行かないといけない。

 結界の外に出て更に遠くまでズババババッと一気に泳いでいってしまったのだ。

 子供組のレベルを考えると心配はいらないというのは理解している。

 過保護だとも思う。


『けど、何かありそうなんだよなぁ』


 嫌な予感とまでは言い切れないんだが。

 何かあるのだけは間違いなさそうなのだ。


 軽く斜め45度で跳躍し、その間に水着にチェンジ。

 トモさん風に言うなら「変身」だ。

 で、重力に任せて頭から落下。

 ザブンと入水。


 派手に水飛沫が上がったが結界付近なので誰にも影響はない。

 そこから潜水泳法で子供組に接近していった。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 洋上で幼女まみれになった。


「……………」


 いや、すまん。

 言ってみたくなっただけだ。

 ちょっと後悔している。


「もっと周囲の状況を把握しような」


 洋上ではしゃいでいた子供組+1を集めて注意した。

 +1はマリカである。


「自分の居場所が把握できなくなったら帰るのが大変だろ」


 沖合の波が大きくてレベルの低い一般人なら溺れること間違いなしなんだが。

 彼女らにはその心配はない。

 ただし陸地が見えなくなるほど沖に出てしまうと迷子になる恐れがある。

 そういうこともあって注意したという訳だ。


「分かったニャ」


「ゴメンなさいなの」


「反省してるです」


「「ゴメンなさい」」


「マリカ、迂闊だった」


 ミーニャ、ルーシー、シェリー、ハッピーとチー。

 そしてマリカが順に反省の弁を述べていった。

 みんな海面に顔を出してションボリさんになっている。


「そこまで落ち込まなくてもいいんだ。

 じゅうぶん反省しているみたいだし。

 みんな次から注意しような」


「「「「「はいっ!」」」」」


「よろしい」


 元気な返事に笑顔で応じた。

 みんなも自然と表情がほころぶ。


『これは良いものだ』


 などと悦に入っている場合ではない。

 皆を連れて帰らないといけないからな。


「じゃあ帰るからな。

 万が一、迷子になったらスマホを使うんだぞ」


「「「「「はーい!」」」」」


 皆の素直な返事に和みタイムが訪れる。

 YLNTな紳士たちでなくても癒やされるというものだ。


『うはー、かわええ』


 皆に訝しがられない程度に満喫させてもらった。

 そこからオオトリの海岸方向へ進路を取ろうとしたそのとき。


「お」


 下方から浮上してくる気配を察知した。


『深海から招かれざる客か。

 グロい奴だったら嫌だなぁ』


 そういうのもあって深い方の気配は探らずにいたのだが。

 向こうはこちらの心情や思惑など知ったことではないらしい。

 普通に俺たちを捕捉して向かってきている。


「何か来るニャ」


 ミーニャも反応した。


「大きい……かな?」


 シェリーが首を傾げている。

 気配だけで相手の大きさを探るのに苦戦している。

 まだそれなりに距離があるから把握しきれないようだ。


「そこそこの大きさだよー」


 あっさり肯定するマリカ。

 水の中じゃ嗅覚は当てにできないものの他の感知能力も高いので分かるようだ。

 もちろん俺が察知する前から把握していたことだろう。

 何も言わなかったのは、この場にいる誰の脅威にもならないからだ。


「単独犯なの」


『もしもし、ルーシーさん?』


 何もしていないのに犯罪者扱いですか。

 そもそも知性がある相手かどうかも判明していないというのに。


『十中八九、脳筋本能全開の奴だろうけど』


 でなきゃ俺たちの気配を感じて逃げ出しているはずだ。

 生存本能を優先するようなのだと寄ってくること自体が考えられない。


「あるじー、帰らないのー」


 小首を傾げて聞いてくるマリカ。

 彼我のスピード差を考えれば無視した方が早く解決すると思ったのだろう。


「たぶん向こうは執拗に追いかけてくるぞ。

 追いつけなくても探知能力は高そうだし」


「じゃあ、ここで処分だね」


 倒すではなく処分という単語を使う時点で相手の低評価ぶりがうかがえる。


「処分するのは勿体ないなぁ」


「「「「「どうして?」」」」」


 心底、不思議そうに聞かれるのも相手のことを知らぬが故。

 それも仕方ないだろう。

 相手は未だ海中を浮上中だからね。


『遅いもんなぁ』


 俺のように【天眼】や【遠見】のスキルがないと、その姿を確認できない状況だ。

 で、俺は【目利きの神髄】スキルで相手の正体まで確認済み。

 だから食べられるだけでなく旨いということも知っている。


『できれば冬に食べたかったがな』


 まあ、それは贅沢というもの。

 冬になったら、今度は漁をすればいい。


「向こうからわざわざ晩飯のネタになりに来てくれてるからだな」


 まさに鴨葱状態。

 待たない方がどうかしている。

 超遅いけど。

 どうやら魔法で泡を作って浮上しているようだ。

 遅いのも納得の理由である。


『それより浮上した後に移動するのはどうするつもりなんだろうな』


 浮くことしかできないというなら一方的に終わらせるだけである。

 おそらくは何らかの移動手段を持っているだろう。


『水平方向は意外と素早かったりしてな』


 まあ、それも奴が浮いてからの話である。

 それより幼女組の反応である。

 食材になると知るや否や──


「「「「「やったあああぁぁぁぁっ!」」」」」


 パチパチパチと頭上で拍手する一同。

 食材がなんなのか聞いてもないのにこれである。


『けど、言ったところで反応は同じ気がするな』


 まだ食べたことない食材だし。


『俺も北海道に旅行へ行ったとき以来なんだよな』


 普段はスーパーに行っても買うような代物じゃないからな。


『お1人様で食べるようなもんじゃないし』


「ねえねえ、陛下ー」


 シェリーが俺の周囲を立ち泳ぎでグルグル回りながら声を掛けてきた。


『やけに興奮しているな』


 そう思っていたら──


「潜って倒しに行こうよー」


 なんてことを言い始めた。


『この食いしん坊さんめ』


「それはいいアイデアだニャ」


 ミーニャが真っ先に称賛する。


「ナイスなの」


 ルーシーも笑顔を見せた。

 このままだと俺が許可を出す前に全員で潜りかねない。


『それは阻止せねばっ!』


「ダメー」


「「「「「えーっ、なんでぇ─────っ!?」」」」」


 案の定、強烈な反応をされてしまった。


「意外と脆いからね。

 皆でボコったらバラバラになって美味しく食べられなくなっちゃうぞ」


「「「「「そうなのぉ────────っ!?」」」」」


 俺の説明で一応は納得したらしい。

 潜ってまでゲットしようとは言わなくなった。


「「じゃあじゃあ、どうやって倒すの?」」


 ハッピーとチーが聞いてきた。

 もっともな疑問である。


「やっぱり一撃必殺なの?」


 とルーシー。


「んー、一撃必殺とは違うなぁ」


 どちらかというとジワジワじっくり仕留める感じだろうか。

 急ぐと味が落ちるからな。


「周囲の海水ごと凍らせる?」


 マリカはなかなか物騒なことを言ってくれるよな。

 ハイフェンリルだから、そういう力技も可能なんだけど。

 皆が衝撃を受けたようにマリカを見た。

 正解だと思ったのだろう。

 マリカを見る目が「天才か!?」状態だ。


「発想は近いけど不正解だぞ。

 解凍する手間がかかるからな。

 失敗したらエキスが大幅に抜けて出汁を取れなくなる」


 俺がそう言うと、皆が天を見上げて絶望だと言わんばかりの顔をした。


「おいおい、それは凍らせて解凍を失敗したときの話だろ。

 ちゃんと出汁が取れるように仕留めるから心配するなって」


 シャキーンと引き締まった表情に戻る幼女組の面々。


「いや、いいんだけどね……」


 その後は待ちきれないという顔をされてしまう訳で。

 これが思っていた以上のプレッシャーになる。

 まあ、俺自身も待ってられないと思うようになってきていた。


『しょうがない。

 釣り上げるか』


 メタルワイヤーの魔法を直下に向かって撃ち出した。

 数秒とかからず目標に到達し胴体に絡みつく。

 ワイヤーで拘束するのが目的ではないので軽くだ。

 接触してしまえばこちらのものである。


「ほい、捕まえた」


 理力魔法で全身を爪の先までガチガチに固めてしまう。

 ここに来てフルパワーでの抵抗が始まった。

 が、全身をくまなくカバーしているのでミクロン単位ですら自由になる部位がない。


『脚をもげさせる訳にはいかないのだよ』


 味を落とす元になるからな。

 そのまま理力魔法で一気に引き上げる。

 射出したワイヤーとほぼ同じ時間でそれは海面近くに姿を現した。


読んでくれてありがとう。

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