386 ハルト不意打ちをくらう?
修正しました。
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漆黒のクラーケンの触手を焼き切る。
ガンセイバーを一降りすれば数本単位で切断。
光属性の攻撃に弱いってことは、コイツの属性は闇なんだよな。
切り飛ばした触手が聖炎の効果で消えていくことからも、それは明らかである。
「元は神だった存在が堕ちたものだな」
そんな感想を抱きつつも奴の周囲を飛び回って触手を切り飛ばしていく。
丸裸にしてから本体に切り掛かるのが最も危険がないと判断した。
触手に絡みつかれるとか御免被りたいのでね。
次々と切っていく。
反撃はハンパな雷撃のみ。
最初に警戒していたのが拍子抜けするくらいだ。
こんなものなのかもしれない。
ベリルママが俺にやらせることを躊躇しなかったことを考えればね。
危機感を煽って油断しないように仕向けたのだろう。
「うーん、相変わらず過保護だよな」
泣かれるよりは遥かにマシだけど。
「ミスなく終わらせて帰ろう」
レオーネはしばらく残していってもいいかもしれないな。
せっかく久々に家族と会えたんだ。
スマホで連絡くれれば迎えに行けばいい。
「けど、アイツ生真面目だからなぁ」
俺たちと一緒に帰るとか言いそうだ。
「家族とは充分に話をしましたとか言ってさ」
根っこはウエットなくせにドライに振る舞おうとするんだよ。
「無理やり置いていくと、それはそれでストレスためるだろうし」
どんだけ不器用なんだか。
考え事をしながらも触手をドンドン切り落としていく。
「あー、終わらん。
デカすぎだろ」
切って切って切りまくってようやく3分の1ほどの触手を始末した。
無理もないか。
再生こそしないものの根元まで切るのに1回で終わらんし。
最初の方は周囲の触手に絡みつかれたくなくて徐々に切り飛ばしてたからなぁ。
短いとはいえ巻き付きくらい余裕でできる長さがある。
本体のデカさに比して短いってだけだからな。
「まあ、でも何十万のゴブリンを相手にした時よりはマシか」
あの時は終わりが見えなかったからな。
おかげで[一騎当軍]なんて称号がついたんだよ。
「ああ、そうだ」
ふと思いついた。
「メタルワイヤーを併用すればいいんじゃないか」
向こうが無数に触手を使ってくるなら、こっちも手数を増やして対抗すればいい。
聖炎を付与したメタルワイヤーを幾つも撃ち出して切り飛ばすというのはどうだろう。
鋼線使いは漫画やゲームでよく見かけるのに忘れていた。
小太刀の二刀流を使う一族とか割と好きだったんだけどな。
「問題はワイヤーの耐久性か」
聖炎で燃やすからな。
使っている途中で千切れるか。
漆黒のクラーケンは物理だとかなり頑丈だからな。
極細の鋼線を使いこなしても表面に傷をつけられるかどうかだと思う。
術式を刻み込んで魔道具化するしかなさそうだ。
つまり今回は無理ってことだな。
「まあ、いいさ」
地道にやってもブチ切れるほど延々と処理し続けなきゃならんって訳じゃない。
「面倒くさいけどな」
つい溜め息が漏れてしまうほどに。
このときの俺には間違いなく緩みがあった。
ここまで来ると作業に近かったからだろう。
そういう考え事は【多重思考】で別の俺が担当するべきだったのだ。
バトル担当が考え事をしていたら意味がない。
明らかに油断だよな。
「おっ?」
触手の先端を切り飛ばすつもりが空を切った。
奴が回避したのか。
一瞬、そう思ったがそれはない。
回避できないように追い回した上で切っている。
薙ぎ払いに対応して触手を横に寝かせるなど織り込み済みだ。
ならば何故という疑問が湧き上がってくる。
答えは眼前にあった。
奴が再びドス黒くなっていた。
それだけではない。
目に見えて小さくなっていた。
それこそが空振りの答えだ。
1割や2割減ったなどというレベルの話ではない。
体積的に直前の1割を切っているだろう。
明確に数値化することに意味を見出せないが。
むしろ今の大きさを表現した方が分かり易いだろう。
「亜竜サイズかな」
冗談のようだが、著しくコンパクトになってこの大きさだ。
元の大きさがいかにデカかったかが分かるというものである。
ちなみに見た目はドス黒い卵状だ。
漆黒のままだったならピータンっぽく見えたかもね。
よくよく見たら俺が切り飛ばした以外の部分も含めて触手が無くなっている。
どういうことだ?
ちょっとよく分からない。
脱皮しようとしていることだけは確かだとは思うのだが。
「同じ手は2度と使えないぞ」
急激に小さくなったことで俺の攻撃を結果的に躱すことができたが、それだけだ。
再び小さくなるとしても縮小率はこれほどではないはず。
同じことをしてもガンセイバーのサビになるだけだ。
それに、これ以上小さくなることに意味を見出せない。
「俺としてはドンドン小さくなってくれと言いたいね」
コンパクトになるにも限度があるとは思うがな。
仕留めやすくなって好都合だ。
時短できるのは有り難い。
「せっかく小さくなったんだ。
早々に退場してもらおうか」
脱皮して最適な形態に変化するつもりだろうが知ったことではない。
何度も待ったりはしないさ。
躊躇うことなく俺は距離を詰めた。
真正面で剣の間合いに入ったが反応はゼロ。
触手が伸びてきたりはしなかった。
もちろん雷撃もない。
俺はガンセイバーを振りかぶる。
「っ!?」
不意に鋭い殺気を浴びせられた俺は横っ飛びで回避していた。
自分の勘に従った結果だが、それは正解だったと言える。
ドス黒い卵形の表面から杭が生えていたのだ。
予備動作は一切なかった。
完全な不意打ちである。
「危ねえなぁ、おい」
俺があの場に留まり続けていたなら串刺しになっていた可能性もある。
仮面ワイザーEXEの装甲を貫けるかどうかは別問題だが。
念のために杭だけを鑑定してみた。
漆黒のクラーケンのではなく杭単独の攻撃力が気になったからな。
「おいおい……」
結構シャレにならない結果が出た。
杭の先端はEXEの装甲を貫けるだけの強度がある。
おまけにあの速度だ。
内側の理力魔法防御もどうなっていたことやら。
避けていなかったら本当に胸に風穴が空いていたようだな。
冷や汗が出そうになる。
「雷撃でダメージを受けていなかったら危なかったな」
あれで防御のことも考えるようになった。
実は理力魔法でガードしていたのだ。
あの時は使わない保険だと思っていたんだが……
「なかなかエグい真似してくれるじゃないか」
あの位置に留まり続けていれば保険として役立ったのは間違いない。
完全に不意を突かれたからな。
油断していたとはいえ情けない話だ。
いま思えば、完全に舐めプ状態だったんだよな。
リアルでそんな真似をすれば命に関わるということを失念していた。
窮鼠猫を噛むという諺を知っているはずなのに。
あの杭の一撃は、まさしくそんな感じだった。
「それにしても触手より更に硬度を増すかよ」
俺のそんな言葉が聞こえていたかのように奴がこちらを向いた。
杭をこちらに向けただけだが、そういうことだと解釈した。
今度は充分に警戒する。
射出なんてこともないとは言えないしな。
「お?」
想定と違って奴は杭を引っ込めた。
次の瞬間、ドス黒い殻にヒビが入る。
さっきの脱皮より明らかに速いタイミングだ。
「何でもかんでも同じだと思っていると痛い目を見そうだな」
中身も別物だと思うべきだろう。
そのせいか奴の懐に飛び込むのを躊躇してしまった。
臆病風に吹かれたと笑うがいいさ。
次の瞬間、殻が吹き飛び中から新たな姿を得た奴が飛び出してきた。
「速いっ!」
そう感じたのは吹き飛んだ殻を旨く利用されたからだろう。
俺が懐に入られてしまった。
咄嗟にガンセイバーで防御するのが精一杯。
斜め上からの重い一撃を受け止めきれず、俺は弾き飛ばされていた。
「くそっ」
理力魔法でブレーキをかけることも忘れて奴を睨みつける。
斜め下方に飛ばされた俺は海へ叩き込まれた格好になった。
むしろガンセイバーで防御すべきではなかったか。
防御用に理力魔法を展開しているから弾き飛ばされることはなかったはず。
現に海中に完全に没しても水飛沫は上がらなかった。
「落ち着こう」
ようやくここでブレーキをかけて止まった。
予想外の相手の姿に動揺させられたか。
同じままだと思っていると痛い目を見ると自分で言っておいてこれだ。
この様だ。
相手をクラーケンだと思い込んでいたのがいけなかったのだろう。
「しっかし、アレはねえよ」
俺は奴と正対するべく真上に跳び上がった。
「冗談きついな!」
奴を睨みつける。
ドス黒い姿の人型が宙に浮いていた。
全部で5体。
俺を弾き飛ばしたのは先頭にいる奴だ。
「色以外は御丁寧に細部まで再現してくれているじゃないかよ」
そう、そこにいたのは仮面ワイザーだった。
後ろに控える形のはノーマル。
先頭にいるのはEXEだった。
テレビだと後半に出てくる敵のパターンじゃなかろうか。
必ずしもそうとは言えないが俺の印象としてはそんな感じ。
「碌に反撃してこないと思ったら、最初からこうするつもりだったんだな」
返事はない。
代わりに奴らは腰のホルスターからガンセイバーを引き抜いた。
「数で圧倒しようってのか。
随分と小賢しい真似してくれるじゃないかよ」
そっちがそのつもりなら受けて立つまでだ。
俺はガンセイバーを構え直した。
「かかってこい!」
読んでくれてありがとう。




