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531 事情聴取が始まる?

 一通りの自己紹介は終わった。

 ヤエナミは呆然としている。

 雰囲気だけならば、やつれていると言っても過言ではない。


「こんなに妖精が……」


 ブツブツと呟いていると思ったら、うちの面子にインパクトがあったようだ。


『いや、お前さんも妖精だろう』


「エルフと海エルフが一緒に……」


『別に仲が悪い訳じゃないぞ。

 海エルフの方がレアってだけだ。

 組み合わせが激レアになるのは……』


 しょうがないとだけ言っておこう。

 ただし、内心で。


「ドワーフまで……」


『最初から居ただろうに』


 エルフと一緒というのが珍しいのかもしれない。

 西方でも街中であれば、そこまで珍しい訳でもないのだが。

 そのあたりはお互い様なんだろう。

 ドルフィーネの生態は知られていないようだし。


「しかもフェアリーが……」


 これについては何とも言えない。

 西方でもまずお目にかかれない種族だからな。

 場合によってはエルフのふりをして人前に出てくることもあるのかもしれないが。

 羽根さえ出さなきゃ見た目でバレることがない。

 フェルトもそうしていたんだが、トモさんが暴露した。

 妖精組の多さにヤエナミが目を丸くしたのを見てイタズラ心をくすぐられたようだ。


「フェアリーも国民に大勢いるよ。

 うちの奥さんもその1人だし」


 それを聞いてヤエナミが唖然としてしまったのは不可抗力だろう。

 海エルフ以上にレアな種族だからな。

 これで国民が上位種だらけだとヤエナミが知ったらどうなることか。


『ただの客人だし、そこまで教えるつもりはないけどな』


 結局、朝ご飯が終わるまでヤエナミはそのままであった。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 腹が膨れると人とは落ち着くものであるらしい。

 ヤエナミもどうにか立ち直れたようだ。


『脳に栄養が行き届いたお陰かな』


 ちなみに食事はベッドではなく食堂のテーブルで行った。

 そのまま雑談をする感じで話をしていく。


「すみません。

 取り乱してしまったようで」


「いや、大人しい方だろ。

 暴れた訳じゃないからな」


 そう答えるとヤエナミは呆気にとられたようになった。

 大方、王様らしくないとか思っているのだろう。

 今更である。

 故に誰も反応しない。

 食後のお茶でマッタリしている。

 その割には耳だけはピクピクしてこちらの様子を覗っているが。


『みんな耳がダンボだぞー』


 内心で苦笑する。

 まあ、しょうがない。

 ヤエナミの話はこれからだ。

 どんな事情があるのか気になって仕方ないのだろう。


「さて、それではヤエナミ」


「はひっ」


 ガチガチさんである。


『呼びかけただけでこれかよ』


 別に脅したつもりはない。

 殺気立ったりもしていない。


『そんなに王の肩書きで緊張するものなのかね』


 俺の場合はそういうことがなかったので、よく分からない。

 ガンフォールにしてもクラウドにしても。

 とりあえず、それは置いておいてヤエナミの事情を聞こう。


『聞いてダメなら何か手を考えるってことで』


 己の中で方針を決定し口を開く。


「単刀直入に聞くが、どういう事情で深手を負わされたんだ?」


 緊張で固まっていたヤエナミの雰囲気が一変した。

 ビクリと体を震わせたかと思うと強張った表情を見せる。


「あー、先に言っておくと迷惑をかけるかもとかは考えるなよ」


 俺の読みが当たったのか目を見開いて驚きを見せるヤエナミ。

 表情を取り繕う余裕はなかったようだ。

 交渉には向かないタイプである。


『こちらとしては助かるんだがな』


「追っ手がいるんだろう?」


 戸惑う様子を見せながらも、ゆっくりと頷いた。


「ですが──」


「そういう遠慮は無意味だ」


 あえて冷たく言い放った。

 反論を許さぬために。

 ヤエナミの言葉を封じたのを見て、俺は口調を柔らかいものに戻した。


「俺らも戦う準備が必要になるんだ。

 追っ手が乗り込んでくることは想定しないといけないからな」


 ヤエナミがどの辺りで敵を巻いたかにもよるがね。


「申し訳ありませんっ!」


 土下座しそうな勢いで頭を下げるヤエナミ。


「話が進まないから、そういうの無しの方向でね。

 状況次第じゃ早急にこっちも備えなきゃならんし」


 恐縮しつつも俺の言葉は聞き入れられたようだ。

 おずおずと面を上げる。


「追っ手はどういう相手で数はどれくらいだ」


「シャークマンとジャイアントシャークが3組です」


 ヤエナミはその情報を絞り出すように語る。

 何故か無念そうな表情であった。


「魔法で応戦でもしたか」


 ヤエナミの戦闘力からすると応戦すれば、呆気なく散るのがオチなんだが。


『それとも逃げる際に深手を負ったのが悔しいとか?』


 その辺りの事情がよく分からない。


「いいえ」


 頭を振るヤエナミ。


「私の使命は奴らを少しでも多く引き付けることでしたから」


「要するに仲間を逃がすために囮になったと」


「はい」


「それで、思ったより引き付けることができなかったんだな」


「はい」


 悔しそうに表情を歪ませるヤエナミ。


『この調子だと、追っ手はヤエナミの仲間の方へ向かったな』


 何に執着しているのかは分からんが狙うべきものがあるのだろう。

 でなきゃヤエナミに致命傷を負わせたらトドメくらいは刺すはずだ。


『恐らくは致命傷を負わせたからUターンしたってところだな』


 思わず笑ってしまいそうになるほど詰めが甘い。

 だからこそヤエナミは助かったのだとは思うけどね。


「連中の狙いは仲間の方か」


 ヤエナミがグッと歯噛みする。


「何か宝のようなものを奪うのが目的じゃないのか」


 返事がない。

 まあ、一瞬とは言え目を見開いたところを見れば答えたも同然である。

 当たらずとも遠からずなんだろう。


『斥候型自動人形の捜索範囲を拡大するか』


 現状はリゾート施設近辺の哨戒用にいくつか上空を飛んでいるだけだ。

 まずはこの数を増やして広範囲で異変がないか確認する。

 同時に水中用も投入して連携させるつもりだ。

 こいつらは皆が漁で魚群を探すときなどに使っているやつだから探知能力が高い。


「答えたくないなら、それでいい。

 俺が知りたいのは敵の情報だからな」


「あっ、いえ、その、御迷惑をおかけする訳には……」


「そんな遠慮は無用よ」


 それまで口を挟まなかったマイカが会話に割り込んできた。

 不敵な笑みを浮かべているところを見ると、やる気は充分なようだ。


「そうよ!

 女の子を苛めるような輩は許さないんだからっ」


 いつもはマイカのストッパー役であるミズキまでもがやる気満々である。


『あー、スイッチ入っちまった』


 マイカだけならともかく、ミズキもとなると止めようがない。

 いや、この2人だけではない。

 妖精組が本気モードに入っている。


 ツバキとカーラは憤りを感じつつも己を抑えている様子だが。

 妖精組の他の面子は殺気立ってさえいた。

 同じ妖精として黙っていられないのだろう。


 幸いにしてローズは落ち着いている。

 戦闘狂なローズさんが興奮していたら皆で飛び出していた恐れがあった。


『敵が何処にいるかも確認せずに飛んで行かれてもな』


 ローズもそのあたりを考えて自分を抑えていると思われる。


『その分、戦闘になったら大暴れしそうだけど』


 敵が無残な姿をさらすのは確定したも同然であった。


「慌てるな、皆の衆」


 ツバキが妖精組を宥めにかかる。


「敵戦力の確認が終わっていないのだぞ」


「ん、彼を知り己を知れば百戦あやうからず」


 ノエルも説得に加わっている。

 このまま妖精組の興奮状態が続けば良くないと判断したようだ。

 月影のメンバーも宥めに回っている。


『レイナなんて血気盛んになる側だと思ったんだが』


 グルリとレイナが振り返った。

 ジーッと俺の方を見てくる。

 目をそらさずに見返すと、すぐにそっぽを向いたけれども。


『ありゃあ見抜かれてるな。

 いい勘してるよ、まったく』


 なんにせよ宥める側なら言うことは何もない。


『後で文句を言ってくるかもしれんが』


 その時は素直に謝っておこう。

 変に怒らせてヘソを曲げられるよりはいいはずだ。


『それにしても妖精組は興奮しすぎだな』


 口々にシャークマンやジャイアントシャークを血祭りに上げよと憤慨している。

 なかなかに物騒だ。

 出会った頃とは大違いである。


 ドワーフ組や他の皆も抑えるべく動いているが効果は薄い。

 さすがに火に油ではないが、消火できそうな雰囲気はなかった。


『この調子じゃ勝手に出撃しかねないな、これ』


 どうやら俺からも釘を刺しておく必要があるようだ。

 俺はおもむろに立ち上がり、妖精組の方を見た。


「皆、シャークマンをぶっ飛ばしたいか」


「「「「「おお────────っ!!」」」」」


 妖精組の大半が拳を突き上げて応じた。


「ちょっ!? なに言ってんのよ!」


 レイナがキレ気味に文句を言ってきたがスルーだ。


『妖精組を煽って注目を集めるのは計算のうちなのさ』


「だったら今は座って話を聞け。

 俺が出撃命令を出すまでは待機だ。

 それができないようなら留守番してもらうからな」


 それまでざわめいていた食堂が一気に静まりかえる。

 留守番という単語はこれ以上ないくらいに効果があったようだ。


読んでくれてありがとう。

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