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255 進化したのだよ

「結論から言えば、諸君らは進化した」


 俺の言った言葉を耳にしても全員が首を傾げるだけだった。

 困惑する以前の問題だ。

 俺が何を言っているのか理解できない、理解不能ってことだな。

 信じる信じない以前の問題だ。

 何を言っているのかサッパリ状態。

 なに言ってんだコイツとすら思わない。

 進化? どういうこと? なにそれ?

 誰を見てもそんな感じである。

 うちの子たちですら半数以上がこうなんだ。

 平常運転のままなのはノエルだけ。

 あれは情報が少ないから様子を見ているという感じかな。

 最年少が冷静沈着ってのはどうなんだ?

 まあ、だからこそ月影のリーダーを任せているんだけど。

 残りの月影の面子は大いに困惑中だ。

 ツバキとハリーはノエルに近いな。

 俺の言うことだからってことで他の面子よりは困惑の度合いが薄い。

 若干困惑しつつも新たな情報待ちってところか。

 進化という単語そのものが理解できないんじゃしょうがない。

 生物が環境に適応して云々とか言っても、無理だろうな。

 それを言って理解できる者が何人いるだろう。

 全員じゃなきゃ意味がないのだ。

 そんな中で異彩を放っているのがシヅカである。

 やけに期待感のこもった笑顔で待機中。

 ワクワクテカテカ、略してwktkなんて言葉が頭の片隅をかすめた。

 あー、そういや召喚時に結構な知識を渡してるんだったな。

 この場で進化と言われて理解できる唯一の存在かも。

 いや、ローズも理解していたな。

 俺の守護者だから当然か。

 進化に関する知識も俺と契約した時に得ていたはずだし。

 ん? ということはローズの言動におけるネタ元は俺ってことになるのか。

 ……どうりで濃くて多岐に渡るわけである。

 動画から得ているにしては豊富な情報量だと前々から思っていたけど。

 種が明かされてしまえば、どうと言うことはなかったな。

 代わりに四つん這いでガックリ項垂れたくなったが。

 カウンターで殴られた気分ってこんな感じなのかねぇ。

 とりあえず今は「進化? なにそれ?」状態な面々にわかりやすい説明が必要だ。

 進化の概念がない者に「進化した」を繰り返し言い続けても意味がないからな。

 これは進化論から話さないとダメか?

 どう考えても逆効果だな。

 途中で理解を放棄されてしまう恐れが大いにある。

 仮に全員に理解できるよう懇切丁寧に根気よく説明したとして、だ。

 どれ程の時間が必要になるだろうか。

 ハッキリ言ってそんな時間はない。

 何の概念も持たない相手に簡潔かつ明瞭な言葉で説明を求められるとはね。

 たぶん漫画で説明すれば、言葉で説明するよりは短い時間で理解はできると思う。

 それでも読み切るまでに時間のかかる内容になりそうだ。

 つまり、そんなものを描いている時間はもっとないってことだな。

 無理難題を押し付けられた気分だ。

 どうしようもないだろと思いかけて、ふと思ったことがあった。

 進化という言葉以外で状況を説明できないかと。

 別に進化という概念を今理解する必要はない。

 そこに拘りすぎて手段が目的になっていた。

 プランAがダメならプランBを実行するまでだ。

 なぜ、こんな単純なことが思いつかなかったのだろう。

 俺はアホである。


「もっと簡単に言うと、みんな上位種族になった」


 有り体に言えばいいんだよ。

 いくらなんでも、これなら分かるだろうと思ったのだが。


「「「「「…………………………」」」」」


 なぜか反応は薄かった。

 驚きすぎて反応できないのか?

 にしては困惑すらしないってのは変だ。

 どういうこと?

 訳わからん。

 まさか言葉の意味を理解できなかったとかじゃないだろうな。

 いくらなんでも、それはないだろう。

 現にノエルたちは「「「「おおー」」」」とか感心しているし。


「まさか上位種族とは……

 なるほど、進化とはそういうことか」


 ツバキも呆れつつ納得していた。


「納得です」


 普段はあまり自分から喋る方ではないハリーも感想を述べている。

 反動で饒舌になるとかはないけどな。

 こんなときもマイペースは崩さないのは俺には真似できないね。

 だからこそハリーを引っ張り回しているんだけど。

 黒猫3兄弟や子供組だと、こういう時に収拾がつかなくなりそうだからね。

 留守番になってしまうのは仕方がないのである。

 でも、そろそろ皆も西方に連れて来ようかとは考えているんだ。

 少々のトラブルに巻き込まれても撥ね除けられるだけの地力はあるからね。

 ハリーのように落ち着きのある行動を期待することはできないけどな。

 まあ、そこは何とでもなるはずだ。

 そしてノエルは、無言ではあるもののキラキラした目を向けてきた。

 上位種族にステップアップしたことに興味津々なんだな。

 果たして自分は、どんな上位種族になったのかと。

 そんな中で残念なお知らせをしなければならないのは心苦しいところだ。


「俺とノエルは例外な。

 元から最上位種族だから」


「つまんない」


 無表情でそれを言われるとグサッとくるので勘弁してください。


「そのかわりノエルはレベルが50ほど上がったぞ。

 他の皆は進化はしたが、レベルアップまではしていないし」


 進化してステータスはアップしたけどな。

 それでもレベル130から50もレベルアップするほどの差ではない。

 ある意味、ノエルの方が得をしているのだ。


「ホント?」


 瞳のキラキラは戻らないが、興味深そうな目を向けてきた。


「ホントホント」


「だったら、しょうがない」


 どこがどういう風にしょうがないのだろう。

 よく分からない。

 が、少し機嫌を持ち直してくれたようなので良しとすることにした。

 一方で無反応だった人達は俺のようにはいかなかったようだ。

 俺がノエルの劇的レベルアップを告げた瞬間にビクッと反応していた。


「「「「「──────────っ!?」」」」」


 声もなく目を見開ききってね。

 上位種族になったことより驚くことかい。

 何処が驚くポイントなんだか俺にはサッパリ分からない。

 エルフやフェアリーの上位種族は滅多に現れないくらいは知っているだろうに。

 レアすぎて実感が湧かないのかねぇ。

 上位種族と言われてピンと来ないのは、しょうがないのかなぁ。

 だったら、せめて具体的な種族名を告げていくことにした。

 せめて自分が何者かぐらいは知っておいてもらおうってことだ。

 聞いたことないのばかりだから「へえ、そうなんだ」で終わる気もするんだけどね。

 報われないのは承知の上である。

 破れかぶれの心境とも言う。


「ガンフォールたちはドワーフからドワーフ+になった。

 更に進化するとハイドワーフになるみたいだ。

 ただし、過去にドワーフ+もハイドワーフも存在したことはない」


「なんじゃと……」


 ガンフォールはかすれるような声でそう言うのが精一杯だったようだ。

 これは衝撃を受けていると判断していいのかな?

 リアクションとしては「なんだって───っ!?」の方が分かり易くて助かるんだが。

 いや、騒がれても困るけど。

 ハマーとボルトは絶句してしまっている。

 それなりに大きな反応があったと考えて良いのかな。


「エリスとクリス姫、それからマリアはヒューマン+になった。

 見た目は言うまでもないが、鑑定の魔道具にも影響があるだろう。

 そのまま種族名が表示されるか表示が消えるか、いずれかは不明だがな」


 表示されたら大騒ぎだぞ。

 ヒューマン+とは何ぞやとなるのは間違いないからな。

 それはドワーフ+も同じだろって?

 うちの国民になる面子だから、どうとでもなる。

 エリスはともかくゲールウエザー組は俺の目が届かなくなるからなぁ。

 不測の事態になることも考慮しておかないといけない。

 そこに不安がある訳だ。

 表示されなくても厄介だけどね。

 ヒューマンじゃないってどういうこと? って感じで追及されるだろうし。

 人間種の表示すら消えてしまったらヤバそうだ。

 下手すりゃ魔族扱いされてもおかしくない。


「…………………………」


 どんな騒動になることやら。

 考えるだけで憂鬱になる。

 とりあえずは先延ばしってことにしておこう。

 何の解決にもならんが。


「ヒューマン+ということはその上があるのですか?」


 エリスは騒動に発展する恐れよりも、そちらが気になるらしい。

 というよりジェダイト組のようには驚いていないな。

 もしかして、当然くらいに思ってたから反応が薄かったのか?

 マリア女史が茫然自失って感じだから違うと思うんだけど。

 とすると先にジェダイト組の情報を聞いて心構えができていたからか。


「ああ、エルダーヒューマンだ」


「エルダーヒューマン……

 聞いたことがありませんが、とするなら──」


「ヒューマン+なら過去に何度か例があるぞ」


 エリスの推測を上から被せるように途中で潰した。


「ヒューマンは人間種の中で最も多いからな」


「それではエルダーヒューマンも……」


 歴史上の英雄や過去の偉人の中に存在したのではないかと考えたんだろうなぁ。

 生憎とヒューマン+までしか存在しなかったよ。


「さすがにエルダーヒューマンは俺が初だがね」


 シングルのレベルだった時は、この事実をどう隠すかで思い悩んだものだ。

 そのことに悩まされるのは短時間で終わったけどさ。

 この世界に降り立ってじきに非常識なレベルアップをしてしまったからな。

 故に俺からすると今の言葉は何気なく言った程度のことだ。

 聞く側のエリスは言葉を失っていたけど。

 人類初の事実はさすがに驚きを禁じ得ないか。

 先程からどれだけ驚いているだろうな。

 ちょっと可哀相になってきた。

 一方でクリス姫はニコニコしている。

 ……よく分からんな、このお姫様だけは。

 もしかすると姉より大物かもしれん。


「なあ、ハルトはん」


「どうした?」


「うちらも、その進化とかいう状態になっとるんやな」


 状態異常みたいな言い方だな、おい。


「それなんだが、月影の皆はちょっと特殊でなぁ」


 これを説明してどんな反応されるかという不安がある。


「えっ、ノエルみたいにレベルアップとか?」


 レイナが妙な勘違いをする。


「いやいや、そうじゃない。

 自力で先にラミーナ+やヒューマン+に進化してるんだ」


「「「「「はあっ!?」」」」」


 聞いてないよーの心境だろうね。

 でも、彼女らの方が正しい進化をしたんだ。

 進化というのは本来であれば他者が介在してするものじゃないからな。


「ほら、ルボンダを燃やした時に聖炎を使っただろ」


「いやいやいやいやいや、それはないっしょ」


 レイナがあり得ないと言ってきた。


「あれは制御が難しかったけどさ」


 それは初めて使う魔法で、なおかつ時間制限があったからだな。

 青汁を飲む罰ゲームがあったせいで余計に重圧を感じていただろうし。

 焦りは魔法の制御に影響するから無理ないんだけど。

 俺としては彼女らにとって良い訓練になったとは思う。

 煽りすぎた結果が進化というのが皮肉ではあるがね。

 それだけ彼女らは必死だったということだ。


「もちろん今回のことだけが条件じゃない。

 短期間で急にレベルアップしただろ。

 そういうのの積み重ねで、あとは切っ掛けを待つ状態だったんだよ」


「シャレんなってねぇー」


 レイナは頭を抱えて悶絶している。

 アニスも一緒になって身悶えるかと思ったが、何か考え込んでいた。


「あんな、うち思たんやけど」


 そこから口を開いたアニスは、嫌な予感がしてますという空気を纏っていた。

 これは更に進化したことに気付かれたよな。

 何を聞いてくるのか見当がついてしまった。

 それ故に先のことを考えるんだが、その後の反応は読めない。

 たぶん大騒ぎするんじゃないかと思うんだけどね。

 茫然自失って感じになってもおかしくないし。

 まあ、どうなっても対応できるようにはしておこうか。


読んでくれてありがとう。

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