表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
340/1785

334 面倒事をスルーしても待ち受けるのは修羅場?

 ちょっと邪道な感じのするメニューのきつね月見うどんだったが割と好評であった。

 このメニューは、かつて国元で論争の末にできたものである。

 うどんに相応しいのはきつねと月見のどちらかなんて議題でね。

 よその人に聞かれたら笑われそうだけど。

 妖精組たちは真剣そのもの。

 彼らの中でもグルメ派な何人かが喧々囂々とやりあうのにウンザリさせられたものだ。

 きつねこそが至高のうどんと一方が主張。

 するともう一方が、いやいや月見こそ究極のうどんと張り合う。

 俺なんかは旨いんだからどっちもいいじゃないかと思う口だ。

 思うけど言わない。

 触らぬ神に祟りなしって言うだろ。

 優劣を決めてどうするんだよと心の中でツッコミを入れるけどね。

 その時の気分ってものもあるんだし。

 そう思わなくはなかったんだが、ヒートアップした面々に関わると碌なことがない。

 論争になるたびにスルーしてたんだけども我慢の限界というのもある訳で。

 いい加減うっとうしくなったある日、両方乗せて食うのが究極にして至高だと言ったら受け入れられた。

 何だよ、それ。

 あれだけ論じ合っていたのに。

 一瞬で解決しただと?

 訳分からん。

 至高と究極の合体だ、最終形態だと両者感激していたのには笑ったけどね。

 俺は適当なことを言っただけなのに。

 まあ、旨かったけど。

 以後はうちの定番メニューとなり今に至るという訳だ。

 そんな訳で食前は首を捻っていたミズキとマイカも食べれば納得してくれた。

 でも検索すれば結構な数のレシピが出ているんだよね。

 我々元日本人組は誰でも考えつくようなことを知らなかったんだな。

 ちょっと恥ずかしいかもしれない。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 昼食休憩を終えて宝箱トラップの部屋に戻ってきた。

 ただいま地下レーダーで検索中。

 他の冒険者とかち合わない階層を求めているんだけど……


「意外に入り込んでいるなぁ」


 ここはそこそこ広いんだけど、どの階層にも冒険者がいる。

 ちょっと誤算だ。

 最初は魔物と人間を間違えたかと思ったけど、さすがにそれはない。

 【天眼・遠見】のスキルを使うまでもない。

 いくら人型の魔物だらけだからって人間と間違えるほど間抜けじゃないつもりだ。


「主よ、そんなに人がいるのか」


 シヅカが軽く驚いている。


「人数はさほどでもないけどな。

 地下55層までは1層につき1パーティはいる」


「それは妙ですね」


 エリスが何かに気付いたようだ。


「どういうことだ?」


「ここのダンジョンは、あまり人気のある方じゃないんですが……」


 思っていたより多いと言いたいのだろう。

 根拠のあることではないので歯切れが悪いが。

 たまたま多い日だったと言われてしまうと反論できないかもな。


「何か明確な目的を持って入っているクランでもいるのかね」


「さあ、それは分かりませんが」


 判断材料が少なすぎるから分からなくて当然だ。


「もしかするとハルトさんの仰る通りなのかもしれません」


 だとすると目的は何かという話になってくる。

 それなりの集団が何らかの目的でダンジョンに潜るというのは、ただ事じゃないと思うのだが。


「ボス攻略しようって雰囲気じゃないぞ」


 物資補給のためのベースを構築してエースのいるパーティを支援するにしても大所帯過ぎる。

 すべてのフロアに同じクランに所属するパーティを配置しているのなら50パーティ以上になる。

 現実的ではない。

 複数のクランの合同作戦?

 ここのボスはそれだけの価値があるのだろうか。

 未確認だが、そんな風には思えない。


「そうですね」


 エリスにも同意されてしまった。

 となると──


「何か探し物か」


「その線が濃厚ですね。

 しかも普通の探し物じゃなさそうです」


 もし何かを探しているのなら厄介だ。

 巻き込まれると碌なことにならないだろう。

 あれだけの人数で探すものとなると本気度が分かろうというものだ。

 何処かの金持ちが依頼をして探させているといったところかね。


「人かアイテムか。

 前者のような気はしますが……」


「あーあー、聞こえない聞こえなーい」


 両手で耳を塞いで言ってやる。


「面倒事に関わるなんて真っ平だー」


 みんな苦笑いしているな。

 俺がいつも面倒事に巻き込まれているせいだろう。

 自分から踏み込んでいると言う者もいそうだ。

 言っておくが仕方なくやっているんだぞ。

 嬉々としてトラブルに関わろうとしている訳じゃない。

 面倒事には関わりたくないからな。

 よほどのお節介な奴でもない限りは誰だってそうなんだけど。


「という訳で人のいない116層に潜りまーす」


「随分と潜るのね」


 マイカが少しばかり驚いている。

 そこまで潜るとは思っていなかったようだな。

 もっと驚いているのがエリスだ

 声もなく手を口に当てて唖然としていた。


「何かの間違い……ではないですよね」


「報告では60層が最下層なのか?」


「は、はい」


「それはそれで正しい」


「どういうことでしょうか?」


 まったく訳が分かりませんと顔に書いている。


「60層と61層が繋がっていないからな」


 ますます怪訝な表情になるエリス。

 どうやら西方の常識では中ボスという概念はないようだ。


「あれでしょ、中ボスが階段を守っているパターン」


 事も無げに正解を導き出すマイカ。


「そういうこと。

 中ボスが階段を封印している。

 故に現時点では60層が最終地点に見える」


「ちゅ、中ボスですか?」


 エリスは戸惑っているな。

 ボス=ダンジョンの主という概念しかないのだろう。

 ダンジョンの主のいる所に迷宮核ありとの固定概念があるからだと思われる。

 日本人的な感覚からすると面白みに欠ける訳だが。

 中ボスくらいはいて当たり前ってね。

 そういう概念がないと困惑するのはしょうがないとは思うけど。

 理解してもらうのにゲーム機でも作るか?

 ハマりすぎて何人か廃人化しそうな気がする。

 止めた方が無難だな。

 少なくとも延々と続けてプレイしてしまうようなのは避けるべきだろう。

 擬似的に体験させるなら他にも方法はある。

 ちと古いがTRPGでアナログな遊びを導入するのも手だ。

 ただ、そっちは大学を卒業して以来プレイしてないからなぁ。

 そのうちTCGのブームが来て一気に廃れてしまった。

 たまに新作が出たりもしてたけど。

 昔を懐かしんでいてもしょうがない。


「世間がダンジョンの主と思い込んでる地下60階の主は門番みたいなもんだ」


「えっ!?」


 なんかエリスがひとりで驚愕するというのは珍しいな。

 逆のパターンが多いだけに。

 とにかくエリスに説明しておいた。

 60層のボスだと思われてる奴を倒さないと階段が出てこない構造だということを。


「はあ、そうだったんですか」


 少し復帰してきた感じがする。

 さすがはエリス。

 立ち直るのも早いな。

 理解も早くて助かるよ。

 この話を聞かせる相手が他の人間だったらと思うとゾッとする。

 肝が据わってそうなブリーズの冒険者ギルド長ゴードンなんかでも、どんな反応をするのやら。

 正直なとこ想像がつかない。

 少なくともエリスの比じゃない気がするね。

 顎とか外れたりして……


「本当のボスはもっと下の階層にいるぞ」


「それが地下116層ですか」


「いいや、128層だ」


「更に下があるんですか」


 溜め息をつきながらそんなことを言っているが、すでに落ち着きを取り戻している。

 深刻さは微塵も感じられない。


「最下層には行かないんだ」


 マイカが些か残念そうだ。


「攻略するのが目的じゃないぞ」


「パワーレベリングだよね」


「はいはい、分かってますよ」


 俺とミズキの連係攻撃を受けて早々に降参するマイカ。

 元より本気で口にした言葉ではなかったようだな。


「しかし、いきなり地下116階とは無茶ではないか」


 渋面を浮かべつつハマーが聞いてくる。

 いかにも俺が無計画に適当なことを言っていると指摘したげではあるが……

 態とらしさが見て取れるんだよなぁ。

 ビビってるのを悟られたくないんだな。

 無理もないけど。

 今まで俺に付き合わされて酷い目に合ってばかりだし。

 フリーフォールにラリードライブなどなど。

 今度はベテラン冒険者でも相応の覚悟を要する深層のダンジョンアタックだ。

 ある意味、フリーフォールより命懸けと言えるだろう。

 俺の目の前で死なせるつもりはないけどね。

 ハマーもそこは理解しているだろう。

 それでも怖いものは怖い。

 頭で理解することと本能が感じることは必ずしもイコールではないからだ。

 俺は悪いことじゃないと思う。

 そういう感覚を忘れると油断しかねない。

 それは致命的なミスに繋がる元である。

 だからビビるのは決して悪いことではない。

 ビビりすぎて体が硬直するのは論外だけどね。

 なんにせよハマーの名誉のために、この事実は内緒にしておこう。

 ガンフォールやボルトにはバレているみたいだけれど。

 思わず苦笑が漏れてしまう。


「それくらいでないと経験値効率が良くないんだよ」


 嘘ではない。

 どうせなら効率よくパワーレベリングさせたいだろ。

 地下128階でやらない理由は簡単。

 魔物の経験値と頭数で勘定した結果である。

 もっとも効率の良いのが116層なのだ。

 ちなみに出てくる魔物はバーサーカー。

 見敵必殺な狂戦士である。

 外見的には角なしオーガといった感じかな。

 目が逝っちゃってるけど。

 某ゲームの幼女が従えているアレに近いかもね。

 あそこまでタフではないけどさ。


「しょうのない奴じゃのう」


 俺の返答にハマーではなくガンフォールが応じた。


「相変わらず発想が過激じゃ」


「そうか?」


「しかも無自覚なんじゃからな」


「悪うござんしたね」


 なんてやり取りをしている間にハマーもどうにか腹をくくったようだ。

 俺が撤回する気のないことを感じ取ったみたいだし。

 なにより誰も躊躇していなかったからな。

 自分の意見に賛同してくれる者がいればと思っていたようだが。

 目論見は脆くも崩れ去った訳だ。

 深層で悲鳴とか上げるなよ。

 せっかく隠し通したんだから。

 もしかするとエリスには勘付かれているかもだけど。


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ