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465 一仕事して証拠をゲットしに来ました

 ただいまブレット王国に潜入中。

 久々にシノビマスターの格好である。

 そしてゾロゾロと俺に続くシノビマスターに準ずる忍び装束に身を包んだ一同。


「くーくっくっく」


 大きく肩を揺らしてわざとらしい笑い方をしているローズさん。

 忍び装束の時はドルフィンの着ぐるみを脱ぐらしい。

 聞くと、忍び装束はピンクが好きだからということだった。

 訳わからん。


『忍びなのに忍んでねえよ』


 ショッキングピンクでないだけマシだと思うしかないか。

 どのみち魔法で光学迷彩してるから誰にも見られないんだし。

 あと声や音も伝わらないように個人ごとに結界を張ってある。

 仲間内で見えない聞こえないと困るので、そういう調整はしたけど。

 些か制御が面倒だったけどな。


『やはり1人で来たかった』


 気軽にサクッと片付けてスルッと帰りたかったんだが。

 現在地は王都ラの中心にある王城の敷地内だ。

 言うまでもなく転送魔法で入ってきましたよ。

 今回は大勢できているので門から入るとかせずに庭に出た。


 敷地内には建物が2つ。

 片方は歴史を感じさせる西洋風の城。

 もう一方は建てて数十年がいいところの無骨な感じがする館風の建物である。

 館の方は警備が物々しい。

 各所の見張りに加えて見回りまで頻繁に館の周囲を回っている。


『城の方の警備はいいのかよ』


 思わすツッコミ入れたくなるくらいだ。

 館の方は絶対に誰も入れないという強固な意志を感じるのに城の方はザル警備である。


『とりあえず、城の方から先に探索するか』


 誰かがヘマをしてもフォローが楽そうだから。

 代わりに館の方へは斥候型自動人形を何体か放っておく。

 此奴らには証拠品の探索をさせる。

 たぶん、こっちが本命だから。

 後は館の構造を調査させる目的もある。

 後で乗り込むことになるだろうし。


 下準備は大事だ。

 少なくとも俺たちの正体を知られる訳にはいかない。

 あと、バーグラーの時のように全員にさようならをする訳でもない。

 見られたから「消えてもらおう」なんてことはできないのだ。


『肝に銘じておかねば』


 俺1人じゃないからな。

 ちなみに下準備と言えば、ここへ来る前に一仕事してきた。

 仕事と言っても子供の使いレベルだけどな。

 この国の軍隊が集結している場所の確認と簡単なすり替え工作だから。


 おまけで広域結界を仕込んできたけど。

 これも簡単なものだ。

 鉄壁の防御とかにはほど遠い。

 結界のラインを超えようとしたら俺に知らせが入る程度の代物だ。

 本当にオマケである。


 連中が国境線地帯のギリギリの所で潜んでいたからね。

 予想より早く動き出した時のための保険である。


『それにしてもコイツら無駄な訓練してるよな』


 明らかに夜間に少ない明かりで進軍することに慣れているのだ。

 なのに夜襲をかける気配がない。

 これは後方にいた司令官と側近の会話で判明したので間違いないだろう。


 一体、何がしたいんだか。

 布陣している地点から進軍すれば、事前に発見されない限り奇襲になるんだぜ。

 時間がたてば発見されるリスクがあるってのにな。


 まあ、現場の司令官も将軍から命令されているだけのようだし。

 副官との会話で訝しがっていたくらいだ。

 理由は彼等も聞かされていないらしく疑問は解決しなかったが。


 なんにせよ中途半端としか言い様がない。

 大方、卑怯な手を使ったと周辺国に言わせたくないがためなんだろうが。

 日付を指定した書簡を出しているくらいだし。

 訳の分からない理由で戦争を吹っ掛けておいて日付にこだわる神経が理解できない。


[驕り高ぶる大国に高潔なる我らが怒りの鉄槌を下さん]


 ガンフォールに聞いた訳の分からない理由の該当個所である。

 いつゲールウエザー王国が驕り高ぶったのだろうか。

 そんな評判は聞いたことがない。

 主に国内の人間の意見だからかもしれないがね。


 だけどガンフォールやハマーの評価だって高い。

 減点要素があるにしても周辺国よりマシなものばかりだ。

 驕れる者がそんな評価を受けたりはしない。


 そもそも己のことを[高潔なる]とか書いている時点で向こうに対する評価はお察しだ。

 誰だって「驕っているのはそっちだろ」と思うんじゃないかな。

 そんな奴が約束を守るとか言ってきても信じてはもらえないだろうに。

 少なくとも俺は信じないよ。


 いずれにしても、とにかく滑稽さが際立っている。

 きっと本人は大真面目なんだろうけど。

 百歩譲って滑稽さには目を瞑るとしても基本的な考え方がセコい。

 宣戦布告したから卑怯者じゃないよね、とか。

 日時は指定したから奇襲じゃないんだよ、とか。

 そういう思考が透けて見えるのだ。


『これを考えた奴の小物っぷりがありありと分かるぜ』


 図体がデカい割に強くもなく、かといって頭が良いかというとそうでもない。

 ただただ強欲なだけ。

 そんな感じの男を想像してしまった。


 まあ、おおよその姿は書簡の文面から推測するまでもなく見当がついているんだけどね。

 ガンフォールからもたらされた情報によって。


『書簡の署名はブレット王国大将軍タフ・エコップとなっておった』


「「「「「なにぃ─────っ!?」」」」」


 エコップって白豚の苗字じゃねえか。

 皆ビックリしてるよ。

 もちろん俺もな。


『な、なんじゃ、どうした!?

 そんなに大将軍がおかしいか』


 事情を知らないガンフォールは見当違いのことを言ってきてたけどね。

 まあ、大将軍なんて肩書きはないのに名乗るバカがいるというのは確かにおかしいけど。

 そのうち肩書きの前に[偉大なる]とかつけそうだ。

 やればやるほど滑稽さに拍車がかかるんだが、コイツは気付かないだろうなぁ。

 誰も指摘しないだろうし。


 俺の背後で「大将軍って言うなら変身してみやがれ」とか言ってる人はいるが。

 それを指摘しても相手は意味が分からないと思うよ、トモさん。


「それもおかしいと言えばおかしいが、俺らが驚いたのは大将軍じゃない」


『では、なんじゃ?』


「俺らが捕まえた悪徳商人の名前がムハ・エコップなんだよ」


 数秒ほどの沈黙があっただろうか。

 俺はその間にスマホのボリュームを下げる。

 その直後のことであった。


『なんじゃとぉ─────っ!?』


 ボリュームを半減させてなお煩いと感じる絶叫が届いた。

 向こうは大丈夫なんかなと心配になったくらいである。

 ハマーやボルトが慌てふためいている姿が見えそうだったさ。


 俺にはどうしようもないので心の中で両手を合わせておいた。

 別に誰かが死んだ訳ではないがな。

 あと俺にできることは会話を続けるためにボリュームを元に戻す操作だけだ。


「まあ、赤の他人という可能性も決してゼロではないよな」


 それはないと内心で否定しながらの発言であった。


『恐らくそれはあるまいて』


 ガンフォールも否定してくる。


「やっぱ、そうかー」


『エコップなど珍しい名じゃ。

 今回の一件に関係があるかは分からぬが身内であるのは間違いなかろう』


 ──というような会話が電話中にあったのだ。

 故に将軍の見た目は白豚に近いものと思われる。


 できれば会いたくないんだが、将軍が悪事を働いている証拠を掴まないことにはね。

 そんな訳で城内にある将軍の執務室とか探ってますよ。

 俺じゃなくてカラフルな忍び装束に身を包んだ子供組が。

 ローズに影響されたのは言うまでもない。

 本人たちは真剣な様子だから水を差す訳にも行かないような状態だ。

 忍び装束については諦めた。

 元はといえば、ちゃんとした説明をしなかったラソル様のせいだからな。


『いつか絶対泣かす』


 決意を新たにしたところで証拠品の探索についてだ。

 結果はすでに分かっている。

 ここは他の大臣たちが執務をする部屋が集まっている区画だからな。

 こんな場所に証拠を残すようなバカだったら、とっくに暗殺されているだろう。

 調べるまでもないということだ。


『まあ、実力を伸ばすための訓練だと思えば無駄ではないさ』


 そんな訳で俺は子供組の行動を見守っている。


「それにしても悪趣味な部屋だね」


 覆面をずらしたトモさんが話し掛けてきた。


「悪役のお約束じゃないかな」


 俺も覆面をずらして応じる。

 こうしないとボイスチェンジャーで声が変わるのだ。

 ずらし忘れると──


「金ぴかデ目ガちかちかシソウデス」


 フェルトのように声が変わってしまう。

 自分の声に驚いてワタワタと手を動かしてから覆面をずらすフェルト。


「はー、ビックリしました。

 自分の声がこんな風に変わるなんて」


「ウヒヒヒヒ、オイラハ、ボイスチェンジャーナシデモ、コエガカエラレルゼ」


 プロだからね。

 フェルトはそれを見て「ひゃー」とか言って目を丸くしてたけど。


「旦那よ、遊んでいる場合ではなかろう」


 たまりかねてツバキからツッコミが入る。


「あー、すまんすまん。

 子供組が終わるのを待ってるんだよね」


「……ここには何もないということか」


 俺の言葉に少し考え込んでいたツバキ。

 すぐに証拠が得られないことに思い至ったようだ。


「そゆこと」


 俺がそう言うと、ショボーンとした様子で子供組が集合してきた。


「陛下の邪魔をしたのかニャ」


 ミーニャがそう言うと5人そろって瞳を潤ませてくる。

 全員で「泣いちゃうかも」攻撃は勘弁してほしい。

 破壊力がありすぎるからな。


「邪魔だったら途中で止めさせてるよ」


「「本当?」」


 不安げに小首を傾げて聞いてくるハッピーとチー。


「もちろん、本当だ」


「でもぉ……」


 ルーシーが上目遣い攻撃をしてきた。

 俺は精神に○のダメージ。

 そう言いたくなるくらいグサグサくる。

 幼女は攻撃力が高い。

 たぶんベリルママの次くらい。


「これも訓練の一環だと思ったから何も言わなかったのさ。

 こういう捜索も経験を積まないと身につかないからね」


「………」


 更にシェリーが無言の追撃。

 俺は精神に……

 それはもういいや。


「本当だよ。

 帰ったら反省会しような」


「「「「「はいっ」」」」」


 泣きそうだったのが信じられないくらいの笑顔に変わっていく。

 やれやれだ。


読んでくれてありがとう。

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