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316 レオーネ、ヤクモ経由で初めてのミズホシティへ

修正しました。

自分にも → 自分も


 ヤクモの夜に静寂が拡がっていく。

 新国民の誰もが言葉を失い呆然としていた。

 訓練後のマッタリタイムに呼び集めてマリカとシヅカが本来の姿を見せたからなんだが。

 一応、バフ系の魔法は使ってパニックは防ぐようにしておいたんだが。

 これは効果ありと考えて良いのだろうか。

 ローズは腕組みして大きく頷いているけどな。

 誰も騒ぎ立てて取り乱すようなことがなかったことに満足しているようだ。

 どうやら充分に納得がいく結果みたいだな。


「あー、とりあえず見せたから戻っておこうか」


 ここで言う「戻る」とは人化するということである。


『はーい』


「うむ」


 マリカは元気よく念話で、シヅカは満足げに声を出して返事をした。

 龍の姿で人語を喋るって器用なことをするものだ。

 口の中で風魔法を制御してやってるみたいだな。

 無駄に高度なことをしているけど、シヅカにとっては呼吸をするのとさしたる差はないだろう。

 マリカにはまだ難しいので念話なのは仕方のないところだ。

 人化するのに時間がかかっているのも、そういう制御能力の部分が弱いからかもな。

 まあ、シヅカに任せておけば大丈夫だろう。

 時間をかけてマリカが人化すると周囲にざわめきが戻ってきた。

 困惑する雰囲気もあるが、割合と落ち着いているようだ。

 ローズはこの状態まで見切っていたのか。

 さすが夢属性の神霊獣である。

 俺が感心しているとハリーが声を掛けてきた。


「ハルト様」


「ん? どうした、ハリー」


「自分も人化できるでしょうか」


 どうやら興味が出てきたみたい。

 いや、もともと妖精組の皆は忍者に憧れるだけあって人化に興味を持っていた。

 それができなかったのでハリーは着ぐるみを使っていたんだけどね。

 ローズはやろうと思えばできたみたいだが着ぐるみで充分なんだとさ。

 わざわざ、オッサンの着ぐるみを選ぶくらいだからなぁ。


「やってみたらどうだ」


 進化しているハリーなら可能だけど、あえて断言はしない。

 マリカのように苦労する恐れもあるからだ。


「それもそうですね」


 返事をしたハリーがさっそく人化を試みるようだ。

 シヅカにコツを聞くとかもせずに。

 大丈夫なのかと思いながらシヅカの方を見ると無言で頷きが返された。

 まるでダメということはないようだな。

 ハリーが光り出した。

 淡い感じの光に包まれるのはマリカの時と同じでゆっくりしたものである。


「む」


 マリカの人化をやや速くしたような感じはある。


「ほうほう、自分でコツを掴んだようじゃな」


 シヅカが感心しているくらいだから凄いのだろう。

 生憎と生身を変化させるという経験のない俺には分からない感覚だが。


「すごーい」


 マリカが万歳ポーズで喜んでいる。

 綺麗系の顔立ちをした幼女が無邪気に喜ぶ様はなんとも言えない不思議な感覚をおぼえる。

 微笑ましさと違和感のようなものを混ぜ合わせたというか、自分でもよく分からない。

 まあ、微笑ましく感じているのは間違いない。

 そのうち慣れるだろう。

 たぶん……


「できました」


 着ぐるみと寸分違わぬ姿に人化した。

 運び屋の映画の人である。

 どうやら、あの姿が気に入っているようだ。

 禿げてるイケメンって需要あんのか?

 動画で色々と見ているから何かしら感銘を受けたのかもだが。


「いいんじゃないか」


 本人が気に入っているなら俺がとやかく言うことじゃないな。


「ふむ、初めてにしては大したものじゃな」


 シヅカにそう言わせるならそうなんだろう。


「かっこいー」


 ホントか?

 イケメンだけどハゲのオッサンだぞ。

 マリカの趣味がよく分からん。


「マリカよりすばやくじんかできたー」


 そういうことですか。

 容姿は関係ないんだね。


「くーくー」


 お見事ー、ですか。

 こういうのは負けず嫌いのローズさんが対抗してくるかと思ったんだが、そういう気配はない。

 やはり人化には欠片ほども興味がないようだ。


「何を常識とすれば良いのやら分からなくなってきました」


 静かに頭を振るレオーネ。


「そんなに非常識なことか?」


「非常識と言いますか……

 ここ何日かの出来事が目まぐるしくて何がなにやらといったところです」


 あー、そうかもね。

 死ぬまで奴隷かと思っていたら解放されて進化して。

 妖精に龍に神霊獣までそろって見ることなんて普通の西方人じゃ一生ないだろうし。

 いずれかでさえ見る機会なんて、ほぼないだろう。

 高いランクの冒険者なんかでもね。

 加えて今日の昼には迷宮の暴走も体験したしなぁ。

 あっさり片付いたけど。


「そのうち慣れるだろうさ」


「はあ……」


 俺のことはまだ細かく教えてないから、下手すりゃドン引きだがな。

 他所の世界から来たとか。

 魂を半分喰われたとか。

 それもこれも大きな混乱を招きかねないからベリルママのことを教えなかったが故である。

 未だにルディア様のことを月の女神だと思っているからなぁ。

 実は本物の神様の眷属で亜神だなんて知ったら、どう思うんだろうね。

 ミズホシティに連れて行く時には教えておいた方がいいかもな。

 それとも一部に情報解禁しておくか。

 ……結果が読みづらいのが悩ましいところだ。

 レオーネの反応を見て決めるのも悪くないかもな。

 西方の夜が明けるまではヤクモに残していこうかと考えていたんだが。

 連れて行くとするか。

 ミズホの朝まではまだ時間はあるからブルースたちと話をする余裕くらいはあるだろう。

 この時間を大幅に短縮させてしまうのは些か可哀相ではあるのだが。

 まあ、今生の別れではないということで勘弁してもらおう。

 細かな予定は教えていないので予定を変更しても混乱がないのが救いである。


「しばらく自由時間にするからブルースたちと話してこいよ」


「よろしいのですか?」


「何のために連れて来たと思っているんだ?」


 この状況でお預けとか意地が悪いにも程がある。


「スマンが1時間しかない。

 そこは了承してくれ」


「いえっ、ありがとうございます」


 最敬礼で頭を下げるレオーネ。

 大袈裟な奴だよ。

 頭を下げたまま微動だにしないからな。


「行っていいぞ」


 これを言わないと、ずっと動かなかったかもね。


「はい、ありがとうございます」


 ようやくレオーネがブルースたちの方へと向かった。

 それと入れ替わりでローズが目の前に来る。


「どうした?」


「くーくぅくくっ」


 一緒に行きたい、ですか。

 俺から何かを感じ取ったようだな。

 エリーゼ様から言われたことで俺自身も気付かない何かがあるようだ。

 良いことなのか厄介ごとなのかは分からんがね。

 ローズが加わるとなれば心強さが増すというものである。

 ただ、それをするとヤクモに残る新国民の護衛をハリーだけですることになるからなぁ。

 心許ないとは言わないが万が一ということもある。

 守るべき対象が千人以上と多いし。

 あー、でもいずれは誰もいなくなるんだよな。

 自動人形だけで農作業とか管理をさせるつもりだったから。

 その時に合わせて空中空母を配備するつもりだったけど、前倒しすればいいか。


「わかった」


「くうくー」


 やったーなんて言いながら飛び跳ねている。

 ストレス溜まってたんだろうか。

 単純に嬉しいだけの可能性もあるけど。


「それで新国民の調子はどうなんだ」


 少し探りを入れてみた。


「くっくくぅくーくうくくっ」


 メールで送るから見るべしだって?


「あー、了解」


 細々とした所まで報告するつもりだな、これは。

 【多重思考】で確認しておこう。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 なんだかんだで時間を潰して本日もミズホシティに帰ってきましたよ。

 エリーゼ様が後からメールで指定してきた場所は海岸だったけど。

 何を企んでいるのやら。

 余裕を持って少し早めに来たので、まだ夜は明けていない。

 ミズホシティの街灯が周囲を照らしているので暗くはないけどな。


「くくっくーくぅくうくくぅ」


 久しぶりに帰ってきたぞーとテンションが上がっているローズさんが駆け回っている。

 言うほど久しぶりじゃないでしょうが。

 釣られて一緒に走っているマリカに合わせてるな、ありゃ。

 思わず「子供か」ってツッコミを入れたくなる。

 どちらも子供だけど。

 年齢的にも、そうなんだよな。

 括弧内の年齢は無視ということでよろしく。


[ローズ/神霊獣・カーバンクル /守護者/不定/1(587)才/レベル313]

[マリカ/妖精種・ハイフェンリル/守護者/女 /0(286)才/レベル238]


 こんな具合なので年齢のお話はタブーです。

 マリカは大丈夫だと思うけど、ローズさんは結構気にすると思います。

 間違っても隠れBBAなんて言っちゃいけません。

 恐ろしいことになるからね。

 何にせよ子供っぽい2人である。


「しょうがないのう」


 シヅカも苦笑しているな。

 俺と似たような心境なんだろう。

 それはいいとしてレオーネはどうしたんだ?

 先程からやけに気配が薄い。

 俺の背後で控えていたと思ったんだけど……


「なんだ?」


 振り返ってみるとレオーネがシティの方を見ていたようだ。

 俺たちに背を向けている格好だ。

 それはいいんだが、息をしていない。

 語弊があるな。

 その言い方だと死んでいると思われかねない。

 息をのんだ状態で固まっていると言うべきだろう。

 ただし、今の感じで数分は軽く経過しているようだけど。

 気配を殺していると感じたのがそのくらいからだから間違いないと思う。

 普通の人間ならとっくに酸欠になっているだろう。

 まあ、元は漁師な海エルフである。

 これくらいで窒息したりはしないのだろう。

 進化してシャドウエルフになった分、パワーアップしているし。

 そうは言っても放置する訳にもいかんよな。


「レオーネ、聞こえるか」


 ビクリと痙攣するように反応した。

 お、意外。

 もっと周囲が見えない聞こえない感じになっているのかと思ったけど。


「し、失礼しました」


 俺の方を向いてぺこぺこと頭を下げている。


「そんなに呆気にとられるようなものじゃないと思ったんだが」


「申し訳ありません。

 あんなに巨大な建物は見たことがなかったものですから」


「あー、城な」


 色々と手を加えたせいで縦にも横にもデカくなってしまったからなぁ。

 敷地面積はゲールウエザー城とそんなに変わらないと思うが、高さもあるからな。

 要塞化したお陰で全体的に高いし。


「あれが城ですか……」


「見慣れない建築様式だとは思うが、あれがうちの基準だ」


 大幅にリニューアルしたせいで外観は思いっ切り和風に傾いてしまっている。

 ただし、要塞やら外国の建築なんかも参考にしたので純和風ではない。

 作った俺が言うのも何だけど奇妙奇天烈な感じだ。

 レオーネからしてみれば一度は絶句するのも無理はないと思う。

 この調子だと新国民たちも予備知識なしはヤバそうだ。

 連れて来る前に幻影魔法で様子を見せておくか。

 生の迫力は伝わらないとしても見たことないものを目撃して困惑することはないだろう。

 ちょうど今のレオーネのように再び固まるようなことはないと思いたい。


読んでくれてありがとう。

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