575 ハルト注意される
修正しました。
『はい」→『はい』
敵を殲滅した。
海を汚すのは本意ではないので諸々はすべて回収。
その上で役に立たないようなものは闇魔法の分解で処理しておいた。
剥ぎ取りやら分類を【多重思考】を駆使して早々に終わらせる。
同時に周辺の確認も怠らない。
別動隊が本当にいないことを確認していく。
『大丈夫なようだな』
ちょっと考えられないくらいに海中の環境が静かである。
これが陸上なら台風一過とでも言えそうな、そんな感じ。
実際、そんなものなのかもしれない。
『5万の軍勢が押し通っていたようなもんだし、むしろ当然か』
海竜とかでも、さすがに逃げるようだ。
いくら根っからの脳筋魔物でも数の力には圧倒されるようだ。
質の上でも同等以上のジャイアントシャークがそれなりにいた訳だし。
これで突貫するなら生存本能すらないバトルジャンキーってことになるだろう。
なんにせよ静かな海である。
いつまでも警戒態勢は取っていられないので俺は皆に声を掛けた。
「皆、お疲れ様。
これで戦闘は終了だよ」
スマホを通して銘々から返事が入る。
疲れた様子は感じられないが空気は弛緩したように感じられた。
「戦闘は終了したけど、まだ終わりじゃないからね」
『どういうことでしょう?』
キースがスマホ越しに聞いてきた。
他の面子も不思議そうにしている者が割といるようだ。
「おいおい、ヤエナミの仲間が隠れ潜んでるんだぞ。
いつまでもビクビクさせたままじゃ可哀相だろう」
『あっ、これは失礼しました』
俺の指摘に緩んでいた空気が少し引き締まる。
妖精組が慌てた様子でメタルサーバントを整列させた。
たかだか数時間のシミュレーター訓練でビシッと決めてくるんだよ。
機体搭乗時でも忍者モードというのが微妙なところなんだけど。
『いつでも状況に対応できます!』
数十体のメタルサーバントが綺麗に整列する姿は壮観だ。
機種がバラバラなのは、御愛嬌。
感動すればいいのか苦笑すればいいのか、よく分からない。
「そこまで気合いを入れなくていいぞ。
ここから先は任務とか仕事じゃないんだ。
気楽に行こうぜ。
というより楽にしてくれ」
でないと俺の方が気疲れするっての。
『はあ……』
キースは分かっていない風だけど。
何人かは苦笑していた。
壁面モニターに映し出されたコクピット内の映像をわざわざ送信してきているのだ。
俺の内心がどんな状態か分かっていると言いたいのだろう。
主に俺の奥さんズだな。
他には守護者組とかハリーとか。
勘弁してくれと言いたい。
言ってしまうと、皆にニヤニヤされかねないから言わんがね。
「メタルサーバントで大挙して押し寄せると威圧感があるから船で行くぞ」
いつぞやのフェリーもどきを使うつもりだ。
そう考えていたのだが。
『船って、まさか前に使ったアレなの?』
レイナがそんなことを聞いてきた。
『アレ?』
困惑したように聞いているのはエリスである。
マリアやクリス、それにABコンビと『アレって?』などと言い合っている。
そういや見せていなかった。
「アレって言うのはレイナたちに見せたことがある船のことだ」
彼女らだけで話し合っても結論が出る訳はないので説明しておく。
「ちなみに輸送機と大差ない大きさかな。
メタルサーバントを下りれば余裕で全員を収容できる」
『で、それを使うつもりなん?』
今度はアニスが聞いてきた。
レイナは俺の説明が続くと思っていたらしく反応が遅れただけのようだ。
なにやら唸っているからスルーしておこうと思ったら──
『それってマズいんじゃないの?』
そんな具合に言ってきた。
『確かにマズいかもな』
リーシャも同意しているようだ。
レイナが何を言いたいのか分かっているのだろう。
俺は何かを見落としているらしく、マズいという理由に思い至れずにいた。
「どういうことだ?」
こういうときは素直に聞くべきである。
『だって、あのデカいので向かったら威圧感あり過ぎじゃない』
「む、言われてみれば……」
というより言われるまで気付かなかったのは、かなり恥ずかしい。
配慮のハの字もないってのがね。
ジャイアントシャークよりも大きいってのに気付かないのもどうかしている。
1隻の船で行くなら数で威圧しないし大丈夫かと思ってしまった時点でダメダメだ。
『言われてみればじゃないわよぉ』
レイナに呆れられてしまった。
返す言葉もないとは、このことだろう。
「いや、すまん。
甲板の上にみんな出ていれば大丈夫かと思ったんだがな」
『海中からじゃ見えないでしょうが』
「そうなんだよ。
失敗だわ」
我ながら間抜けである。
『代表者を選抜して行くといい』
ボソリとノエルが呟いた。
『せやせや、それがええわ』
『『だよねー』』
『ふむ、妥当だな』
『ですねー』
月影の面々もそのアイデアに同意する。
他の面子からも次々に賛同の声が聞かれた。
「じゃあ、それで」
『軽っ』
ジャブのような軽いツッコミを入れてきたのはトモさんだ。
「まあ、そんなものだよ」
そう返事をすると、それ以上はツッコミを入れてこなかったけど。
「俺とヤエナミは当然として」
『はいはい!
私も行きたい』
挙手しながらそんなことを言ってきたのはマイカだった。
「却下」
『ちょっ、なんでよぉ!』
頬を膨らませながらも可愛らしい仕草を見せてアピールしてくる。
そう簡単には諦めるつもりがないようだ。
「モフモフ病を発症されたら敵わんから」
『なによ、それぇ!』
「お前の場合は上級者だからな。
毛皮とかなくても尻ビレを見て発症しかねんだろ」
モフリスト上級者を侮るなかれ。
毛皮に覆われていなくても可愛ければモフれると豪語するのだ。
毛がなくても皮ならいいのかと思ったり。
ソファー感覚なのかと考えてみたり。
複数の俺で脳内会議を開いても結論が出ない。
要するに俺には理解不能だった。
だが、本人が以前にそんなことを言っていたのでそうなのだろう。
『ヤエナミちゃん相手にそんなことしなかったじゃーん』
などと抗議してくるが、そういう目で見ていたのは知っているのだよ。
「それは仮死状態から蘇った直後だからだろ」
『うっ』
「なにより人化してたし魔神側と臨戦態勢になったしな」
『そっ、それは……』
「だったら安全な状態になった今、人化を解いても手を出さないと断言できるのか」
『うぐっ』
壁面モニター上で小さく映るマイカが仰け反っている。
これってモフるつもりなのは、ほぼ確定だよな。
せめて理性を働かせて初対面の直後くらいは我慢できるならマシなんだけど。
この調子では、それすらままならないと言っているようなものだ。
連れて行ける訳がない。
毛皮じゃないからすぐに飽きる可能性もあるけれど。
そういう問題じゃない。
初対面の印象が最悪になっちゃ困るのだ。
まあ、フェリーもどきで行こうとした俺も無神経なんだが。
あまり偉そうなことは言えない。
それでもマイカよりはマシなはずだ。
ちなみに連れて来た後のことは半ば諦めている。
「即答できない時点でダメじゃんか。
連れて行ったらどんな粗相をされるか分かったもんじゃないから許可できんぞ」
『ぐぬぬぬぬ』
マイカ撃沈である。
「ガンフォール、頼めるか?」
『うむ、構わぬぞ』
「レオーネとリオン」
『はい』
『私もですか!?』
「直接の面識はなくても海から糧を得ている者同士だろ。
海エルフの姿があれば、向こうも安心するんじゃないか」
本当はシャドウエルフなんだが。
向こうにそれを見抜ける者はいないだろうからな。
『分かりました。
お供します』
理由を聞けば、リオンもすぐに納得してくれた。
「ノエル」
子供もいた方がいいだろう。
だが、ミーニャたちだと収拾がつかなくなる恐れもあるからな。
後は婚約者としての立場もある。
『ん』
こちらは理由を聞くこともない。
俺の狙いには気付いているはずだ。
「ダニエラ」
『私でいいんですか~?』
「威圧感がないのがいいんだよ。
それとラミーナ代表ってことで」
色んな種族がいた方がいいからな。
『分かりましたー』
ヘニャッとした感じで笑みを浮かべるダニエラさん。
そう、この緩い感じを期待しているのだ。
「妖精組代表でハリーかな」
『はい』
静かにそう答えているが、あれは喜んでいる表情だ。
此奴もノエルに似て表情が読み取りにくいからな。
「後はローズ、シヅカ、マリカだな」
ローズがいると相手のビビり具合が分かるだろうし。
シヅカは妻代表と聖天龍としてだな。
マリカは上位妖精として。
ラミーナモードと狼モードなら威圧感もないだろう。
『くー』
当然、だってさ。
『相分かった』
『主のお供するー』
少し多いかもしれないな。
だが、これだけ多才な面子がいれば向こうも警戒を緩めてくれるんじゃないだろうか。
最初は逆に警戒されそうな気がしないでもないが。
そのあたりはヤエナミが仲間にフォローしてくれることを期待しよう。
読んでくれてありがとう。




