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363 油断をすると面倒なことになる

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 最初の村にはお茶をする時間もなく到着した。

 あまりにも到着が早いとゲールウエザー組はなかなか慣れることができないようだ。


「すぐって言ったじゃん」


「いや、まさかここまでとは」


 宰相のダニエルも困惑気味だ。

 輸送機に乗るのはこれで2回目だし、無理もないか。

 慌ただしく外に出る準備に入っている。

 それでも村の人間たちよりは落ち着いたものだ。

 先に村の者を帰して先触れになるようにしておいたのに上を下への大騒ぎである。


「あー、待った待った。

 これ着陸できないわ」


 空を飛んで来るという話は信じてもらえなかったんだな。

 神のお告げならともかく、同じ村の人間の説明じゃ厳しいか。

 一度パニックになるとアウトだな。

 先触れが伝えた話とか頭からすっ飛んでるわ、アレ。


「どうかなさいましたか」


 総長が聞いてくる。


「ほれ、アレ見てみな」


 壁面に下の様子を映し出す。


「これは……」


 総長が言葉を失うのも無理はない。

 村の人々が武器とか農機具を手に騒いでいるのだ。

 先触れに向かわせた村の人間が止めようとしているにもかかわらずだ。

 明らかに輸送機に対して敵意を向けているよね。


 非常にまずい状況である。

 こんなことなら光学迷彩かけておけば良かった。

 空を飛んでいけば予言の話とかのプラスに働いてくれるかと期待していたんだけど。

 見事に逆効果である。


「いかんな」


 ダニエルも渋い表情である。

 もっと手前で着陸すべきだったという話も出てくるだろう。

 が、なるたけ早く回りたかったのだ。

 対策は少しでも早い方がと焦った結果がこれである。

 誰も止める者がいなかったために調子に乗ってしまった。

 後悔しても始まらないが、もっと慎重になるべきであったな。


「どうなさいますか」


 総長も打つ手なしと思っているようだ。


「とりあえず眠らせる」


 武力で制圧する訳にはいかないからな。

 些か強引ではあるが、もっとも穏便な手段だとは思う。


「全員ですか?

 数十名規模でとなると……

 儀式魔法の範疇に入ると思うのですが」


 総長でも困惑するのか。


「別に制御さえ間違えなきゃ儀式魔法にする必要ないけどな」


「魔力が足りなくなりませんか」


「それも制御しだいで変わるからな。

 俺が連れて来ている面子なら誰でもできる」


「それは……」


 総長が絶句した。

 俺にしかできないとか思っていたのだろう。


「連れて来ているのは精鋭ばかりだからね」


 その言葉で納得はしたみたいだけど。

 他の連中はダメみたいだ。

 そんな訳ないって顔してる。


 魔法があまり得意でないとされるドワーフがいるからだろう。

 タンク前提の前衛だと思い込んでいるようだ。

 ちょっとカチンときた。

 うちの国民はスゲえんだってところを見せてやろうじゃないか。


「ボルト、やってみるか」


 そう言っただけでゲールウエザー組がどよめいた。

 特に魔導師団員たちが動揺しているな。

 ドワーフに制御が困難な魔法をやらせるのかと言いたいのだろう。


「はい」


 あっさりボルトが返事をする。


「「「「「おおっ!?」」」」」


 声に出して驚くかよ。

 馬鹿にするのも大概にしろよ。

 【ポーカーフェイス】で表情には出さないが俺はそこそこ怒っている。


 これでもし鼻で笑うような奴がいたらキレてたかもな。

 向こうとしてはマジかよという心境なんだろう。

 定着した常識を覆すのは難しいだろうから、まあ我慢した。


 これでボルトの実演を見て考えを改めないようなら少し考えたい。

 この場をボルトに任せたのは魔導師団の面々に刺激を与えるためでもあるからな。


『ボルト、聞こえてるな』


『はい』


『適当でいいから演出しておけ』


『呪文と光る魔方陣でいいですか』


『そんなもんだな』


 念話で軽く打ち合わせた後、ボルトは魔法の行使に入った。

 本人ですら聞き取れないような呟きで呪文を唱え始める。

 なんか、荒ぶる魂とか女神の祝福がみたいな言葉が並んでいる呪文だ。

 目一杯ボリュームを下げた呟きなのは厨二くさくて恥ずかしいからか。

 だったら文言を変えればいいのに。


 聞かれると黒歴史確定だが、言わずにいられないというところか。

 まさしく厨二病を患っているな。

 総長とのやり取りで制御が難しいという印象を与えたためか詠唱は長めである。

 同じ文言の繰り返しなので延々と繰り返しても言い淀むことはない。


 そうしている内にボルトの体が薄く発光し始めた。

 ゲールウエザー組が目を丸くしているな。

 魔導師団の面々は総長とナターシャをのぞき顎が外れそうなんだが。


 この段階で彼らの常識は覆されたようだ。

 ボルトの体を覆っていた光が足元へと下りていき放射状に拡がると光の魔方陣となった。

 なかなかに芸が細かい。

 その甲斐あってか魔導師団員たちが互いに囁き合っている。


「魔方陣で制御を補う形かしら?」


「そうみたいだ」


「あのやり方は斬新だな」


「確かにあれなら魔力のロスが少ないかも」


「効率的よね」


「我々でもできるだろうか」


「あそこまで高度だと難しいかも」


「そうだね、制御が難しそう」


 などなど。

 本人たちは聞かれているとは思っていないのだろうけど。

 それだけに本音であるというのが分かる。

 侮る感じがないので、まあ合格か。

 そこそこ時間をかけたボルトの魔法が発動した。

 地上にいる村人たちの足元に光の魔方陣が発生し拡がっていく。


「「「「「おおっ」」」」」


 壁面モニターに映し出されるその様子にゲールウエザー組が仰け反るように驚いていた。


「すごい」


「まるで儀式魔法だ」


「たった1人でこれを……」


 そして魔法が効力を発揮する。

 魔方陣の範囲内にいた全員が次々と倒れていった。


「こんな離れた場所から」


 たかだか百メートルにも満たない高さですが?


「全員を眠らせた」


 数十名規模だよ。

 魔法に対する抵抗力が高い者がいた訳でもないし。


「なんて緻密な制御なんだ」


 そこは内包型と放出型の差だね。

 うちの国民でない者に教えるつもりはないけど。


「見事なものですね」


 総長が感心していた。


「うちの精鋭だからな」


 つい先日って感じで成り立てほやほやだけど。


「ああ、そうでしたね」


 総長がうんうんと頷く。

 その時、魔導師団員たちがボルトの前に整列し始めた。


「なんだ?」


 様子を覗っていると、一斉に頭を下げた。


「「「「「ありがとうございます!

     勉強させていただきましたっ!」」」」」


 体育会系のノリだよな。

 ノリはともかく素直に受け入れる気があるのは好感が持てるよね。

 最初はギルティかと思ったが、これなら無罪判決でいいか。


 ただ、頭を下げられたボルトはどうしていいのか分からないようだ。

 俺の方を見て助けを求めるような目をしている。


「すまない。

 うちのボルトが困ってる。

 止めさせてくれないか」


 こういうのを止めさせるには上司から言われた方が効果的だと判断した。


「あなたたち、そのくらいにしておきなさい」


 総長が助け船を出したことで、なんとかお辞儀攻撃から脱出できたボルトくんであった。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 輸送機を着陸させて俺たちは村の外に降り立った。

 全員を眠らせたから妨害されるようなこともない。

 眠らせてなかったら着陸前に矢が飛んできたりもしただろう。

 俺たちが外に出てきたら襲いかかってくるか逃げ出すか。

 今となっては、どちらかは分からない。


 とにかく輸送機は仕舞わずに村人たちの元へ向かう。

 面倒だからとかではなく、俺たちが輸送機に乗ってきたことを理解させるためだ。


 まずは先触れを任せた村の代表者だけを目覚めさせる。

 目覚めた瞬間は状況が掴めずボーッとしていた。

 が、俺たちの姿を確認してガバッと土下座モードへ。


「申し訳ありませんっ!」


「あー、気にしてないからいいよ」


 そうは言っても簡単に頭を上げてくれるものでもなく。

 地面に額をこすりつけるようにして必死に土下座を維持していた。

 時間の無駄なんですがね。

 まあ、油断していた俺の自業自得である。


「これ、面を上げよ」


「し、しかしっ」


 ダニエルが命じても額は地面とくっついたままだ。


「いい加減にせぬか。

 我々は時間が限られているのだぞ」


「申し訳ありません」


 ここでようやく顔を上げてくれた。

 どっと疲れが押し寄せてくるような気分だ。

 まったく、まだ仕事は始まっちゃいないんだぞ。

 先が思いやられるな。


 とにかく彼には手伝ってもらわないといけないからな。

 大したことじゃない。

 村人の名前を教えてもらっただけだ。

 あとは名前を呼んで目覚めさせるだけ。


 見知らぬ相手が自分の名前を知っているというのは少なからず動揺する。

 単純なトリックだが寝起きだと意外と気付かれないものだ。


「何を面食らっておるか。

 すべては月の女神が思し召しなのだ」


 こんな風に言うとコロッと信じてしまう。

 村の人間は狭い常識に囚われているからな。

 街の人間よりも信心深かったりするし、迷信も信じたりしてしまうのだ。


 そんな感じで荒ぶっていた一同が大人しくなった。

 それどころか、話を聞いてもらえるようになるのだから有り難い。

 こういうのも禍を転じて福となすと言うのかね。


読んでくれてありがとう。

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