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293 そして寝る前にあっちこっち

修正しました。

下人 → 下忍


 晩飯の後は休むだけだ。

 表向きはね。

 ちなみに俺らが就寝するのは輸送機の中である。

 街中で宿泊する場所が用意されていたらしいけど断った。

 土下座ノーサンキューってことで。

 代わりにゲールウエザー組が泊まるので無駄にはなるまい。

 飯の後に俺らが送って帰ってきた。

 街のすぐ外だから盗賊はいないだろうけどダンジョンの近くだからな。

 はぐれの魔物くらいは出る可能性がある。

 魔導師団員がいるから大丈夫と最初は断られたけどね。

 食後の散歩をかねているとか適当なことを言って押し切った。

 暗がりを利用して襲ってくる魔物とかもいるしな。

 それがアンデッドだったりしたらシャレにならん。

 まあ、普通はそんなのが湧いたりはしないんだけど。


「さて、じゃあまずはジェダイトへ行くか」


「うむ」


 ガンフォールを伴って転送魔法である。

 ハマーとボルトは留守番を命じられている。

 俺じゃなくてガンフォールにね。

 考えがあるということで話を聞いてみたら苦笑せざるを得なかった。

 身内に厳しい爺さんだなぁというのが俺の感想だ。

 え、何がどう厳しいのかって?

 じきに分かるよ。

 そんな訳で、さっそく転送魔法で跳んだ。

 到着。

 一瞬である。


「よお、ガブロー」


 ジェダイト王国の王太子が目の前にいた。

 ただし、椅子から転げ落ちた状態だ。

 どうやら急に現れたことに驚いたようだな。

 予告なしだから無理もない。


「おお、スマンスマン」


 向こうから見ると謝っているようには見えないんだろうなぁ。

 誰の目にもノリが軽く映るはずだからね。


「急いでいるので目の前に転送してしまった」


「ふん、情けない奴じゃ。

 これしきのことで腰を抜かすなど」


 自分の孫を相手に手厳しいものだ。

 相変わらずのガンフォールである。


「いや、無理があると思う」


 言葉もなく呆然としているガブローの前で漫才のように掛け合う俺たち。

 こんなことしている場合じゃない。

 時間は有限なんだ。

 さっさと仕事にかかろう。


「じゃあ、俺は転送門の仮設置をしてくるから」


「分かった。

 ワシは話を通しておく。

 手続きは時間がかかるじゃろう」


 ガンフォールがこんな風に言うくらいやっておくことが多い。

 王国からシティへの移行があるからな。

 ガンフォールが退位してからの方が話はややこしくならないんだとか。

 そのあたりは完全に任せている。

 ジェダイト王国のシティへの移行なんて布告して通達してってだけでも書類の山になるという話なのでね。

 しかも、これはドワーフの他国家への挨拶とかは省略しての話である。

 考えるだけでも頭が痛い。

 ということでガンフォールに丸投げした。

 面倒くさいから逃げたとも言う。

 だったらハマーとボルトを連れて来ればいいのにとなりそうだが、ガンフォールが却下した。

 ガブローやその下で働く一同にやらせるんだと。

 要は鍛えるってことだな。

 丸投げの丸投げとも言うが。

 ガンフォールの考えってのがこれのことである。

 可哀相な気がしなくもないけれど。

 これも人材を育てるためだ。

 心を鬼にして……はいないか。

 面倒だからって理由で丸投げしてるくらいだからさ。

 そんなことより仕事である。

 とりあえず屋内訓練場に転送門の設置に行くのが最初の仕事だ。

 ガンフォールの方は完全に任せているので、俺は自分の仕事に専念するだけ。

 ガブローの部屋から訓練場に転送で跳ぶ。

 普段なら歩く所だが横着した。

 この時間なら誰もいないからトラブルにはならないだろう。

 え? ガブローはトラブルの被害者じゃないかって?

 ナンノコトカナー。

 一瞬で訓練場のど真ん中に到着。

 ここに転送門を仮設置する。

 稼働すれば、門から門へうちの国民が自由に行き来できるようになる。

 仮設置なのは場所の確保に時間がかかりそうだったからだ。

 ここは他国との付き合いもする街になるからな。

 転送施設は慎重に設置しなきゃならんわけよ。

 それ故にジェダイトシティでは、とりあえず王城内に仮設置となったのだ。

 正式なものは日を改めて設置し直す予定である。

 あらかじめ作っておいた門を倉庫から引っ張り出して訓練場のど真ん中に置いた。

 術式の記述は済んでいるので地脈と接続するだけで設置は完了だ。

 置くだけで終わりとはいかないのだよ。

 俺の魔力を流して転送門を起動。


「よし、オッケー」


 これで後は地脈から魔力供給しながら稼働するようになる。

 あっと言う間に終わった。

 我ながら反則級なスピードである。

 馴染ませるのに1日はかかるけどね。


「おっと、忘れてた」


 ここ専用の処理をしておかないといけない。

 このままだと訓練場が使えなくなってしまうからな。

 起動した転送門がゆっくりと沈下していく。

 訓練場の床の下に沈み込むように消えていった。

 最終的には完全に埋没。

 床に召喚魔方陣風の模様が描かれた状態になった。

 これで普段は訓練場として使える。

 転送門を使う時は足元に魔力を流して転送門を起動するだけでいい。

 転送門が起動するまで少し時間がかかるようにしてある。

 訓練中の誤作動を防ぐためだ。

 魔力を流して転送門と魔力が接続状態になると床面の模様が順番に光っていく。

 準備完了までのカウントダウンのようなものだな。

 模様がすべて光るまで待つことになるが、途中で魔力の接続を切れば転送門の起動が中止される。

 起動されてしまえば後は行き先をイメージするだけでいい。

 ただし別の転送門がある所に限られる。

 国民的アニメに出てくる某ドアのように、どこでもという訳にはいかない。

 やろうと思うと不可能ではないけど、現実的とは言い難い。

 今より遥かに術式が複雑になって魔力消費も桁違いに跳ね上がってしまう。

 なんにせよ、こちらから移動する時は門は沈んだままだ。

 逆に向こうから来る時は転送門は迫り上がってくる。

 訓練場内にいる者を確実に退避させるための仕様である。

 先に警告音が鳴り床を点滅させながら音声で注意が促されるとはいえ、それだけだと不安があるのでね。

 受け入れ側となる人が門の転送範囲から離れないと転送されない設計にはしているけど。

 ある程度の時間が経過しても退かない場合は理力魔法で強制的に押し退ける。

 向こうから転送してきたら危ないからね。

 安全確保は二重三重にだ。


「よし、次だ」


 この調子で転送門を設置していかないとね。

 後はヤクモとミズホシティだ。

 他にも門はたくさん用意したけど、これらは空中空母用である。

 そちらへの設置はまだである。

 モノは完成しているけど行く必要がないからな。

 管理は新仕様の自動人形にお任せなのでね。

 そんな訳で、まずは長距離転送でヤクモへ跳んだ。

 ガンフォールは翌朝、迎えに行く予定。

 向こうの方が時間のかかる手続きとかあるしな。

 まあ、明日の朝に処理完了とはならないんだけど。

 良くて準備完了くらいかなと思っている。

 できてなくても戻らないといけないのはゲールウエザー組と行動を共にするからだ。

 下手をすると朝食から同席ということになりかねんからなぁ。

 報告を聞いたクラウドがどう動くかだと思う。

 何にせよ俺とは朝まで別行動になる。

 俺は飛び回らないといけないしな。

 まあ、出発する前から打ち合わせで決めてあったので特に問題はない。

 作業は効率よく分担するのが吉なのである。


「到着……したはいいんだが」


 目の前にハリーがいた。

 わざと皆から離れた場所に跳んできたのに目の前にいた。


「……………」


 俺が転送魔法で到着して数秒でシュバッと現れ片膝をついていた。

 忍び装束スタイルだからハリーの頭の中では下忍ごっこが発動しているようだ。

 忍者ハリーただいま参上ってか。

 悪いけど、そのノリに付き合っている気分じゃない。

 転送門を設置しながら【多重思考】を駆使して色々作っているからな。

 そっちの方が気になって仕方ないのだ。

 俺は門を設置する場所に向けて歩を進める。

 ハリーも立ち上がって後をついてきた。


「ローズは無茶してないだろうな?」


 歩きながらハリーに問いかける。


「はい、程々かと」


「程々かぁ」


 ハリーが言うなら間違いはないだろう。

 【天眼・遠見】のスキルで見る限り、そうは思えないような有様なんだが。

 地面に突っ伏して屍のように横たわる者ばかりであったからだ。

 表情的には苦悶しているようには見えないけどね。

 全員が同じ状態だから気になってしょうがない。


「あれは、どういうことなんだ?」


 指差して尋ねてもハリーは慌てない。


「地脈から魔力を吸い上げて回復を受けています。

 あの姿勢が最も回復効率が良いとのことで」


 なんだかなぁ。

 言われて初めて確認する気になるくらいダメな格好だぞ、アレ。

 ローズが吸い上げて皆を回復させてるのは魔力の流れとか見ればわかった。

 【諸法の理】で効率が良い方法だというのも確認できた。

 でも、やっぱり端から見てると微妙なんだよ。


「……………」


 なんにせよ皆が回復するまではローズも動けないか。

 地脈から魔力を吸い上げるなんて芸当はハリーにもできないだろうし。

 回復中はハリーやヤクモの自動人形たちが護衛につく形のようだ。

 いざというときは最大戦力のローズが回復を切り上げて参戦と。

 一応は考えているようだな。

 問題があるとすれば──


「この後も訓練とか言わないよな」


 ハードトレーニングにならないかどうかだ。


「それはありません。

 明日に疲れを残さないよう自由時間になります」


「飯は?」


「既に終えています」


「なら、いい」


 目的の場所が目前に迫ってきた。

 仮設住宅のそばである。

 ここが真っ平らで設置しやすいんだよな。

 地脈も直下を通っているし。


「よし、ここに設置だ」


 バーンと門を出し。

 ズーンと地脈へ接続。

 そしてドンと魔力を流して起動する。

 ここの門は地下には沈み込まない。

 ジェダイトのは場所が場所だけに邪魔になるから、そうしただけだ。


「ほい、完了」


「何ですか、これ」


「これは転送門だ。

 魔力を流すと他の転送門へ移動できる」


「おおっ、自分でも瞬間移動できるのですか」


「転送門のある場所だけだがな。

 さっきジェダイトの王城の中に設置してきた。

 これからミズホシティにも設置してくるつもりだ」


「凄いですね」


 ハリーの瞳がキラキラしてますよ。

 そんなにワクワクした顔をされてもなぁ。

 尻尾の方も我慢してるっぽいけど小さくフリフリしてるし。

 こういうときはハイパピシーになっても変わらんのな。

 モフリストなら我慢できなさそうだ。


読んでくれてありがとう。

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