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202 きっちり終わらせる方法?

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

 シノビマスターが禿げ脳筋から分捕ったハルバードの柄を両手で掴む。

 禿げ脳筋はもはや喋ることも厳しいのか鼻息も荒く目を血走らせながら声にならない唸りを発していた。

 それでも激しい敵意だけは失わないとか執念深すぎるだろ。


 まあ、家宝のハルバードを奪われて気が気じゃないというのはあるのか。


「何する気やろか」


「さあ~、演舞じゃなさそうですよー」


 アニスの問いにダニエラが暖気な調子で答えている。


「ひん曲げる気じゃない?」


「「えー、あれ普通の武器と違って頑丈そうだよ?」」


 レイナの投げやり感満載の発言に双子たちが疑問を呈した。


「アタシらじゃ難しいかもね」


 魔法の武器であることだけではなく破壊に耐性があることも見抜いているな。

 普通の金属製の長柄なら月影の面子が折り曲げられない訳はない。

 レベル3桁は伊達じゃないのだ。

 むしろ、彼女らに困難だと思わせる強度を持ったハルバードを所持している禿げ脳筋の家が凄いと思う。


「いや、彼はやる気だ」


 真面目な顔でそう言い切ったのはルーリアだ。


「そのようだな」


 同意するリーシャ。

 ギョッとした顔でルーリアと姉の方を見る双子たち。

 自分で曲げると言っておきながらレイナも目を見開いている。

 冗談半分の発言だったということか。


「曲がる」


 ノエルがボソッと呟いたことで皆の視線がシノビマスターに集まった。


「まさか!?」


 それまで彼女らの会話に耳を傾けるだけだったボルトが唸った。

 信じられないと顔に書いていることからも戯れ言の類いだと思っていたみたいだな。

 これは披露する甲斐がありそうだ。


 シノビマスターが何気ない感じで両手を動かすとハルバードの柄が徐々に曲がっていく。

 特に力を入れているようには見えない。

 それこそ飴細工の職人が作業しているかのように易々と長柄が湾曲していく。


「「「「「ぃ──────────っ!」」」」」


 驚愕が波紋のように拡がっていく。

 王城組はもちろんガンフォールでさえも目を見張っていた。

 ハマーやボルトは言わずもがな。

 月影の面々もノエルを除いて瞠目している。

 曲げると言ったルーリアや同意したリーシャでさえも。

 もっと苦戦するものだと思っていたのかもな。


 一方で他のミズホ組は余裕の表情だ。


「ほほう。頑丈さに特化した武器をああも楽々と曲げるとは世間は広いのう」


 シヅカなどは楽しげにコメントしているし。

 ちなみにノエルは俺の方をチラ見しているのでシノビマスターの正体がバレているのだろう。

 身内だから構わないけどね。


 そしてエリス。

 さして驚きはしないと思っていたのだけれど表情は凍り付きカタカタと震えていた。

 恐れまで感じるとは想定外もいいところだ。


「特別頑丈なはずのアレが……」


 どうやら禿げ脳筋の家宝が魔法の武器であることを知っていたみたいだな。

 宰相が顎も外れんばかりに驚いているのも同様の理由なんだろう。


 だが、こんなので終わりじゃない。

 シノビマスターがハルバードの柄をねじり上げて2回転させた。


「「「「「────────────────────っ!!」」」」」


 驚いていた面々は完全に圧倒されている。

 ゴツい長柄がバネのような形になってしまうのは、かなりインパクトがあるか。

 ハルバードが短くなってバトルアックスの出来上がりってね。

 不細工だし実用性は皆無だけど。

 それを石畳に突き立てる。


 禿げ脳筋は愕然という単語がピッタリな表情で固まってしまっている。

 家宝を曲げられたことがショックだったのか目を開いた状態で失神していた。

 それとも曲がるはずのないものが曲がったことが恐怖だったのか。

 あるいは、その両方か。


「賢者ヨ」


 シノビマスターが俺の方へと振り返った。


「なんだよ」


 一人芝居状態が虚しく感じるな。

 とっとと終わらせよう。


「後ハ貴殿ニ任セル」


 そう言い残して宙に浮かび上がる。


「う、浮いたっ!?」


 ある兵士が王城組を代表するかのように叫んだ。

 普通では考えられない事態にそれ以上のことができない。

 他の王城組も似たようなもので呆気にとられて何もできずにいる。

 輸送機の降下を見た後でも人が浮くのは信じがたいようだ。


 シノビマスターが宰相に視線を向けた。

 たじろぎそうになったのをどうにか踏みとどまる宰相。


「コノ一件、神ガ注目シテオラレル」


「っ!?」


 あらら、一瞬にして青ざめた顔になっちゃった。


「案ズルナ。賢者ノ活躍ヲ堪能スルノガ目的ダ。自分ガ見エテイナイ老人ノコトナド歯牙ニモ掛ケテオラレヌ」


 そして再びこちらを向く。


「ナカナカ容赦ノナイ反撃ブリダッタナ」


「嫌みかよ。加減の仕方を間違えたの気付いているくせに」


「次ハ完璧ニヤルノダロウ?」


「当然だ。なんなら、お前で証明してやろうか」


 普段の俺らしくと思って喋ったつもりだったんだけど、それが良くなかったらしい。

 場の空気が凍り付いてしまった。

 周囲に大きな被害が出ると思われたのか?


「面白イ。機会ガアレバ手合ワセ願オウ」


 その一言で、そこかしこから深く長い溜め息が漏れてきたのだが……


「楽シミニシテイルゾ、遥カ東ノ果テニ浮カブ島国ノ王ヨ」


「「「「「っ!?」」」」」


 月影の面々が何故知っているのかと驚愕しながらも凄い勢いで俺を囲むフォーメーションで臨戦態勢に入った。

 シノビマスターの正体に気付いているノエルはフォーメーションに加わっていない。

 他のミズホ組も茶番を楽しむ余裕がある。


 まあ、月影の反応はありがたい。

 シノビマスターの言葉に幾ばくかの信憑性を持たせることができたからな。


「はいはい、落ち着こうか」


 俺の言葉で月影の面々も我に返り、互いに顔を見合わせ俺の方をチラ見してきた。

 一様にやっちゃったと言わんばかりの表情である。

 王城組がドン引きしてるからなぁ。


 まあ、しょげているリーシャたちを叱るつもりはない。

 むしろ褒めたいくらいだが、俺の思惑が宰相に軽く見られても困るのでそれもなしだ。

 後でフォローしておこう。


「とりあえず、下がれ」


 そう言うと安堵した様子で素直に従ってくれた。

 王城組がそこでざわめき始める。


「東の果てだって?」


「ドワーフたちの国しかないんじゃなかったのか」


「島国の王とか言ってたぞ」


「大山脈の向こうってことか」


「まさか魔境を超えてきた?」


「ウソだろ……」


 俺が王かどうかということより極東から来たことが信じ難いようだ。

 いずれにせよ宰相が聞いていれば問題ない。

 挙動不審になっていたので耳に入ったのは間違いなさそうである。


 計算通りに進んでいるとはいえ、まだ都合のいい展開になるとは限らないから油断はできない。

 調子に乗ってボロを出さない間に切り上げるのが吉だろう。


読んでくれてありがとう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今更ながら202話まで読みました。ストーリーは面白いですね。ただ、202話分読んでも、実感としては普通の作品の50話分も無いような。全般に言えることですが、主人公の心象描写と状況説明が…
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