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325 冒険者ギルドでトラブルは定番?

修正しました。

人出 → 人手


 鎧のサイズ調整は思ったより早く終わった。

 ノエルが知らぬ間に技術を磨き上げていたが故である。

 密かに練習していたらしい。

 ツバキに次ぐほどの腕を見せてくれた。

 この場にいないカーラと互角くらいだろうか。

 ただ、レベルがツバキたちより上なこともあって素早く仕上げられる。

 人手が増えて作業効率も上がるのであれば、早く終わるのも当然であろう。

 本当に助かる。

 ノエルに礼を言って頭を撫でると、目を細めて喜んでいた。

 俺も御機嫌だったんだが、水を差すように後ろの方でこそこそ囁き合っている約2名がいる。


「アウフ?」


「セフセフ」


 おい、もしかして俺のことをロリコン扱いしようとしてるのか?

 ミズキはフォローしようとしてくれているようだけど。


「でもYLNT的にどうなのさ?」


 なんだよ、YLNTって?

 俺も初耳だ。

 一瞬そう思ったが何かの略称だと気付いた時点で理解した。

 幼女スキーな紳士たちの合い言葉の短縮形だな。

 NOタッチの精神に反すると言いたい訳か。


「妹ポジションだって聞いた」


「じゃあセウト?」


「婚約してるし」


「そうだった。

 じゃあ、限りなくアウトに近いセーフでいいや」


 何処にアウト要素があるんだ。

 俺は潔白だぞ


「えー、そこはセフセフでしょ」


「じゃあそれで。

 はー、つまらん」


 興味を失った途端、投げ遣りになりやがる。

 それに「つまらん」って何だ。

 大いに抗議してやりたい所ではあるけれど、おそらくやぶ蛇になる。

 悔しいが、やめておこう。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 思えば、約2名のジャッジ協議でストレスを溜めていたのだろう。

 街の冒険者ギルドに入るなり見えてきた光景に俺は頭に血が上る思いがした。

 気分は瞬間湯沸かし器である。

 何があったかは簡単だ。

 緑色の長い髪のお姉さんと数名の仲間が大柄な冒険者たちに絡まれていたのである。

 熊みたいな背格好のゴツい連中は完全に彼女らを囲って退路を潰していた。

 随分と慣れているようで……

 質が悪いことに全員がレベル40前後である。

 単なるチンピラ冒険者とは訳が違う。

 そのくせ性根はクズとか話にならない。

 ただ、お姉さんと仲間たちもビビってはいないのが持ち堪えている理由だろう。

 それでも体格で確実に負けている。

 人数的にも5人対5人。

 ありゃあ抜け出すのは難しい。

 というか無理だ。

 レベルのアドバンテージはある。

 しかし、この状況を覆せるほどの圧倒的な差ではない。

 今はまだ言い争いの段階だ。

 抜刀でもすれば技量でどうにでもできるとは思う。

 けれども、それだけはできない。

 ここで抜刀するのは問題視されるからだ。

 どういう経緯であろうと先に武器を持ち出した方が悪いとされてしまう。

 熊どもはそれを理解しているのだ。

 彼女たちが囲いから抜け出せないことに苛立って抜刀するのを待っている。

 そういうのを見越してしつこく難癖をつけていた。

 女にダンジョンは無理だとかそういう類いのことを延々と。

 いい加減に鬱陶しい。

 ただ、コイツらの意図は喋っていることとは別の所にある。

 目付きが完全に飢えた獣のそれだからバレバレだ。

 現に正面の熊が緑髪のお姉さんの胸元に伸びようとしている。


「あっ、アイツ!」


 マイカのスイッチが入ったようだが、それより俺の方が先に行動に出ていた。

 【縮地】で一瞬にして熊の真横に踏み込んだ。


「うおっ!?」


 そのまま驚いている熊の手首を掴む。

 金属の手甲のヒヤリとした感触が伝わってくるが俺のハートは冷めないぜ。


「なんだ、テメエ!?」


 熊が吠えている。

 無理もない。

 目的がすんでの所で止められてしまったのだ。

 そして掴まれた腕が1ミリたりと動かせないことに苛立ちを募らせる。


「このガキがあっ!」


 反対の腕で殴ってきた。

 短絡的な奴だな。

 俺は奴の手首を手甲ごと握りつぶした。

 それだけで奴の殴りかかってきた拳はそれていく。

 擦りもしない。


「ぎゃああああぁぁぁぁぁ────────っ!」


 うるさい。

 瞬時に治癒魔法を使い手首の粉砕をなかったことにする。

 その上で振り回すようにして熊を浮かせた。


「げっ!」「嘘だろっ!?」「マジか!?」


 熊の仲間が驚愕している。

 俺が軽々と持ち上げたのが信じられないのだろう。

 知ったことではない。

 真上に熊を振り上げて投げ落とす。


「ドズゥン!」


 派手な音がして男はKOだ。

 死んではいない。

 床をぶち抜かないように魔法で保護しておいたのでダメージは全部男の方へ回ったがな。

 HPは半分ほど減ってはいるが体の芯に残るような内部ダメージだ。

 骨折などはしていない。

 にもかかわらずカウンターの向こう側から痩せぎすの男が飛んで来た。

 まるで下水を徘徊するネズミを連想させるような薄気味悪い男だ。


「困りますよっ」


 言いながら熊たちの方へと目配せする。

 ああ、最初からグルだったのか。

 道理でギルド内で揉めているのに注意の一つもしなかった訳だ。

 面倒くせえな。

 最初からイライラしていたが、それが頂点に達した。


「やかましいっ!!」


 ドブネズミと熊どもに殺気をぶち込んだ。

 こんな連中にカードを切らせたりはしない。

 どうせ、ろくでもない手だろうからな。


「「「「「ひっ」」」」」


 苛ついている分だけ加減が足りなかった。

 腰を抜かしてへたり込む。

 ドブネズミも熊たちも。


「根性なしの腰抜けどもがっ」


 吐き捨てるように言い放ち睨みつけるとガタガタ震え始めた。

 大の大人がみっともない。

 が、どうでもいい。

 こんな連中に遠慮は無用だし関わる時間は最小限で済ませたい。


「受付の姉ちゃん」


 普通に喋ったつもりだったが俺が目を向けた受付嬢はビクッと痙攣するように直立不動になった。


「ギルド長をここへ連れてきてくれ。

 賢者だと言えば分かるから」


「はひぃっ」


 返事なのか悲鳴なのか分からない裏返った声を出して俺が指名した受付嬢は奥へとすっ飛んでいった。


「無茶をしおるわ」


 ガンフォールが苦笑しながら声を掛けてきた。


「そうか?

 女の子を物扱いするような連中に慈悲など無用だ」


「それについては同感じゃが。

 アレの手首はどうする?」


 ガンフォールが最初に仕留めた熊を親指で指し示す。


「奴の手甲は魔法の効果が乗った品じゃ」


 さすがは【鑑定】スキル持ち。

 見るべきポイントは外さないな。

 だが、握りつぶした後の確認はしていないか。


「あんな物をグシャグシャにするなら手首は……」


 言いながら途中で怪訝な顔をしたガンフォール。


「変じゃな?

 骨も手甲と同じようになっていると思ったのじゃが」


『治癒魔法を使っておいたから元通りだ』


『なるほどの』


「上手い具合に加減をしおったのう」


 念話で納得しつつ口から出てくるのは白々しい台詞だ。

 さすがはガンフォール、役者だね。


「あ、あの、賢者様……」


 今度は緑髪のお姉ちゃんか。

 お姉ちゃんなんて呼び方をしているが、名前は知っている。

 知り合いだからな。


「よう、リンダ。

 こんな場所で会うとは奇遇だな」


 護衛部隊の副隊長が部下を引き連れて冒険者ギルドに来るなんて何の用だろうな。


「申し訳ございません。

 ありがとうございました」


 深々と礼をしてくる。

 残りの4人も同様だ。


「気にするな。

 知らぬ仲ではないし俺の嫌いなクズを片付けただけだ」


「ですが問題になりませんか?」


「ギルド長がどう判断するかだが、心配はいらん。

 コイツらを許すつもりはないからな。

 職員を買収して好き放題しようなんて連中だし」


「えっ!?」


「気付いてなかったのか。

 普通の冒険者ギルドなら、このバカどもはとっくに処罰されてるよ」


 ギョッとした表情でリンダたちがカウンターの奥へと視線を向けた。

 カウンター内に残っている受付嬢たちが気まずそうに視線をそらせていく。


「下っ端は直属の上司に押さえ付けられているだけだろうよ」


 熊どもだってそこまで資金が潤沢ではないはずだ。

 賄賂を受け取っているのはドブネズミだけと考えた方が矛盾は少ない。


「大方、首にするとか何とか言われてたんだろうな」


 受付嬢たちがビクリと反応していた。

 図星か。

 実に分かり易い構図だな。


「賢者様っ!」


 ギルド長が慌ただしく駆け寄ってきた。


「よう、邪魔してるぜ」


「誠に申し訳ございません」


 全力の最敬礼って感じで頭を下げている。

 まあ、この街に来た時に出迎えの面子の中にいたから無理もないのか。

 その点に関してだけはラソル様に感謝だな。


「謝る相手が違うだろ」


 頭を下げたままのギルド長の耳元で「迷惑を被ったのは俺じゃなくて王族の護衛だ」と囁いた。


「おっと」


 ギルド長が凄い勢いで顔を上げた。

 リンダたちを見て表情が凍り付いていく。

 護衛の面子の顔も覚えていたようだな。

 そんな感想を抱いていたらジャンピング土下座を決めていた。


「私の教育が行き届かず誠に申し訳ございませんっ!」


 教育というか目配りだよな。


「うわー、生ジャンピングだよ」


「初めて見た」


 うちの筆頭嫁たちは平常運転ですな。

 それに対してドブネズミの方が卒倒せんばかりになっている。

 訳が分からないようではあるが、ただ事でないことだけはどうにか気付いたようだ。


「ギルド長、謝罪はいい。

 我々は盾にすぎないのだから」


 さすがに王族の護衛騎士となると覚悟が違うね。

 自分を物扱いですか。


「ですがっ」


 顔だけを上げたギルド長が食い下がる。


「これが陛下に対する無礼であったなら問答無用でこの者たちを斬り捨てています」


 この言葉に受付嬢たちまでもが震え上がって土下座を始める。

 なかなか言うねえ。

 次からの抑止力にはなるかな。

 収拾がつかなくなったかもしれないけど。

 こんな所で時間は潰したくないんだが。


「悪いけど、俺らは用があってここに来ているんだ。

 謝罪したいなら、その連中を適当に処分しておいてくれ」


 横から口を挟む形になったが、そこは勘弁してもらおう。


「そっちもそれで異存はないか」


 リンダたちに問うと了承された。

 許さないとは言ったが、ドブネズミと熊どもは既に俺の方で処理済みだ。

 逆恨みもできないようにしてある。

 恨みを抱いたり欲情した場合には得体の知れない恐怖を味わうようにしただけだがね。

 後の処分でどうなろうが知ったことではない。


読んでくれてありがとう。

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