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318 ドウシテコウナッタ

修正しました。

ものに → もろに

風邪魔法 → 風魔法


 土下座状態のレオーネ。

 一度はこの道を通らねばならんのか。

 他の皆もこれなのかと思うと、考えたくないなぁ。

 ホント疲れる。

 これで「面を上げよ」とか時代劇みたいなノリで言えば簡単に土下座を解除とか……

 世の中そんなに甘くないわな。

 レオーネは、そんなネタ知らんし。

 でも、まあ念のため……


「レオーネ、面を上げよ」


 言った途端にガバッと上半身を起こして俺の方を見た。

 聞く耳を持ってくれないかと思ったが、これならまだマシか。


「ですが……」


 困惑の表情で何か言おうとしている。


「ベリルママに失礼だから立つべし」


「はひっ」


 あ、立った。

 こんな素直に立ってくれるとは思わなかったな。

 噛んでるし、ぎこちない感じで「ギギギ」とかいう音が聞こえてきそうだったけどな。

 とにかく「失礼」という単語に反応したようだ。


「あらー、あなたも美人さんねぇ」


「いっ、いえっ、あの、その……」


 たった一言で頬を赤く染めているレオーネ。


「うふふ、照れ屋さんね。

 可愛いじゃない」


 そう言いながら、やはりハグをした。

 レオーネはというと、頭の上から湯気でも出そうなくらい顔を真っ赤にしている。

 マリカの時のようにわずかな時間だったのになぁ。

 これはマリアとかABコンビが似たようなパターンになりそうで先が思いやられる。

 まあ、そこを考えるのは後にしよう。

 今はベリルママが帰ってきたことが重要である。


「おかえりなさい」


「ただいまぁ」


 フワッとした笑みと一緒に返される。


「んー、やっぱり息子の国が一番ね」


 管理神としては問題発言な気もしなくはないが、スルーしておく。

 空気は読まないとな。

 決して泣かれることを恐れて注意しないとかいう訳ではない。


「さあて、始めましょうか」


 ん? どういうこと?

 何も知らされてないんですが。

 脳内メールの受信ボックスを確認してもそれらしいものはないし。


「ハルトくんはここに立って頂戴」


「はあ」


 言われた通りに立つ。


「他の皆はこっちねー」


 離れた所に誘導される女性陣。


「それじゃあ、行くわよぉ」


 何を始めようというのか。

 お、空中にくす玉が現れたよ。

 何かにぶら下がっている訳でもないのに浮いている。

 奇妙な絵面だが、魔法を使えば可能なのでそこは気にしない。

 それよりも引っ張る紐を握るベリルママの笑顔の方が気になる。

 実に無邪気な感じで、いたずらっ子を連想してしまうんだよ。

 まさかラソル様がらみのことじゃないよな。

 皆目、見当がつかない。


「パンパカパーン」


 自分の口でファンファーレですか。

 今日のベリルママはノリノリだ。

 本当に帰ってきたのが嬉しいんだな。

 そういうことなら、いたずらっ子の気分になるというのも分からなくはない。


「えいっ」


 グイッとくす玉の紐が引っ張られた。

 紙吹雪や紙テープが降り注ぐ中で垂れ幕がシュッと落ちきった。

 えーと、[おめでとう]だって?

 何がおめでとうなのか俺には分からないんですが。

 自分の帰還におめでとうはおかしいし。

 どう見ても俺に対するおめでとうだよな。

 そんなこと言われる理由も原因も思い当たる節がないんですがね。


「どういうこと?」


 サッパリ訳が分かりません。


「「こういうことよっ」」


 不意に間近で声がした。

 2人!?

 女か!

 くっ、重力魔法だと!?

 このタイミングで一瞬とはいえ──


「しまっ……」


 くす玉は注意を逸らすための囮か。

 まんまと騙されたって訳だ。

 魔法が発動した今なら分かる。

 全員にハグしながら様々な魔法をセットしていたことが。

 ただし完全に組み上げたものじゃなく鍵となる中核の術式をあえて外したものだ。

 これなら隠蔽などしなくても用心していない限りは気取られない。

 下手に隠蔽するよりよほど効果的である。

 それでも俺が油断していたことで招いた失態だ。

 上手く誘導されたとはいえ、な。

 そこから先は簡単だ。

 くす玉を割ることがスイッチになっている。

 アレで見事に気を逸らされたことを考えれば見事と言うほかはない。

 それとも俺の間抜け振りを嘆くべきなのか。

 とにかく気を逸らされたタイミングでセットした術式にキー術式を填め込み発動。

 念の入ったことに認識阻害を真っ先に持ってきているし。

 転送魔法で2人の女が飛び込んできた瞬間に重力魔法で俺の動きを抑える。

 それも消費魔力が少なくなるように一瞬だけ俺を止める程度のものだ。

 芸が細かい。

 完全に封じるものだと魔力の大きさでセットした時に気付いたはずだからな。

 ここまで来れば、後は反応が遅れる形となった俺の懐に2人が飛び込んでくるって訳だ。

 ベリルママの差し金だってのは分かるが、何だってんだ?

 殺意は感じないが……

 まあ、そのせいもあって完全に懐に入られた。

 殺気を感じなかったのも接近を許した一因ではあるがな。

 理力魔法で弾いてもいいんだが、ここはあえて受けておこう。

 今回のことを教訓として戒めとなるようにな。

 このダッシュからすると、そのまま突っ込んでくるつもりのようだ。

 暗器をを隠し持っているということもない。

 助走から予測できる衝突ダメージはゼロ。

 決して軽くはないがステータスの差は大きい。

 ただし重力魔法でバランスを崩したお陰で踏ん張りが利かない。

 このままだと吹っ飛ばされるな。

 2人がかりだからウエイト差でも負けている。

 砂浜でなければ何とかできたんだが……

 最初からそこまで計算していたってことか。

 ということは俺をここに呼び出したエリーゼ様も一枚噛んでいたんだな。

 あるいは首謀者である可能性も否定はできないが。

 いずれにせよ見事にしてやられた訳だ。

 そして俺はダブルショルダータックルをくらった。


「む?」


 理力魔法で足場を作ってインパクトの瞬間に踏み込むか。

 ここまで使わなかったのは俺が咄嗟に対策することを考慮してのことだろう。

 つまり、最初からこうするつもりだったということだ。

 恐れ入る。

 実に周到なことだ。

 そして、それを確実に実行するだけの能力があるか。

 面白い。

 これを卑怯と言うのは己の未熟さを露呈させるようなものだ。

 油断したのは自分。

 読み切れなかったのも自分だからな。

 こんなに楽しいことはないだろ?

 だから相手の創意工夫を否定するのは無粋というものだ。

 更にもう一工夫が来る。

 発勁だ。

 よもやショルダータックルでそれとは完全に予想外だった。

 体の芯に衝撃が伝わってくる。

 だが、ひとつミスだな。

 こうまで踏ん張りが利かないように仕込みをしておいて最後の一押しが発勁ではな。

 俺が踏ん張れている時に選択すべき手段だったのだ。

 大したダメージは入らない。

 というよりゼロだ。

 やはりステータスの差は大きい。

 これならもっと吹っ飛ぶ方に踏み込みの軸足を使った方が良かった。

 倍の距離は吹っ飛ばされていただろう。

 だが、それなりの勢いで飛ばされることに変わりはない。

 俺は砂浜をドザザ─────ッと背面でスライディングさせられることとなった。

 もちろん自分の意志とは関係なくだ。


「うわっぷ」

 もろに砂を被ってしまった。

 戒めとしてくらうことを選択はしたが、砂くらいは弾いても良かったか。

 バカである。

 今更な事実だな。

 だが、まあこれも戒めのひとつとしておくか。

 顔に引っ被ったのは風魔法で払うがな。

 俺にショルダータックルを噛ましてくれた女たちの追撃がありそうなんで。

 砂浜を駆ける音が聞こえてくる。

 次に何がしたいかは見当がついた。

 最初がツープラトンのタックルだったからな。

 寝転がった状態の俺に助走をつけて向かってくるとなれば。


「ランニングボディプレスだよな」


 思わず呟いていた。

 俺でも知っているようなプロレス技ってのがなんだかね。

 特にプロレスファンって訳じゃないんだが。

 そこはエリーゼ様がこの一件に関わっているからだろう。

 地球の文化なら何でもいいやという大雑把さが透けて見えるようだ。


「「とうっ」」


 掛け声と共にジャンプしたのが分かる。

 空気の流れから予想通りの技なのは分かるが、まだ目は開けられない。

 軽い風魔法じゃすべての砂を吹き飛ばせませんでしたー。

 湿気を含んだ海の砂って厄介だね。

 しょうがないから新魔法のドライ洗浄だ。

 けど、それとは別に気になることが。

 なーんか聞き覚えのある声なんだよな。

 はて? 誰だっけ?

 そんなことを考えている間にボディプレス炸裂。


「わぷっ」


 また砂を被ったよ。

 せっかくドライ洗浄で洗ったのに目が開けられない。

 絶対にタイミングを間違ってるよな。

 つくづく俺はバカである。

 まあ、ボディプレスの間接的なダメージとして受け取っておこう。

 直接的な方は彼女らには悪いがゼロだ。

 痛くも痒くもない。

 むしろ柔らかくていい感じの極楽気分である。

 あ、いい匂いもするなぁ。

 なんかベリルママに抱きしめられた時の匂いに近い感じがする。

 なるほど、ベリルママの引率で来ていたんなら当然か。

 移り香ってやつだな。

 まんまベリルママの匂いじゃないのは彼女らの匂いが混じっているからだろう。

 ……いかん、思考が変質者的になってしまった。

 こんなこと考えていると身内に知られたらどうなるやら。

 氷のような冷たい目で見られたら敵わん。

 とっとと起きよう。

 そう思って体を起こそうとしたら抱きつかれた。

 はあっ!?

 なんで、どうして、何故、なに、ホワーイ?


「ちょっ!?」


 一体全体、なんなのさっ!?

 頭の中が真っ白デース。

 誰か説明プリーズ。


「ハルくーん!」


「ハルー!」


 俺のことをこんな風に呼ぶ奴は2人しか知らん。

 しかし、この場にいるはずがないのだ。

 ドライ洗浄で被った砂を洗い流す。

 今度こそ目が開けられるようになったが、抱きつかれているせいで面が拝めない。

 俺はステータスのゴリ押しで上半身をむくりと起こした。

 両サイドにいる彼女らの抱きつきは、その程度で振り解けない。

 プラチナブロンドの髪が両側に見えるばかりである。

 髪の色だけならアイツらじゃないと言えるのだが……

 【天眼・遠見】を応用して見てみた。

 日本人の顔立ちではない美人が2人。

 だが、面影がある。


「ミズキチにマイマイか」


「「そうだよー!」」


 大学時代の同期にして同士にして親友であるこの2人が異世界ルベルスに来るとは思わなかった。

 そして何がなにやらサッパリだ。

 ドウシテコウナッタ……


読んでくれてありがとう。

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