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207 王がおおと返事した

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


 禿げ弟が倒れ込んで寝息を立て始めたことに場は混乱したが、それも束の間のこと。


「どうなったかはサッパリわからんが俺たちは助かったんだ」


「そうだな。逃げるか」


「いや、今ならこの禿げを縛り上げられる」


「大丈夫か? 後で禿げに殺されても知らんぞ」


「心配いらん。コイツは謀反を起こそうとした重罪人だ」


「なるほど! 無罪放免がないならイケるな」


 現場の兵士たちが動き始めたのは俺にとっては好都合だった。

 後は勝手に話が進むだろうと思われたからだ。


 しかしながら話はそう都合良く進んでくれなかった。

 禿げ弟の動きを察知しながらも現場への指示が現行犯逮捕にこだわった微妙なものらしく未だに禿げ弟の確保に動いていない。

 それも禿げ弟を捕縛した兵士たちが連行すれば済む話だったが、それができていなかった。

 集められたのが新兵ばかりなのが裏目に出たようだ。


「誰が報告に行くんだ?」


「いや、知らんし」


「どうする?」


「俺に言われてもなぁ」


 上司の指示がないと動けないのは新人にありがちな話ではあるが、そのせいで一向に動きがない。

 すでに日が暮れて随分たつというのにゲールウエザー側は完全に硬直してしまっていた。

 しょうがないので禿げ息子伯爵を伝令として送り出したさ。


 ただ、これも伯爵が国王に報告できるようになるまで更に時間を食うことになるのだが。

 禿げ弟側に悟られぬよう普段よりもチェックが厳重になっていたせいだ。

 そんな真似をすれば逆に不審がられると思うのだが。


「仕方あるまい。あんなものを見せられた後では慎重になりすぎてしまうのも道理じゃ」


 ガンフォールはシノビマスターや俺の禿げ脳筋に対するお仕置きのことを言っているのだろうけど、あんまりな言い草ではなかろうか。

 まあ、いいさ。

 そんなことより夕食の頃合いである。


「悪いけど、ここで勝手に夕食を取らせてもらうから伝えてきてもらえる?」


「はい?」


 禿げ娘に伝言を頼んでみたのだが困惑されてしまった。


「待ってられないから勝手にやらせてもらうと伝えてくれればいい」


 そう言ったものの反応が鈍い。


「ハル兄、何も準備してない」


 ノエルがボソッと呟くように教えてくれた。


「そういうことか」


 召喚魔法の演出を入れて食事の用意はあっという間に完了だ。


「──────────っ!?」


 禿げ娘が思った以上に驚いていたけど、なんとか送り出すことはできた。

 伯爵家の姉弟を使いっ走りにするとか何様だって話になりそうだけど他に誰もいないんだからしょうがない。


「じゃあ、食べるか」


 で、食事が始まってしばらくした頃。


「お客さんだ」


 宰相を含む一団が競歩でもしているのかと思うほどの早足で離れに入ってきた。

 それでも食事は止まらない。

 向こうが部屋の前まで来てノックしたので魔法でドアを開けたくらいだ。


「遅すぎじゃ」


 向こうが入室するなりガンフォールが席を立ち声をかけた。

 教師に叱られる生徒のように言い訳している先頭のオッサンは国王のはずなんだけど。

 王女とかダイアンたちもいるけど彼女らは俺たちのフリーダムさに苦笑している。

 その間も俺たちは食事を続けガンフォールは嫌みを言っていた。


「そもそも火急の用件じゃと伝えたはずじゃ」


 静かだが迫力を感じさせる言葉で締めくくられると王と宰相が縮み上がっていた。

 人生経験が物を言う存在感だけの凄みは今の俺には真似できないものだ。

 しかも大国の王族相手に一歩も引かないどころかヒヨッコ扱いしてしまっているし。

 まあ、黙々と食事を続けた俺たちの態度の方がどうかと思うけど。


 食事が終わり茶を啜る段階になってようやく自己紹介となった。


「ミズホ国の王ハルト・ヒガだ。普段は賢者を名乗っているがね」


「ゲールウエザー王国、国王クラウド・ゲールウエザー」


「宰相のダニエル・ウェットウエザーです」


 両名とも表情だけでなく喋りまで硬いんだよね。

 それでも美男タイプであるクラウドはアラフォーの渋さと相まってダメ親父感は少ない。

 イケメンはいくつになっても得だよな。


 なお、クリス王女はクッション役として連れて来られたようで口出しはせず見守るスタンスである。

 先程から苦笑しっぱなしだけどね。

 付き従っているマリア女史や護衛組は無表情ではあるものの、まとっている空気は王女に近い。


 うちの面子も紹介していくが、好ましいことにラミーナが国民でもさほど驚きはないようだ。

 逆にノエルの時は驚かれた。

 子供だからという訳ではなくエルフ以外の国の民になることが極めて希なようだ。

 これは他の国に行った時に注意しないとな。


 とはいえ、現状で問題となるのはエリスだろう。

 宰相があからさまに渋い顔してたし国王はシカト決め込んでるし。


「エリス・フェアにございます。冒険者ギルドのゲールウエザー本部長を務めております」


 自己紹介を聞いて王も宰相も目を丸くしていた。

 想定外中の想定外だったに違いない。


「よく王家の方に似ていると言われるのですが畏れ多いことです」


 両名が驚いている間に先手を打つとは、したたかさはエリスの方が上のようだ。


「もしかするとご本人と間違われる方もいらっしゃるかもしれません」


 思わず苦笑してしまうようなことを平然と言ってのけるし。


「そのようなことがないよう、くれぐれもよろしくお願いいたします」


「お、おお」


 呆気にとられたままのクラウド王は短く返事をするのが精一杯だったし、宰相は特に何も言わなかった。

 向こうさんにしてみれば頭の痛い話が目白押しだからな。

 思うところはあれエリスのことはスルーした方が賢明だと判断したのだろう。


 という訳で話は禿げ脳筋の件に移っていく。


「貴殿には我が国の者が迷惑をかけた」


 まずは詫びから。


「それも民に範を垂れるべき貴族が二度にわたって無礼を働くなど、まことにもって遺憾の意を表するものである」


 うわー、テレビのニュース以外で遺憾の意とか聞いたの初めてだよ。


「貴殿には詫びようもないほどに迷惑をかけた」


 迷惑をかけたって立て続けに言いましたよ?

 大事なことなので2回言いましたとか言い出すんじゃないかと思ったさ。


「すまない」


 非公式の場とはいえ国の威信がかかっているはずだろうに王は頭を下げた。

 そういや、先代だかがガンフォールに頭を下げに行ったことがあるんだっけ。


 意表を突かれた格好になってしまったが呆気にとられている場合ではない。

 向こうが禿げ兄弟のことで謝るなら俺も謝らねばなるまい。


「こちらこそすまない。貴国の貴族に死んでもおかしくない傷を負わせてしまった」


「彼奴には丁度よい罰だ。にもかかわらず弟の方が迷惑をかけた」


「あー、いや、鬱陶しいから魔法で眠らせたから何も。そのせいで混乱させてしまったようだしお互い様だろう」


「怪我もしていない愚か者のことまで気にされることではない」


 その愚か者は怪我こそしなかったものの会話できなくなってるんですけどね。

 なんにせよ好ましい対応だったよ。


 そして話は干ばつ対策へと移り変わっていく。

 王女たちに披露した作物を食べさせて説明もした。


「さすが賢者と呼ばれるだけはありますな。干ばつに強い作物をご存じとは」


 見たところ宰相はサツマイモが気に入ったらしい。


「だが、問題がある」


 クラウド王は慎重だ。


「農民たちが納得せんだろう」


 確かに賢者の予言とか言われても信じる可能性は低そうだよな。


「そこはお主らの腕の見せ所じゃろうて」


 すかさずガンフォールが切り込んでくれた。

 なんにせよ、その辺のことは先方にお任せだ。

 俺が他国の民に命令して従わせる訳にはいかないしゲールウエザーの王族が現地に赴いて強権を発動するのがベストだろう。


 続いて井戸の話になったがポンプを提供する話になったのだが……


「ん? どうした?」


 クラウド王と宰相が困惑している。

 互いに顔を見合わせて視線で会話するような間の後に両名とも首をかしげた。


「ガンフォール、俺なんか変なこと言ったっけ?」


「ポンプを知らんのじゃ」


「マジか!?」


読んでくれてありがとう。

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