21 守護者な相方
改訂版バージョン2です。
ローズが子供のようにはしゃいでいる。
『くうくぅ~』
これ面白いとか言ってますな。
念話とは色々と別物だし喜ぶのも無理はないとは思うけど。
超省エネでテレビ電話みたいな使い方も可能だからな。
この調子だと早々に使いこなしそうだ。
それはいいんだけど、デジタルグッズを使う精霊獣とかシュールすぎじゃね?
ファンタジーの絵面に合ってないのだけは確かだと思う。
気にしても何も変わらないので話を進めるとしよう。
『じゃあ任務完了でいいですか』
『一応ね。
御苦労様でした』
『はい?』
労いの言葉は嬉しいのだが、一応と言われると引っ掛かる。
まあ、あの規模で魔物が湧いたんだ。
余波があっても不思議ではない。
『大丈夫よ。
魔物がらみのトラブルじゃないから』
さすがは神様。
見透かされている。
『くくー』
頑張れって……
お前は係わる気なしかよ、ローズ。
『では帰っても?』
『ええ、もちろん。
ゆっくり休んでちょうだい』
『はい、失礼します』
『くっくぅー』
バイバーイとローズ。
神様相手でもブレないね。
何にせよグループ通話は終わった。
「さーて、帰ろうか」
「くぅ」
俺たちは並んで歩き始めた。
『それにしても……』
あれだけ暴れてレベルアップなしとは予想外だった。
『罰ゲームだな』
【才能の坩堝】のお陰でゴブリン相手でも一応は経験値が入っているんだが。
倒した数は中核都市の人口並みなのに。
むしろボーナス経験値の方が多い。
これは万単位の軍勢を相手にしたことに絡んだものが多いな。
対軍勝利、負傷ゼロ、周辺被害極小、そしてタイムボーナスといった具合。
後は新魔法の開発で得た分くらいか。
片手間レベルの労力で魔物倒すより効率いいとか……
こだわった甲斐があったのだけが救いだ。
『そういやローズのステータスを見てなかったな』
[ローズ/精霊獣・カーバンクル/守護者/不定/0(586)才/レベル293──]
『守護者ってなんだ?』
【諸法の理】先生の出番である。
契約したパートナーを外敵や不幸から守るジョブだってさ。
実体のある守護霊みたいなものらしい。
だからって訳じゃないだろうけど精霊獣は実体と霊体を自由に選べるみたい。
で、性別は不定と。
仕草や雰囲気が女の子っぽいけどな。
年齢は性別よりややこしい。
子供なのか年寄りなのか、何だかよく分からない。
精霊として600近く齢を重ねてきたが、受肉したばかりだから0才ってことみたい。
『これがロリBBAってやつなのか』
ロリはともかくBBAは禁句だろう。
口にした途端に守護者とか関係なく殺されるって。
俺はMじゃないからスルーだ。
決して自爆フラグを立てたりはしない。
レベルは霊体のみの精霊より高位の存在に進化したから引き継いだってことらしい。
なんにせよレベル1からやり直しにならなくて良かった。
そして称号だ。
[精霊獣(前:孤独の精霊)・超人の相棒・女神の知己]
『こいつもぼっちだったのかよ』
連動して俺の方も称号が切り替わってるな。
[精霊獣の友(前:ぼっちの道を歩む者/元:チョイぼっちオヤジ)]
仲良くぼっち系の称号は返上だ。
類は友を呼ぶという言葉が身に沁みる。
『[女神の知己]ってのは分かるけど[超人の相棒]って何だよ』
俺は目からビームを出す赤マント野郎じゃないぞ。
空は飛べるけど……
深く考えるのはよそう。
際限なく落ち込みそうだ。
それよか相棒のことを考えねば。
最初から神様の存在を知っていたみたいなのが気になる。
「なあ、ローズ」
「くぅ?」
ヒョコヒョコと歩きながら俺の方を見上げてきた。
歩幅は小さいが理力魔法を補助にして滑るように俺と等速で歩いている。
「前から神様のこと知ってたのか」
「くうくー」
もちろん、だって。
「じゃあ管理神が他にもいるとか」
「くー? くうくぅー」
えー? なにそれー、と首を傾げているぞ。
「くーくうーくくっ?」
神様が一杯いるの? なんて聞かれるとは思ってなかった。
「くっくーくうくくっくぅくぅ?」
世界で一番偉いんじゃないの? とか聞く始末だし。
どうやら神様が存在することしか知らないようだ。
『これは色々と説明しなきゃならんか』
そうでなくとも地球の話とかもしないといけないだろうし。
終わりが何時になるか見当もつかんな。
「細かい話は帰って一眠りしてからで頼むわ」
いい加減、休みたい。
「一晩中ずっと戦ってたからさ」
「くーくぅくっくー?」
「え? 何と戦ってたのかだって?」
「くう」
「ゴブリンだよ」
「くっくー」
なぁんだ、とか落胆してるし。
「数十万匹のゴブリンどもを1人で相手してたんだよ」
「くぅくっくくっー!?」
なんですとぉーっ!? と飛び上がるローズ。
そりゃ、そこまで多いと評価も変わるよな。
「くうくっくくーくぅくー?」
何処にそれだけいたのさ? だそうだ。
大量発生を知らなかったみたいだな。
卵の状態では周辺のことを知覚できないからか。
「ここのダンジョンの迷宮核が暴走したせいだよ」
「くぅー!」
俺の説明にローズが興奮し始めた。
歩きながらカンフーアクションのようなことを始める。
『可愛い顔して物騒な性格をしているな』
動きもキレが良くて素人とは思えない。
「1匹も残っていないぞ」
「くくっ!」
ガーン! とか言ってガックリと膝から崩れ落ちてしまった。
四つん這いのまま理力魔法で滑って移動してるけどな。
大袈裟というか態とらしいというか……
「戦いたいなら適当に魔物でも探すといいさ」
シャキーンとローズ復活。
この世界のカーバンクルは随分と好戦的である。
「誰彼かまわずは厳禁だぞ」
「くぅくぅ」
もちろん、とか言っているけどヤバそうなときは俺が阻止するしかなさそうだ。
その後は他愛もない話をしながら地上を目指して上へと進んでいった。
主な話題は俺が今住んでいる場所の話。
場所や周囲の風景なんかは幻影魔法で見せたりもした。
わかりやすさ優先なんだが、海竜との戦闘は話だけで映像は自粛。
興奮させるとマズい気がしたからな。
そうこうする間に最上層の広間にまで戻ってきた。
後は坂を上って木の洞を潜るだけ。
「ようやく地上だ」
「くー」
頷くローズ。
「気付いてるか」
「くぅくー」
もちろん、という返事。
外にいる連中の気配もちゃんと察知しているようだ。
「殺気は放っていないな」
「くっくぅ」
「用心しろ?
当然だな」
戦闘が好きそうなのに突撃などはしないようだ。
ジョブが守護者なだけはあるみたい。
「気配の殺し方からすると相応の手練れだぞ」
ローズは頷いて外へと繋がる上り坂を睨んでいる。
むやみに殺気を放とうとしないあたり慎重だ。
気配の散らし方なんかも参考になる。
俺も真似をしつつローズとアイコンタクトを取った。
互いに頷き合うと上り坂に向けて歩き出す。
『さて、どんな歓迎をしてくれるんだろうね』
読んでくれてありがとう。




