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244 ダメ亜神をとっちめる方法は?

 何が何でもラソル様を折檻されるようにしてやるぜ。

 かなりムカついたからな。

 向こうの思う壺だからクールダウンするんじゃないのかって?

 限度ってものがある。

 直接手出しできないのは承知の上だ。

 それに面白い手を思いついたしな。

 目に物見せてくれる。

 なんにせよ、ルディア様と交渉しないとな。

 周囲の状況はまだ再起動には至らずといったところか。

 手短に済ませて残った処理を終わらせよう。


『確認しました』


『ダメージが相当大きいようだな』


 ルディア様が苦笑しているような空気が伝わってくる。

 向こうの空気が伝わるということは俺の側からも伝わるものがある訳で。

 疲れ切った雰囲気を読まれたんだろうなぁ。


『問題山積で頭を抱えています。

 ルディア様が慌ててこちらに連絡された気持ちがよく分かりました』


 こんなことで強がりを言っても始まらんしな。

 おちゃらけ亜神をギャフンと言わせるためにも被害者アピールをしておくのだ。


『すまぬな』


 なぜか謝られてしまった。

 いや、普通に考えればそうなるか。

 ルディア様は責任者の立場だし管理不行き届きってことになるからな。

 失言だった。

 今更取り消しはできないのが悔やまれるところだ。


『いえっ、こちらこそ申し訳ありません。

 自分の不注意もありましたし。

 それにラソル様が元凶ですから』


 もっと自分がしっかりしていれば今回のようなことにはならなかったのは確かなのだ。

 俺が100%の被害者だなどとは言わない。

 交通事故のようなものだ。

 責任の一端が俺にもあるのは自覚しているつもりだ。

 被害が一方的すぎて不公平感が半端ないけどね。

 せめて罰だけでも真っ当に受けてもらわんと、やってられないとは思ってるよ。


『それでも責任は私にある』


 この人は……

 全部、引っ被るつもりか。

 らしいとは思うけど、ますます不公平感が大きくなっていくじゃないか。


『いえ、自分はそうは思いません。

 責任がもっとも重いのはラソル様でしょう』


 ルディア様の溜め息が聞こえてきた。

 怒ったり呆れたりといった感じではない。

 これは諦観だろうな。

 何に対してなのかは考えるまでもない。

 イタズラを仕掛けた張本人が責任をまともに取るかどうか。

 取った振りしかしないだろうな。

 お仕置きはされるだろう。

 そこから逃げ切ろうとはしないはず。

 でなきゃ、とっくに兄妹の縁を切られていると思う。

 問題はその後だ。

 ほとぼりが冷めたら何かやらかすに決まっている。

 予測ではなく決定事項だ。

 確定的にそうだと言えるのが腹立たしい。

 ルディア様もそれが分かっているからこその溜め息なのだ。

 諦める前に再犯防止をと思うかもしれんが難しいぞ。

 能力的には同等でも得意分野が違うとなれば、出し抜かれずに阻止するのは困難だ。

 向こうは趣味のためなら全力投球してくるからな。

 でも、身内で助かっているよ。

 昔のアニメの登場人物で似たようなのがいたのを思い出したんだよね。

 そいつは犯罪集団のボスキャラなんだけど企業の中間管理職でもあった。

 その辺りは全然と言っていいほど違う。

 が、年がら年中ヘラヘラしてて手段のために目的を選ばないようなキャラクターだった。

 主人公サイドは何度も煮え湯を飲まされるような形だったのを覚えている。

 何から何までそっくりとまでは言わないけど似てるね。

 雰囲気は、ほぼあんな感じだし。

 自由奔放な行動原理もそっくりだと思う。

 決定的に違うのは向こうが犯罪者ということぐらいかもしれない。

 あと、向こうは国際的大企業の課長だったから役職的には下っ端に近いというのも相違点か。

 被る被害についてはなんとも言えないな。

 おちゃらけ亜神は実害がないようにしているつもりなんだろうけどさ。

 俺らの精神的負荷は向こうの主人公たちと似たようなものじゃないかと思う。

 物語として見る分には手に汗握る形で面白かったけどな。

 でも、矢面に立たされる側にしてみれば堪ったものではない。

 故にルディア様の溜め息には俺もシンクロしてしまいそうになった。

 周囲が静まりかえっているのに溜め息なんかついたら目立つから我慢したのは言うまでもないが。


『確かにそうだがアレがまともに責任を取るかどうかは別問題だ』


 既にアレ呼ばわりである。

 思った以上にキレてるようで。

 これなら動いてもらえそうだな。


『では相応の責任を取ってもらいましょう』


『む? どういうことだ?』


『なあに、早々に取っ捕まえてお仕置きすれば良いのです』


『それはベリル様の判断待ちになるのだ』


 相変わらず堅苦しいお人だ。

 四角四面に決められたことを守るのは場合によっては害にしかならないのに。


『それじゃダメですよ。

 向こうは事後承諾を前提に動いたんですから。

 こっちも同等の条件で行きましょうよ』


『む、しかしな……』


 同等という言葉に心動かされたようだな。

 抵抗感は残っているようだが明確に反論はして来ない。


『こういうときこそ柔軟性を持って対応するべきです』


『むぅ』


 揺れてる揺れてる。

 もう一押しだな。


『ルディア様が二の足を踏むのは仕事が山積みだからでしょう?』


 お仕置きしている暇があれば仕事を手伝わせてベリルママの帰りを待つしかないと思い込んでいるのだ。

 間違いなくラソル様はそれで時間を稼ごうとするだろう。

 仕事をしている間はお仕置きがないと考えているはず。

 そしてベリルママが帰ってくれば事後承諾でお仕置きは軽減されると。

 ならば仕事をさせることでお仕置きの代わりにすればいい。


『ほう、そういうことか』


 さすがはルディア様だ。

 俺が何を言いたいのか即座に察してくださった。

 雰囲気もがらりと変えて楽しげに返答しているし。

 きっと向こう側ではあくどい笑みを浮かべていることだろう。


『そういうことです』


 俺も思わずニヤリと笑った。


『新しいお仕置きだな』


『そうなんですか?』


『今までは泣かせることに主眼を置いていたからな』


 うわぁ……

 それはそれで嫌だな。

 もしかしたらラソル様ってMなのかもしれんぞ。

 お仕置きされたくてイタズラしてるとかだったら……

 想像するのはよそう。

 恐ろしい考えに汚染されてしまいかねない。

 俺はノーマルでいたい。


『そういう効果は見込めませんが』


『なあに、問題ない。

 兄者は黙々と同じことを繰り返して働くのを最も苦手としておるからな』


 あの性格なら恐らくはそうだろうと読んでいたんだがビンゴだったようだ。

 ルディア様が『クックック』と喉を鳴らして笑っていた。

 ドSな女王様の格好をしたルディア様が目の前にいるかのようだ。

 実に恐ろしいね。

 読みが当たったのに嬉しくないのは、そのせいだろうな。

 俺も腹立ててたけど、ルディア様も心底怒っていたのがよく分かった。

 ベソをかきながら強制的に地味な仕事をさせられる約一名の姿が楽に思い浮かべられたほどだ。


『それは、何よりです』


『しかも見方によってはお仕置きではないというのが斬新だ。

 普通に仕事をするだけだからな。

 罰としてカウントされないのがいい』


 ルディア様としてはベリルママに言い訳できるのが重要なのだろう。

 どこまでも真面目な人である。


『まあ、作業量は普通ではないかもしれんがな』


 そう言って再びルディア様が笑った。

 物凄く楽しそうなので、どのくらい普通でないかは聞く必要もないだろう。

 これならベリルママが大幅に罰を減らしても納得のいく結果になりそうだし。


『自分としてはイタズラをしでかした張本人が相応に痛い目を見れば充分です』


『もちろんだ、任せておけ。

 ハルトが被った迷惑分は3倍にして返しておくからな』


 本気だ、とてつもなく本気だ。

 とんとんぐらいで返すのかと思っていたんだがな。

 倍どころか3倍だってさ。


『フフフ、仕事はいくらでもあるということを思い知らせてくれる』


 なるほど。

 ちょっと休憩どころか逃亡しているからな。

 仕事から逃げたのが許せないって訳だ。

 バカなことをしたものである。


『でも、どうやって捕まえるんです?』


『簡単だ。メールを送信する』


 どういうことだろう。

 自首を促すってことか?

 無理じゃないかな。

 確かに労力は少なくて済むのはイライラが募らないけど。

 全然、帰ってこないんじゃ結果は同じじゃないか?

 もしくは、より悪いと思うんだが。

 向こうの自主性に任せるのは危険だと思うんですよ、俺としては。


『タイトルはこうするつもりだ』


 俺の懸念を感じ取ったのだろう。

 ルディア様が『フッ』と笑って次のように言った。


『今すぐ帰ってこなければベリル様に罰を倍にするよう嘆願する、とな』


 軽減を目論んでいる側からすれば、倍は嫌すぎる。

 で、のこのこ出てくれば3倍返しが待っているわけだ。

 罠があると分かっていても、これは出頭せざるを得ないだろうな。

 タイトルからしてこれだもん。


『で、文面はどうするおつもりで』


 タイトルのインパクトに負けないものを考えているんじゃなかろうか。

 長々と書いても読まずに逃げられる恐れがあるから短くて効果的なのをね。


『ハルトから強く要望されているとも進言するから覚悟しておけ、とする』


 なかなか考えてらっしゃる。

 短くて効果的だ。

 向こうは俺のためにというのを全面プッシュして遠回しに減刑を狙ってくるだろうし。

 逆に俺が厳罰を望んでいるとルディア様に言われてしまっては効果がなくなってしまう。

 まさに「ざまあ」な状況になってくれそうだ。


『それなら自首してきそうですね』


 もしかすると楽観的すぎるかもしれんがな。

 向こうだってそれくらいは計算していると見ておくべきだろう。

 それとも詰めが甘いせいで本当に気付いていないとか?

 何かしら対策しているようには思えないんだが。

 お得意の裏で小細工している可能性は否定できんがな。

 あるいはあえて捕まるようにしている可能性もなくはない。

 何故かって?

 今後もイタズラをするためだよ。

 そこまで考えているかは俺には分からんけど。

 詰めが甘いからこそ許されるような状況に持って行くとか。

 もしもそうであるなら大した役者だと思う。

 喜劇役者の類いだけどな。


『うむ。来ないなら宣言通りにするまでよ』


 出てくるかどうかは、どれだけ空気を読めるかにかかっている。

 こういうことには敏感だから千両役者であるかないかにかかわらず出てくるだろう。


『では、その件に関してはそういうことでよろしくお願いします』


『わかった、そちらは任せておけ。

 だが、その口振りでは別件もあるようだな』


『はい。今回の一件に関連することですが』


『どうした?』


 俺は王女とマリア女史の処遇を決めかねていることを話した。

 この2人を連れて来たのは明らかに俺のミスだ。

 この場にいなければ、こんなに悩む事態にはならずに済んだのだからな。

 黙って連れて行くわけにもいかない。

 ゲールウエザー王国と交渉するなら事情を説明せねばならない。

 説明したところで信じるかは別問題だ。

 そして拒否される可能性もある。

 というより、ほぼ確実に拒否されるだろう。

 長らくぼっちをこじらせていた俺には解決困難な案件だ。

 ルディア様に相談して突破口を見出そうって腹積もりなのはしょうがないと思うことにした。

 藁にも縋る思いで他力本願が全開である。

 自力で穏便に済ませる方法を思いつくことができないのが情けない。

 いくらレベルが上がっても無理なことがあると思い知らされた今回の一件であった。

 まだまだ修行が足りないね。


読んでくれてありがとう。

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