323 案内します
俺、いきなり結婚していた。
しかも相手が2人。
日本なら重婚ってことで結婚できません。
相手は地球から来た昔馴染みのミズキとマイカ。
昔はミズキチとマイマイと呼んでいたんだよね。
だけど、妻に対してそれもないだろうと思って改めている。
ちょっと新鮮だが、2人は新婚さんみたいとはしゃいでいた。
みたいじゃなくて新婚なんですが……
結婚より恋人気分が味わいたいのかね?
まあ、そのあたりは注意しておくようにしよう。
それはともかく、ここで話は終わらない。
皆に報告しようと思ったら追加で結婚することになった。
15人だってさ……
月影のメンバーマイナス1で7名。
ツバキとカーラの弟子コンビで2名。
元王女を含むフェア3姉妹で3名。
ABコンビことアンネとベリーのプラム姉妹の2名。
シヅカも結婚の概念を理解すると加わってきて1名。
これで合計15名。
そしてダメ押しで幼女と婚約。
さすがに1人だけど。
桃髪ツインテ天使のノエルさん。
日本で言えば小学生。
結婚したいと言われた時はどうしようかと思ったよ。
結局、婚約ということになったのでロリコン扱いはされずに済みそうだ。
え? 充分にロリコンだって?
ノエルが可愛いのは認めるが、俺がロリコンだという意見は断じて認めない。
認めないったら認めないっ!
幼女枠にはマリカもいるが、彼女は番犬的ポジションがいいらしいから一安心である。
それにしても幅広い年齢層に好かれるとか日本にいた時じゃ考えられなかったね。
嫁枠18人とかマジモンのハーレムじゃねえか。
何度も言うようだが、それなんてエロゲの世界である。
狙ってこうなった訳じゃないんだぞ。
たぶん世間的にはどんなに言葉を尽くしても理解してもらえない気がする。
力なく笑うこともできない。
変な感じで笑うと奥さんたちからあらぬ誤解を受けて修羅場になりそうだから。
茫然自失である。
嬉しくないと言えば嘘になるがね。
展開が急すぎてついて行けないのだよ。
ただ、ミズキとマイカは嫁が増えることに寛容なようで……
俺のことがちゃんと好きなら仲良くできるからってさ。
そこは安心できる。
コミュニケーション能力が高くて羨ましくも頼もしい。
そしたら俺が奥さんは全員平等と言ってるのにミズキとマイカが筆頭夫人ということになっていた。
神の子というのが大きいみたい。
称号にも[女神の娘]がついてるからなぁ。
無茶をしたから[運命を乗り越えし者]なんて俺も持ってないような称号まである。
同時に[自重知らず]もついているし。
どんだけ無茶したんだよってなるが、ツッコミは入れない。
絶対にカウンターで返ってくるからな。
俺のせいってことにされるのは目に見えている。
後は[魂の友誼を結びし者]なんだけど。
これは俺にその称号がついたことで対象者にもつく特殊なやつだ。
まあ、これはしょうがない。
それにしても4個も称号を持っているとか無茶苦茶だ。
普通はひとつあるだけでもレアなんだぞ。
俺? 俺は神の欠片に直接関わったから例外である。
なんにせよ皆が納得したようで、そこは助かったけど。
身内で揉め事なんて見たくないもんね。
それでもすぐに「はい、そうですか」とは行かない部分もある。
受け入れたとは言ってもね。
どうしてこうなったと困惑した後は訳が分からないよと思った訳で……
ただ、あまり悠長にもしていられない。
時間に追われる身だからな。
使える時間は数時間ってところか。
色々と考えるのは【多重思考】で他の自分に任せて行動に移った。
せっかく国元に来たのに結婚の報告して出張先にとんぼ返りとかあり得ないもんね。
新規国民組は初めての入国になるんだけど。
「今更だがミズホ国ミズホシティへようこそ!」
ベリルママの横で宣言したが耳に入っていない者が多い。
「ちょっとぉー!」
レイナがダダッと駆け寄ってきて俺に詰め寄る。
「何か見慣れない建物のオンパレードなんだけどっ!?」
嫁枠に入ってもレイナはレイナだ。
ちょっと嬉しくなったが、ここでニヤる訳にはいかない。
そんなことをすれば火に油である。
「今頃、気付いたのか」
「無茶言わないでよっ。
次から次へと驚かされっぱなしなんだからぁ」
「そりゃ、すまん。
俺が本気を出せば、あんなものだと思ってくれ。
この程度のことはいつものことだろ?」
「……………」
返事がない。
ぐぬぬって感じで言い返せないようだ。
色々と非常識なことをやってきているのを間近で見ているからなぁ。
「ちなみに時間的にはどんくらいやの?」
そこを聞きますか、アニスさん。
「正確な時間は難しいな。
倉庫内作業も進めてたから」
前置きはしておく。
でないと、あまりの非常識さにギャーギャーと騒がれる可能性もあるからな。
「設置だけなら妖精組に手伝ってもらって昨日だけで終わらせたが」
「昨日の晩だけかいな。
相変わらず無茶苦茶やね」
そう言いながら新国民組の方を見た。
お、幻影魔法を使い始めたぞ?
「これが昨日までのミズホシティや」
城と神社とボウリング場、その他の施設を見せている。
「ちょっと待て。
あの向こうの方の巨大施設群がないぞ」
ハマーが泡を食いながらツッコミを入れている。
「え? うち、無茶苦茶や言うたやん」
平然と返しているアニス。
言っていることと表情に釣り合いが取れていない。
「納得いかないでしょうけどね」
レイナが諦めの混じった表情で溜め息をついた。
「ハルトが本気を出せばって言ったでしょ」
諭すようにハマーに語りかけていた。
つい今し方、俺に食って掛かっていたのは何だったのか。
「ハマー、この程度で驚いていては話にならんぞ」
そう言っているガンフォールの目も、何処か遠くを見ているような感じだ。
やはり連れて来るのが早すぎたかな。
「アッハッハ、最高ね!」
マイカが腹を抱えて笑い始めた。
「相変わらず本気を出すと無茶するんだから」
いや、無茶をした覚えはないんだが。
感覚が麻痺してるんかな。
「でも、これスケールが桁違いよ」
あ、やっぱりそうなんだ。
「リアルジオラマじゃないんだからさ」
たとえ方が元日本人組にしかわからんな。
話について行けません的な遠い目をしている者もいるがミズホシティを案内していく。
短距離転送を使って時間短縮をする。
この辺はABコンビ以外は慣れてきているので大きな混乱はない。
みんな学校の規模の大きさに呆れていたけどね。
ミズキやマイカでさえも。
だって冒険者の養成だけじゃないからなぁ。
自動車教習所としての役割も持たせたし。
将来的には職業訓練もできるようにしたいと思っている。
場合によっては、これでも小さいんだよ。
初っ端からこれかと思ったけど後は比較的スムーズに行った。
最初のインパクトが感覚を麻痺させたのかもしれない。
役所、病院、百貨店、駅。
どれも半分呆れた感じで驚いていたけど。
駅なんかも転送魔法を俺が使っているから、あれば便利くらいの感じだった。
ちょっと拍子抜けしたくらいだ。
更に拍子抜けしたのが住宅街。
マリアには規模が大き過ぎるのではと言われたがね。
それも普通に質問する感じで驚きは微塵もなかった。
ドワーフも大勢住むことになるはずだと説明すると、すぐに納得していたし。
逆に腰を抜かさんばかりの勢いで驚かれたのが田畑だ。
新国民組が植生魔法を見て、そんな魔法見たことないってさ。
まあ、俺がやると気持ち悪いくらい異常な速度で作物が育つからな。
ここでエリスが蝗害の時のことを思い出して仮面ワイザーのことがバレた。
あのときも植生魔法を使ったな、そういや。
目敏いというか何というか……
まあ、身内だから構わない。
構わないんだけど変身させられた。
皆の前で。
ノーマルからフレイム、そこからダークネスへと。
マイカが転げ回って爆笑してくれましたよ。
日本にいた頃の俺なら羞恥にまみれて悶絶していたかもな。
だが、妖精組もいるんだよね。
マイカの反応が受けていると勘違いしたようで。
各自、倉庫から懐かしいものを引っ張り出してきましたよ。
最近じゃ変身スーツが性能的に足かせになるので使ってなかった剣銃シュリー。
これを披露するのは本当に久々だ。
故に月影の面々ですら何が始まったのかと戸惑っている。
そんな中でも妖精組は平常運転。
久々の出番とばかりに皆ポーズまで決め始めたよ。
「影に生き」「闇を裂き」「電光石火で走り抜け」
ヨウセイジャーの決め台詞。
今回は子供組じゃなくて黒猫3兄弟が担当ですか。
「はびこる悪は許さない!」
そしてキースがノリノリだ。
「「「「「我ら忍精戦隊ヨウセイジャー!
お呼びでなくても只今参上!!」」」」」
妖精組全員だと迫力あるなー。
「「「「「忍精チェンジ!!」」」」」
あ、他の皆がポカーンとしている。
さすがにこのノリには付いて来られないか。
変身した後も皆の時間が止まっていた。
「ハルくん、趣味に走ったね」
ミズキが懐かしそうに言っているが、大学時代はそこまで深入りしてなかったぞ。
番組を見たりして知識はあったけどさ。
当時はコスプレも縁遠いと思っていたし。
「ここまでされると言うことないわー」
夢から覚めたように爆笑から真顔に戻っているマイカ。
バカにされている感じはない。
此奴はスパッと竹を割ったようなところがあるからな。
後腐れがない。
猜疑心の強い連中とは相性が悪かったけど。
「えーっと、すみません」
エリスが小さくなっていた。
自分が要請したことがここまで大きくなるとは思わなかったのだろう。
「気にすることはない。
半分は俺たちの趣味だからな」
動画を見れば皆も影響されるだろう。
全員とは言わないがね。
そんな感じで田畑にいた時間が思いの外に長かった。
その後は神社でお参り。
作法なんかは妖精組が皆に説明してくれた。
「はー、どことなく出雲大社の雰囲気があるわね」
マイカの呟きにミズキも頷いていた。
「そだねー」
「行ったことあるのか?」
「初めて行ったのは高校の修学旅行だね」
俺の問いに答えたのはマイカだ。
マニアックな高校である。
「大学卒業後は毎年2人で行ってたんだよ」
ちょっとミズキさん?
明るい調子で言っているけど、内容は重いですよ。
出雲大社は縁結びで有名なんですからね。
「えー、それを言っちゃうんだー」
不満げにマイカが抗議している。
「あ、ダメだった?」
「だって恥ずかしいじゃん」
「そう?」
こういう時は性格が入れ替わったかのようにミズキの方が大胆になるよな。
変わってないね。
外見は面影を残す程度に大きく変化してしまったけれど。
こういう何気ないやり取りを見るとホッとする。
この2人が嫁になってくれて良かった。
心の底からそう思う。
参拝が俺の番になったので感謝の念を伝えることにした。
俺はいい家族に恵まれました、と。
読んでくれてありがとう。




