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44 彼ら彼女らの事情

改訂版です。

「賢者さん、初めまして。

 私はノエル・ウィンストン。

 エルフとして生を受けた者です」


 桃髪ツインテ少女ノエルはそう言って子供らしからぬ所作でお辞儀をした。

 今までの言動からすれば驚くに値しない。


 それよりも気になることがある。


 まず、ひとつ。

 本人はハイエルフであることに気付いていないらしい。


『先祖返りか……』


 詳細を鑑定すれば、そういう記載を見ることになるだろう。

 面倒なのでそこまでするつもりはないが。


 もうひとつは同族の保護者らしき者が見当たらないこと。

 ノエルの状況から察するに、深入りしない方が良さそうだ。

 今は礼儀を弁えているできたお子さんという認識だけで十分だろう。


「先程も名乗ったがハルト・ヒガだ。

 君が見抜いた通り【鑑定】のスキルが使える」


「……魔眼ではない?」


 ノエルは呟くように疑問を口にした。

 よほど意外だったのだろう。


「ああ、魔眼じゃないな」


『どうやら【看破】スキルは【鑑定】ほど万能ではなさそうだ』


 この子の観察力と洞察力が加わることで、それに近いことをしていたのだろう。

 魔眼持ちだと誤解される訳である。


「言っておくが、君のも魔眼ではなく【看破】という特級スキルだぞ」


 ポカーンである。

 表情に乏しいこの子からすると珍しい表情ではないだろうか。

 むしろ内心では「ガーン!」な状態かもしれないが。


 それからあれこれと質問攻めにあってしまった。

 それが終われば本人はスッキリである。

 子供が悩み事を抱えずに生きていけるなら良いことだ。


 待たされる方は些かダレた雰囲気になってはいたがね。

 まあ、それでもノエルが納得したことは喜んでいた。


「私はボーン商会のマシュー・ボーンです。

 この度は誠にありがとうございました」


 気の弱そうなヒョロガリの茶髪兄ちゃんが礼を言ってきた。


「私は弟のロジャーです。

 本当に何から何までありがとうございました」


 マシューよりもやや背の低い茶髪兄ちゃんが続く。

 違いは背丈だけで見た目はそっくり。

 並んで立たなければ双子と勘違いされそうだ。


『骨兄弟だな』


 威圧感とは縁遠そうなのに誰が見ても忘れないであろう容姿をしている。

 決して病的な感じには見えないのだが。

 影が薄いよりはいいだろう。

 彼らは商人なのだし、忘れ得ぬ存在感というのは商人として武器になるはず。

 誠実に対応しようという姿勢も好印象だ。


「是非ともお礼をと言いたいのですが、このような有様でして……」


 マシューは困り顔である。


「「誠に申し訳ありません」」


「そこまで気にするほどのことでもない。

 どうしてもと言うなら、貸しってことにしておくさ」


 ここまでくると俺のことも少しは受け入れられたようだ。

 護衛組の6人も構えた感じではなくなっていた。

 フードを下ろして素顔をさらすくらいだから、それなりには信用されたと思う。


『なるほどね、フードを被る訳だ』


 全員の頭頂部に獣の耳があった。

 彼女らは一部のヒューマンの間で獣人と蔑称されるラミーナ族だ。


 ただし獣人だの四つ耳だのと言うのは差別主義者だけである。

 そういう連中はラミーナを奴隷化して狩りの獲物にする輩もいるのだとか。

 もちろん殺すためだけにそうしている訳で。

 オークの肉は食うのにラミーナはそうしないってことは人間と認めてるってことだろ。


『反吐が出る話だぜ』


 そういうのは地域性が出てくるらしく、この近辺では差別意識が根強いらしい。

 おまけに裏ですべてのラミーナに懸賞金とかかけられているようだし。


『そりゃあ警戒もするわ』


 彼等も歴とした人間だっての。

 で、俺はそういう状況で無神経な言動をしたと。

 己の軽率さが恨めしい。


『日本に連れて行ったら逆の意味で大変なことになりそうだけどな』


 俺は別にケモミミ&尻尾の愛好家という訳ではない。

 が、どういう反応があるかは想像がつく。

 そういうのが大好きな奴には心当たりが有り過ぎるほどにあるからね。


『アイツがここにいたら地雷を踏み抜いていたな』


 俺が1人でルベルスの世界に来たのは正解だった。

 まあ、俺も踏み抜きかけたから偉そうなことは言えんのだが。

 ノエルがいなければどうなっていたことやら。

 彼女は桃髪天使ですよ、マジで。

 ……俺に幼女趣味はないからな。


 さて、護衛のメンバーである。

 全員がラミーナということで獣と人の耳を持つ。

 あと、マントに隠れているが尻尾もあるはず。

 他の種族的な特徴としては魔法が苦手で身体能力が高いようだ。

 そのせいか年齢よりも発育がいい傾向がある。


『最年少の双子は、とても14才には見えないんだよな』


 背丈は日本人だった頃の俺と同じくらいだが、肉付きがね。

 まあ、顔立ちは年相応って感じだろうか。

 ショートカットがよく似合う垂れ耳姉妹である。


『犬系ラミーナだな』


 ごく薄い緑の髪の方が姉のメリー、水色の髪の方が妹のリリーと名乗った。

 リーシャの妹でもあるという。

 ただし、リーシャの耳は長いストレートの髪と同じ灰色で尖っている。

 本人曰く「狼の耳」なんだとか。


『妹が犬系じゃねえかよ』


 ツッコミを入れたかったが、余計なひとことは諍いの元だ。

 かなりの誇りとこだわりがあるようだし。

 彼女ら6人で冒険者パーティを組んでいるそうだが、パーティ名にも反映されていた。


『月狼の友って言われてもなぁ』


 狼っぽい耳をしているのはリーダーのリーシャだけ。

 残りの3人は猫に狐にウサギである。


『付き合わされるメンバーは大変だな』


 妹と幼馴染みでなければ愛想を尽かされていたかもしれん。

 腐れ縁ってやつだ。

 残りの3人はそんな感じの面子だった。


 猫耳で緩くウエーブのかかった黄色の長い髪が特徴のレイナ。

 サブリーダーを務めているようで、リーシャの背後から声を掛けていたのは彼女だ。

 背丈は俺やリーシャとほぼ同じ。

 ケモ耳の分だけ俺より高いとも言えるが。


 くすんだ金髪を短くしている狐耳のアニス。

 細目と何故か関西弁で喋るのが印象的で斥候を担当していると言った。


 ウサ耳でナイスバディのダニエラ。

 他の皆に比べておっとりした空気を纏っているが戦士としての腕は劣るものではない。

 彼女の髪は焦げ茶色で短めだ。

 そのせいか世界的に有名なウサギのキャラを思い出した。


『父親がパイの具にされたって設定があるけどな』


 まあ、ダニエラには関係のない話だ。


「で、自主的にノエルを一族の住む森に送り届ける途中なのか」


「そうだ」


 律儀というか義理堅いというか。

 かつてエルフたちから受けた恩義を忘れずに借りを返そうというのだから。

 疫病で全滅しかけた氏族が救われたと聞かされれば納得だ。


『情けは人のためならず、だな』


「それが終わったら帰るのか?」


 何気なく聞いたが、リーシャたちには渋い顔をされてしまった。


「気に障るなら聞かなかったことにしてくれ」


「いや、気になったのは別のことだ」


「別のこと?」


「我々は余所の氏族に嫁に出されそうになったんだ。

 そのせいで色々あって逃げるように飛び出してきたのでな」


「それはまた……

 6人全員がか?」


 俺の問いに全員が怒りの表情で頷いた。


「複雑な事情がありそうだな」


「ロリコンジジイが何度も結婚と離婚を繰り返しているだけだ」


「なんだ、それ?」


「成人前の娘を期間限定で嫁にする変態氏族長がいるのだ」


「添い遂げる気が最初からないのか」


「成人したら離婚だからな」


 この世界では15才が成人だ。

 婚姻期間があまりに短すぎる。

 よくよく聞いてみると5年前に話が持ち込まれたという。


『筋金入りの変態か』


 5年前の双子たちなど本当に子供だぞ。

 彼女らが怒るのは道理だし、俺もムカついた。


「断れない状況だったってことだよな」


「ああ、そうだ。

 相手が有力氏族だったからな」


「力関係の差で無理難題を吹っ掛けてきたか」


「そういうことだ。

 流行病で死んだことにして逃がしてもらうので精一杯だった」


『帰りたくても帰れない、か……』


 ミズホ国に誘うかと思ったが、保留にした。

 現状で誘うのはアンフェアな気がしたからだ。

 ノエルから焦りすぎと言われたことも影響していると思う。

 縁があれば機会もあるだろうから彼女らの今後を少し気にかけておこう。


 リーシャたちとの話が終わると、再びボーン兄弟と話すことになった。


「とにかく何か自分たちにできることはないでしょうか」


 一度は引き下がったかと思ったら、これである。

 少しでも恩返しがしたいと言ってきかないのだ。

 気弱そうに見えて案外押しが強いあたり、さすがは商売人である。


 しょうがないので最近狩ったベアボアとソードホッグの革を換金してもらうことにした。

 その際にまたしても騒動になりかけたけど。


『亜空間倉庫を杖なし無詠唱で使えばな』


 大魔法と勘違いされる上に常識外れの魔法の使い方をしてしまった俺のミスだ。

 まあ、人の大勢いるところでやらかさなかっただけマシと思うしかない。


『教訓が得られたということにしておこう』


 更には魔物の革でも驚かれた。

 ベアボアとソードホッグが一撃必殺状態だったからな。

 俺の戦い振りを見ていたから納得はしてくれたけど。


 あと、加工した革の品質でも唖然とされたよ。

 傷が少ないだけでなく職人の技が際立っているんだとさ。


「間違いなく商人ギルド主催のオークションで目玉商品になります」


 ボーン兄弟のマシューが太鼓判を押してきた。

 普通に売るよりも何倍もの高値がつくそうだ。

 珍しい魔物の革が完全な状態で市場に出回ることは滅多にないからだとか。

 この調子では翼竜の素材などは見せられそうにない。


 まあ、でも西方の常識的な感覚を勉強させてもらったのはありがたい。


『街に入れるようになったら商人ギルドで登録してみるか』


 冒険者ギルドに登録するだけじゃ社会的な信用を得るのも楽ではないし。

 商人として成功すれば変なのに絡まれることも減るのではないだろうか。

 なにより物を作って売るのは面白そうだしな。


読んでくれてありがとう。

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