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278 冒険者専門学校の設立について考えてみた

修正しました。

違約金 → 罰金(全10個所)

「にしても、ABコンビはやることが派手だね」


 冒険者ギルドの登録試験で爆炎球を使うとか。

 せめて火球なら轟音やら振動は発生しないんだが。

 別の訓練場にもかかわらず伝わってくるとか本気出しすぎだ。

 振動の方は震度1の地震が一瞬来たかな、ぐらいだったけど。

 それにしたって爆発音のおまけ付きなら外野陣が騒ぎ立てるのも仕方がない。

 俺がまだ何も教えてないから得意呪文で勝負したんだろう。

 教えたら教えたで見ている連中は縮み上がることになったとは思うがな。

 いずれにせよ張り切りすぎだ。

 魔力を使い果たしたりはしていないと思うが、そういう点も試験官は見てると思うぞ。

 ペース配分を考えられずに自滅する冒険者は多いらしいからな。

 まあ、冒険者登録をする人間に浮かれるなと言う方が無理か。

 そのために専門の訓練や指導を受けてきた訳でもないし。

 俺から登録の話を聞いた時点で皆ワクワクテカテカしてたから予期できたことではある。

 ……先にある程度の教育とかしといた方が良かったかもな。

 せっかく冒険者ギルドに詳しいエリスが身内にいるのだ。

 せめて予習くらいはしておくべきだった。

 次からはそうしよう。

 あ、でも登録予定者がやたらと多くなりそうなんだよな。

 妖精組は前々から登録したがってたし。

 戦闘組も俺の直属になるって言ってるからなぁ。

 国元だけで活動するなら問題ないけど、外に出るなら身分証が必要になる。

 千人組も希望するなら登録させることになるだろう。

 レベルは相応に上げてからになるけど。

 全員を教育するとなると、学校が必要になるか。

 専門学校か職業訓練校みたいなのが西方にはないみたいだし。

 なんでないのか不思議なんだけど。

 そうすりゃ新人冒険者の死亡率とかもっと下がると思うんだけどな。

 ランク分けしても無茶する奴はするし。

 安全な場所で採取に専念していても魔物や盗賊が絶対来ない訳じゃない。

 そういう咄嗟の対処ができるようになっていればとは思うんだが。

 無いものはしょうがない。

 おそらく予算の都合とか、そんな理由なんだろう。

 まさかとは思うが誰も考えつかなかったとか言わないよな?


「……………」


 あり得そうで怖い。

 商人ギルドでシャーリーたちと話をした時も似たような感じだったし。

 まあ、提案したところで賛同する者がどれ程いるかだよな。

 収入の少ない者が金を払ってまで学校に来るかという話に行き着くのは目に見えている。

 新人冒険者は無料かそれに近い授業料にしても問題がある。

 学校の運営もタダではできないからな。

 世知辛い話ではあるが世の中は金で動いている。

 冒険者ギルドに予算が潤沢にあればどうにかなるんだろうけど。

 おそらく無理だろうな。

 となると、うちの面子を鍛える学校は自前でどうにかするしかない。

 俺が一人で全員を仕込むなんてことになったら他のことができなくなるしなぁ。

 しょうがない、うち専用の学校を作るか。

 領土内でやるなら誰にも知られないだろう。

 予算がどうとか言われることもない。

 存在が知られたら使わせろとか言ってくるかもだけど断る。

 うちは入国制限が厳しいよ。

 欲しけりゃ自分たちで勝手に作りなさい、だな。

 別に冒険者ギルド傘下の組織でもないし。

 うちはうちで自由にやる。

 最初は試行錯誤になるだろう。

 今後のことを考えるとノウハウの蓄積は必須である。

 引き継ぎとかも楽になるだろうし。

 そうなると人手も必要になるが、細かいことは後で考えよう。

 エリスだけでなくガンフォールとも相談した方がいいだろうからな。

 とりあえず学校は計画だけのものだ。

 それ故、現状はABコンビの両名に注意しておくということで。

 それも合流してからになるがな。


「そういう指示を出しておきましたから」


「なんだ、そうだったのか」


 エリスの指示だったとは思わなかったな。

 だったら注意する必要もないか

 心配して損した。


「ペース配分の減点はないのか?」


 念のために聞いてみる。


「直後に接近戦の模擬試合も行われますから」


「ああ、そういうこと」


 余力は残しておく前提での指示だったんだな。

 俺が浅はかでした。

 魔法で全力を出し切ってガス欠状態になると、しばらく脱力状態になるからなぁ。

 倦怠感を感じるとかいうレベルの話じゃないらしい。

 俺も最初に家を作った時に経験があるけど酷い時は眠ってしまうようなことがある。

 普通は俺のように1年も眠り続けたりはしないけど……

 もっとも多いパターンが気力で動こうとしても動作が緩慢になってしまうくらいか。

 動くのが億劫になるレベルよりは酷いと思う。

 その状態で模擬試合とか結果は火を見るよりも明らかだ。

 なるほど、よく考えられている。

 魔法が得意だからと調子に乗るような奴が最初に痛い目を見る訳だ。

 死ぬ危険のない試験でっていうのは良いことだね。

 まあ、この段階で教訓を得ておきながら実戦で痛い目を見る奴がいないとは言わない。

 所詮は試験の上で思い知った程度のこと。

 どうしても認識の軽い連中は出てしまうからな。

 このあたりは、うちでも注意しないとな。

 国民から犠牲者など出てほしくないし。

 なんにせよ、一応は冒険者ギルド側も確実にそういう点を見極めるようだ。


「ペース配分を確認しつつ懐に入られた時に対処できるかも見る、か」


 西方の魔法使いは呪文を唱えるのに時間がかかるからな。

 そうなると接近戦では魔法が使えない。

 魔法使いは懐に入れば終わりと考えている者も多そうだ。

 それ故に護身術の程度も試験に含まれるんだな。

 なかなか合理的な試験だと言える。


「そうです」


「あの2人なら心配いらんだろ」


 なにしろ第2班でそういうことばかりやってたんだから。

 魔物相手の訓練は別途必要だろうが、対人戦は慣れているはず。


「ですから彼女らには余力は動ける程度に残せばいいと言っておきました」


 なかなかエグいことを考えているな。

 魔法で模擬試合の相手をビビらせようって腹積もりか。

 派手にやっておけば、魔法が使えない前提の模擬試合でも相手は畏縮するだろうからな。

 対戦相手から1本取ることもあるかもしれない。


「たまーにいるんですよねー。

 模擬試合なのにやり過ぎる人が」


 転がっているゴミどもを冷ややかな視線で見つめるエリス。

 おお、怖っ。

 Mでもないのに背中がゾクゾクしたよ。

 そういや試験のための模擬試合は現役冒険者に依頼を出す形で行われるんだったな。

 俺らの時もそうだった。

 依頼を受ける奴の中には変なのが混じっていることもある。

 それこそエリスの言うように過剰に痛めつけてくる輩もいるわけで。

 試験官が制止するとしても、すぐには止まらないケースもあるだろう。

 そういうのを阻止するには最初にビビらせておくと。

 後で報復されることが考えられないアホも中にはいるだろうけど悪くない作戦だと思う。

 問題があるとすれば、最初の魔法実技でビビらせすぎた場合だな。


「やり過ぎで模擬試合の依頼を受けた奴が逃げ出したらどうするんだ?」


「依頼放棄ですから罰金ですね。

 模擬試合の罰金は高いですよ」


 意味ありげにエリスが笑みを浮かべる。

 く、黒いな。


「他の依頼の時よりか?」


「ええ、報酬は安いですが拘束期間が短いので人気の依頼ですから」


 死ぬ危険がない楽な仕事ですぐに終わるとくれば人気があるのも納得だ。

 いくら安くても1食分くらいにはなるだろうし。

 なにより武器や消耗品の損耗がほとんどない。

 防具は試合がどう転ぶかで変わってくるが、普通は修理が必要になることはないだろう。

 躱すか貸し出される武器で受ければ済む話だ。

 高価なポーションだって使うこともない。

 それができないということは新入りと互角レベル以下ってことになる。

 新人が化け物みたいな奴なら話も変わってくるがね。

 大抵は中堅どころにあしらわれる程度の腕前しかないそうだ。

 楽な仕事である。


「人気がある分だけ罰金を高くして希望者を殺到させないわけか」


「それもありますね。

 メインは依頼を確実に遂行させるためですが」


「すっぽかす奴がいるのか?」


 安いとはいえ確実に稼げる依頼だ。

 なにしろ失敗など考えられないのだから。


「罰金が今ほどでなかった頃はそういうことが、よくあったそうです」


 報酬が安ければ責任も軽く見積もるってことか。

 依頼を受けた以上は自分の信用問題に関わってくると思うんだが。


「今でも希にですが、いるんですよ」


 困ったものです的な口振りだがエリスの表情は苦々しいものではない。

 むしろ苦笑しているくらいだ。

 その様子から察するに、まともでない連中が意図的にということはなさそうだ。


「前の晩に飲み過ぎて寝坊したとかだろ」


 ウッカリ系のミスだな。


「はい」


 更なる苦笑とともに返されるエリスの返事。

 仕事の前の日くらい飲むのを控えろよ……

 ついついツッコミを入れる相手もいないのに、そんなことを考えてしまう。

 とはいえ所詮は他人事。

 うちの子たちには学校で教えれば済む話だ。

 その上で失敗するなら、それは本人の問題である。

 それ故、ギルドに提案するような防止策などは考えたりしない。

 冒険者ギルドだって無策な訳ではないからな。


「それで複数の奴に仕事を振る訳か」


 ハリーやボルトなんかは、そのパターンだったな。


「ええ、そうですね。

 必ずしもそうなる訳ではないのですけど」


「俺とかツバキたちなんかが、その例外パターンだったな」


 苦笑で返されてしまった。

 そういや、あのときも騒がれる結果になったな。

 俺たちとしては控えめにやったつもりだったのだが。

 まあ、学習したはずの今回がこの結果なのはムカついてたからである。

 やり過ぎの感は否めないが反省はしていない。

 もちろん後悔もしていない。


「それで、このゴミ連中はどうされますか。

 この状態だと、やり過ぎということで罰金が発生する状態なのですが」


「すっぽかした時と同じくらいか?」


「はい、残念ながら」


「残念ながらって何だよ」


 失笑ものである。

 周囲の目など気にせずに腹を抱えて笑ってしまう。


「あら、そうは思われないのですか?」


 意外そうに問われてしまった。


「思うぞ。大いに思うぞ」


 同意しない訳がない。


「ですよねえ」


 2人して笑ってしまった。


「ひいっ」


 俺たちの会話に入ってこられなかったオッサンが悲鳴を上げている。

 それほどに俺たちは黒い笑みを浮かべていた。

 とはいえ、何時までも笑っている訳にはいかない。

 延々と笑い続けるなど、不気味なだけである。

 なにより時間がもったいない。


「で、残念なことだがコイツらを治療しようと思う」


「そうですね。

 実に残念なことですが治療しないと罰金を支払わないといけません」


 要するにこの場合の罰金は治療費となるのだろう。

 怪我をしていない状態なら罰金は支払わなくて良いようだ。


「罰金が発生しないのであれば放置したいところです」


「コイツらの自助努力でどうにかできるとは思えないがな」


 チンピラどもの財力では完全回復は難しいだろう。

 治癒魔法を受けるにせよポーションを買って使うにせよ、な。


「そんなことはありませんよ。

 借金をすればいいだけです」


 なかなか黒いことを考えてらっしゃいますよ。

 コイツらじゃ貸してくれる相手がいるかどうか。

 まあ、借金奴隷コースだろうな。

 同情はしないがね。

 本当に罰金の制度があるのが残念で仕方がない。

 コイツらに限ってだがな。

 やり過ぎ防止のためには良い制度だと思う。


「それじゃあ治癒魔法を使って終わらせるとしよう」


 終わらせるの所で意味ありげに目を細めると──


「そうですね、治癒魔法で終わらせるのが良いかと」


 エリスも同じような視線を返してきた。

 俺の意図を読み取った証拠である。

 周囲の連中が俺たちの会話を聞いても本当の意味で理解できる者はいないだろう。

 まあ、エリスが予想しているほどの不穏なことはしないつもりだ。

 情けをかけるんじゃなくて周辺被害を出さないためにな。


読んでくれてありがとう。

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