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215 ガンフォールの決断

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


「事情は何となくわかったが、どうするつもりじゃ」


「国ごと潰すまでだ」


 月狼の友の一同が激しく頷いた。


「無茶だ」


 ハマーが呆然と呟きボルトが同意するように頷く。


「そうです。いくら陛下といえど無謀です」


 常識的に考えればエリスが追随するのも当然だろう。

 現にマリアは突拍子もない俺の発言に目と口を丸くさせている。


「大きな盗賊団を討伐するのとは訳が違うのですよ。国家規模を相手にするなど自殺行為です」


 エリスはそう言うが、まだまだ俺を知らないな。

 うちの国民たちからは間違ってもそんな単語は出てこないだろう。

 そんな風に思っていたら……


「国を滅ぼすなど超大型の魔物に匹敵する戦力が必要なんだぞ」


 ハマーまでもが俺を過小評価するようなことを言ってきた。


「それこそワイバーンや地竜クラスでなければ、どうにもならん!」


 興奮気味に語っているけど、そいつら雑魚なんですが?

 まあ、俺のことを心配してくれているのはわかるので嬉しくはある。

 俺が亜竜程度に負けると思い込んでいるあたりがモヤッとしなくもないけれど。


「どう思う?」


 口出ししないガンフォールに話を振ってみた。


「バーグラー王国程度なら一晩で片をつけるじゃろうな」


 俺の具体的な戦闘力を知らないのにとは思ったが、シヅカの本来の姿を見ているからむしろ当然なのか。


 ただ、エリスやボルトは信じられないとばかりに唖然としているし、ハマーも王の言葉に困惑している。

 やはり俺が常識外の存在だと認識していても限度はあるようだ。


「何を仰るのですか、王よ」


 ハマーが反論を始めたが声が震えている。


「いくら何でも少人数でしかも無策」


 それが何か問題でも?

 俺としては面倒くさいから正面突破したいだけだ。

 それに回りくどい手を使ってもノエルたちの溜飲が下がりはしないだろう。

 できればサックリと終わらせたいのだ。


「どう足掻いても国を相手にして勝てるはずが──」


 ハマーがツッコミを入れ始めたが、最後までは喋ることができなかった。

 ガンフォールが冷ややかな視線を送ったからだ。

 目だけで「ワシの言うことが信じられぬか」と語っている。

 殺気も込められていないのにハマーは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。


「冗談というわけでは──」


 そう言いかけたエリスも同じ目線を向けられる。


「ないのですね……」


 続く言葉は尻すぼみになっていた。

 まあ、エリスもハマーも抗論できないというだけで納得はしていない様子だ。


「お前たちはハルトのことをまるで理解しておらん」


「「え?」」


「考えてもみよ、此度の一件」


 そう言われて困惑する両名。


「予言は除くとしても、その後の行動がハルト以外の誰に成し得たというのじゃ」


 言われて答えられる者は誰もいなかった。

 いないんだけど、それって戦闘力と関係のある話か?


「わずかな時間で南部地域のドワーフの国々の食料を確保? 買い集めて解決できるものではないぞ」


「それは……」


 ハマーが何か言いかけたもののガンフォールの眼光が突き刺さったかのように口をつぐむ。

 マリアやボルトは視線を向けられた訳でもないのに動揺を隠せずにいる。

 エリスも表情が硬い。

 俺がどうやって食料を用意したのか今更ながらに想像したんだろうな。


「ハルトにかかれば魔法でそれくらいのことができるのじゃ」


 植生魔法は見せていないはずだけど、考えを巡らせその結論に至ったようだな。


「あの巨大な輸送機とやらにしてもそうじゃ。あんなものを容易に作り出せる者が他におるか」


 問われてたじろぐ様子を見せるハマーたち。


「神の所業と言われても不思議ではなかろう。ハルトの底などワシには想像もできぬ」


 誰からも返事がない。

 盛りすぎだとか言わんのかい。

 そういう説明の仕方はしないでほしいんですがね。


「しかも戦闘を苦手としておらん。それどころか本気で戦っているのを見たことがない」


「そうかもしれませんが……」


 ハマーが口を開いたものの己の考えが揺らぎつつあるのか、そこから先が続かない。


「配下の者ですら超大型の魔物を一蹴りで屠るのじゃぞ」


 シヅカがジャイアントシャークの脳天をかち割った時の話だな。


「っ!?」


 ハマーはまともに声すら出せずに驚愕の表情を見せている。


「ハルトたちが本気を見せれば、あの国など一晩で灰燼に帰すであろうよ」


 残りの面々も完全に血の気が引いているな。

 無理もないのか。

 この国は他国より生きづらいから総人口は数十万にも及ぶかどうかだけどヤクモの半分くらいの面積なので言うほど狭くもないし。


 まあ、国を相手にするとは言っても搾取されている国民まで対象になる訳じゃない。

 建国して間もない頃にゴブリン数十万を相手に大立ち回りした時ほど面倒な作業にはならないだろう。


 エリスたちが俺の方を見てくるが、何とも表現しづらい視線が送られてきた。

 ガンフォールの言葉を受けて認識は改められたようだけど呆然としているというか何というか。

 神に近いなどと言われても、そこまでの認識は持てないからなんだろう。

 ただ、エリスだけは不意に驚愕の表情を浮かべたかと思うと顔色を青ざめさせた。

 何かを思い出したか、何かに気付いたかってところか。

 この調子だと俺が蝗害を処理したことに気付かれたかもな。


「ああ、ハルトよ」


「ん?」


「前からお主が言っておったスカウトの話じゃが」


 このタイミングでする話かよと思ったが黙って聞いておく。


「ワシは受けようと思う。国の者も好きに勧誘するがいい」


 思わず呆気にとられてしまうほどの方針転換。


「どういう風の吹き回しだ?」


「新天地で自分が何処までやれるか試したくなったと言えば信じるか?」


 何がどうなって心境の変化をもたらしたのかは分からないが、気が変わったのだけは間違いないようだ。


「どうだろうな」


「王などという重苦しい肩書きを残したままではできぬこともあるじゃろ」


 そういうものなのだろうか。

 俺なんて、しょっちゅう国を抜け出して好き放題やっているが。

 昔の時代劇に出てくる暴れん坊な将軍様よりフリーダムだぞ。


「挑戦者になるってことか」


「うむ」


 己を皮肉るかのようにガンフォールは苦笑する。


「この年で挑戦するなど若い連中に笑われるかもしれんがの」


「笑わないよ。人間、死ぬまで挑戦だと思っているからな」


 なんてことを言ったらハマーやボルトが呆れたような目を向けてきた。


「相変わらず自重という言葉を知らんのう」


 ガンフォールにはそう言われながら苦笑されるし。


「俺は俺のやりたいようにやるだけだ」


 何でもないことのように言いながら俺は椅子から立ち上がった。


「ノエル」


「ん、もちろん行く」


「ノエルが行くなら我々もだ」


 脊髄反射で決断するリーシャ。


「もちろんや!」


「アレをぶっ飛ばさないと気が済まないわよ」


 アニスやレイナも呼応する。


「行きますよ~」


「「はいはいっ! 行きます、行きます!」」


 ダニエラと双子ちゃんたちの反応はお出かけ気分のように軽いが、裏を返せば因縁深き禿げ豚を始末しに行くのを待ち望んでいたってことだろう。


「主よ、今からか」


 ツバキがマリアの方をチラ見しながら聞いてきた。

 自衛手段があるようには見えないにもかかわらず同行したいと言うのは目に見えているからなぁ。


「そう言いたいところだが……」


 マリアの方を見た。


「な、何でしょうか」


「これを」


 倉庫から引っ張り出した指輪を2個手渡した。

 さて、これから俺が言うことをどう受け止めるかな。


読んでくれてありがとう。

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