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499 任された方のハルト頭を抱えたくなる

遅くなりました。

すみません。


明日の更新は499話時点での人物紹介を行う予定です。

 という訳であっちの俺がジジイたちと話している間に何とかしよう。


『生産供給元が俺だけってのを何とかしないとな』


 そこに問題の全てが詰まっている。

 技術的というか能力的な問題で俺しか作れない。

 俺しか作れないからトラブルがあると供給が止まる。

 供給が止まれば冒険者たちが困る。

 俺しか作れないから生産数に限度がある。

 これだけに専念する訳にはいかないからな。

 材料に関しては心配していない。


『魔石の材料たる魔物のコアなんて山ほどあるからな』


 比喩ではなくマジで。

 大陸東方でフィールドダンジョンが暴走したときに狩りまくったからな。

 8桁級の数の魔物のコアだぜ。

 雑魚ばっかじゃなく大物もウジャウジャいたし。


 これらの品質を平均化して簡易転送用の魔石にすると増えるから、あら不思議。

 言うまでもなく【諸法の理】でゲットした裏技を使ってます。

 コアをいったん液化させたりなんて普通はできませんよ?


『まあ、液化するから平均化もできるんだけど』


 ビックリ情報だけど普通の職人には不可能だ。

 内包型の魔法の基本を抑えていないといけないからだ。

 でもって、この状態から魔力を注ぎ込めば増殖させることができる。

 傍目にはマジックショーのような不思議現象だろう。


 ちなみに魔石を高品質品にしたければ、この時点で魔力を圧縮する必要がある。

 簡易転送用の魔石にするなら不要だ。

 最高級の魔石が必要になったとしても神級スキル【魔導の神髄】があるから大丈夫だ。

 まあ、試しに作ってはみた。


『あれなら頑張ればツバキにも作れるだろ』


 しかしながら、要求されているのはそれではない。

 必要なのは魔石に術式を刻み込む技術である。

 これを皆に仕込むとなるとレベル150以上は必要になる。


『いちばん器用な弟子1号のツバキで162だからなぁ』


 弟子2号のカーラでレベル157。

 弟子ではないが条件を満たしているのはレベル188のノエル。

 レベル350のマイカやミズキは魔道具作成の経験がない。


『まあ、プラモとか結構器用に作っていたしな。

 教えればすぐ作れるようになるんだろうけどさ』


 あんまり単純作業が続くとミズキが逃げ出す恐れがある。

 それでも当面の戦力としては考えてもいいと思う。


『問題は守護者組だよなぁ』


 ローズはいつの間にか少しレベルアップしてて318になっていた。

 だけど、物作りに興味がない。

 シヅカもレベル318なんだが、やはり物作りに対する興味が薄い。

 それはマリカもだな。

 レベル245の幼女は遊ぶのは好きなんだけどね。


『シヅカは頼めばやってくれそうだけど』


 ローズは絶対にやらないだろうし。

 マリカは教えても途中で遊び出すと思う。

 俺の守護がメインの仕事だから無理強いするつもりはない。

 他に条件を満たしているとなると……


『キースがレベル154だったっけ』


 その次に来るのはレベル145のハリーだ。

 他の妖精組は、それより下である。


『俺を含めて7人か』


 試験運用期間なら片手間でなんとかなりそうだ。

 うちのダンジョンで使う分だけを賄えればいい訳だし。

 今は試作段階だから数は少なくても構わない。

 あんまり作りすぎても正式版を普及させるときにベータ版が在庫過多になるからな。

 試作からブラッシュアップさせるまでの間はそれでいいだろう。


 問題はそこから先の話だ。

 世間に広めるには大量生産が必須となる。

 魔力にものを言わせて作るにしても時間は相応にロスするだろう。

 それなら事業化して皆に作ってもらった方がいい。

 数は力である。

 だが、レベルの条件を満たすのは容易ではない。


『はあー、失敗したなぁ』


 セキュリティ対策に力を入れすぎた。

 条件のひとつを満たした面子が少ないというのも頭の痛いところだが。

 もうひとつ頭痛の種がある。

 条件を満たした6人もそのままでは今回のレベルの微細加工はできない。

 特級スキルの【顕微】がないからだ。

 俺はその上位スキル【天眼】があるから大丈夫なんだけど。


『痛すぎだろ』


 特級スキルなんて、そうそう身につくもんじゃない。

 スキルをゲットしても熟練度が低いと厳しいものがある訳で。

 失敗作の山を築くのは目に見えている。


『どうしたものか』


 正式版の加工精度を落とすか。

 あまり意味がない。

 条件のレベルが20下がる程度までなら落とせる。

 それでも【顕微】が必要なことに変わりはないのだ。

 レベルだけなら面子は多少は増えるだろう。

 先程はあぶれたハリーが入ってくるだけじゃない。

 妖精組は子供組も含めて該当することになるからな。

 それと月影の面々もだ。

 レオーネがレベル128で微妙なライン。

 他はエリスたちやガンフォールたちでレベル118。

 この辺りになると要修行だろう。


『これだけの面子に【顕微】を取得させるのか……』


 ひたすら細かい作業をさせても難しいだろうし。


『だったら、こんなのはどうよ』


 煮詰まりかけていた俺に念話で声を掛けてきたのは別の俺だった。

 俺と同じように【多重思考】で増員された他の開発作業担当だ。

 この別開発の俺は増える魔石の元も研究開発していたので俺とも連係していた。


『おお、俺か』


 他の開発作業をしていた俺が動画情報を寄越してくれた。

 どうやら俺のことを気にかけてくれていたらしい。

 やはり持つべきものは俺、だな。

 そこは友達とか仲間だろうというツッコミはなしだ。

 俺にとってもうひとりの俺とは友達であり仲間なのだから。


 こういう考え方は選択ぼっちだった頃の影響だろうか。

 今にして思うと、かなり寂しい話だよな。

 当時の俺は【多重思考】なんてなかったけどさ。

 それでも妄想している間は1人何役もこなしてた。

 そう思うと【多重思考】の素養はあったのかもしれない。


 ただ、妄想中の俺の実態を知られていたら危ない奴のレッテルを貼られていただろう。

 少なくとも変人だと思われたはず。

 あ、それは思われていたか。

 ……あまり深く考えるのはよそう。

 ダメージがデカくなりそうだ。

 過去の俺には戻りたくないものである。


 それより動画情報だ。

 誰かに見せる訳ではないので瞬時に読み取る。


『これは……

 そうか、この方法があったか』


 動画は手術支援ロボットでトレーニングのため小さな折り鶴を折るというものだった。

 紙片とロボットアームが拡大表示されていた。

 これは使える。

 何もスキルに頼らなくていいんだよ。

 魔法で拡大表示させれば良いのだ。

 10倍ぐらいに拡大できれば超微細な術式の記述部分も微細レベルにできるはず。


 そこまで大きくできればツバキたちも目視で作業可能になるだろう。

 今のままだと勘で記述するしかないからな。

 その場合は失敗の山を築き上げるのは目に見えている。

 これを未然に防げるのは大きい。

 ノーミスという訳にはいかないだろうがな。


『すまん、助かった。

 これで何とかできそうだ』


『いいってことよ、同じ俺じゃないか』


 向こうの俺はそう言うとすぐに自分の作業に戻っていった。

 さて、それじゃあ拡大表示用の魔道具を作ってみようかね。

 動画で確認したロボットのような大がかりなシステムは必要ない。

 術式の記述なんて魔法を使えばすむ話だからな。


 もうひとりの俺が、あの動画を見せたのはイメージしやすいからだろう。

 現に俺は即座に動画と簡易転送魔道具の作業を結びつけて考えることができた。

 俺だけかもしれんが……


 ともかく八方ふさがりな状態からは抜け出せたのだ。

 ここから先は俺の発想しだいである。

 大きくなくて良いのであれば正面だけ拡大させる画面があればいいか。


『トレース台のような感じになるか』


 ただし、台の上は半透明ではなく画面になるが。


『……………』


 作業工程をシミュレートしてみるが、どうもよろしくない。

 最初は何とかなるが、長時間になると疲労度が著しくなる。

 同じ姿勢で俯くのが良くないようだ。

 それなら拡大画面をアームで動かすのはどうだろうか。

 照明スタンド風にする訳だが……


『邪魔だな』


 動かすことはできるものの、いちいち手か理力魔法で動かさなければならない。

 画面側で使用者の視線をトレースして動くようにするか?


『やっぱり邪魔だな』


 それどころか鬱陶しい。

 作業中にイライラしたんじゃ効率が落ちる。


『………………………………………』


 画面にこだわるからダメなのか。

 もっとサイズを小さくして虫眼鏡くらいにするとか。


『いっそのこと虫眼鏡の形にするのもアリかもな』


 10倍以上の拡大率となるとレンズ1枚では難しい。

 魔道具にしないのであればだが。

 どのみち持ち手で片手が塞がるのが良くない。

 それなら眼鏡かゴーグルのように装着させるタイプにしてみるか。


『拡大率をスマホで変更できるようにすれば……』


 手を使わなくて済む。

 視界確保のために跳ね上げることができるようにしよう。

 これもスマホで操作できるようにすれば完全に手がフリーになる。


『重量軽減の術式を組み込んで……』


 後はうちの国民にしか使えないようにしておく。


『……………』


 シミュレーション上では何の問題もないな。

 後は試作してみて実際に使いながら手直ししていくだけでいいだろう。

 これで超微細な記述の問題は目処が立った。

 あとは正式版の生産量の問題だ。

 需要がどれだけあるかが読めない。

 そういう意味でもブリーズでの試験運用は重要だ。

 価格で調整するにも限度がある。


『一部の国民だけ負担が増えるのはいただけないしなぁ』


 デスマーチなど論外である。

 とするなら条件を満たす面子を増やすしかないだろう。

 レベルアップを推奨する訳だ。


『最低ラインがレベル130か……』


 時間はかかるが、今の段階ならまだ猶予がある。

 何とかなりそうだ。


読んでくれてありがとう。

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