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525 改良してみた『幻影発生器』

「さて、それじゃあ設置するか」


 屋上にて絶景を堪能するだけで終わる訳にはいかない。


『眺めて楽しむのが本来の目的ではないからな』


 俺は倉庫からパラボラアンテナの形をした魔道具を引っ張り出した。


「光学迷彩の結界魔道具~?」


 首を傾げながらマリカが聞いてくる。


「そうだよ」


「おー、あのおねいさんが追われてる~かも?」


 マリカがポンと手を打った。


『普通に考えれば、そういう結論に達するよな』


「そうでないと願いたいところだがな」


『たぶん無理だけど』


 こういうときは自分のトラブル誘因体質が恨めしくなる。

 どんなに否定しても、ほぼ間違いなく何かしらのトラブルに巻き込まれるはず。


『これはもう生まれついてのものなんだろうなぁ』


 幼い頃から変な呪いにかかっていたし。

 魂喰いに食われるし。

 生まれ変わってからも、あれやこれやとトラブル三昧。


 普通は女神の息子として生まれ変わったら、そういう部分も改善されると思うのだが。

 リセットされないものらしい。

 あるいは生まれ変わったことで新たに同じような体質になったとか……


『考えたくないね。

 なんか変な称号が増えてないだろうな』


 嫌な予感がして久々に称号を確認したら増えていましたよ。

 前に見たときから4個の追加。

 それなりに間隔が空いたから数に関しては妥当な線だと思いたい。

 内容に納得がいくかは別にして。


『[食の伝道師]ってなんだよ。

 すでに[食の鉄人]があるだろう』


 どうやら単に拘るだけか広めようとするかで違いがあるようだ。


『嫌ではないんだがなぁ』


 せめて統合しておいてくれればとは思った。

 世の中、そんなに都合良くできてはいないけどな。


 残りの3個のうち2個は予想通りのものだった。

 俺は勝手に友シリーズと呼んでいる。

 追加されたのは[海エルフの友]と[フェアリーの友]。


『まあ、無いはずが無いよな』


 どちらも増えないはずがないのだ。

 事情が異なるとは言え大雑把に言えば状況は似ているからな。


『どうして、うちの国民が増えるときはトラブルがらみなんだろう』


 食堂3姉妹のときもそうだったし。


『なんか今回もそんな気がするんだけど』


 とりあえず声に出して言うのだけはやめておく。


『言ったが最後、フラグがズガーンと立ちそうだもんな』


 え? 既に立ってるから無意味だって?

 ……そういうことは言わないでくれ。

 少しくらい現実逃避させてくれたよ。

 そういや称号がまだ残っていたな。


『最後のは統合というかパワーアップ版だな』


 [真の断罪者]が[真の断罪王]へと進化しちゃいました。

 犯罪者をこれでもかと締め上げたしな。


『バーグラーみたいに国ごとやっちゃったらねぇ』


 後は国家乗っ取りを企む将軍もやっつけたし。


『アレがダメ押しになった気がする』


 ログを細かく確認すれば分かるんだろうけど。


『見たくないなぁ』


 いつものように面倒くさいとかじゃなくて見たらショックを受けそうで。


『[真の断罪王]で終わらない気がするんだよな』


 その片鱗をログの中から発見したりしたらと思うとね。

 考えるだけで不貞寝したくなってくる。


『この称号も現実逃避したくなるネタをはらんでいたとは』


 本当に勘弁してほしい。


『そろそろ現実に戻ろうか』


 いつまでも逃げ続けることなどできない。

 やることもある。

 だから屋上に来たのだ。

 マリカが言ったようにあの少女は追われていると思った方がいいだろう。


『見つからないに越したことはないだろう』


 派手に斬られた痕もあった。

 よくぞ生き延びられたものだと思う。

 相手方にもトラブルがあってトドメを刺すには至らなかったと見るべきだ。


『運がいいのか悪いのか』


 助かっているのだから悪いとは言い切れないのだろうが。


『今後の結果次第だな』


 追っ手が差し向けられるなら、ここを発見されると面倒なことになる。

 少なくともそういうのは海水浴イベントが終わってからにしてほしい。


『ベリルママが楽しみにしているんだぞ』


 それを中断するようなことになったら俺はその馬鹿どもを絶対に許さない。

 そう、絶対にだ。


 そんなことを言ってるとフラグが立つんだって?

 上等だぜ。

 ベリルママが楽しみにしているイベントを台無しにする輩はフラグごと叩き折ってやる。


『まあ、そうは言っても自分から先に喧嘩を吹っ掛けたりはしないがな』


 少女から事情を聞いてさえいないし。

 動くにしても話を聞いてからになるだろう。


 そういう訳で彼女を発見した時に光学迷彩の魔法は使ってある。

 俺が引っ張り出した魔道具は常設用だ。

 そのまま設置しようかと思ったが改良しておくことにした。


 少女の生命維持の魔法を参考にする。

 少ない魔力で安定して魔法を維持させるというコンセプトは有用性が高い。

 応用も利くだろう。


『地脈から魔力を引っ張らずに維持できるなら、その方がいい』


 周辺の環境魔力を利用するというのは術式的に難しいものがある。

 魔力をガンガン吸い上げる訳にはいかないからだ。

 そんなことをすれば一気に周辺の魔力が枯渇してしまう。

 環境へ悪影響を及ぼすことになるだろう。


『大事なのはバランスだ』


 少しずつ魔力を分けてもらう感じ。

 何処かで聞いたような話だが気にしてはいけない。

 この魔力はあくまで幻影魔法を維持するために使うだけだ。


『んー、厳しいものがあるな』


 脳内でシミュレートしてみた。

 条件を極限まで緩くしても連続稼働は無理がある。

 魔法を維持する範囲が広いせいだ。

 色々と術式をいじって魔力消費効率は良くしたつもりなんだが。

 解決策はないかと、しばし考えてみた。


「………………………………………」


 が、環境魔力だけでは維持しきれない。


『しょうがない。

 足りない分は地脈から吸い上げるか』


 一瞬、そう考えてしまった。

 しかしながら何か違う気がする。

 せっかく改良するのだ。

 環境魔力だけで何とかすべきだろう。


『足りない、補充できない、足りない、補充できない──』


 内心でどれ程その言葉を繰り返しただろうか。

 ふと、思いついた。

 発電すればいいじゃないか、と。

 厳密に言えば発生させるのは電気じゃなくて魔力だ。


『だったら発魔と言うべきか』


 まあ、どうでもいいことだとは思ったのだが気になったので検索してみた。

 もちろん【諸法の理】でだ。


『あったよ……』


 過去にはそういう魔道具もあったようだ。

 俺でも思いつくんだから誰かが先に考えていたとしても不思議ではない。

 参考にさせてもらおうと思ってザッと目を通す。


『そんなに効率の良いものでもないな』


 色々と問題のある個所がある。

 それでも今の西方における魔道具の技術より確かなものだ。

 少なくとも意味不明の術式は存在しない。


『無駄がないわけじゃないがな』


 そういった部分をこそぎ落として改良版の発魔術式を完成させた。


『エラーなし。

 意図せぬ動作なし。

 発魔効率のロスなし。

 ……こんなものか』


 脳内シミュレートでの確認が終われば実装である。

 パラボラアンテナ型の魔道具の術式の一部を書き換えていく。


『念のために地脈からも魔力補充できるようにしておいて、と』


 ん? 地脈から補充するのは矛盾してるって?

 そっちは安全装置だな。

 基本は少しの環境魔力を利用して発魔する方式だ。


 だが、万が一ということがある。

 環境魔力をまったく補充できなくなったときのサブシステムは必要だろう。

 故に地脈を利用する部分も必要になるのだ。


「よし、できた」


 術式の記述と同時に設置を終わらせた。


「これで俺たちが帰った後も発見されにくくなる」


「えー、されにくいだけ?」


「結界があるからな。

 近寄って弾かれたら何かあるって思うだろ」


「あ、そっかー」


『とはいえ大抵は弾かれる前に意識が逸らされるから近寄ることもないけどな』


 少女を追ってくる者がいるなら、それでどの程度の実力を持つか見極められる。

 結界を突破しようと攻撃を仕掛けてくるならスマホで連絡が入るようになっているし。


『さて、どうなるやら』


 相手に発見されるかどうかは俺にも分からない。

 今はそんなことを気にするよりイベントの準備の方が大事だ。


「それじゃあ中を見て回ってから皆の所に戻ろうか」


「はーい」



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



「服の方はどうなった?」


 見回りを終えて戻ってきた。

 こんなことを聞くのは連絡を入れていなかったからだ。

 いくら何でも裸のままではないだろうと考えた結果である。

 些かデリカシーがなかっただろうか。

 今更である。


「待ちくたびれたぞ、主よ」


「まったくだ」


 シヅカとツバキが苦情を言ってくる。

 カーラは苦笑するばかりだ。


「そっか、すまんかった。

 途中で連絡を入れれば良かったな」


 どうやら魔道具の改良に時間をかけすぎたようだ。


『マリカは文句を言わなかったが辛抱強かっただけか』


 とりあえず撫でておく。

 目を閉じて気持ち良さげにモフりを受け入れているな。

 尻尾がパタパタと揺れているので継続してストレスが残らないようにしておいた。


「それで旦那よ、この後はどうするのだ?」


「今日の所は帰るぞ」


「えっ、そうなんですか?」


 カーラが意外だと言わんばかりに聞いてきた。


「あんまり詳しく見て回ると当日の楽しみが減るだろ」


 俺がそう返事をすると納得してくれた。

 後のことは見回り中に配備してきた自動人形に任せるのみだ。


読んでくれてありがとう。

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