315 魔法講座の結果と夜のお出かけ
修正しました。
ABコンビニ → ABコンビに
結局、西方でのマリカの姿は【縮小】を使った白狼スタイルで通すことにした。
白狼と言っても決してエースパイロットな髭のおっさんではない。
人化した時は幼女だからな。
結局、うちの面子だけでいる時は人化が基本ということになった。
本人としては人化するのは楽ではないと言うし数分ほど時間もかかる。
戻るのは一瞬だけど。
故に俺も強制するつもりはなかったんだが、こうなった。
ダニエラに懇願されてしまったからだ。
別にダニエラが誇る胸元の大型兵器を使われたとかいう話ではない。
使用されていたら屈服する形になっていたかもしれんが。
一安心なのか残念なのかは俺の中でも評価の分かれるところではあるが。
それはともかく俺としては自在に変化できるに越したことはないと思っただけ。
人化する時だけ苦労するのは馴染みがないからだろうし。
相応に練習すれば楽にこなせるようになるはず。
故に修練のために願いを聞き入れた形だが、周囲がどう思っているかは不明だ。
自在に変化できてこそ守護者だとシヅカが言ったので、そちらの方向に誘導されていると思いたい。
なんにせよマリカが頻繁に変化する機会が増えたということだ。
念のために俺はネックレス型の魔道具を作って渡しておいた。
これは主に認識阻害用だ。
身につけると基本的に身内以外は認識できなくなる。
さすがに攻撃すると認識阻害の効果は切れるけど。
あと、任意で認識させることも可能。
消費魔力効率を考えると妥当な効果だと思う。
他にも色々と効果を持たせてるからな。
破損が一番困るし。
マリカが本来の大きさに戻った時にはチェーンが伸長する術式も組み込んである。
伸長と言っても倉庫と連動しているだけで本来の長さは変わらないんだが。
マリカのサイズによって引っ張り出されたり格納されたりする訳だ。
それはいいと思ったのだが、想定外の問題があった。
最初から考慮しておくべきだったという意味では想定外などと言ってはいけないと思う。
和服にネックレスは似合わない。
数珠にすれば良かったかもね。
けれども、それでは修行僧っぽくなってしまうか。
致命的にダサくなりそうな気がしてならないのだが。
まあ、いい。
ネックレス自体がつけている本人以外には見られないんだし。
俺のように神級スキルの【天眼】を持っているなら話は別だが。
そんな訳で再び人化したマリカとお出かけをすることになった。
え? 魔法講座を端折るなって?
どうせレベルアップしてるんだろうから結果だけでも教えろ、か。
なかなか読みが鋭いな。
ああ、でも俺が【教導】スキルを持ってることに気が付けばそうでもないのか。
お察しの通り使わせていただきましたよ。
いま俺の側にいる新国民の大半がレベル2桁中盤だからね。
実に心許ないじゃないか。
西方の冒険者のレベルとしちゃボリュームゾーンを突破して一目を置かれる状態だけど。
さすがに数時間で3桁レベルに到達なんてあり得ないか。
それでもだ。
レベルは少しでも上げておくに越したことはない。
それに新国民は内包型の魔法に関しては素人ばかりだ。
うちじゃ、これを覚えて初めてスタートラインに立ったと言えるからな。
当初の予想としては、そう簡単にいかないだろうと思っていた。
レオーネ以外はね。
最初にコツを教えただけで色々とできるようになったので講座は免除となった。
やっぱり天才だな。
ノエルとタメを張れるくらいの逸材だと思う。
という訳で天才は除外しての話だ。
普通の人は努力して結果を出す。
そうそうレオーネのようなことがあるはずはないと俺は思っていのだが。
結果は部分的に予想が当たった程度となった。
簡単に教えたことができる者が出てしまったからだ。
まず最初に灯火の魔法を内包型で使えるようになったのがガンフォールだった。
これは些か意外だった。
ABコンビの次に苦戦するかと思ってたんだよな。
ハマーやボルトもね。
種族的にドワーフが魔法を苦手にしているからしょうがないと思っていたんだが。
ガンフォールはそういう枠にはまらなかったようだ。
逆にハマーはまともにハマったけどな。
そしてABコンビも。
彼女らが苦戦するのは最初から分かっていた。
2人は放出型の魔法に馴染んでしまっているからな。
言わば間違った授業を受けて内容をノートにびっしり書き込んだ状態だ。
それを消しゴムですべて消してやり直すような大変さがあったはず。
苦労してたよ。
一方で、そういうのを要領よくできるのがエリスである。
新しいノートを用意して一から始めるなんてことができるからな。
まあ、それでも3姉妹の中で真っ先に灯火の生活魔法が使えるようになったのはクリスなんだけど。
ガンフォールが成功して間もなくだったから感心させられたよ。
やはり最初から真っ白な状態の方が吸収が早いようだ。
続いてエリスが成功し、2人に励まされる形でマリアも成功。
それとほぼ同時にボルトが灯らせた。
こうなるとハマーが焦るんだよね。
額に血管が浮き上がるくらい必死の形相になってたさ。
血圧、上がるぞ。
若くないんだから心臓とか脳の方もそろそろ気を付けないと。
ていうか、50過ぎだからこっちの世界じゃ老人扱いだから既に用心しておかないと。
医療関連の知識や技術は魔法だよりだったんだし。
でなきゃ50才から老人の枠に入るとは思えない。
それだけ、こっちの世界じゃ寿命が短いってことだ。
おまけにドワーフは大酒飲みが多いからなぁ。
循環器系の病気もかかりやすくなっているはずだ。
そんなことを注意しても心情的な焦りが収まる訳もないだろうから好きにさせておいたけどな。
万が一の時は治療するだけだ。
ハマーが焦れば、魔導師であるABコンビも焦るかと思ったが根気よく頑張っていた。
最初に全然別物でスタートラインは皆よりずっと後ろだと言っておいたのが良かったようだ。
頑張るのはいいが、そう簡単にはいかないんだよな。
ハマーにしてもABコンビにしても。
俺が口出しを一切しなかったからというのもある。
3人がヘロヘロになるまで待って助け船を出すことにしたからだ。
ハマーのスタミナはABコンビよりも上だが焦りがある分、消耗も激しかった。
仲良くほぼ同じくらいのタイミングで集中が切れ始めたところで、いくつかアドバイスをし直した。
月影の面々に初めて教えた時と内容的には変わらない。
今回の魔法講座で最初に言った内容を繰り返しただけとも言う。
【教導】スキルをフルに使いはしたけどね。
今度はすんなり灯火が使えた。
疲れたことで余計なことを考えないようになると踏んでのことだったのだが。
上手くいきすぎて俺も驚かされたのは内緒だ。
この時点でステータスを確認してみた。
ハマーとABコンビはMPをギリギリまで消耗していたが、これはしょうがないだろう。
他の面子は比較的早い段階で魔力制御できるようになっていたので既に回復していた。
3人には回復ポーションを渡しておく。
まだ寝るには早い時間だからな。
続いてはレベルの確認である。
灯火が使えるようになった順に並べてどれだけレベルアップしたかを見ていく。
[ガンフォール/レベル61→62]
[クリス /レベル41→50]
[エリス /レベル50→55]
[マリア /レベル47→53]
[ボルト /レベル50→53]
[ハマー /レベル59→60]
[アンネ /レベル50→55]
[ベリー /レベル50→55]
レベルアップの度合いはまちまちだな。
同じ魔法を教えたというのにだ。
それも早く習得したかどうかは、あまり関係なさそうである。
真っ先に使えるようになったガンフォールは1しか上がっていない。
元から身体強化で無意識に魔力制御できていたからだろう。
今回の魔法講座で得られたものが少なかったという訳だ。
これはしょうがないね。
それとは対照的に2番目に魔法を成功させたクリスが凄い。
驚くほどレベルを上げたからな。
開眼したと言ってしまうのは大袈裟かも知れないが。
昼前までのレベルが断トツで最下位だったのが影響してビリのままであるけれど。
それでも皆との差は大きく縮んだと言えるだろう。
次いでレベルアップ幅の大きかったのがマリア。
クリスほどではないとはいえ彼女も何か掴んだんだろうな。
そういう意味で可哀相になるのがハマーか。
本当にギリギリで何かを得た感じみたい。
というより、ハマーが普通なんだと思う。
いや、むしろ数時間でどうにか内包式の魔法をものにしたハマーも凄いはずだ。
周囲がその事実をこれ以上ないくらいに曇らせてしまっているけれど。
憐れである。
そう考えると新人たちは優秀だよな。
レオーネは別格としてもね。
やっぱり進化したのが影響しているのか。
これといって根拠になるような明確な証拠はないのだけれど。
月影の面々より簡単にレベルアップしている気がするし。
個人差の幅が大きいのでなんとも言えないところではある。
苦もなく一気に上がった者もいれば逆の者もいる。
あるいは同じレベルから同じだけレベルアップしたのに内容に差があるとか。
エリスとABコンビのことだ。
あまり苦労しなかったエリスに対してABコンビは難儀していたからな。
結果は同じなのに課程に大きな差があるというのが皮肉だが。
でも、まだマシかもね。
エリスが要領よくささっと終わらせた上にレベルまで上だったりしたら凹むよ。
今回だけでも結果が同じなのは良かったんじゃないかな。
これから先も同じとはいかないだろうから。
なんにせよ皆には明日のダンジョン探索までにもう一踏ん張りしてもらうことになる。
内包型の魔法に切り替えが完了しただけの状態だからな。
だが、俺は出かける。
という訳でツバキに教師役を頼んだ。
あと補助講師として月影の一同。
ダンジョンで魔法を使って戦えるように仕上げてもらう予定である。
そうそうレベルアップはしないだろうが、どうなっているかは明日のお楽しみである。
「マリカ、行くぞ」
「はーい」
元気いっぱいに手を上げる和服の幼女。
何度見ても慣れないな。
元の強面な姿が焼き付いているだけに。
仕草なんかは元から今の姿に合う形のものだったが……
やはり見た目の印象というのは大きい。
俺としてはシャープな感じのお姉さんに人化するんじゃないかと思っていたからな。
人化というのは本人の精神性が影響するみたいだから仕方ないんだろうけど。
「今宵は妾も行くぞ」
「私も行きたいです」
シヅカとレオーネが同行を希望してきた。
シヅカはともかくレオーネはなぁ。
明日のダンジョン探索のメンバーに入れているんだが。
睡眠時間を大幅に削られることになるのは感心しない。
反対しようかと思ったんだが、やめた。
ヤクモへ寄り道することを考えるとブルースたちとも話がしたいだろうし。
明日の探索は後衛に専念させて俺が監督すれば何とかなるだろう。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □
ヤクモへ飛んできた。
相変わらずハリーが真っ先に飛んで来る。
「うわー、ほんもののにんじゃだー」
マリカの口から忍者という単語が出てくるのは違和感があるな。
俺の知識を分け与えているから不思議ではないんだが。
やはり、ファンタジーに忍者は似合わないということか。
お前が言うなと大いにクレームがつけられそうだ。
剣と魔法の世界にもっと似つかわしくないものを作ってるからな。
輸送機や空中空母なんてその典型例だろう。
とはいえ、どちらも気にするだけ無駄である。
既に存在してしまっているのだ。
慣れればいいだけのこと。
現にうちの国民は慣れているからね。
誰だ? 感覚が麻痺しているだけなんて言ってる奴は。
とにかく、マリカが興奮してはしゃいでいる。
ハリーの周囲をグルグルと駆け回っている姿は犬っぽい。
駆け回られている側は目で追うだけだ。
行動がここまで幼いとレベル的に上位者であるという感覚が湧かないらしい。
それを極端にしたのがラミーナ組だったけどな。
「メールで知らせておいたマリカだ」
「はい」
ハリーが返事をするとマリカが俺の隣へ来てペコリと頭を下げた。
「マリカです。
んーと、じょういようせいぞくのはいふぇんりるです」
「ハイパピシーのハリー、よろしく」
「よろしくですー」
どちらからともなく2人は手を差し出して握手を交わした。
読んでくれてありがとう。




