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222 お仕置き始まる

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


 謁見の間に脱出してきた連中がホッとした空気に包まれた瞬間、光学迷彩を解除した。

 たったそれだけで場が凍り付く。

 宙に浮いた状態で急に現れたからな。

 恐怖に駆られた表情をしている奴も少なくない。


 そんな中で俺たちはゆっくりと床に降り立つ。

 が、目線の高さが同じになっても誰一人として満足に動けずにいる。

 俺たちは殺気を放っていないというのに。


「ここまで胆力がないとは酷いものだな」


 侮蔑の視線を向けながら言い放つと、ひときわ豪奢な服に身を包んだ初老のオッサンが反応した。

 この男がバーグラー王国の王なのだが。


「なななななな何者づぁ」


 噛みまくったんじゃ率先して誰何しても威厳なんて感じられはしない。

 おらが村の村長さんかよ。

 華美な服がまるで似合わない悪人面だから盗賊団の頭目の方が似合ってるけどな。

 肝心な時にアタフタしてるようじゃ、それですら務まるかどうか怪しいところだが。


 まあ、メッキがはげても大丈夫だ。

 周りの連中も似たようなものだから。

 アラサー独身の王子も泡を食ったような状態から抜け出せずにいる。

 極悪人ならではの雰囲気というか大物感が微塵もない。


 どう見ても小悪党なんだよな。

 似たもの親子って感じで顔はそっくりなんだが、腕とか脚は枯れ枝かと思わせるくらい肉付きがないし焼き物のタヌキかよってくらい腹が出てる。

 そしてヘアスタイルが似合いもしていないおかっぱ頭だ。

 昔のアニメで悪事を働くトリオのメカ担当を思い出してしまった。


 いや、アニメのキャラの方が何処か憎めない愛嬌がある。

 コイツにあるのは、どことなく媚びへつらうような雰囲気から来る嫌悪感のみだ。

 ハッキリ言ってしまえば粘着質な感じがして気持ち悪い。


「通りすがりの賢者と愉快な仲間たちだ、覚えておけ」


 返事はない。

 この調子では連中の耳に届いているか怪しいものだな。


「ところで、何処へ行こうというのかね」


 隠し通路の方へ懸命に戻ろうとしているデブがいる。

 生憎と通路は地魔法で封鎖済みだ。


「ルボンダ子爵さんよ」


 その呼びかけに禿げ豚がガバッと勢いよく振り返って背中を壁につける。


「な、なぜワシのことを……」


 冷や汗をダラダラとかいて──

 違う。ちょっと動いただけで汗をかいたようだ。

 さすがは不摂生の塊である。


「私のことを忘れたとは言わせない」


 ノエルが一歩前に出た。


「あのとき逃げたエルフ!?」


「アタシらもな!」


 レイナも前に出る。

 続いてリーシャや双子もそろって前に出た。


「忘れたとは言わないですよねー」


 やたら迫力のある笑顔のダニエラさんも続く。

 爆発したいのを我慢している皆の殺気がジワジワと伝わるようで段ボール野郎の顔が青ざめていく。


「どいつもこいつも舐めおって!」


 なんか逆ギレし始めたな。


「逃した上物の商品のことを忘れる訳がなかろう!」


 月狼の友の面々が一気に鬼の形相になった。


「うちらを罠にはめといてええ根性しとるやんけ。舐めとったら耳から手ェ突っ込んで奥歯ガタガタにすんぞ、ゴルァ!」


 アニスは何処でそんな柄の悪い言葉を覚えたんだか。


「凄腕の護衛を連れているからと調子にのりおって!」


 禿げ豚も負けていないな。


「コーマックを退けたからといい気になるなよ」


 はて、コーマックとな? 知らんぞ、そんな奴。


「誰か知ってる?」


「「知りませーん」」


「知らないですねー」


「聞き覚えのない名前だ」


「うちも知らんで」


 レイナとノエルだけが何も言わない。

 何かを思い出せそうで思い出せないような風に見えた。

 聞き覚えがある名前なのか。


「多分だけどさあ」


 少し考え込んでいたレイナが口を開いた。


「あの髭ダルマのことじゃない?」


「私もそう思う」


 髭と言われてピンときた。


「あー、熊男のことかー」


 俺の言葉に関係者一同が大いに頷いた。


「おのれ! この場に残った連中では大したこともできんくせにワシを無視するとは良い度胸だ」


 この期に及んでそんなことを言えるコイツの方がいい度胸をしている。


「今度こそ隷属の首輪をはめてくれるわ!」


 逃げようとしていた奴が何を言い出すのやら。

 いや、こちらの面子を確認して余裕を取り戻したのか。

 ノエルたちの地力が桁違いに上がっていることに気付けていないけどな。

 要するに騒動になっている方に本命の部隊がいるだけで、こちらは隙を見て乗り込んできたと思い込んでいるのだろう。


 それを証明するように現在進行形で城内は騒がしくなっている。

 ここにも時折、断末魔の悲鳴とか何かしらの振動とかが伝わってきていた。

 何故こうなっているのかというと、うちの3人に城内の兵隊を片付けるように頼んであるからだ。

 待機するだけでは暇を持て余しそうな顔をしていたからね。


「えーい、何をしておるか将軍。さっさとこの邪魔者を始末しろ!」


 禿げ豚が吠え終わると同時に横合いから巨漢が襲いかかってきた。

 コイツが将軍らしいが人質でも取ろうと画策していたのかコソコソ回り込んできていたんだよな。

 音さえ立てなければ気付かれないとでも思っているのかというくらいお粗末な忍び歩きだったが。

 当人は禿げ豚に邪魔をされて奇襲が失敗したと思っているようで、俺へ殴りかかってくる拳に殺意を山のように乗せていた。


「甘いな」


 拳を握りつぶしてやろうと待ち構えていたのだが。


「お」


 不意に拳の軌道がそれて巨漢がクルリと宙を舞う。

 ノエルの仕業か。

 デカブツは次の瞬間には背中から地面に叩き付けられていた。


 ズウゥン!


「ぐはっ」


 巨漢将軍が口から血を流していた。

 殴りかかる勢いを利用しつつ捻り込んでの投げ技がまともに決まった。

 一見すると合気道っぽく見えるが、投げてる途中で肘が入っていたので古流柔術の方が近い。

 だからこそ内臓にダメージが入って血反吐を吐いたのだ。


 しかも、ここで終わりではない。

 右に左に鞭を振るうかのように引き上げては投げを繰り返している。

 将軍は既に死に体の状態であり投げられるがままだ。

 叩き付けるたびに派手な音と共に床が揺れ、バーグラーの連中の恐怖を煽っていく。


 投げを止めた時には将軍の体中の骨という骨が粉々になっていた。


「弱すぎ」


 そう言いながら巨漢を軽く横に蹴り出した。


 ビッターン!


 壁面に打ち付けられた将軍の口から飛び出た鮮血が派手に飛び散った。


「「「「「ひいいいぃぃぃぃぃぃ─────っ!!」」」」」


 バーグラーの連中から一斉に悲鳴が上がり、そのまま失神する者まで出る始末。

 残酷な処刑なんて散々楽しんできたんじゃないのかと言いたくなったが、いざその立場に回ると余裕は一切なくなるらしい。


「なっ、ななななんあんなっ」


 相変わらず噛み噛みで何を言ってるのか状態なクズ王。

 恐怖で表情を凍らせたままガチガチと震えるだけのビビり王子。


「ばっ、バカな……」


 目の前の出来事を現実として受け入れられず呆然としている禿げ豚。


「いつまでも前と同じや思たら血ィ見るだけでは済まんで」


 アニスが不敵に笑う。


「次はどいつや」


 グルリと周囲を見渡した。


「うっ、うわあああぁぁぁっぁぁぁぁぁ──────────っ!!」


 誰かが上げた悲鳴に有象無象が化学反応を起こしたみたいに反応しクモの子を散らすように逃げ出し始めた。


読んでくれてありがとう。

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