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35 お、終わってなかった……

改訂版です。


『そういや皆に渡すの忘れてた……』


 ヨウセイジャーの変身スーツ。

 防御力を高める方法で試行錯誤してたせいで完成して気力が萎えたというか。


『まあ、後でもいいか』


 となって、それっきりだったのだ。

 ダメダメである。


『これで出来がショボかったら最悪だけどな』


 さすがにそんなことはない。

 翼竜の皮で防御力を上げたからな。

 そのままだと柔軟性の欠片もなかったのを補うのに苦労させられたけど。

 結局、翼竜の皮をそのまま使うことはしなかった。


 まずは革に加工する際に柔軟性が得られるまで薄くしてみたが失敗。

 柔軟性と防御力の双方が中途半端なレベルになってしまった。


 次に分厚い革を鱗状に切ってギリギリまで薄くした革に縫い付けてみた。

 思った程柔軟性が得られず失敗。


 それならとギリギリまで薄くした皮とツバキが用意した布と貼り合わせてみた。

 縫い合わせると板のように堅くなって失敗した。

 けれども魔法で融合させると思ったような柔らかさが出た。

 ただし、防御力は先の試作品の中で最低だったが。


『ここで煮詰まったんだよなぁ』


 柔らかさは最後の試作品以外に考えられなかったがね。

 こいつで何とかならないものかと二重にしてみたら予想外に防御力が跳ね上がった。

 色々と試した結果、三重にしたものが柔軟性と防御力のバランスがとれていたので採用。

 段ボール並みに分厚くなったが、それでも自在に動けるようにした。

 単純に重ねただけじゃなくて魔法を付与させながらだったのがミソだ。


『しつこいくらいに粘った甲斐があった』


 体に密着する上に表面がツルツルなので布っぽく見えるが、防御力はピカイチだ。

 金属甲冑など子供の玩具である。

 さすがにこの新型合成革は西方で流通させられない。


『戦争とかで使われると面倒だからな』


 まあ、誰にも作れないし加工もできないけど。

 高度な錬成魔法の能力を要求されるのでね。

 俺以外だとツバキが辛うじてというところか。

 ローズは工作ものに興味がないので触りもしない。


『見ているのは飽きないようだが……』


 ちなみにローズは変身スーツは不要だと言った。

 全身にピッタリ密着というのがお気に召さないらしい。


『普通の服なら別段嫌がることもなく着るのにな』


 窮屈に見えるのが嫌なようだ。

 実際はそういう風に見えるだけなんだが。

 妖精たちから苦情は上がっていないし。

 試作段階から色々と要望を聞いていたので遠慮しているとかもないと思う。


『色々と頼まれたからなぁ』


 頭部は忍者っぽさを意識できるヘルメット型にしたいとか。

 それを実現するためヘルメットには付与魔法をバンバンかけた。

 硬化に通気に視界の確保。

 通気には水中呼吸や毒の無効化も組み込まれている。


 胴の部分は陣羽織っぽいデザインにしたいとか。

 これは皆の意見を集約するのが大変だった。


『何度、作り直しになったことか』


 みんなが、あーだこーだと言い合っている間に組み込んだ機能もある。

 汗や汚れの防止に脱水の防止なんかだな。

 長時間使用を想定してのことだ。


 ブーツの部分でもその部分には気を遣ったよ。

 足の疲労を軽減するためには欠かせないからね。

 頑丈にしつつも部分的に柔軟性を持たせたし。

 裏には滑り止めなどの処理もしたから安定感が増したはずだ。

 爪先は安全靴の発想で固めておいたから安全にして危険な武器になると思う。


『パワーアップした妖精たちが本気で蹴りを繰り出せばどうなることやら……』


 あとの特長は妖精たちの羽根やツバキの脚に対応したことだろう。

 そこだけむき出しにならないようにするのは難しいかとも思ったけどそうでもなかった。

 そのまま覆っても問題なかったからだ。


『このあたりは苦労しなかったな』


 着込むのにどうするかを考えてなくて途方に暮れそうにはなった。

 戦闘スーツは衣服じゃないからな。

 何処かでセパレートになっていたりとかファスナーで開閉なんてありはしない。

 装着したら脱ぐことができないなんてナンセンスだから魔法で脱着することにした。


『一瞬で装着できなきゃ意味ないし』


 という訳で転送魔法と空間魔法を組み込んだ。

 使うのは転送魔法と空間魔法だ。

 普段は変身アイテムの中に亜空間倉庫を設定し収納されている。

 変身すると瞬時に装着という寸法だ。


 え? 変身時に動いたらスーツの装着に失敗するって?

 そうならないようスーツを常に本人の動きにリンクさせるようにした。

 倉庫の中で中身のないスーツが操り人形のように動くのはシュールな光景だと思う。

 生憎と誰にも見ることはできないけどな。


 スーツ部分はそんなものだ。

 残るは武器。

 変身アイテムとして共通の装備にしておいた。

 その名は剣銃シュリー。

 変形して刀と銃の形態になる。


『刀なのに剣銃とはこれいかに』


 まあ、ダジャレを優先しただけなんだがな。

 銃の方は剣銃の亜空間倉庫内に格納してある手裏剣を撃ち出すからさ。

 剣銃とシュリーを入れ替えるとシュリー剣銃になるだろ。


『漢字にすると手裏剣銃』


 ……悪気はないのでスルーしてくれると助かる。

 いまは反省しているし、後悔もしている。

 だが、訂正はしない。

 そういうことだから気にしないでくれ。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 皆にヨウセイジャーの変身セットを渡すと喜んでくれたよ。

 作った甲斐があったというものだ。


『けどなぁ……』


 そうじゃないだろと言いたくてたまらない。

 皆さ、淡々と変身するんだ。

 作った俺としてはガックリというかガッカリしたさ。

 合間を見ながらの製作とはいえ俺一ヶ月頑張ったんだよ。


 でも、妖精たちは喜んでいたから否定なんてできやしない。

 下手に勘違いされでもして変身しなくなったら元の木阿弥だ。

 かといって俺が手本になる訳にもいかない。

 俺は俺で妖精たちのスーツを作るときに実験台として試作はしたんだけどね。


『ベルトで変身するヒーローの方を選んじゃったから路線が違うんだよなぁ……』


 後悔しても今更であるが個人の好みの問題だから仕方あるまい。


『宇宙な刑事も捨てがたいんだが』


 俺は異世界から来たし。

 それに刑事でもない……って、そうじゃなくて!

 一人でボケて一人でツッコミ。

 ハルト・ヒガ、まだまだぼっち度は高いです。

 36年の積み重ねは簡単には取り除けないようで。


 ともかく、妖精たちの変身を格好良くする計画を発動させた。

 俺の中だけで……

 虚しくなるだけだから、そこを追及するのはよそう。


 とにかく色々と考えた末に動画を見せれば良いのではないかという結論に達した。


『フフフ、本場物の動画の魅力には抗えまい』


 問題はどうやって動画を入手するかだが当てはある。

 妖精たちを忍者の世界へ引きずり込んだ人がいるだろ。


『あの人なら、きっと戦隊ものの動画も手に入れられるはず』


 そう、ラソル様である。

 折檻フルコース3倍がどうなったかも知りたいし。

 そんな訳で脳内スマホの出番です。


『もしもし』


『ハルトか。

 いま忙しいんだが』


 相手はルディア様だ。

 かけまちがえた訳ではない。

 直通で依頼して忍者騒動の時みたいにやらかされると困るからだ。

 とばっちりで俺までお仕置きなんてことになりかねないからな。


『お忙しい所すみません。

 ラソル様の具合はどうですか』


『む? あのお調子者の心配をしてくれるのか』


 どうも誤解されているようだ。

 心配などしていないのだが。

 亜神は人間を超越した存在だからな。

 自分が巻き添えを食う可能性があるかどうかについては心配している。


『え、ええ、まあ……』


 ハッキリ否定して話が変な方向に流れるのも怖かったので言葉を濁しておいた。


『お前は本当に優しい奴だな』


 どうやら訂正が必要なようだ。

 少しの誤解ではなく盛大に誤解されていた。


『いえっ、そんなことはありませんよ』


 そこはちゃんと否定しておかないといけないと思ったが、声が上擦ってしまった。

 なんで焦んなきゃなんないんだろう。

 ビビりすぎだとは思うが何か伝わってくるものがあるんだよ。

 まさかと思うけど、折檻フルコース3倍が終了していないとか……

 笑えない冗談である。


『謙遜することはない。

 お前が気を遣って連絡してくれたのはわかっている』


 もはや完全に誤解です、とは口が裂けても言えそうにない。

 不機嫌な中にも良い出来事があったと言わんばかりの空気が伝わってきてるからな。

 撤退だ、撤退。

 戦術的だろうが戦略的だろうがとにかく逃げる。

 三十六計逃げるにしかず。

 命あっての物種って言うだろ?


 その後はとにかく無難な話に終始して何とか電話を終わらせたんだけど……

 恐怖と驚愕の事実が判明しました。


『折檻、終わってねー!』


 思わず「嘘だろぉ!?」が口から飛び出そうになったさ。

 しかも忙しいって言っておきながら他の仕事してねーよ。

 お仕置きに専念してるって何それ。


『あれから一月半ほどになるというのに折檻が続くとか信じられん』


 死にはしなくても心が折れる。

 トラウマどころの話じゃないっての。

 怖すぎだろ。


『ルディア様だけは怒らせてはいけない』


 ベリルママを泣かせてはいけないのと同じくらいの絶対遵守事項である。

 彼女の前ではおふざけ厳禁。

 侍に冗談は通じません。

 俺は魂に焼き付けた。


 そして驚愕の事実がもうひとつ。


『ハルトよ、気を付けろ』


『何をです?』


『兄者は忘れた頃に遊ぶからな』


『……………』


 折檻フルコースも効果は一時的でしかないらしい。

 それ、絶対に懲りてないよね。

 ある意味、尊敬に値する。

 恐ろしくタフなのか、筋金入りの馬&鹿なのか。


『怖いから考えるのはよそう』


 俺がいま考えるべきは妖精たちの変身の仕方を改善することだ。

 専門家への動画入手依頼はできないままで終わったので次の手を考えてみた。


『脳内スマホが元の世界に繋がっていたら万事解決なんだが』


 ダメ元で試してみたら成功した。

 脱力しながら弱々しく「嘘だろぉ……」が漏れ出てきたのは、しょうがないと思う。


 で、色々と試した結果だが、できないことも多々あった。

 掲示板への書き込みやネットショッピングだ。

 動画の保存や再生はできる。


『それだけできれば上等だ』


 脳内スマホをくれたベリルママに感謝である。


『問題はどうやって妖精たちに動画を見せるかだな』


 脳内スマホを持ってるのは俺とローズだけだし。


読んでくれてありがとう。

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