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547 ロマンの追及者とリスペクトする者と

修正しました。

二男 → 次男

「「「合体はしないのですかっ」」」


 黒猫3兄弟が声をそろえて、ただただ必死に聞いてくる。


『そういうことかよ』


 合体はメカの華とも言える重要な要素だ。


『此奴らも動画で魅了されてしまった口だな』


 ここまで必死になるというのは予想外ではあったが。

 悪いことではない。

 むしろグランダムを再現した甲斐があったというもの。


「グランダムは合体するぞ」


 指差して視線を向けるように促した。

 遠隔操作でグランダムを垂直方向へ浮かせていく。

 一定の高さに達したところで上半身、胴体、下半身のパーツへ分離させた。

 上半身と下半身のパーツは上空でグルグルと周回させる。

 胴体は戦闘機に変形させ、そこから離脱。


「あらよっと」


 軽くいくつか曲芸飛行をさせると、そのたびに歓声が上がった。

 それが終わると、いよいよリクエストのあった合体だ。

 各パーツを軸線に乗せる。

 戦闘機は胴体パーツへと変形。

 ガイドビーコンで同調し──


「ほれ、合体だ」


 ガキーンとグランダムに合体。

 元の位置に着地して終了である。


「「「「「おおーっ」」」」」


 みんな拍手までしている。

 合体は曲芸飛行の時とはまた違った興奮があるのだろう。


「凄いよ、ハルさん。

 完全再現じゃないかっ」


「そのぶん装甲が弱いけどね」


「当たらなければ、どうということはない」


 わざわざあの御方の声真似で返事をしてくる。


「それ敵サイドの台詞だよね」


「そうとも言う」


「そうとしか言わないよ。

 ホントに三毛田庄一さんの真似するの好きだね」


「それがさー、公認してもらったんだよ」


「あ、そうなんだ。

 前にバレてヤベえって言ってなかった?」


「そうそう、大変だったんだぜー」


 そんな風に言ってる割に大変そうに見えないのだけど。


「その話は聞いたさ。

 公認はその後ってこと?」


「そうなんだ、何故だか気に入られてしまったんだ」


『何故だかって……』


 行く先々で物真似してれば本人バレするのは時間の問題だろうに。

 たとえ本人の前でやらなくても、周囲から情報が入るに決まってる。


「本人バレしてたから絶対に注意されると思ってたんだけどなぁ」


 首を捻って唸っている。


「そりゃあ日頃の行いだろうね」


「ええーっ、自分で言っちゃうけど無茶苦茶やってるよぉ」


『本当に自分で言っちゃったね』


 言うほど無茶苦茶とは思えないんだけど。


「わかんないの?」


「わかりません」


 真面目な顔して頭を振るトモさんであった。


『これ、説明すべきなのかな』


 俺も推測だから悩みどころなんだけど。

 そういうときは当人に聞けばいい。


「推測になるが知りたいかい」


 コクコクと頷きが返ってきた。


「知っとかないと、時々不安になるからさ」


 まあ、分からなくはない。

 分からなくはないが、不安になるなら止めようとは思わないのだろうか。


「そんな深刻に考えるような理由じゃないよ」


「マジで? ホントに?」


「信じる信じないはトモさん次第の話だけど」


「聞かせてちょんまげ」


 口調はふざけているが目は真剣だ。


『こういうときのトモさんってかなり本気なんだよな』


 照れくさいから冗談や下ネタで悟られないようにしているつもりなのだ。


『こういう部分も含めて三毛田さんにはバレているみたいだけど』


 というよりベテランの人たちにはバレバレなんじゃなかろうか。

 岩塚群青さんとか綿本盛男さんとか。

 いま使ったネタが古くさいのは動揺しているからだろう。


「面倒見の良さだよ。

 後輩とかちゃんとフォローするだろ」


「えっ、でも、そんなのは普通だよ?」


 マジで言ってるから質が悪い。


「どこがだよ」


『トモさんみたいに丁寧にフォローする先輩ってそうそういないぞ』


 でなきゃラジオ番組とかで色々言われたりしない。

 感激しました、は普通。

 そこまで年齢が離れていないのにお父さん呼ばわりされたりするのだ。


 ただし、下ネタのせいで女性陣からは距離を保たれているけど。

 その辺りはトモさんの計算だからいいとして……

 天然系イケメンかよって言いたくなる。


「マジでそんなことなの?」


「そんなことなんだよ。

 お手本が良かったと言うべきかな」


「はて?」


「忘れたのかい。

 前に言ってただろ。

 ゆきなさんに相談したときの話」


「んー、どの話だろ」


「そんなに相談してるんかい」


「そこまでじゃない、と思いたい」


「事務所がなくなって途方に暮れてたときに焼き肉おごってもらったって話だよ」


「おー、その話かぁ。

 すげー懐かしい」


 それなりに年数がたってるから感覚的にはそんなものなのかもしれない。


「ゆきなさんに良くしてもらったから、自分は後輩に還元するんだって」


「ああ、思い出した!」


「ゆきなさんが手本ってことになるよな」


「なるね」


「良い手本だと思うだろ」


「確かに」


「良い手本を真似した結果、トモさんが認められたってことだよ」


「そうなのかな」


 自信なさげに聞いてくるとか、どうなのよ。


「とにかく、そういうことだから」


「ええー」


 トモさんは納得していないようだ。


「他にベテランの人たちに可愛がってもらえる理由があると思う?」


「うぅーん」


 反論もできない様子ではあるが。


「少なくとも俺はそう思っている。

 他に考えられる理由なんてないんだし」


「そっかー、これはますますリスペクトしない訳にいかなくなったじゃないか」


 納得しきれないながらもトモさんが燃えている。

 あの口振りからすると、もともとリスペクトから物真似をしているようだ。


『それにしては色んな人を真似てるけどな』


 なんにせよ、三毛田庄一さんが[好きな○○さん]シリーズに入ったのは間違いない。

 殿堂入りだ。


「ん?」


 黒猫3兄弟の様子が些かおかしい。

 トモさんとの会話に気を取られている間は気付かなかったんだが。

 喜びつつも意気消沈しているように見える。

 グランダムの合体が気に入らなかったのかもしれない。


『アニメのようにBGMがかかったりしないからなぁ』


「どうした、イマイチだったみたいだな」


「あっ、いえ」


「決してそんなことは」


「ないのでありまする」


 長男、次男、三男と台詞のリレーが行われているかのようだ。

 意識しないとクスリと笑ってしまうようなおかしさがあった。

 本人たちは受けなど狙ってはいないのだろうが。

 もちろん笑わないよう我慢する。


「正直に言ってみそ」


 強要になるといけないので口調は軽めにした。

 言ってから、あまりの浮きっぷりに後悔したけど。

 ドアップで迫ると台無しになるので、そこも自重する。

 すると意を決したように話し始めた。


「あれはあれで」


「ロマンを満たすものが」


「あるのですが」


『その喋り方は変えんのか』


 苦笑を禁じ得なかったが、それはそれ。

 言いたいことは何となく分かってきた。


「要するに、もっと大きなロボに合体したいんだろ」


 各パーツが単体で戦闘力を持つようなやつだ。

 有り体に言ってしまうと戦隊シリーズの合体である。

 あるいは古いアニメのスーパーロボットとかだな。

 ちょろっと幻影魔法でそのあたりを見せてみたが反応は顕著であった。


「「「そうです、それです、そんな感じです!」」」


『今度はハモりかい』


 まさしく阿吽の呼吸だ。


「強度不足の問題があるから今回は難しいな。

 デザイン的にオリジナルになったとしても今すぐは無理だ」


 そう言った途端に[ズーン]という書き文字が見えそうなくらい落ち込んだ。


「気持ちは分かるぞ。

 巨大合体はメカの華、ロマン中のロマンだからな」


「「「はいっ」」」


 落ち込んでいても、そのあたりの返事はしっかりしてきた。

 そして再び落ち込む。


『そこまでハマってるのか』


 よくよく考えてみれば、戦隊ものに合体ロボは付き物だ。

 忍者の参考資料として戦隊ヒーローの動画を数多く見せられていた妖精たちである。

 気にならない訳がない。

 妖精組の面々が合体ロボを希望するのは必然に等しかったと言える。


 ふと気になって他の妖精組にも目を向けてみれば、残念そうにしている者が多い。

 落胆の度合いは黒猫3兄弟の方がずっと強いようだが。

 その差を見ればドアップで迫ってきたのも頷ける。


 一方でグランダムの合体に満足している面子も少なくなかった。

 そういう面々はグランダムの足元に群がって熱心に見上げている。


『遊園地の着ぐるみに群がるちびっ子みたいだな』


 縮尺的にはまるで違うのだが、何故だかそう思ってしまった。

 あれはあれで人気があるようだ。


『合体すれば、それでいいのだろうか』


 よく分からない。

 たぶん巨大ロボが完成したら、それはそれで喜ぶとは思う。

 何にせよ作らない訳にはいかないようだ。

 妖精たちの落ち込む姿なんて見たくないからな。


「強度不足を解消する設計ができたら作るから、しばらく待ってろ」


「「「ホントっすか!?」」」


 一気に復活である。

 苦笑を禁じ得ないが嫌じゃない。


「すぐには無理だぞ」


「「「「「はいっ」」」」」


 元気な妖精たちの返事を受けて俺は安堵した。


読んでくれてありがとう。

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