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390 いつものノリだと困惑される

 もっとも面倒な黒EXEを片付けたら後は作業だった。

 一個所に集めて聖炎で燃やして終了。

 実に呆気ない。


 後は戦っている最中に密かに呪いをかけられていないかだが。

 自己診断では状態異常などもなかった。

 後でベリルママのチェックを受ければ大丈夫だろう。

 それはいいのだ。


 問題は俺のレベルとか称号とかである。

 見るのが怖いが見るしかない。

 レベルは1141になっていた。


 きっかり100レベルアップだ。

 ステータスも跳ね上がっている。

 4桁レベルの100レベルアップはシャレにならないな。

 これで同じスペックの黒EXEが現れても圧倒できると思う。


「……………」


 だんだん化け物じみていくんだよな。

 称号の方は何も追加されていなかったのは不幸中の幸いである。


 後に知ったことだが、神のシステムを管理している神様たちがかなり奮闘した結果だそうだ。

 今回の一件は何があっても神の欠片に察知される訳にはいかないらしい。

 潜伏がより巧妙になりかねないんだと。

 俺が奴を捉えた感触が神のシステム側にフィードバックされたことが大きいようだ。

 そんなこと言われてもアレは感覚的なものだからなぁ。


 まあ、いい。

 神の欠片の処理が捗ることにつながるんだから。

 俺が駆り出されることもなさそうで有り難い話である。


 面倒くさいの嫌い。

 なんにせよ後は帰るだけだ。

 仮面ワイザーのバリエーションたちを回収して陸地へひとっ飛び。


『あー、戦っている間に随分と遠ざかったんだな』


 なるたけ陸地から遠ざかることを意識してたんだけど……

 まあ、俺からすればすぐに到着するんだが。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 浜辺に降り立つなり揉みくちゃにされた。

 勿論うちの面々にである。

 真っ先に囲まれたのは守護者3名とミズキとマイカである。


「くっくー!」


 ローズはいつもと違って純粋な鳴き声であるようだ。


「ハルくんっ!」


「ハルッ!」


 妻組の2人には名前を呼ばれているのか叱られているのかよく分からない状態になった。


「主よ、ハラハラしたぞ!」


『ふっとばされたのがすごかったー!』


 シヅカもマリカも興奮気味だ。

 序盤は落ち着いて見ていたはずなんだけどな。

 とにかくこの5人に飛び掛かられた。

 ダイビングアタックとも言う。

 なんでうちの女子はハチャメチャにしてくれるんだろうか。


 痛くはないけど俺が全員を受け止める形になるからな。

 俺がそのまま立っていると皆を弾き飛ばしそうだ。

 今はやんわり受け止めるとかするのも面倒くさいんですが?

 しょうがないので砂浜であることを利用して倒れ込む。

 そこで終われば「しょうがないなぁ」で済む話だったんだが。


「おい、ちょっ、待てっ……」


 思わずそう言ってしまうくらい危機を感じた。

 ある意味、黒EXEと戦っている時よりもヤバい。


 具体的に言うと身ぐるみ剥がされるんじゃないかと思った。

 そのくらいグチャグチャにされた訳だ。

 おまけに脱力してたから押し倒されたまんまだし。

 無理に跳ね起きると皆に怪我をさせかねないので無抵抗である。


 そして、そこに古参組が参加する。

 無言で睨みつけるかのようなツバキとノエル。

 怖いよ、特にノエルが。

 それだけ心配してたってことなんだろうけど。

 残りの月影のメンバーと一緒になって追加のダイビング。

 ノエルが1番でツバキが2番。


「ハルトさーん!」


 僅差でダニエラが3番だった。

 先客がいるのでムニュンな天国は味わえなかった。

 実に残念である。

 いや、今でも充分天国だけどな。


「ハルトー!」


「ハルトはーん!」


 続いてレイナとアニス。

 この両名は普段は素っ気ないことが多いのになぁ。

 見事なまでにツンデレである。

 いや、大好物だけど。


「「ハルトさまー」」


「ハルト様っ!」


 メリーとリリーの双子ちゃんたち。

 そして姉のリーシャ。

 この3人も普段より好き好き度がアップしている。

 心配してくれたのがよく分かる。


「ハルト殿っ!」


 それはラストとなったルーリアも同じだ。

 皆が俺の名前を呼んで飛び込んでくる。


「お前ら、ちょっと待て!

 普通の人間だったら圧殺ものだぞ」


「ハルトは普通じゃないじゃん」


 すかさずレイナが反論してきた。

 飛び込んできた全員が一斉に頷く。


「大バカヤロウ。

 海エルフたちが見てるだろうが。

 俺らの常識、海エルフの非常識だ。

 どう考えても誤解されるぞ、この体勢は」


 そこまで言って始めて流れが変わる。


「「そうなの?」」


 双子ちゃんたちが姉に聞いている。


「そうかも」


 リーシャが渋い表情で答えた。


「ここが海エルフの集落だってこと忘れてた」


「アホやなあ」


 レイナとアニスは漫才をしている。


「あー、やっちゃったね」


「やっちまったな」


 ミズキとマイカは「てへっ」という感じで笑って誤魔化そうとしている。

 テヘペロなんかで誤魔化せる訳ないだろ。


「ごめんなさいですー」


「誠にもってすまない」


 ダニエラとルーリアは素直に謝ってきていた。

 そこは好感が持てるのだが……


「いいから、とにかく退いてくれ。

 海エルフたちがオロオロし始めてるぞ」


 今の状態は彼等には本当に危険な行為にしか見えていない。

 恐るべき敵を倒した戦士が帰ってきたら身内に殺されようとしている。

 そんな風に見えているはずだ。


「くくー!」


 散れっ! だってさ。

 ローズの号令がかかった瞬間──


「シュバババッ」


 と全員が離れた。

 俺たちにとっては訓練で身につけた動きだが。

 海エルフたちはポカーンとしていた。


 ついて行けないのも無理はない。

 一瞬だったもんね。

 やけに忍者くさい動きだったし。


『古参組はともかくなぁ……』


 普段訓練を受けている面々は身に染みついたものだろう。

 そういうのがないミズキやマイカ、そしてマリカは即席で真似をした感じ。

 それでも、さしたるタイムラグもなしに動けていた。


『ノリがいいよな』


 そして忍者のこと好きすぎだ。

 普段はそういう素振りを全く見せないことも含めて、な。

 呆気にとられている海エルフたちは完全に置いてけぼりである。

 説明する気は端っからない。

 分かる人だけ分かってくれればいいという態度を貫いていた。


『もういいや』


 聞かれるまでは放置プレイにしよう。

 俺も気疲れしたし面倒くさい。

 いまは何もしたくない気分である。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 海エルフたちが復帰するまでの時間を利用して撤収準備を始める。

 事が終われば用無しだ。

 とにかく国に帰ってゆっくりしたい。

 やることなんて整列して点呼を取るくらいのものだけどね。


 そして輸送機を出す。

 すると海エルフたちの方からどよめく声が聞こえてきた。

 慌てた様子でこちらに向かってこようとするガット爺さん。

 いくら集落の責任者たる長だからってなぁ。


『ジジイ、無理すんな』


 俺だけがそう思った訳ではない。

 周囲の皆も生暖かい目で見ていたからな。

 とにかく脚を庇いながら早足で俺たちに近寄ろうとする老人に無理をさせる訳にはいかない。


 俺の方から近寄っていく。

 忍者的なシュバッとした動きはしない。

 多分それはガット爺さんの心臓を止めるからな。

 早足で充分である。


「無理は体を壊す元だぞ」


 俺が声を掛けるとガット爺さんは目を丸くしていた。

 そしてその場で土下座モードである。

 海エルフたちもリオンとその家族以外はそんな感じ。

 戸惑いの表情を浮かべているけどね。

 皆と同じようにしたいのかもな。

 恐らくは俺がそういうの嫌いだというのをレオーネから聞いて我慢しているのだろう。

 それだけに俺の中には困惑しかない。


『何なの!?』


 戸惑いの表情で皆の方を振り返るが頭を振られてしまった。

 皆にも理解不能な行動のようだ。

 これは本人たちに聞くしかないよな。


「なあ、ガット爺さん」


 そう呼びかけると平伏したままで爺さんが話し始めた。


「畏れ多くも申し上げ奉りまする!」


 必死な様子のガット爺さん。

 顔は上げていないから表情は見えないけど。

 声の調子からすると冗談でやっているのでないことは明らかだ。

 だからこそ思わず声が漏れていた。


「は?」


 ドウシテコウナッタ……


読んでくれてありがとう。


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