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346 同時多重起動の弊害と対策

 やりますな。

 8発の氷弾を同時に発射してゴーレムに全弾命中ですよ。

 しかも氷弾だから体全体が氷漬け。

 完全に身動き取れないようにされてしまった。

 今から動くように命令しても微動だにできまい。

 普通の魔物なら明らかにオーバーキルだが、そこは練習と割り切っているはず。

 でなきゃ自分の制御を確認するかのような魔法の使い方はすまい。

 8発同時撃ちは間違いなくそういう狙いがあるはず。

 しかも照準が正確だ。

 左右対称だから素人でもそうだと分かる。

 さすがはゲーム好き。

 ミズキは特にアクションやシューティングを好むんだよな。

 このあたり普通の女の子と感性が違う。

 ぶっちゃけ、ロボットアニメでも人物よりメカに興味が向いちゃう人だし。

 設定資料集とか読み始めると何時間でも過ごせてしまう人でもある。

 作ってた同人誌もメカメカしいんだよな。

 プラモデルとかも嬉々として作ってたっけ。

 ニヤニヤしながら黙々とプラモデル製作に没頭する姿は怖いと思う。

 見慣れてしまった俺やマイカからすると普通なんだけど。

 それはともかく、過剰な攻撃を受けたゴーレムがどうなったかだな。

 氷弾を受けた瞬間にバランスを崩しかけた。

 俺の初期命令はその場に留まることだったので重心移動で対応。

 即座に倒れることはなかったが、次の瞬間には全身を凍り付かせていた。

 氷弾の効果だ。

 体勢を立て直しきる前だったのでバランスを崩し、ゆっくりと倒れていく。

 倒れた瞬間に五体がバラバラに砕け散った。

 それを確認してミズキは「ふむ」と一息つく。


「赤枠にした後で複数の場所に任意のマーキングができると……」


 独り言を呟きながら、うんうんと頷いている。

 どうやら細かな説明なしでアプリの機能を使ったようだ。


「ゲームみたいで面白い」


 そんなことを呟きながらほくそ笑んでいるし。


「それに狙いやすくて便利ね」


 完全に一人の世界に没入してますな。

 端から見るとちょっと危ない人である。

 せめて笑みがなければね。

 それでも残念な人って評価になるんだろうけど。


「ゲームよりアナログに狙えるのもいい感じだし」


 それを見てわなわなと震える人が約1名。


「ちょっと、ミズキー!」


 マイカである。

 かなりお怒りのようだ。

 俺からすると「煩いなぁ」としか思えないんだが。

 あと、魔物に気付かれたらどうすんのかと言いたい。

 大挙して押し寄せてきかねないぞ。

 通路の向こう側に声が飛んでいかないよう風魔法でガードはしたけどさ。

 当人にしてみれば、そんなことを考える余裕もないんだろうけど。


「ビックリしたじゃないのぉ!」


 必死な様子でミズキに抗議している。

 予告なしの魔法で驚かされたようだな。

 単発の魔法なら、そんなこともなかったんだろうけど。

 同時多重起動の魔法を無詠唱でぶっ放されるとね。

 発動の瞬間、ブワッとくるんだよね。

 魔力の波動みたいなのが。

 物理的な効果のない突風と言い換えた方がイメージはしやすいかな。

 感覚的にはそんな感じ。

 わからんだって?

 そこは頑張って想像してくれとしか言えない。

 まあ、でも長々として表現しづらいから波動としておこう。

 余剰魔力が相互干渉した結果なので同時に幾つも起動すればするほど大きいのが来る。

 数発同時で感知しようとしなくても分かるくらいだ。

 8発も同時に放ったんじゃね。

 ベリルママとの修行中でもやらなかっただろうことは容易に想像できる。

 しかもミズキとマイカは並んで立っていた。

 真隣でアレをいきなりやられちゃ心臓によろしくないからなぁ。

 御愁傷様である。

 この波動を小さくする方法もあるんだけどね。

 手っ取り早い方法は微妙にタイミングをずらすこと。

 それだけで単発の時とさほど変わらない結果になるはずだ。

 他は魔力制御を向上させるしかないだろうな。

 余剰魔力を出さないように精密に魔法を制御するしかない。

 力業で強引に波動を抑え込むという手もあるにはあるけれど……

 ただ、その場合は無駄に魔力を消費することになるので現実的な方法ではない。

 なんにせよ、ミズキも細やかな制御は出来ていないということだ。

 鍛える余地はまだまだあるってね。

 そんな悠長なことを言ってるとマイカがプチッとキレてしまいそうだけど。


「そういうのは予告してからにしなさいよー」


 本気で驚いたらしい。

 ちょっと涙目で懇願している感じになっていた。


「あー、ゴメンゴメン」


 ミズキが謝る。

 謝るのだが違和感を禁じ得ない。


「そんなに驚いた?」


 その言葉で気付いた。

 ミズキは気付いていないようだが。

 余剰魔力の相互干渉による波動が一気に放出されたことに。

 まあ、魔法を放った本人は波動の中心にいるからな。

 外部に向けて放出される波動には気付きにくいか。

 多少でも内向きに波動が来るなら嫌でも気付かされていたとは思う。

 だが、マイカもマイカである。

 真隣にいて魔法の立ち上がりを感知していなかったのはどうなんだ?

 話に夢中になっていたというのは言い訳にならないぞ。

 油断していた?

 なおさら論外だ。

 うちじゃ無意識レベルで感知できるようになって当たり前だからな。

 感知系の修行を怠っていたようだな。

 レベルを上げることに必死になるあまり色々と雑になっていたんだろう。

 マイカの性格からすれば的外れな考えではあるまい。

 もし、そうなら特訓だね。

 脳筋になってもらっては困るのだよ。


「でもさー、分かり易いように魔法を立ち上げたんだよ」


 謝っていたミズキが反撃に出始めた。

 ミズキの言っていることは正しい。


「マイカちゃん、まったく気付いてなかったの?」


 嘘ではないし常識的なことなので反論の余地がない。


「いっ!?」


 マイカの反応がそれを顕著に物語っている。

 痛い所をつかれたと顔に書いてあった。

 あからさますぎて失笑を禁じ得ない。

 マイカは徐々に小さくなっていく。

 本能的にヤバいと察知したか。

 ただ、それはイタズラを見つかった小学生並みの反応である。

 ポーカーフェイスで素知らぬ振りをした方が、まだマシだと思うがね。

 スキルがないから難しいとは思うけど。


「マイカちゃん、感知の練習をサボってたよね」


 ミズキの一言は凄く納得のいく証言だと言える。


「そっ、それはっ」


 ふざけているのかと思うほど大袈裟な身振りで驚くマイカ。

 ありゃあ頭の中が真っ白になるくらい慌てているな。

 完全に肯定してるよ、それ。

 ミズキのカウンターから正解が判明してしまった。

 思った通りだった訳だ。

 ちょっと厳しいくらいで特訓させていただきましょう。


「他の皆は驚いてなかったよ」


「うぐっ」


 かなり泡を食っているな。

 しょうがない、少し助けてやるか。

 マイカがロックオンしている以外のゴーレムに向かって氷弾壱式8発同時発射。

 意図的にミズキと同じような威力と精度にした。

 必然的に波動が発生する。


「うひっ!?」


 あ、混乱しかけのマイカのこと考えてなかった。

 心の中で「すまん」と謝っておく。


「あっ」


 ミズキもちょっと驚いているな。

 これで自分が魔法を使った時の波動がどんなものか気付いたはず。

 タイミング的には俺が魔法を使った瞬間だからマイカとほぼ同時である。

 その直後にゴーレムの上半身が弾けた。

 結果がミズキの時とは違う。

 こちらに破片が飛ばないように理力魔法でブロックした。

 結構、派手に吹っ飛んだな。

 胸部に氷弾を集中させた結果なんだが。

 上半身で残っているのは肘から先の腕と頭の上半分くらい。

 シミュレーションしてなかったので、ちょっと驚いた。

 思ったより威力がある。


「ふむ、8発は過剰だな」


 態とらしく呟く。

 今度は4発で氷弾を撃ってみた。

 首や肩が千切れ飛ぶ。

 8発の時ほど派手に飛び散りはしない。

 胸には大穴が空いたけど。

 ゴーレムが消滅するのに充分なダメージだ。


「こんなものか」


 マイカがロックオンした1体を残して4発ずつ別々のゴーレムに氷弾を使う。

 ただし、1体ずつのタイミングをわずかにずらした。

 ミズキもマイカもちゃんと見てるな。

 ほぼ同時にゴーレムが破壊されていく。

 ずらすタイミングなんて、その程度で充分なのだ。


「ごめん、マイカちゃん。

 ここまで派手にやってたって気付いてなかったよ」


 俺が何かを促すまでもなくミズキは問題点に気付いてマイカに謝っていた。


「い、いいよ、サボってたのは事実だし」


 思惑通りになったのはいいんだが。

 いかんな。

 このままでは謝り合戦に突入してしまう。

 過去の経験から、ここで止めさせないと延々と謝り合うパターンに陥ることが予想された。


「そういうのは帰ってからにしておけ」


 キャンセルできるかドキドキしながら声を掛ける。

 双方共に無言でこちらを見ていた。


「……………」


 どうやらセーフのようだ。


「マイカ、ロックオンした分を残した。

 氷弾使ってミズキと同じやり方でぶっ壊せ」


「はー、なんで残してんのかと思った。

 アタシの練習用かぁ。

 サンキュー、ハル」


 やり込められて凹んでいたマイカが復活している。

 マイカのテンション急浮上だ。

 先程の落ち込み振りを考えるとギャップが凄い。

 こういうゲーム的なことをやらせると、やる気を見せる奴だからな。

 このお嬢さんもミズキの影響でゲーマーです。


「そんじゃ、行っきまぁーす」


 言うなり瞬時に氷弾の術式を構築して氷弾発射。

 指定通りにミズキと同じ合計8発。

 狙いも同じ。

 しかも無駄がミズキより少ない。

 後からトライする場合の強みだな。

 魔力制御にかなり神経を使ったはずである。

 それだけじゃない。

 4発ずつ微妙にタイミングをずらして発射するとか芸の細かいことをしている。

 観察して自分のものにしたか。

 そして結果はミズキの時と同じようになった。

 着弾してからゴーレムが凍り付くまでのプロセスに差異はない。

 発射タイミングのずれも、それに影響しない程度のものだった訳だ。

 後はゴーレムがバランスを崩し、倒れてバラバラになるだけ。

 そこも変わらない。

 破壊されたゴーレムが消えていく。

 後始末をしなくていいのは楽だ。


「上出来だ」


「サンキュー」


 結果を確認して俺たちは再び歩き始めた。


読んでくれてありがとう。

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