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385 少しはやるようだ

 2段変身のアイテムは金剛石だ。

 ぶっちゃけダイヤモンドだな。

 涙滴型でカットも施してあるのでキラキラと輝いている。


 最初の変身で使う水晶などよりずっと大きい。

 ベルトの龍に飲み込ませるのにギリギリだった。

 ちなみに掘り出したやつではなく俺が倉庫内作業で作り出した代物だ。

 俺が金剛石を龍に飲み込ませると同時に向こうサイドでも動きがあった。


「放電?」


 幾つもの触手の先端からバチバチと青白い火花のようなスパークが出ている。

 火花はスタンガンを彷彿とさせてくれるね。

 アレを幾つも寄せ集めたような光景だ。

 何もなかった触手からも火花が出始め徐々に数を増やしていく。

 今度は雷系の魔法を使うつもりのようだ。


「効率悪いね。

 チャージにどれだけ時間かけるんだよ」


 まあ、迂闊に近寄るとうちの子たちでも大半は感電しそうだ。

 死にはしないだろうが動けなくなる恐れがある。

 そうなれば他の魔法を使われるか物理で攻撃されてしまうはず。

 無事では済むまい。


 ならば先制攻撃あるのみと言いたいところだが。

 そうは問屋が卸さない。


「反撃は想定しているようだな」


 今の状態で仮に魔法で攻撃をしかけても直撃はしないものと思われる。

 あの放電が味噌だ。


「一種のバリア状態になってやがる」


 一応は攻防一体となっている攻撃手段のようだ。


「逆に呪いの墨はないと見ていいのか?」


 奴が脱皮直後に使ったきりだもんな。

 判断に迷うところではあるがね。

 向こうが、どういう事情なのかは分からない。

 呪いの墨を使わないのはスッカラカンなのかもしれないな。

 あるいは著しく消耗するとか。


 なんにせよ、こちらも時間的に余裕をもって変身できる訳だ。

 龍に金剛石を飲み込ませたまま放置してたからな。

 こいつに感情があったら、どんな反応するかね。


 そういやベルトが喋るヒーローがいたな。

 アレの担当声優は元気だろうか。

 実は知り合いというか大人になってからできた数少ない友達だ。


 いや、だったと言うべきか。

 俺のことは記憶から消えているはずだからな。


「とにかく変身だ」


 緊張感の欠片もない掛け声だが2段変身する。

 龍が吠え高速で腰の周囲をグルグルと回り強烈な光を放った。

 その光が収まると姿が変わっているという寸法だ。

 そこには白銀の騎士から金色の輝きを放つ豪奢な騎士の姿へと転じていた。


 仮面ワイザーEXE。

 イメージは騎士王である。

 だけどEXEはエグゼキューションから来ている。

 有り体に言ってしまえば処刑だ。

 実行という意味もあるけどね。

 俺としては断罪者のイメージである。

 断罪の単語だと語呂が悪かったので、こちらにした。

 なんにせよイメージは騎士王と断罪者だ。

 ちょっと結びつけるのが難しいもの同士である。


「……………」


 ネーミングが厨二すぎたかな。

 これに明確な反応を見せたのはミズキとマイカである。


「うっわー、やったよ!

 ハルくんが2段変身したよ!!」


 興奮冷めやらぬ状態のミズキ。


「ハル、お前って奴は……」


 何かを溜め込むかのようにマイカはグッと拳を握りしめる。


「やっちゃうか、ハル?

 そこまでやっちゃうか!?」


 そしてテンション爆発。

 マイカの瞳は最高の玩具を目の前にした子供のそれだった。


「クライマックスだね、マイカちゃん!」


 マイカだけじゃなくてミズキも同じ状態だ。

 テンション爆発のお祭り状態である。


「この上なく肯定だよ、ミズキくん。

 この後は無双展開しか考えられない」


 マイカはテンションが上がりすぎたのか、おかしな口調になっている。

 特撮スキーだもんなぁ。


 これに近い反応を見せているのが古参組と守護者たちである。

 古参組の皆は動画とか色々見ているからな。

 妖精組の影響なのは言うまでもない。

 シヅカとマリカは守護者同士のリンクでローズと情報交換しているようだ。

 彼女らの反応から察するに動画を見たのは確実である。


 毒されてんなぁ。

 そんな風には思うけど、本人たちが幸せそうだからいいのか。


 一方で唖然呆然としているのが他の面子である。

 新規国民組と海エルフたち。

 特撮動画を見たことがないか、見たとしても回数は数えるほどの面々だ。

 経験が乏しいならどうしようもない。

 今回は諦めて次回以降に期待しよう。


 海エルフたちには、その機会もないだろうけど。

 そこは国民じゃないからとしか言い様がない。

 いくら家族の身内でも国民でない者に何でもかんでも秘密を打ち明ける訳ではない。

 国民にするつもりもないし。


 彼等はここが居場所だからな。

 ミズホ国に来たいとは言わないだろう。

 もしかしたら何人かは希望者が出るかもだが、ごく一部に過ぎない。


 その場合は受け入れるけどさ。

 もちろんローズのチェックを通った者に限定されるけど。


「む? ようやくチャージ完了か」


 待ちくたびれたぞ。


「さあ、撃ってこい」


 仮面ワイザーEXEの性能試験だ。

 ゲットして以来、ほぼ使う機会のなかった【挑発】スキルの出番である。

 そんなことしなくても奴は俺をロックオンしているけどな。

 この【挑発】は発射タイミングをこちらでコントロールするためのものだ。


 漆黒のクラーケンが雷撃を放った。

 本来ならロスの多い魔法だ。

 周辺へと放電してしまうからな。

 そこは俺が誘導した。

 一瞬で通り抜ける閃光。

 まるで質量があるかのようだった。


「ここまでとは思わなかったな」


 EXEになっておいてダメージを受けるとは。

 重さを感じたのはそのせいか。

 ノーマルよりは強化してあったんだけど。

 全身の表面装甲が歪んでいた。


「さすがは脱皮後に時間をかけてチャージした魔法だけはあるな」


 性能試験だから、あえてまともに受けてみたんだが。


「これじゃあローズたちでもヤバいぞ」


 守護者たちでも、まともに受ければダメージが入るのだけは間違いない。

 魔法で防御すればどうにか耐えられるだろうか。

 少なくとも俺は装甲の内側で奴の魔法を弾いたからノーダメージだけど。


 それでも奴の魔法を間近で受けて気持ち悪いと思った。

 魔法に向こうの思念が乗っていたせいだろうな。

 言語化されたものではなく本能的なものだ。


「まるで田んぼの泥水だな。

 いや、ドブのヘドロと言うべきか」


 粘りけのある泥混じりの汚水。

 それを頭から被ったような最悪の気分だ。

 まとわりつく殺意と憎悪。


 それは絶対的な拒絶が前提としてあるはずなのにベッタリと張り付こうとする。

 生きとし生けるものすべてを道連れに求めているような気がした。

 一般人なら発狂してもおかしくない狂気がそこにあったよ。

 もちろん俺は、その思念そのものも魔法で弾いたけど。


「冗談きついぜ」


 魔法に乗って伝わってくるだけでこれだ。

 本体にはどれ程の狂気が詰まっていることだろうか。

 考えたくもないね。


 だが、攻撃を受けておいて良かったとも思う。

 アレは残してはいけないものだ。

 灰だろうが塵だろうが絶対に。


「ここで仕留めきるさ」


 俺は決意を固め直して呟いた。

 生憎とこれは【挑発】じゃないから向こうから反応は見られないが。


「性懲りもなく同じ魔法か?」


 奴はまたしても触手の先から放電を始める。


「芸のないことだ」


 それに何度も付き合うほど俺もお人好しじゃないんでね。

 俺はEXEに魔力を流し込んだ。

 すると歪んでいた装甲が修復していく。

 そういう機能を組み込んでおいたからな。

 破損する前から魔力を注ぎ込めば防御力も飛躍的に上がったんだけど。


 なんにせよ向こうのチャージ時間などとは比べるべくもない速さで元通りになった。

 【縮地】で一気に間合いを詰める。

 懐にまで入った状態ではないが、短い触手も真っ直ぐに伸ばせば届く距離だ。

 その気配はなかったが。

 むしろ蠢いていた奴の触手が一瞬だけ硬直した。


「驚くのはまだ早い」


 硬直が解けた後は小さい雷撃が次から次へと襲いかかってくる。

 咄嗟の防御にしてはお粗末だ。

 充分にチャージした状態でスーツの表面にしかダメージを与えられなかったんだぞ。

 そこを忘れているようじゃなぁ。

 だが、本体の真側まで来ている。

 奴の狂気をはらんだ思念はより強くなるはず。


「そんなもん、わざわざ食らう訳ないだろ」


 奴の周囲を飛び回りながらガンセイバーで弾いていく。

 俺は修行僧じゃないんだ。

 あとMの気もない。

 いちいち受けてられるかよ。

 回避と防御だけでは接近した意味がないので攻撃もする。


「コイツ……」


 ガンセイバーで切り付けても切断できない。


「浅い」


 せいぜいが表面に傷をつける程度。

 フォルトスラッシュの効果が薄い。

 しかも徐々に塞がれていく。

 聖炎も切り落とさなければ明確な効果はないようだ。


「マジかよ。

 厄介な奴だ」


 思わず舌打ちしてしまう。

 さっさと触手を切り落として丸裸にしてから止めを刺そうと思っていたんだがな。

 完全に目論見が外れた。


「なら、これでどうだ?」


 俺はガンセイバーに流し込む魔力を増やした。

 ただしフォルトスラッシュの付与は中止だ。

 聖炎で切り裂いて燃やし尽くしてやる。


 ちょうど雷撃を放ってきた触手を薙ぎ払った。

 確かな手応えで触手は切り飛ばされる。

 そしてそれが幻であったかのように切れた触手が瞬時に燃え上がり消えていった。


「汚物の消毒は燃やすに限る!」


読んでくれてありがとう。

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