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339 通路のオーク排除中

修正しました。

ウオーター → ウォーター

「見敵必殺っ!」


 言うなり豆粒大の火球を無数に撃ち出すマイカ。

 さすがはベリルママ直伝の魔法である。

 複数同時に発生させても無駄がない。

 大きさも均一であり炎にむらもないのは完全に制御できている証拠だ。

 それが将棋倒しになったオークに向けて次々と飛んで行く。

 そして着弾し──


「ドドドドドドドドドドドッゴ─────ン!」


 炸裂した。


「は?」


 炸裂だってぇ!?

 っと、動揺している場合じゃない。

 とにかく理力魔法だ。

 ビシャッとかグシャッとしたのを封じ込めないと。

 それにしても、火球じゃなくて爆炎球を使ったのか。

 くそっ、油断した。

 もっと細かく見ておくんだった。

 俺はてっきりオークの耳の穴に撃ち込んで脳を焼くつもりだと思ってたんだが。

 大きさが大きさだったからな。

 やけに効率がいいことをするんだなと思ったら、これだよ。

 せめて頭を小さく吹っ飛ばすだけなら食肉として再利用もできたんだが。

 全身に撃ち込んで木っ端微塵。

 無茶苦茶やりやがる。

 オークたちが次々と派手に爆散していくからな。

 血なんてボコボコと沸騰しちゃってますよ。

 どんだけ熱量を込めたんだ、あのバカ。

 ただの爆炎球じゃない。

 圧縮させて威力を高めてるのか。

 どうりで小さいと思った。

 控えめにしているのかと思ったら、やってることは逆だったとはな。

 おかげで肉片は血をまき散らしながら飛び散っているし。

 全身に撃ち込むとか過剰な威力になるに決まってんだろうが。

 これがホントの血湧き肉躍る状態だってな。

 嘘だけど……


「よっしゃ、先鋒は壊滅よ!」


「何が壊滅よ、だ。

 この抜け作のアンポンタンが」


「なんだとー」


 マイカが食って掛かってくる。

 攻撃をキャンセルして地団駄まで踏んでくるか。

 矛先がこっちを向いたな。

 しかしながら、こちらも引き下がる訳にはいかない。


「俺は確かに好きにしろと言った」


 激しく頷くマイカ。

 本気で怒っていると言うよりは悪口を言われて火がついたような状態だ。

 こういう時の火消しは難しくない。

 向こうに非があると認めさせればいいだけである。


「だが、何をしてもいいとまで言った覚えはないぞ」


「うっ」


 たじろいでるな。

 多少はやり過ぎという自覚があるようだ。

 ここで畳み掛ける。


「あんだけ撃ち込む必要が何処にある。

 せっかくの食材がパーだ。

 おまけに飛散を防止しないと酷いことになってたぞ。

 血と肉片のシャワーでも浴びたかったのか、ん?」


 質問の答えは求めていない。


「俺は嫌だぞ。

 汚い上に血生臭いなんてのは」


「アッハッハ、ごめんごめん」


 笑って誤魔化しやがった。


「ここまで飛び散るとは思わんかった」


 爆炎球を圧縮して使うからだ。


「バカたれが。

 加減と限度ってものを考えろ」


 今度は食って掛かってこない。


「えーと、反省?」


 手をつく場所もないのに、とあるお猿さんの芸を真似てくるマイカ。


「なんで疑問形なんだよ。

 本気で反省してねえだろ。

 後先考えて行動しろ」


「うわっ、とばっちりだ」


「何処がだ」


 ここで瞬間湯沸かし器になる訳にはいかない。

 こうやって煙に巻いて逃げるのがマイカの常套手段だからな。


「本気で反省しないなら晩飯抜きだ。

 あと、食材を粗末にした罰もあるからな。

 自棄を起こしてこれ以上火属性の魔法は使うなよ。

 やったら罰を3倍にするから」


「OHHHHHH!

 3倍なんて赤い人も真っ青でーす」


 なに言ってんだコイツ。

 醒めた目で見ていると「あれっ?」とか言い出した。


「認めたくないものだな」


 何をだよ。


「自分自身の若さ故の過ちというものをぉ」


「……………」


 そっちの3倍だったのかよ。

 赤い人って言う訳だ。

 だけど、3倍なのは罰じゃなくてスピードじゃねえか。

 分かる訳ねえだろ。

 それにしても余裕だな。

 罰が確定しているのに冗談が言えるとは思わなかったぞ。

 まだまだオークは部屋に入ってくるんだが?

 ミズキがウォータースマッシュで迎撃してるけどね。

 水の塊を頭部に高速でぶち当ててますな。

 飛沫が飛ぶ前に水が凍ってるのは過冷却させてあるからか。

 それでも飛び散りはある。

 マイカの時よりは遥かにマシなので退避している俺たちの所までは飛んでこないけど。


「考えたな」


 水の塊の勢いに氷の重さが加わってオークの首をあっさりへし折っていく。

 一撃必殺だ。

 素材は丸々残るし効率も良いとくれば言うことなしである。

 部屋に飛び込んできた勢いを削ぐことにも繋がっている。

 部屋の入り口は通路ほどは広くないので元々の勢いもない。

 すぐにオークの死体の山となって塞がってしまった。

 押し退けようとしているのは山積みとなった死体が揺れていることでも明らかだが、簡単には崩れない。

 ミズキの魔法の威力もあって下の方から徐々に氷の範囲が拡がっているからだ。


「ちょっとマイカちゃん!」


 お怒りモードなミズキが振り返ってきた。

 というかキレ気味です。

 怖いです。


「はひぃっ!」


 マイカも震え上がってるよ。

 こういう時のミズキは本当に怖いからな。

 俺じゃ止められん。


「ハルくんに仕事を任されたんでしょ。

 途中で投げ出して何やってるの」


「はいぃ」


 睨みつけながらドスのきいた指摘に直立不動で返事をするしかないマイカ。

 俺もとばっちりは嫌ですよっと。

 マイカから距離を取るぞ。

 気配を周囲に馴染ませて……

 ゆっくりジワジワと……


「ちゃんとやらないとダメだよっ!」


「はいぃっ!」


 痙攣するように姿勢を正しているマイカ。

 うっわ、怖えー。

 俺までビクッとしちゃったじゃないか。


「ハルくんはいいんだよ。

 何も悪いことしてないんだし」


 クルリとこちらを向いたミズキはとってもいい笑顔だった。

 とってもいい笑顔なんだけど、俺の背中を冷や汗が伝う。

 別に山積みのオークが氷漬けになったせいで室内が氷室化したとかではない。

 ミズキが冷気を纏っているからというのでもない。

 マイカに向けられたプレッシャーが多すぎてこちらに流出しているだけだ。

 とばっちりとも言う。


「ハハハ、そりゃどうも」


 笑顔で答えるけど、自分でも引きつった顔になっているのが分かるよ。

 なんだかなぁの心境である。

 とりあえずマイカの罰は3倍で確定しておこう。

 まあ、足の裏くすぐり3時間てとこだな。

 想像するだけで背中がぞわぞわする。


「とりあえず罰は帰ってからな」


「うそぉーん、覚えてたのぉ」


「決まってるだろ。

 まあ、頑張りしだいでは軽減しなくもない」


「本当に!?

 やるやる、やらせていただきまっす!」


 言うが早いか理力魔法で氷漬けの山を退けて──


「せりゃぁ─────っ!」


 気合い一発、魔法をぶっ放す。

 派手にやりたがるよな。

 もう少し、静かにできんのかね。

 まあ、火属性を禁止したこともあって今度の魔法は氷属性だ。

 アイスアローを極限まで小さく細くしている。

 五寸釘みたいなもんだな。

 数も控えめにしている。

 1発1体になるよう調整したようだな。

 アレが突き刺さっても頭が吹っ飛ぶような過剰なダメージは入らない。

 やればできるんだから最初からやってくれ。

 俺まで背筋の凍る思いをしたじゃないか。

 だが、お調子者に言うだけ無駄だな。

 再びやらかすだろう。

 俺たちがどれだけ「過ちを繰り返すな」と言っても繰り返してきた女だからな。

 どこか憎めないところがあるんだけど。

 とりあえずビビって本気を出しているマイカさんである。

 部屋の入り口の所でオークの死体が再び積み上がっていく。

 お陰であっと言う間に出入り口が塞がってしまった。

 使用する魔法の性質が異なるために氷漬けになったりはしない。

 それでも奴らは結構重いからな。

 山は簡単には崩れないし押し退けられない。

 パワーファイターのオーク共でも容易ではない。

 まして入り口の幅が制限されているせいで支えているような状態だ。

 積み上がった死体を少しくらい退けても入ってこられないことも考えられる。

 さて、マイカはどうするかな。

 一息ついてから同じパターンで行くことも考えられるが。

 そんな風に考えている間に動いていた。

 理力魔法で押し退けながらアイスアローを放っていく。


「ほう、全部は取り除かんか」


 オークの頭より上だけ排除してくる。

 こっちにポイポイ放り投げる感じで理力魔法を使っているな。

 ハッキリ言って雑だ。


「後ろのことはお構いなしか」


「前しか見えなくなるのは悪いクセね」


 ミズキがそう言ったタイミングでマイカが通路に突貫する。


「あー、やりやがった」


 山は残したままでオークの頭を踏みながら通路を駆け抜けていく。


「理力魔法でコントロールすりゃいいのに」


 遠隔操作で全部仕留められるはずなのだ。

 にもかかわらずマイカは至近距離からぶっ放した方が手っ取り早いと突っ込んでいった。

 オークを踏みつけて走りながらアイスアローを連続で撃ち放っているのだ。

 それはそれで高度なことをしている。

 足場が悪いのに高速で駆け抜けていくだけでも並みの芸当ではない。

 その上で更に速く魔法を構築してマシンガンのように撃ち放っている。

 やってることは高度だが、発想は脳筋そのものである。

 狙いにくいなら近づけばいいじゃないってか。


「しょうがないよ、それがマイカちゃんだもん」


「そうだな、それがマイカだ」


 ミズキと2人で頷き合う。


「残り全部マイカに掻っさらわれたな」


 あっと言う間である。

 マイカがすべてのオークの頭上を駆け抜けた後に生き残りはいない。


「いつものことだよ」


 ミズキが苦笑した。


「そうだったな」


 ああ、こんなことまで変わってないんだな。

 生まれ変わっても本質的な部分は何も変わらない。

 思わず安堵の溜め息を漏らしてしまう。

 できればマイカにはもう少し大人になって欲しいところだがね。

 肉体が若返っている分、精神が引っ張られているからなぁ。


「終わったよー」


 マイカがアッケラカンとした口振りで終了宣言しながら戻ってきた。

 オークの死体を踏みつけながら。

 殺伐としているはずなのに空気が重苦しくならない。

 マイカの良いところだと思う。


読んでくれてありがとう。

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