614 男はセンスがないと嘆いていたら出遅れた?
まあ、人の趣味は様々だ。
『そういうことにしておこう』
女性陣の水着は色んなデザインで眼福でしたよ。
人魚組は自前のビキニタイプのを持っていたし。
デザインがいくつかバリエーションが少しあるくらいのものだったけどね。
個性は色と柄で表現する感じだ。
あと水着と同じ柄のパレオを腰に巻いている。
人魚モードの時はビキニの下は使えないからだって。
そのままならパレオも必要ないんだけど、人化するときに必要になるという。
根掘り葉掘りで聞いた訳でもないのにヤエナミが説明してくれた。
人化してから下をはきますとか聞きたくなかったですよ?
下が紐パンなのはそういう理由ですって言われてもね。
桃髪天使さんや母親の攻める気満々の水着と同じくらい反応に困るんですが……
まあ、女性陣は皆おしゃれに気を遣っていると解釈することにしましたよ。
でないと俺の羞恥心ゲージがブースト圧を上げてくるもので。
さすがにアクセル全開とはいかないがね。
これから遊ぼうって時にキョドリたくはないのでスルー推奨だ。
おしゃれ上等! である。
『それに引き換え野郎どもは……』
ガンフォールとハマーのジジイコンビは7分袖の古くさいデザインを選択していた。
柄は黒と白の太い横縞だ。
実に胡散臭く見える。
「囚人服かよっ」
思わず声に出してツッコミを入れてしまったくらいだ。
意味は通じなかったけどな。
「「は?」」
とか言いながらキョトンとしていたさ。
そりゃ、ルベルスにはない常識だからな。
地球があるセールマール側だったとしても、今はなかなか通じないかもね。
実際の囚人服としては使われなくなっているだろうし。
コント衣装として使われるぐらい?
そのせいかミズキとマイカには受けていた。
一応、ミズキは止めようとはしていたけどね。
マイカが誰にはばかることなくゲラゲラ笑うもんだからさ。
「笑っちゃ悪……ブッ!」
でも、窘めようとして吹き出すとそこからは止められないようだった。
我慢しようとしては「ブッ!」とか「ブフッ!」てな感じで我慢できない様子。
そんなことはお構いなしに笑い続けるマイカ。
「似合うー!」
「そんな、ブッ! こと言っブハッ! ダメだよ、ブフッ!」
『2人とも……』
とりあえずマイカのこめかみを両サイドから拳でグリグリしておいた。
「イダイー、ヒーヒー……
イダダッ、ブヒハッ!
イダッ、アハハハハッ」
痛がりながらも笑い続けるとは強者である。
いや、それ以前に何がそこまで面白いのだろうかという疑問が湧いてくるのだが。
『どこでどうやって何がツボになるのか分からんな』
後でガンフォールたちに説明したら身悶えてたよ。
「道理で動画に檻が出てきた訳じゃ」
「アレはそういう意味だったのか」
どうやらB級映画で囚人が脱走して泳ぐシーンを見たようだ。
翻訳済みのはずなのに音声は碌に確認していなかったらしい。
黒歴史が決定した瞬間であった。
続いてボルト。
デニム風のトランクスなんだが、上にも短いデニムのジャケットを羽織っていた。
上下のデザインがそろっているせいか水着に見えない。
「誰が何と言おうと水着です」
本人は至って真面目に主張していたけれど。
『デザインの関係で野暮ったく見えるんだよな』
俺には南国リゾートにいるような漁師に見えて仕方なかった。
まあ、俺の勝手なイメージなので人によっては違って見えるだろう。
『そういうことにしておこう』
そしてブルースは麻の薄い作務衣であった。
「……………」
水着ですらない。
袖と裾は切り落としたような形なので作務衣とは分かりづらいが水着には見えない。
まだボルトの方がマシというものだ。
店員をやってもらうつもりだからミスチョイスとも言い切れないんだけどさ。
そこへ水上走行を楽しんできたトモさんが帰ってきた。
「いやー、ゴメンゴメン。
久々の海水浴ではしゃいじゃったよ」
実にいい笑顔である。
「反省しなさい。
君の奥さんが謝り倒していたよ」
「いえっ、そんなっ」
俺の言い様にフェルトが泡を食った。
慌てて「そこまでは──」と言いかけたところでトモさんが反応した。
「ぬぅわにぃ!?」
久々の岩塚群青さんの物真似。
自分の奥さんの方へグルリと向き直る。
面と向かい合ったフェルトは何も言えなくなってしまった。
物真似の口調はおふざけを感じさせたが、トモさんの表情は真剣そのもの。
フェルトに向かって大袈裟なほど大きく頭を下げるトモさん。
「すまないっ。
浮かれていたよ」
そして顔を上げる。
「ゴメンして」
最後に可愛くお強請り。
どことなくテヘペロの風味が漂っている。
真面目に謝る気があるのかと言いたいところだ。
頭を下げたときは真摯な感じがしていたのに。
『それ以前にキャラじゃないよ、トモさん』
まあ、フェルトは怒っている訳じゃないので、すぐなあなあになってしまった。
「せめて一声かけてから行こうぜ」
念のために注意はしておいた。
「反省している、後悔はしていない」
作ったような真顔で言われた。
「おいっ」
定番のネタで返すとかツッコミの入れようがない。
『まったく……』
なんだか毒気を抜かれた気分である。
この真面目なんだか巫山戯ているのか分かりづらいところがトモさんの持ち味である。
ついつい誤魔化されてしまうのだ。
今回もそんな感じである。
「それにしてもさ」
「何かな?」
話題が変わりそうな気配を察したのか早々に乗ってくる。
「どうして、それをチョイスしたのか小1時間ほど問い詰めたいんだが」
「ぬぅわにぃ?」
「……………」
まさか群青さんを連発してくるとは思わなかったよ。
「それというのは、この水着のことかね」
群青さんを継続しながら自分のはいている水着を指差す。
それは膝丈の競泳水着だった。
「そうだよ」
『それも水着っちゃ水着なんだけどさ』
間違いじゃないんだけど、場違い感はハンパない。
どこの世界水泳会場だよ状態である。
あんな水着は世界水泳かオリンピックの映像でしか見たことないからな。
「世界記録を更新できそうだからだね」
素に戻って返事をするトモさん。
「ここはルベルスの惑星レーヌなんだけど」
「ガーン!?」
クワッと目を見開いてわざとらしく驚いてみせる。
3度目の群青さんはなかったようだ。
「いやっ、それでも向こうでだって今の俺なら──」
本気になれば確かに世界記録は更新できるだろう。
セールマールの世界じゃあり得ないほどレベルアップしてるみたいだし。
『本気になれればだけどね』
「無理だと思うよ。
つーか、絶対に無理だわ」
「なんでさ」
「そもそも地球じゃ一般人でしょうが。
どうやって世界水泳とかの大会へ出場するんだよ」
「ガガーン!?」
頭を抱えてショックを受けているトモさん。
なんだか芝居がかってしか見えないけどね。
「それにアスリートだったとしてもアラフォーなんだから変に思われるよ」
「ガガガーン!?」
ついにはイナバウアー的な仰け反りを見せた。
「サービス精神が旺盛なのはいいんだけどさ。
恥ずかしかったら途中で止めていいんだよ」
トモさんが元の姿勢に戻った。
表情も素の状態と言って良いだろう。
若干、頬が赤いかもしれないが。
そして無言で頷く。
やはり相当恥ずかしかったようだ。
「ところで、ハルさん」
「なんだい?」
「皆いないよ」
「だね」
この場にいるのは俺とトモさん夫婦のみ。
ブルースは仕事しに向かったし。
ルディア様とエヴェさんは、それについて行った。
午前中から海の家の隅っこで酒盛り開始である。
後の皆だって、とっくに遊びに行ってます。
ボディボードで波に乗る者。
ビーチボールで遊ぶ者。
砂を積み上げて何かを作り出そうとする者。
ひたすら泳ぐ者。
そして何故かビーチフラッグを始める者。
『それは遊びなのか?』
そうは思うが、細かいことを気にしてもしょうがないだろう。
本人たちが楽しめれば、遊びなのだと思うことにした。
「出遅れたか」
妻組なんて真っ先に海に向かってたもんね。
ベリルママもミズキとマイカに手を引かれて行っちゃったし。
そうなるとリオス様、フェム様、アフさんはついて行くしかないんだよな。
連れて来た名目がベリルママの護衛らしいから。
『そこまで拘らなくていいんだけどな』
空中空母とか上空に待機させてるから警戒態勢は万全だ。
それで対処しきれないとしても、うちの面子がいる。
『まあ、皆に手伝ってもらう前に俺がなんとかするつもりだけど』
目一杯、楽しんでもらいたいし。
何が来るかにもよるけど。
今や亜竜クラスじゃ話にならんからな。
「君のとこの奥さんたちはフリーダムだよね」
「君には言われたくない」
「ハッハッハ、確かに」
「あのー、いつまでもジッとしてるのもどうかと思うのですが」
遠慮がちにフェルトが声を掛けてきた。
「「それもそうだ、ハッハッハ」」
期せずしてトモさんとハモってしまった。
が、笑っている場合ではない。
俺たちも遊ばねば!
読んでくれてありがとう。




