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552 奴らの会話方法

 手出しはしないと決めていたのに、ついついやってしまいました。

 テヘペロ。


 守護者組の視線が生暖かいのは気のせいではない。

 まあ、気付いても何も言わないでいてくれるようだ。

 ならば問題はない。


 他に気付いているのはノエルくらいのもの。

 じーっと俺の方を見ている。

 責めるような視線でないのが幸いだ。

 もし、そうであったなら耐えきれずに自供していただろう。


 とりあえず目だけでお願いしてみた。

 かすかな頷きが返ってくる。

 どうやら了承されたらしい。

 冷や汗ものである。

 これだけのことでもエリスなんかには気付かれる恐れがあったからね。


 気付いてもスルーしてくれるとは思うけど。

 とにかく結界が発動したことで前後左右はもちろん上下にも逃げ場はなくなった。

 敵がそれに動揺するように仕向けたお陰で現状はパニック中。

 完全に背後を晒してしまっている。


 厳密に言えば背後ではないのかもしれないが。

 細かなことを気にしてはいけない。


 なんであれシャークマンたちが尻をこちらに向けているのは事実。

 メタルサーバントから多少の距離があるとはいえ大した度胸である。

 ……度胸ではないな。

 混乱して現状認識がおかしくなっているだけだ。

 有り体に言うと出口を探している。


 皆に気付かれないよう弱めにデバフをかけただけでこれとは驚きである。

 このあたりは個人によって感覚が違ってくる。

 たとえば不機嫌になる約1名とか。


『随分と余裕じゃない』


 マイカである。


『私達を無視して余所見しまくりなんて、いい度胸ね!』


 機嫌が悪いどころか御立腹である。

 虚仮にされたと思ったようだな。

 向こうが戦闘を放棄したどころか反転して向き合おうとすらしないせいか。


 事情を知らずにやられたら俺もキレそうだな。

 戦闘を放棄して無防備な状態をさらすのだから。

 雑魚が相手ならば、それは誘いなのだけど。

 それ以外では下手な挑発にしか見えない訳で……


『うがーっ!』


 なに吠えてんの?

 御丁寧にスゴークで地団駄を踏むような操作をしている。

 格納庫内の面子からドッと笑いが起きた。


『なんで笑うのよぅ』


 唇を尖らせて文句を言ってくるが、そりゃ自業自得だろう。


「そんなコミカルな動きをメタルサーバントでするからだ」


『ぐぬぬ』


『コントはそこまでだ。

 奴ら、こっち向くぞ』


 トモさんが注意喚起してきた。

 こちらに背を向けていた脳筋どもが方向転換をしている。

 ようやく混乱状態から抜け出せたらしい。


『コントなんてしてないわよっ』


 そんなことはお構いなしとばかりにマイカが吠えた。

 よほど無視されたのが頭にきたのだろう。


『おおー、怖え怖え』


 対するトモさんは怖いと言う割にビビっているように見えない。

 何処か楽しそうだ。


『漫才している場合じゃないよぉー。

 なんかシャークマンたちが怒ってるみたいなんだけど』


 ミズキの言うように、向きを替え終わった連中が体を起こして腕を振り回していた。

 脱出不能に追い込まれたことがよほど応えたらしい。

 その原因が俺たちにあると考えれば、怒りを向けてくるのも当然である。


『上等じゃない。

 私に恥をかかせておいて逆ギレとか舐めてるのかしら』


 舐めているのは端からだ。

 それにこちらは敵の突撃を一度だけ回避したのみである。

 向こうが、こちらの戦力を分析できたとは思えない。


「来るぞ」


 シャークマンが魔法を使うべく集中し始めた。


『あら、生意気に魔法で攻撃するつもりなの?』


 魔力の高まりでそれを関知したマイカだが、それは正解とは言えない。


『やるなー、あいつら無詠唱を使いこなすのか』


「それは違うよ」


 トモさんの言葉を否定する。


『えっ、だって何も喋ってないよ?』


「喋ってるさ。

 口から声を発している訳じゃないけどね」


『訳が分からん』


「さっきの隊列変更にも繋がることだ」


『そんなこと言われてもなぁ』


「超音波だよ」


『えーっ!?』


 どうやら意外だったらしく驚いている。


『あいつらコウモリじゃないよ』


「別にコウモリだけが超音波を使う訳じゃないさ。

 そもそも相手は魔物だからね。

 普通のサメとは違うってことを忘れちゃいけないよ」


『なるほど、それもそうだね』


『センサーでは確認できてなかったわよ』


 マイカは深くツッコミを入れてくる。


「それは情報を減らすために省いてるんだよ」


『誰が?』


「優秀なアシスタントが目の前にいるだろ」


『この出っ張りがやってるの?』


 ナビゲートユニットが出っ張りか……


『おいぃっ、出っ張りって言うな』


 思った通りトモさんが抗議した。

 電脳フォーミュラ好きのトモさんが黙っているはずはないのだ。

 俺もイラッとしたけど、トモさんほどじゃない。


『はいはい、分かったわよ』


 ぞんざいな言い方だが一応は引き下がってくれたことに安堵する。

 これで言い合いを始めた日には戦闘そっちのけになりかねない。

 助かった。


『それよか、なんで除外してるのよ。

 会話とか呪文とかお得情報が得られるじゃない』


 お得情報って……

 スーパーの安売り広告じゃあるまいし。

 そもそも喋っている内容を拾ったところで、そこまで価値のあるものじゃない。


「この程度の連中相手に必要なことか?」


『それを言われると、そこまでじゃないような……』


「あとな、喋るときに使っている超音波は聞き取るのが難しいぞ」


『どういうこと?』


「指向性の高い高周波を使って喋ってるんだよ」


『レーザー通信みたいだね』


 トモさんが何故か嬉しそうだ。

 そういや初期のグランダムで「レーザー通信回線を開け」みたいな台詞があったな。


『それって聞かせる相手の位置を把握してないとダメってことでしょ』


「アイツら位置確認は欠かしてないぞ」


『どうやってさ?』


『もしかして低周波とか?』


 ここでミズキも会話に入ってきた。

 ハッキリ言って、向こうさんは接近してくる気配がないからな。

 今はそのための準備をしている段階だ。


「ああ、そうだ」


『低周波だとどうなるんだい?』


 トモさんが聞いてくる。


「高周波と違って拡散するからレーダーみたいな使い方ができるんだよ」


『へえーへえーへえー』


 赤い人のスゴークにボタンを連打させるような動作をさせるトモさん。


「ネタが古いよ」


『定番と言ってほしいね』


 ものは言い様である。


『ミズキはなんで知ってるのよ?』


 マイカがツッコミを入れている。


『前にテレビの番組で見たことあるからだよ』


『はあっ!?

 向こうの世界にも水中で超音波を発する生き物なんているの?』


「イルカとか鯨の仲間がいるな」


『ああ、言われてみれば』


 ホントかよというツッコミは入れない。

 面倒くさいことになるのは目に見えている。


『でも、私が低周波だって気付いたのは動物じゃないよ』


『なにそれ?』


『低周波って魚群探知機で使われるんだって』


『『OH……』』


 マイカだけでなくトモさんも驚いていた。

 妙なところで息ピッタリだな。


『まさか漁船を相手に戦うとは思わなかった』


 トモさんの解釈は極端だと思う。

 どう見たってジャイアントシャークは漁船には見えない。


『超音波で喋っているのは理解したけど』


 マイカがそんなことを言った。

 まだ何かあるらしい。


「何だよ」


『アイツら何がしたいのかしら。

 さっきからずっと同じ所に留まったままよ?』


「何って、魔法を使ってるだろ」


 脳筋だがそこそこの知能は持ち合わせているが故に魔法も使えるのだ。

 いま使っているのは水魔法。

 海洋性の魔物としてはごく自然なことだろう。


『水流を発生させてるだけじゃない』


 それくらいは誰にでも分かる。

 マイカが言いたいのは何の意図を持って、それを実行しているかだ。


『それも拡散してるから射程が短すぎるし』


『あっ』


 不意に声を発したのはミズキだった。


『なによ、ミズキ?』


『あの魔法ってストッパーが目的なんじゃないかな』


『『ストッパー!?』』


「はい、正解」


 ジャイアントシャークに突進させるように指示を出しながら水流で押し止める。

 短距離で加速させるために編み出した技なのだろう。


『あー、そういうことかぁ。

 トップスピードに乗せて突っ込んでくるつもりなのね』


『原理的には飛行機の逆噴射に似てるかな』


「使用目的が違うけどね」


 飛行機の方は短距離で止まるためのブレーキなんだけど。


『でも、効果的な方法とは思えないわよ』


 それを俺に言われても困るのだが。


「そういうことは今から突っ込んでこようとしているアイツらに言ってくれ」


 ちょうどシャークマンが水魔法をカットしたところだ。

 勢いよく飛び出してくる。

 まだ2撃目だが、奴らは本気のようだ。

 お手並み拝見といこうか。


読んでくれてありがとう。

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