242 現実は脳内会議の結論より残酷である
シャドウエルフってなんじゃそれと言いたい。
説明は読んだし理解もした。
だがな、どこをどうやったら俺の魔法で進化させられるんだよ。
ツッコミどころはそこなんだが簡単に切り返されるだろうな。
ラソル様が関わっているのだから。
あの、おちゃらけ亜神が色々と小細工した結果こうなった。
現実であり事実だ。
これを否定することはできない。
騒動の種を持ち込んでくれやがって、まったく。
脱力感が、目眩が、洪水のように押し寄せて襲ってくるじゃないかよ。
ここでそんなのに打ちひしがれた姿を見せるとダメ亜神が喜びそうだから見せてやらん。
とにかく状況を把握しないとな。
レオーネが進化した。
これって俺が魂喰いにやられたときと似たようなことを再現した結果じゃなかろうか。
再現したのは俺ということになるんだろう。
そんなつもりは毛頭なかったんだがな。
ほぼ間違いなく俺の推測は外れてはいまい。
ダメ亜神に誘導された結果なのは疑いようもない訳で。
それでも責任は俺にある。
爆弾発言に動揺しなければ、こういうことにはならなかっただろう。
あるいは動揺していても調子に乗らず魔力の放出をもっと絞り込んでいたなら。
もしくは動揺したからこそ、もっと注意深くなっていれば異変に気付いていたかもしれない。
恐らくは俺がこういうことを考えて反省するであろうことも計算しているんだろうがな。
責任は感じるが八つ当たりしたくなるのも事実だ。
む、待てよ?
だったらルディア様にお仕置きしてもらうのもありかもな。
向こうは事後承諾で減刑を求めるつもりなんだろ。
ならば、こっちも事後承諾でお仕置きを前倒しすればいいじゃないか。
果たしてそこまで計算のうちに入ってるのかね。
今は逃亡中だけど、ベリルママが帰ってくるまで逃げおおせるとでも?
さすがにそれは無理じゃないかな。
いくら小細工が上手くても毎回のようにルディア様に捕まってるんだぜ。
フッフッフ、捕まえたら即座に折檻するよう後で進言しておこう。
そう考えれば少しは気が晴れるというもの。
さて、気持ちの切り替えができたなら次だ次。
再発防止を考えるためには何が原因かを考慮しておく必要がある。
そんなの後回しと言われそうだが、今まさに再発させかねないからな。
相手が相手だけに。
場合によってはルディア様に阻止してもらう必要がある。
そんな訳で俺は【多重思考】による脳内会議の開催を決定した。
では、これより今回の一件における原因について脳内会議を開く。
主たる原因についてだが、意見を聞かせて欲しい。
間違いなくベリルママの魔力だろうな。
同意見だ。
異議なし。
疑う余地もあるまい。
俺がエルダーヒューマンになったくらいだしな。
そうだった……
俺の魔力の質だけで成し得るものではないはずだし。
確かに。
俺もそう思う。少なくとも、こんな短時間では無理だろう。
そうだな。直接ベリルママがレオーネたちにどうこうした訳でもないし。
今シミュレートしてみた。
おお、それで?
俺がベリルママの魔力なしで同じことをやろうと思えば百年単位でかかりそうだ。
それは朗報と言うべきか。
そうだな。次からは魔力を混ぜ込まれないよう注意するだけで予防になる。
待て、俺よ。それは考えが甘いぞ。
なに?
シミュレートの条件を魔力だけに絞っただろう。
十年単位の誤差が出ることは承知の上だ。
それがそもそもの間違いなのだ。
なんと!?
どういうことだ?
俺よ、忘れてはいまいか。
何を忘れていると?
俺には称号があるのだぞ。
むっ!?
うおぉっ、思い出させないでくれぇ。
……[進化を促す者]だな。
いかにも。
なるほど、これがあるせいで進化が促進された部分があるのか。
確かに。あれは祝福とかの効果がつくからな。
神様たちにとっちゃ目印のラベル程度のものだってのに迷惑な話だ。
仕方あるまい。
だとするとベリルママが留守にしている影響もあるかもな。
それはもしや神様のシステムの影響を受けやすくなっているということか。
肯定だ。
恐らくそこを利用された。
認めたくはないが、そうだな。
ゆゆしき事態だ。
ベリルママが帰ってくるまでは油断できない状況になったか。
あのダメ亜神が次のイタズラを考えんとも限らんし。
……それは次の機会に考えよう。
ああ、逃避したくなってくるからな。
頭の痛い話だ。
それよりもシミュレーションは再計算が必要だろう。
大丈夫だ。ざっとだが俺が計算したからそれには及ばない。
おおっ、さすが俺だ。
で、結果は?
魔力を自前にする以外は今回のケースと同じ条件ならば1年とかからんようだ。
バカな!?
そこまで短縮するのはいくらなんでも……
俺も最初はそう考えたが、祝福の効果が著しくブーストされるんだ。
なんだと!?
あり得んだろう、それは。
いや、どうだろうな。
何か根拠があるのだな?
ああ。ブースト率は【諸法の理】で確認できる。
……これは!? どうやら認めざるを得んか。
俺も確認した。今回のように欠損部位を再生する時は祝福がブーストされるのか。
それは疑う余地もないな。
勘弁してくれ……
となると神様のシステムがバグっているのか?
いや、そうではないだろう。
他に何かあるのか?
一定の条件の時に他の称号が密接に関わるようだ。
なるほど、そういうことか。
[女神の息子]と[女神に祝福されし者]だな。
それと[魔導を極めし者]が主に関わっているぞ。
ふむ、相乗効果を生むわけだな。
そういことだ。
だが、それでもブースト率はそこまでいかないだろう。
大事なことを忘れているぞ、俺よ。
む?
俺の半分はベリルママが補ったという事実を。
ああ……
そうだったな……
忘れていた訳ではないんだが……
神様のシステムが管理神代理として俺を扱う瞬間があるようだ。
[女神の息子]もあるんじゃ当然かもしれんが。
しかし、条件がよく分からん。
分かったら乱用しかねないから、それでいいんじゃないか。
もしかしたら修正が入るかもな。
その方が有り難い。
まったくだ。どんなトラブルに巻き込まれるか分かったもんじゃないぞ。
念のためにベリルママに報告のメールを出しておこう。
そうだな、それがいい。予防策になる。
問題は余剰魔力がどこでどう使われるかだ。
たぶん手遅れだ。
それも考えるのはよしておこう。
では、原因はベリルママの魔力が混ざったことと称号の祝福でブーストがかかったためでいいか?
外的要因はそうだろうな。
俺がダメ亜神に踊らされて調子に乗りすぎたことを忘れてはいけない。
うむ、それは重要なことだ。
戒めにせねばな。
異議なし。
すべての俺が同意した。
それでは、俺の総意を得たということで脳内会議を終了する。
「……………」
脳内会議が終了した。
長々と話し込んでいたように思えるかもしれないが、1秒とかかっていない。
『まったく、ラソル様は碌でもないことをしてくれましたね』
『鑑定したか』
『はい』
『だが、それは全員ではなかろう』
『確かに仰る通りですが、何か問題でも?』
『兄者がこの部屋に充満していた魔力を持っていったのは何故だと思う?』
淡々と語るルディア様の言葉を受けて俺は固まってしまった。
本能的に嫌な予感がしたからだ。
『本人は再利用すると言っていましたが……』
見当もつかないと俺は言おうとしていた。
だが、ふと閃きのようにある仮定が脳内を駆け巡る。
『まさか!? あの余剰魔力にも同じような効果があると?』
『兄者が手を加えればな』
「…………………………」
シャレになってないなんてもんじゃねえぞ。
血の気の引く音が聞こえそうだ。
俺は再生の魔法を使った相手だけが進化するものだと思っていた。
試しに義足のオッサンを鑑定してみる。
[ブルース・ボウマン/人間種・ヒューマン+/-/男/31才/レベル52]
アラサーかよ!?
某ゲームで潜入の得意なオッサンそっくりな面してるからもっと年食ってると思ってた。
レベルもレオーネの次に高い。
ジョブが空欄なのはレオーネと同じだ。
これはうちの面々を進化させた時とは違うな。
俺が進化させたことよりも奴隷から解放したことが影響しているのかもしれん。
そしてスキル持ちだ。
上級スキルの【狙撃】だと。
熟練度は低いが【弓術】の上位スキルだから、かなりの腕の持ち主だと考えられる。
腕を切り落とされなかったのは弓の腕前を重宝されたからだろうな。
……それは今は関係ない。
予想通りヒューマン+に進化している。
他の連中も恐らくそうだろう。
拡張現実の表示をいじって確認してみる。
間違いない。
欠損部位を再生した面々がヒューマン+になってるのは、これで確定した。
どこかの誰かが爆弾発言で先に身内にするよう仕向けたのは、こういう狙いがあったからか。
ラソル様もそれくらいはフォローしてくれてる訳だ。
でなかったらシャレにならん。
それはそれとしてだ。
「………………………………………」
見たくないものを見てしまった。
最初に目についたのはルーリアだ。
そちらを見たのは偶々だったが拡張現実の表示は残酷とも言える現実を映し出していた。
あのダメ亜神、こっちでも手を加えてやがったのか。
念のために鑑定で見直してみたさ。
まあ、そんなことしても意味はない。
結果が覆るはずはないからな。
[ルーリア・シンサー/人間種・エルダーヒューマン/魔法戦士/女/19才/レベル128]
更に進化しちゃった。
HAHAHA! 俺と同じエルダーヒューマンですよ。
ヒューマン+だけでも本人になんて説明しようかと思っていたのに、マジ勘弁。
言うまでもなく他の月影のメンバーも進化してるんだよなぁ。
[リーシャ/人間種・ハイラミーナ/魔法戦士/女/17才/レベル123]
[レイナ /人間種・ハイラミーナ/魔法戦士/女/17才/レベル123]
[アニス /人間種・ハイラミーナ/魔法戦士/女/17才/レベル123]
[ダニエラ/人間種・ハイラミーナ/魔法戦士/女/17才/レベル123]
[メリー /人間種・ハイラミーナ/魔法戦士/女/15才/レベル122]
[リリー /人間種・ハイラミーナ/魔法戦士/女/15才/レベル122]
ほらね。
過去に存在したことのないというハイラミーナですよ。
ラミーナ+も存在してなかったそうだけどさ。
まじでコレどうすんだよ。
誤魔化す術があるとはいえ頭痛が痛い。
じゃなくて頭が痛い。
そして、これで終わりじゃないんだな。
読んでくれてありがとう。




