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549 カタパルトはないけど発進だ

 機体選択が終われば積み込みだ。

 輸送機の大型化はあれやこれやと話している間に完了している。

 グランダム、赤いスゴーク、スゴーク後期型を格納スペースへと搬入。

 俺たちも乗り込んだ。


「それじゃあ出発だ」


「そこは出撃でしょう」


 マイカが訂正を求めてくる。


『拘るね』


 俺としては雑魚相手にそういう気分になれなかったんだけど。


「じゃあ、それで」


「軽っ」


「偵察部隊相手に気合い入れてもなぁ」


「あぁ、そういうこと」


「それと既に奴らの進路上だし」


「早っ」


「転送魔法使えば終わるからな」


 出発を宣言した時点で転送した。

 単に到着を宣言していないだけである。


「だったら輸送機なんていらないじゃない」


 マイカはブーブー言ってるが、それでは意味がないのだ。


「ダメだよ、マイカちゃん。

 皆が見学できなくなっちゃう。

 この戦闘で操縦を実際に見て感じを掴むって話、忘れてるでしょう」


 俺が言おうと思ったことをミズキが代弁してくれた。


「ぐぬぬ」


「あのぅ、早急に出撃すべきではないかと思うのですが」


 カーラが困惑した表情で会話に入ってくる。


「偵察部隊ということなら目がいいはずです。

 これだけ大きなものを見逃すはずがありません」


 もっともな意見である。


「うっわ、そうだった!」


「急ごう」


 我が妻たちが慌てている。


「あれ、トモくんは?」


「ホントだ。

 どこ行った?」


『どこ行ったじゃないよ。

 今頃になって気付くのか』


 マイカがこだわりを見せた後あたりにはヌルッと動き始めていた。

 他の面子は気付いている者もそこそこいたんだが。

 2人は油断しすぎである。

 この調子で、これから戦闘するのかと思うと頭が痛くなりそうだ。


「もう搭乗済みだよ」


「「早っ」」


『君らが遅いだけだ』


「はいはい、さっさと乗る」


 俺に追い立てられるようにして2人も各々が選んだ機体に乗り込んでいった。


「あー、言い忘れたけど」


 スマホを使って話し掛ける。

 こちらは皆に聞こえるよう外部スピーカーに無線接続済みだ。


『なにかな?』


 搭乗中の2人ではなくトモさんが応じた。


「輸送機は光学迷彩を初めとした結界で覆っているから敵にはバレないよ。

 それと発進後はメタルサーバントも隠蔽するようにしてあるから。

 合図するから任意のタイミングで解除するように」


『そういうことは先に言ってよぉー!』


 損したとばかりに文句を言ってくる約1名。


「もたもたしてたら敵が通り過ぎちゃうだろ」


『むぅー』


 やり込められたことに不満そうなマイカ。

 そのやり取りを見ていた皆は苦笑いである。

 これから戦闘が始まるという緊張感など微塵もない。


 それを呆れた様子で見ているヤエナミが溜め息をついた。

 自分はなんという所に来てしまったのだろうと。


「大丈夫よ」


 フォローを任されたエリスだ。


「え?」


「ハルトさんはちゃんと見極めているから」


「どういうことですか?」


「アナタがジャイアントシャークを恐れるのは分かるわ。

 命に関わるような深手を負わされたんですもの。

 その事実は言葉だけでは覆しようがないでしょう」


 そう言われたヤエナミの表情が強張る。

 骨の髄まで恐怖を味わったが故なんだろう。

 デモンストレーションを散々見せられても払拭できなかった訳だ。


「でもね、ハルトさんは何の問題もないと判断したのも事実よ」


 そう言われたところでヤエナミが安堵することはない。

 事実を見せられて初めて理解するかどうか。

 苦戦は論外という訳だ。

 3人の責任は重大である。


 だが、心配はしていない。

 その点についてはね。

 問題はちゃんとセーブできるかだ。


「何度も言うようだけど、大丈夫だから」


「は、はい」


 戸惑いの色は残しながらもヤエナミは返事をした。

 デモンストレーションの効果が少しは出ているのだろうか。

 だとするなら、それをより確実なものとしなければならない。

 そういう意味でも重要な意味を持つ戦闘になる。


『ハッチ開けてよー。

 出られないじゃない』


 スゴークの後期型をハッチの手前まで進ませたマイカには緊張感の欠片もない。

 後の2人にしても似たようなものだけれど。

 グランダムも赤いスゴークも既に立ち上がって順番に並んでいる。


「わかった、わかった、いま開けるから。

 そっちも忘れるなよ。

 この戦闘は皆に操縦法を教えるための手本になるんだからな」


 そのためにコクピットの映像をいろんな角度から中継する用意がある。

 モニター、計器類、操作系など。


 もちろんコクピットからだけではなく外部からも撮影予定である。

 今回、選択されなかったメタルサーバントを自動操縦で利用するのだ。

 それらはすでに俺の倉庫から転送済みである。

 敵の目標にされると面倒なので隠蔽工作は当然しておいた。

 後は戦闘の邪魔にならないように俺が遠隔操作するだけだ。


『もちのろんなのよ。

 ジャイアントシャークで遊べばいいんでしょ』


 どう解釈すれば、そうなるのだろう。

 相手の攻撃を回避しつつ弱らせてからトドメを刺すという方針が、お聞きの通りである。

 どうにも緊張感というものがない。

 深刻になれとも言わないが、軽すぎないか?

 マイカらしいと言えばそうだし、相変わらずだとは思うのだけど。


『ちょっとマイカちゃん。

 それじゃダメでしょ。

 もっと真面目にやんなくちゃ』


 ミズキにツッコミを入れられるのも毎度のことだ。


「ほら、2人で漫才やってんじゃないよ」


 言いつつハッチが開くのを待つ。


『うーい』


『もうっ、マイカちゃんったら。

 私まで注意されたじゃない』


『うひぃ、お許しをー』


「……ハッチを開けたから降下しろ」


 頭痛どころか目眩までしてきそうだ。


『アイアイサー!』


 マイカが気合いの入った返事をした。

 一瞬、その返事はどうなのかと思ったんだけどね。

 あんまり使われないからさ。

 普通は「イエッサー」だもんな。


 ただ、こちらもあながち間違いじゃなかったり。

 ここが海軍か空軍であればだけど。

 今回は水陸両用メタルサーバントを運用しているので海軍という解釈になるのだろう。


 もちろん、うちに軍隊などはない。

 義勇兵みたいなものである。

 俺としては好きにしてくれという感じだ。


『マイカ・ヒガ、スゴーク、出る!』


 軍隊風で通すなら、その台詞はお約束である。

 ただし、カタパルト発進ではないので開けたハッチから飛び降りるだけだ。

 いまいち締まりがない気がするのは俺だけだろうか。

 操縦しているマイカは楽しそうだけどな。


『スラスター調整っ!』


 降下速度を落とすだけなんだが気合いが入っている。

 そこで叫ぶ必要性について問い質したいところである。


 まあ、でも微調整もちゃんとできているようだ。

 叫んだお陰かは分からんがね。


 とにかく操縦は手慣れているようにすら見えた。

 もちろん、壁面モニターでそれは確認できる。

 輸送機のカメラや斜め下から撮影しているメタルサーバントの映像つきで。


 皆がそれを見て感心していた。

 ぎこちなさなど微塵も感じさせないのだ。

 天才かよと言いたくなるほど既に機体を手足のように使いこなしているのが分かる。

 セミオートとはいえゲームの戦線の友情とは違う部分もあるはずなんだが。


 調子に乗るとアホな失敗をするので、ここで褒めたりはしないがな。

 ブルーグレーの機体が降下速度を落とし、ふんわりと着水した。

 そのままブクブクと沈んでいく。

 続いてミズキの番だ。


『ミズキ・ヒガ、グランダム、行きまーす!』


 ネタ台詞をありがとうだな。

 ツッコミ待ちだったのかもしれない。

 あまりに有名になった台詞だけど、言った言ってないで論争になったアレだ。


 それはともかく、こちらも水飛沫を派手に上げることなく着水。

 本当に初めて乗ったのかと言いたくなる。

 そして最後にトモさんだ。


『スゴークカスタムはトモ・エルスで出ます!』


 ここにもネタを持ち出してくる人がいるよ。

 それはファーストグランダムじゃないでしょうに。

 しかも乗ってる機体がグランダムですらないし。

 専用機に乗ってるから、てっきりあの御方の声真似をするかと思ったら。

 台詞の元ネタになってる人に合わせた声にはしてるけど。

 ホントに物真似が好きだよな。


「あー、諸君」


 トモさんも見事な着水を決めてから呼びかける。

 スマホが使えるのは本当に便利だ。

 でなきゃ念話で会話しなければならなくなるからな。

 余計な制御に気を取られることがないのはありがたい。


「数々のネタをありがとう。

 だけど、ツッコミは入れないよ」


 俺がそう言うと、途端に『ギャー』なんて悲鳴が聞こえてきた。


『なんというボケ殺し!』


 そんなことを言ってくるトモさんだが楽しそうだ。


『私が滑ったみたいじゃんよっ!』


 マイカはいちいち文句を言ってくる。

 そんなことはないと思うのだが。

 頼むから始める前に疲れさせないでくれと言いたい。

 無理だけど。


読んでくれてありがとう。

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