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539 懐かしい歌

 スマホから流れる曲に合わせて歌う者まで出てきた。


『うわー、懐かしいぞ』


 最近は聞かなくなってたからな。

 ふとした拍子に鼻歌を耳にするくらいか。

 これを知っているのは最古参の国民だけだろう。

 すなわちローズと妖精組である。


『確か月影の面々がうちに来た頃には下火になってたはずだ……』


 そう思って月影の一同が固まっている方を見てみると──


「なんやの!?

 この曲って歌詞がついてたんかいな」


 どうやらアニスは耳にしたことがあるらしい。


「そうみたいね。

 こんなしっかりした曲とは思わなかったけど」


 レイナの口振りからすると、やはり聴いたのは鼻歌のようだ。


「それもだけどぉー」


「なんだよ、ダニエラ」


「なんだか歌い慣れてる感じだよー」


 ダニエラの言うように妖精たちはノリノリで歌っている。

 悪を倒して平和を守るという趣旨の歌詞だ。


「少なくとも、今でっち上げたりとかじゃなさそうだ。

 こんなに大勢で同じ歌詞の曲を歌うなんて偶然じゃ考えられない」


 リーシャは真面目に推理しましたと言わんばかりのコメントをしている。

 だが、尻尾が感情を隠しきれていない。

 パタパタと小さく振られていた。

 それも振っては止めてを繰り返している。

 我慢しているのが見え見えだ。


『こういう曲が好きなのか』


「「後でコピーしてもらおうっと」」


 メリーとリリーは姉と違ってちゃっかり発言をしている。


「ふむ、こうして聴くと心沸き立つ曲だな」


 目を閉じて聴き入っているルーリア。


「ハル兄が作った?」


 ノエルが俺に聞いてくる。


「違うな。

 作詞作曲は妖精組だ。

 俺はノータッチ」


 ノエルが首を傾げた。


「そんなに不思議か?」


「曲調がハル兄が元いた世界の曲に似てる」


 動画とかで知った情報を元に推測したか。

 ノエルがそう思うのも無理はない。


「妖精組がその系統の動画を見まくったからだ

 アイツら、ああいうのが好きでなぁ」


「納得。

 すごく楽しそう」


「確かにな」


 妖精組による合唱が生み出す雰囲気に月影以外の面々も楽しそうに聴き入っている。

 3姉妹とかABコンビも最初は驚いてたけどね。

 最初から静かだったのはドワーフ組くらいではなかろうか。

 これくらいでは驚かなくなったようだ。


 ちょっと意外だったのはレオーネ。

 ドワーフ組と同様に少しも驚く様子を見せなかった。

 リオンが目を丸くしているのを見て楽しそうに笑っている。

 お姉ちゃんぶってる部分もあるようだ。


 あと、他に落ち着いていたのはツバキとカーラである。


『曲のことも全部、知ってるし』


 今回は歌う方には参加していなかったが。

 ローズも知ってはいるんだけど、こっちは悪のりしてる。

 一緒に歌ったり騒いだりする訳ではない。

 悪役っぽいマントを引っ張り出して纏うと腕組みをして踏ん反りかえっていた。

 ただそれだけなんだが、妙に存在感を放っている。


『久々に悪の首領役かよ』


 完全になりきっているようだ。

 歌を聴くためなのか高笑いとかはしていないが。

 というより、今このタイミングでそれをすると変人扱いされかねない。


『日本で街中だったら通報ものだよな』


 シヅカはローズの方を見て苦笑している。

 歌はあまり気にならないらしい。

 というより尻尾を高速でバタバタさせて喜ぶ幼女マリカを抑え込んでいる。

 解き放つと「ドダダダダダダダダッ!」とそこらじゅうを走り回しかねない状態だ。


『フルパワーでな……』


 周辺被害が馬鹿にならない気がする。


『あの調子で走り回られたら、辺り一面が凍り付くぞ』


 シヅカが抑え込んでいるのはそのためだ。

 放置できないので最終手段を使う。


「マリカ、待て!」


 ビシッと直立不動となるマリカ。

 尻尾も硬直していた。

 狼モードではないので「お座り」は無しだ。


「曲が終わるまでそうしてろ」


「さー、いえっさー」


 返事と共にピシッと敬礼する。


『誰だよ、こんなの教えたのは』


 俺は「待て」でジッとすることは教えたが、こんな返事の仕方までは教えていない。

 犯人は1人しかいない。


 そちらを見たが、なんか惚けていた。

 こっちの様子には目もくれずといった感じだ。

 かと思ったら、突如として「あー、もうっ」とか言いながらダンダンと地団駄を踏んだ。


「この私が知らない特撮の曲があるなんてっ」


 マイカは苛立たしげにギリギリと歯噛みした。


「うーん、私も分かんないなぁ。

 どこかで聞いたような気もするんだけど」


 ミズキも首を捻っている。


『いや、聞いたことはないはずだぞ』


「パクった感じがするんだけど。

 それか替え歌っぽいかな?」


 なかなかいい線で推理しているトモさん。


「「そう?」」


 マイカとミズキは気付いていない。

 思い出そうと必死になりすぎて聞き逃した部分もあるようだ。


「だってさ、色々ヤバイ歌詞だよ」


「どこがヤバいのよ。

 燃える要素はあるけどヤバイ?」


 怪訝な表情を見せるマイカ。


「皆殺しとか」


「はあっ!?」


 マイカは嘘でしょと顔で語っている。


『色々と聞き逃しているなぁ』


 大方、思い出すのに必死になりすぎたせいなんだろうけど。


「それは確かにヤバいね。

 皆殺しの前後ってどんな感じの歌詞だったの」


 ミズキは冷静に問うている。

 その割にはマイカと同様に聞き逃している訳だけど。


「えっとね「群がる悪を皆殺し~」だったかな。

 他にも「死にたい奴からあの世行きぃ」なんてのもあった」


「ちょっ、何よそれ!?」


「確かに聴いたことないわ」


「だろぉ?

 全体的には正統派の戦隊風なんだけどさぁ……

 正義の味方なんだか悪の使者なんだか分かんなくなるよな」


 トモさんが首を捻っている。


「個人的には嫌いじゃないんだが」


「おい、特撮ファンとしてそれはどうなんだ」


 珍しくマイカがツッコミを入れている。


「どっちかって言うとライダー派だからねー」


 トモさんがそう言うと、マイカもそれ以上は追及しなかった。

 どういう理由からなのかは俺にはよく分からない。


「とにかく聴いたことない曲だよ」


「同感」


「そうよね」


 意見が一致したところで俺の方を振り向く3人。

 知らなくて当然だ。


『マルチプルメモライズで渡した情報には含まれていないからな』


 情報過多にならないよう削った結果だ。

 分からなくて当然である。


『けど、ヒントになる情報は持ってるはずだから気付いても良さそうなものなんだが』


 周囲の雰囲気に呑まれて考える余裕がないようだ。


「最後まで聞けば答えが分かるさ」


 俺がそう言ったところで曲が終わりに差し掛かった。

 ナイスタイミングと言うべきか。


「「「「「「我ら忍精戦隊ぃヨウセイジャ~!」」」」」


 妖精組が歌い終わった。


「「「ああー、そういうことかー」」」


 ふむふむと頷いた3人である。

 それを見てキースがニヤリと笑う。


『そのドヤ顔は怖いからよせ』


 気持ちは分かるけどな。

 確かに変身スーツなら水の抵抗は大幅に軽減されるし、呼吸もできる。

 ドヤ顔をするだけはあるのだ。


 まあ、そんなことを知っているのは身内だけである。

 ヤエナミはどうして妖精組が歌い出したのか理解できずに呆然としていた。

 そりゃあ、いきなり歌い出せば何事かと思うだろう。

 なに言ってんだコイツ状態である。


『水中用のデモンストレーションが必要になるな』


 戦う必要は既にないだろう。

 要は水中でどれだけ素早く自在に動けるかを見せればいいのだ。

 どうしたものかと考えていると──


「ヨウセイジャーだったとはねー」


 そう言ったのはミズキだった。


「まるで気付かなかったよー」


 ちょっと悔しそうにしながらも笑みを浮かべていた。


「ほーんと、まさか歌まで作っていたとはねえ」


 マイカも呆れ気味に苦笑しながら驚いている。


『器用なことをするなぁ』


「これってハルさんが作曲したとか?」


 トモさんが聞いてくる。

 何故に作曲限定なのだろうかと思ったが、歌詞のセンスで判断したのだろう。


「いいや、作詞作曲ともに妖精たちだよ」


「そっかー。

 じゃあ仮面ワイザーは?」


「曲はないよ」


「えー、なんで作んないんだよぉ」


「通りすがりの仮面ワイザーにそんなものは必要ない」


「言うねえ」


 こんなやり取りをしている間もヤエナミはポカンと口を開けたままだ。


『まあ、いきなり歌を聴かされちゃ戸惑うよな』


 俺たちの会話が途切れたのを見計らって妖精たちは優雅に一礼した。

 そしてスマホが仕舞われ、代わりに剣銃シュリーが取り出される。


「行くぞ!」


「「「「「おうっ!」」」」」


 キースの掛け声に応じる妖精組。

 同時に適当な間隔を空けながらも整列している。

 歌っているときはバラバラな立ち位置だったのだが。

 そこは様式美というやつなのだろう。


読んでくれてありがとう。

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