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301 転送門の駅とブレザーと

 では、次だ。

 これで今回のまちづくりにおける大型施設はラストになる。

 それが終われば、後は住宅街に設定した場所に住宅を設置していくだけだ。

 そちらの準備も着々と進んでいるはずだ。

 妖精組がスマホに送ったマニュアル通りに基礎工事を行っている最中である。

 そうは言っても日本の住宅で行われているような力仕事はない。

 最初から最後まで魔法を使って行うものだ。

 よって土煙が巻き起こったりもしない。

 汗もかかず汚れもしないなんて日本の現場で働いている人達が聞いたら、どんな風に思うのかな。

 魔法を習得したいとかだろうか。

 生憎と向こうの世界セールマールでは魔法に対して管理神直々の封印が施されている。

 諦めてくれとしか言い様がない訳だ。

 詮無いことを考えてもしょうがないか。

 それよりも妖精たちの仕事ぶりを気にした方がいいよな。

 班分けして効率化を図っているのは最初の方で確認した。

 たぶん俺が今から始める施設の設置を完了させた後くらいのタイミングで皆も終わるんじゃないかな。

 別に競争している訳ではないがね。

 それに仮に妖精組の作業が完了していなくても住宅を設置しながら待つこともできる。

 どの区画も未完のままなんてことはないだろうし。

 ぼちぼちやれば良いだけのことだ。

 ちなみに、その気になれば全世帯分を一気に倉庫から引っ張り出しての同時設置も可能である。

 緊急時でもないのにそこまで必死にやったりはしないがね。

 とにかく俺は俺の作業をすべきだな。

 大型施設のラストを飾るのは転送門を備えた駅だ。

 駅と言えば普通は商業施設と組み合わせるのがデフォなんだろうけどな。

 転送門は保安上の問題が発生しうるので閉鎖施設にする。

 俺がもっとも懸念しているのはジェダイトシティだ。

 現状は王城の中に設定してあるから、限りなく低いパーセンテージの話になるけど。

 王国からシティへの移行後には王城の外に駅を用意するつもりである。

 その場合に部外者が侵入してくることも考慮しておかなければならない。

 荷物に紛れ込んだりとかな。

 ジェダイトシティからミズホシティやヤクモに跳ばれると面倒だ。

 故に、こういうことは用心深すぎるくらいでいい。

 転送門が作動している間は絶対に外に出られないようにしておく。

 そのために駅という名の閉鎖空間を用意したのだ。

 もしかすると空港と言った方が相応しいのかも知れない。

 線路も滑走路もないけどな。

 死ににくいオッサンの映画でテロリストが占拠したのは空港だったか。

 うん、縁起が悪いから駅でいいや。

 でもって駅を閉鎖空間にする理由だが、侵入者対策である。

 転送されてきた者や物に問題がある場合は迎撃するためにな。

 あるいは適当な場所に転送するのでもいいか。

 転送先が迷惑しない程度のものであるならという条件はつくだろうけど。

 なんにせよシティ内であるにもかかわらず、ここは外と同じなのだ。

 限定的とはいえ外部と繋がっている訳だからな。

 電波でつながる携帯電話のような感じか。

 携帯電話と違って送られてくるのは人や物なんだが。

 だとするなら空中空母以上の防衛体制をもって防備するのが必然と言えよう。

 いくら国民以外に利用できないようにしても紛れ込まない保証はない。

 あんまりセキュリティレベルを上げすぎてしまうと、いざという時に問題が発生しかねない。

 例えば国民ではないが保護したい相手がいる時も転送できなくなってしまう。

 これを防ぐためには国民と一緒にいる場合は転送可能な設定にする他ない。

 あんまり細かな制限をつけると魔力効率が極端に悪化するからなぁ。

 面倒な話である。

 不幸中の幸いというか地上施設であるから地脈から魔力を吸い上げることができる。

 もちろん増幅器を使って還元するようにしておくんだけどね。

 そういう状態で防衛体制に用いる魔力を確保しないといけないし。

 空母より一度に使える魔力量が多いとはいえ余裕がある訳ではない。

 施設の重要性から考えてリソースを食い合うような状況は空母より深刻だろう。

 シビアな魔力運用が求められる訳だ。

 一応は高い攻撃力を持たせられるんだけどね。

 とにかく空母以上の防御力が必要になる。

 招かれざる客は駅の施設外に逃がさないのが目的だからな。

 重力魔法を併用すれば防御の助けになるだろう。

 それだけでなく重力魔法は出力次第では攻撃にもなりそうだ。

 殲滅が必要な相手の場合は押し潰してしまえばいい。

 グロ注意?

 あー、そういう問題があるよな。

 だったら光魔法でモザイクでも入るようにして圧壊するってことで。

 それより重力魔法で動きを封じて他の魔法を当てた方がいいかな。

 魔力消費のコスト的にもその方がいいかな。

 分解とかどうだろう。

 圧壊するより証拠を残さない気がするな。

 見た目の問題も解決できそうだ。

 少なくともグロくはない。

 ただ、対象次第ではコスト面で問題があるか。

 魔法抵抗力が高い場合とか質量が著しく大きい場合とか。

 荷物に紛れて大物が来るなんて状況は普通では考えられない。

 が、大型の魔物が人化しているケースもないとは言えないしなぁ。

 限りなくゼロに近い可能性だとは思うけど。

 基本は分解にしておくか。

 割に合わない相手の場合は弱点属性の魔法で集中砲火にすればいいんじゃないかな。

 他にも色々と仕込んでおこう。

 二重三重にトラップを仕掛けておく。

 え? 過剰すぎないかって?

 世の中には石橋を叩いて渡るという諺があるのだよ。

 うちの子たちに危害が加えられる可能性がわずかでもあるなら徹底してその芽を潰すさ。

 罠にかかりたくないなら来なければいいのだ。

 言うまでもなく相手に警告なんてしないよ。

 向こうだって密かに忍び込もうとするんだからな。

 許可の無い時点で教える義理なんて無い。

 ただ、あんまり後味の悪いことになっても嫌だしなぁ。

 ある程度の条件をつけて見逃すケースも設定しておくか。

 初犯で悪党じゃないとか。

 偶然の事故だと判断される場合とか。

 もちろん入国なんて許さないけど。

 記憶を封印して送り返すまでだ。

 そういうケースの方が少ないだろうなぁ。

 誰であれ無許可の相手には来て欲しくないね。

 事故であるなしにかかわらず厄介ごとの匂いしかしないからさ。

 下手すりゃ西方だと手に余るようなのがうちに転送されてくるってことも考えられるし。

 用のない人は来ないでください。

 面倒事も後始末が面倒なのも御免被ります。

 思考を脱線させながらも作業は進んでいた。

 もうすぐ終わるな。

 考え事をしながらでも複数の作業や思考ができるとか便利すぎだ。

 【多重思考】スキルよ、ありがとう。


「……………」


 さて、駅の設置も終わった。

 これで今回予定していた大型施設の設置はほぼ完了だ。

 仕上がっていないのは細かな部分だけ。

 そういうのは自動人形に指示を出しておけば勝手にやってくれる。

 初期の頃に比べたら随分と楽になったものだ。

 あとは住宅を設置していくだけ。


「あ、そうだ」


 住宅を配置したら基礎との接続とかは自動人形たちにやらせよう。

 我ながらナイスアイデアだ。

 という訳で俺は妖精組のいる住宅街へと向かった。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 妖精組が全員整列していた。

 それはいい。

 仕事が終わったということだからな。

 うちの子たちは実に優秀である。

 自分のすべきことを理由もなく途中でほったらかしにしたりはしないし。

 にもかかわらず皆の姿を見た俺の第一声は「あ?」であった。

 別の問題があったからだ。


「なあ、なんでブレザーなんだ?」


 聞かずにはいられなかった。

 全員がブレザースタイルの服を着ていたからね。

 大小の差はあるけど同じデザインの服だ。

 いつもは思い思いの服を着ているのに。

 なんでだ?

 しかもデザインが何処かで見たような感じだし。

 有り体に言ってしまえば学校の制服だ。

 中学とか高校のね。

 だから人間種なら中学生や高校生に見えたかもしれない。

 ただ、着ているのが妖精組だからなぁ。

 何というかコスプレしている感をそこはかとなく感じてしまうのだよ。

 そういや日本人だった頃に子猫に学生服やセーラー服を着せた画像を見たことがあったな。

 ちょっと調べてみたら過去にそういうブロマイドなんかが爆発的に売れたそうだ。

 あの画像を思い出してしまった。

 向こうと違って中身はケットシーとパピシーだけどね。

 着ているのはブレザーだし。

 なんにせよ違和感があるからコスプレっぽく感じるんだろう。

 でも、みんな似合っているので明らかに変だとは思えないんだよなぁ。

 そういや真性のケモナーさんはこういうのも喜ぶのだろうか。

 俺? 俺は微笑ましいと思うだけだ。

 そんなことよりブレザーを着ている理由である。


「これは我々の考えた学生服です」


 俺の疑問に答えたのはキースだった。

 胸を張ってドヤ顔をしているな。

 尻尾は見るまでもない。

 隠しも我慢もせずにブンブンと元気よく振られている。

 実に潔い振りっぷりだ。

 とにかく、キースはブレザーを「学生服」だと明言した。

 そうだよな。

 コスプレなんて可能性は限りなく低いのだ。

 いや、妖精組だからコスプレしないとは言い切れない。

 このタイミングだと本気の方が勝つだろうけど。

 というか最初に出会った時の忍者スタイルもコスプレでありながら本気だったな。

 どう見ても俺が設置した学校に触発されたとしか思えない。

 流れ的に皆が何を望んでいるのかは見当がついてしまった。


「学校に通いたいのか」


「「「「「はい!」」」」」


 元気いいな。

 予想通り過ぎて言葉がないですよ。

 学校に行きたいからって制服までデザインするとか並々ならぬ熱意だし。

 それを許可するとして誰が皆を教えるのかっていう問題があるけどな。

 レベル100を余裕で超えているからね。

 どの授業も教わる側じゃなくて教える側になりかねない。

 冒険者としての戦闘訓練だってとっくに終わってるし。

 ソロでもパーティの連係でも余裕で対応できる。

 新しい知識だってすぐに覚えてしまうから座学も必要ないくらいだ。

 そもそも妖精組に何かを教えることのできる者など数えるほどしかいないんですがね。


「皆を教えられる教師がいないんだが?」


 新規の国民なら自動人形でも教師は務まるんだけど。

 妖精組じゃ教えることがすぐになくなってしまう。

 マニュアルを読んだらすぐに何でもできるような子たちだよ。

 現に基礎工事はスマホに転送したマニュアルをその場で読んで、すぐに作業にかかった訳だし。

 かかった作業時間も俺の想定より若干早いくらいだった。

 こんな状況で誰を教師にしろと?

 俺もローズもたまにならいいけど、毎日のようにとはいかないぞ。

 ローズが元奴隷組に仕込んでいる最中だけど、あれだって期間限定だからな。

 そういう意味も込めて教師がいないと言ったんだが──


「「「「「ガ───ン!」」」」」


 全員そろって四つん這いのガックリポーズを披露してくれましたよ。

 しかも整列状態だから凄みというか迫力のようなものがある。


「うおっ」


 だから俺が驚いたとしても不思議はない。

 正直に言うと、ちょっとビビったくらいだ。

 示し合わせたかのように息もピッタリだったし。

 これでわざとらしいと感じないのはドンヨリした陰鬱な空気が漂っているからだな。

 本気でショックを受けたらしい。

 なんだかなぁ。

 明らかに俺が悪いよな、これ。

 発言が無神経すぎた。

 うーむ、どうしたものか。


読んでくれてありがとう。

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