460 レプリカ店舗の売却先は
修正しました。
「嘘じゃないなぞ。 → 「嘘じゃないぞ。
28話を改訂版に差し替えました。
「あのぅ」
スーが声を掛けてきた。
「おっ、少しは落ち着いたか?」
「はい……」
3姉妹にはジェダイトシティの説明はしておいた。
しばらくは混乱することになったけどな。
言葉の意味は理解できても、それを実感して受け入れるのは別問題。
故に説明してから落ち着くまでガブローのお小言を聞かされる羽目になったという訳だ。
ちなみに説明はガブローが行った。
だって俺が話そうとすると条件反射で土下座しそうになるんだぜ。
何の罰ゲームかと思ったさ。
その状態もようやく抜け出せたと思われる現状に内心でホッとしていた。
「聞いてもよろしいでしょうか」
「俺に?」
コクコクと頷かれる。
ガブローにではないらしい。
「陛下というのは……」
「あ、言ってなかったっけ」
「陛下……」
ガブローがこめかみを押さえている。
「俺がこの国の王だ。
で、このガブローがジェダイトシティの領主なんだけど」
3姉妹が直立不動になった。
驚愕を顔面に貼り付けたままで。
よく見ると引き付けを起こしたようにプルプルと小刻みに震えている。
恐怖の感情は見受けられないけど。
『そんなにショックか?』
なんて暖気に考えていたら──
「なんでさっ!?」
再び3姉妹の土下座である。
「神様じゃないんだよ」
そこはガブローが説明して納得したじゃんか。
「俺、人間なんだから」
エルダーヒューマンだけど人間には違いない。
「いえ、陛下」
ガブローが落ち着き払った声で割り込みをかけてきた。
「なんだよ?」
「普通のヒューマンであればこうなっても不思議ではありません。
ドワーフであれば、ここまでのことにはならないと思いますが」
「どゆこと?」
「彼女らが一般人であるということをお忘れなく。
一国の王を目の前にして平然としていられるとお思いですか?」
「……………」
指摘されて気が付くとか間抜けにも程がある。
言い訳が許されるなら、うちの国民は皆フレンドリーだからなぁ。
慣れて感覚が麻痺している部分はあったかもしれない。
土下座されることも度々あったのを失念するのはどうかと思うけど。
神様呼ばわりされた上に連続で土下座されたことで気が動転していたようだ。
修行が足りん。
「とりあえず俺がここに残ったままだと埒が明かない感じ?」
「でしょうね」
渋々という感じの返事だ。
深く溜め息までついている。
「じゃあブリーズの街で後処理してくるわ」
レプリカ店舗もダミーではなく実際に使うつもりだし。
最初は拠点にしようかと思った。
1階をセレクトショップみたいな店舗にすることを考えたんだけど。
それをすると割を食う人間が出てくるんだよな。
身内じゃないけど親しい相手だ。
御無沙汰してますのボーン兄弟である。
まあ、忘れていたつもりはない。
商品を卸したりしているからな。
持って行くのは俺じゃなくてドワーフたちだけど。
ガンフォールたちを国民にする前から業務委託してたことなので……
『マジで御無沙汰だな』
上がってくる報告によると繁盛と言うには及ばずながら赤字にはなっていないようだ。
ネックはそこそこ高額な家賃らしい。
そのせいで貯金が増えないから未だに貸店舗での営業である。
そんな話を聞くと、ぼられているのかと疑うところだが、それはない。
ボーン兄弟が強気に出て店舗を借り換えたのを知っているからな。
一等地で住居兼用店舗を借りたんじゃ高くついても仕方がない。
ここで俺がセレクトショップを出したら間違いなく詰む。
俺の方が品質の良い品を置くことになるだろうし。
まあ、でも現状が綱渡りなら俺の出店に関係なく詰むのは時間の問題だ。
誰かが似たような店を新規出店すれば競合して客を食い合うことになる。
余力がない状態なら客を少し削られただけでジ・エンドだ。
売り上げ予測を見誤らなきゃ、こんな選択はしなかったんだろうけど。
せめて元の貸店舗に戻れればリスタートも可能だったと思う。
生憎と別の商人が既に借りているので無理だ。
似たような貸店舗にも空きはない。
仮に空きがあったとしても、引っ越す余力がないはずだ。
その間は営業できないから売り上げがなくなるし。
あのヒョロヒョロの2人じゃ1日で終わるわけもない。
人を雇えば1日でどうにかできるだろうけど、そんな予算があるとは思えない。
たとえ俺に依頼してきても、タダにするつもりはないし。
友達価格で他所より安くはするけどさ。
何故タダじゃないのかって?
国民じゃないからだ。
あとベリルママやルディア様に依頼を受けているわけでもないし。
こんなの自己責任の範疇だろう。
とはいうものの、友人の危機を見過ごすのも冷たすぎるか。
あの2人が路頭に迷うのは忍びない。
『しゃーねえなー。
アイツらに無利子無担保で売りつけるか』
返済は今の家賃より安くすれば、どうにかなるだろう。
利子も担保も不要なら負担は少ないはず。
買い取りだから家賃と違って永久に払い続ける必要はないしな。
商品を動かす人足分の代金は負けとくか。
ドワーフたちじゃなく俺が動けば人件費も勘定しなくて済むし。
代金は3姉妹に渡せばいいだろう。
まず土地は間違いなく彼女らの所有なんだし。
建物もレプリカ店舗に置き換えたけど元の店舗を使っていることになってるからな。
分割払いは面倒くさいので俺が立て替えてまとめ払いしておこう。
『ふむ、悪くないな』
これなら後始末としても綺麗な形にまとまる気がする。
「……珍しいですね。
もっと周到にされていると思っていたのですが」
それは俺のことを買い被りすぎだ。
俺ほど行き当たりばったりな奴もいないだろうに。
あえてイメージを崩す必要性を感じないのでスルーしておくけど。
「転送魔法で連れて来るしかなかったからな」
「なるほど……
行方不明になってしまいますからね」
「あ」
行方不明と聞いて「ヤバイ!」と思った。
『ダメだー、それを忘れてた』
思わず天井を仰ぎ見てしまう。
近所の人間なら状況も知っているだけに夜逃げしたと思われても不思議ではないんだが。
3姉妹の母親に世話になったというシャーリーがいることを失念していた。
絶対に報告を求められるはずなのに、どうかしている。
「突然、どうしたんです?」
「この3人が行方不明になると煩いのが1人いるんだよ」
ガブローが「うわぁ」と顔を顰めた。
「自動人形で誤魔化そうかと思ってたんだけど顔見知りが相手だとなぁ」
幻影魔法で見た目をそっくりにしたくらいじゃ欺けないだろうし。
「やめた方がいいでしょうね」
ガブローも同意見だ。
2人で顔を見合わせる。
そのまま示し合わせたように漏れ出る溜め息。
途方に暮れるとはまさにこのこと。
3姉妹が落ち着くまで待って連れて行くしかないよな。
待ってる間に日が暮れてしまいそうだけど。
「私達が行きます」
いつの間にか面を上げていたスーが言った。
「大恩を受けた身として御迷惑をおかけするわけにはいきません」
言ってることが大袈裟だ。
「お手を煩わせてしまいますが」
「いいや、大丈夫。
俺にとっちゃ長距離転送魔法も大した負担にならんから気にしないでくれ。
それより俺の方が色々と挨拶やら売却やらで振り回すことになるからなぁ」
「売却、ですか?」
「元の場所にレプリカを設置したから、それを売る」
「レプリカって……」
「ここに転送してくる直前に錬成魔法でちょちょっとな。
作業スペースは俺にしか把握できない場所だ」
亜空間とか言っても現状では理解できないだろうしな。
現にスーは呆気にとられている。
「知り合いの商人に売るつもりだ。
安くなってしまうかもしれんが、土地の代金分は絶対に確保すると約束しよう」
「いえ、そちらは好きになさってください」
「バカ言うな。
自分たちの取り分はちゃんと取っておけ」
「でしたら、ここの土地と差し引きでお願いします」
なかなかの強情さんである。
だが、筋を通そうという意気を感じるね。
こういうの嫌いじゃないんだよな。
そんな君たちに朗報だ。
「ガブロー、ここの土地の代金だとよ」
苦笑しながら呼びかけると、ガブローも苦笑しながら応じた。
「それはヒューマンの習慣ですね。
ここでは土地に値段などつきません」
「えっ!?」
スーは呆気にとられていた。
今までの常識を否定されたんだから無理もないのかな。
「ドワーフは土地を買うものだとは考えないんだよ。
建物は個人の所有物とするが土地は誰のものでもないんだ。
ちなみにこの考え方はミズホ国全体でも同じだからな」
返事がない。
これは先が思いやられるな。
「嘘じゃないぞ。
強いて言うなら土地は国の所有になる」
所変われば品変わるって言うもんな。
「そういう訳だから受け取っておけ。
食堂の営業をするなら先立つものが必要だろ」
「ありがとうございます!」
またしても土下座。
「感謝の念があるって言うなら頭は上げてくれ。
そっちの2人もな。
早くしてくれないと俺も予定が詰まってるんだよ」
そう言うと跳ね起きる3人。
神様呼ばわりされた時ほど頑なでもないのか。
てっきり同等くらいだと思っていた。
「「「失礼しましたっ!」」」
その代わりと言っちゃなんだが、反応が過敏な気がする。
何か疲れるわ。
読んでくれてありがとう。




