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198 何処にでも喧嘩っ早い奴はいる

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


「どこかのお節介な野郎が俺たちが今日到着するって宰相に教えたからだろうな」


「誰がそのようなことを!?」


「シノビマスターらしいぞ」


「「シノビマスター!?」」


 おお、マリア女史とダイアンが2人して心底驚いている。


「御存じなのですか?」


 ドアップになりそうなほどの勢いでダイアンが聞いてきた。

 目の保養にはなるけど同時に恥ずかしくもなりますよ?


「顔が近いよ」


「し、失礼しました」


 指摘すると赤面しつつも下がってくれた。


「今朝方ネズミが紛れ込んでね」


「なんじゃとっ」


 ガンフォールが険しい表情で反応した。

 ジェダイト王国の警備にかかわることだから敏感になるのも無理はない。


「間者じゃなくて文字通りのネズミだよ」


 という設定なので架空の存在だけどね。


「ただのネズミではあるまい」


「ああ、使い魔だな」


「むう」


 怒気は抜けたものの渋さを残した表情で唸るガンフォール。


「こんなものを置いていった」


 そう言いながら俺は懐から折り畳まれた紙を取り出し、まずはマリアに手渡す。

 予告のために宰相の元を訪れたという旨のことが書かれているだけなので読むのに時間はかからない。

 目を通したマリアは小さく嘆息し王女にメモを渡した。


「あら、またですか」


 メモを見てもあっけらかんとしていられるとは大物だね。

 そしてダイアンにメモを見せるが、当然のごとく険しい表情を見せていた。


「彼は神出鬼没ですね」


 マリア女史が悩ましげな顔で呟く。


「会ったことがあるのか?」


「いえ、私はありません。あまり詳しいことは話せませんが──」


「前にも城に忍び込まれて上を下への大騒ぎになったんだろ」


 言葉を途中で遮って指摘すると驚きをあらわにしてマリアは絶句した。

 ダイアンたち護衛組も何故知っているのかと言わんばかりの驚きようを見せている。


「こっちも騒ぎにならなかっただけで見事に侵入されてるからな」


「おいっ、使い魔だけではなかったのか?」


 ガンフォールが唸るように問いかけてくる。


「気配はつかめなかったが使い魔を放ったのは王城内だろうよ」


「なんじゃとぉ!?」


「でなきゃ細かい制御ができたとは思えないな」


「何故、言わんかったんじゃっ」


「言っても信じなかったと思うが?」


「ぐぬぬ」


 苦虫を噛み潰したように唸るガンフォール。


「それに痕跡すら残してないから捕まえるのは到底無理だぞ」


「それほどか」


 ガンフォールが目をむいて驚きをあらわにしている。


「俺に用事があっただけみたいだから言わなかったというのもある」


 そのタイミングでメモが返却されたのでガンフォールに見せる。


「スマンな」


 この詫びは黙っていたことに対してのものではなく嘘をついてスマンという意味だ。


「神の使徒じゃと!?」


 ガンフォールの耳には届いていないみたいだが。

 神の使徒であるシノビマスターが云々というメモはインパクトが強かったか。

 ゲールウエザー組が騒がなかったのは宰相補佐官の事件でシノビマスターが相応の働きをしたからだと思われる。


 ポーン


 そんな時、不意に機内放送の予告音が鳴った。


『上空300メートルまで降下完了。指示があるまで静止状態を維持します』


「おっと、立ち話している場合じゃないな」


「着陸後は我々が先に外に出るのでしたね」


 マリア女史が事前に打ち合わせたことを確認してくる。


「ああ」


 先走ろうとする輩がそれで止まるかはわからないが他に手はない。

 そんな訳でマリアと王女が馬車の方へと移動しダイアンは騎乗すべく馬の側に行く。

 他のゲールウエザー組も各々の配置についた。


「いよいよじゃな」


「まあねー」


「お主は緊張というものを知らんのか」


「そうでもない。程良い感じかな」


「とてもそうは見えんがのう」


 ガンフォールに溜め息をつかれてしまった。

 いいけどさ。


「じゃあ城の連中にだけ見えるようにするぞ」


 幻影魔法で城の外部からは視線が通らないようにしつつ光学迷彩を解除する。

 騒ぎが聞きつけられないように遮音結界も使った。


「さっそく見つけたようじゃな」


「そりゃあコイツは特別デカいからな」


 それでも一応は王城の中庭に着陸できるサイズにはしてあるんだけど。


「そのままゆっくり降下して着陸しろ」


『了解。着陸態勢に入ります』


 下では大騒ぎになりつつあったが、無視して着陸を強行する。

 城の中から人が出てくるのは見て取れたが攻撃しようという意志はなさそうだ。

 こちらを指差しつつあらぬ方向に何か怒鳴っている奴もいる。

 音声までは拾っていないので何を言ってるかまでは分からんけどな。


「宰相が出てきたようじゃな」


「へえ、あの爺さんがそうか」


 我ながら白々しいが知っているのはシノビマスターであって俺ではないからな。


 輸送機が降下する中近寄ろうとする者はいない。

 得体の知れないデカブツ相手に気押されている訳だが宰相に怯んだ様子は見られない。


「宰相は肝が据わってるな」


「そうでなければ今頃は大混乱じゃぞ」


「それもそうか」


 さすがに国王は出張ってこないが。

 ガンフォールなら真っ先に出てくると思うが、これはドワーフとヒューマンでは常識が異なるせいだろう。

 王の叔父にあたる宰相が出てくるだけでも頑張っている方だと思う。


 が、これには理由がありそうだ。


「ガンフォール」


「なんじゃな」


「ひと暴れするかもしれん」


「おい、ハルトよ。少しは自重せんか」


 呆れた目を向けながら忠告してくるガンフォール。


「アレを見ても、自重なんて言うか?」


「なんじゃと?」


 俺は幻影魔法で隅の方に映し出された禿げたジジイを指差した。


「どれじゃ?」


「頭頂部だけ禿げてて側頭部は角のように跳ね上がった感じの厳つい顔したジジイがいるだろ」


 筋骨隆々でゴツいハルバードを抱えているから目立つはずなんだが。

 エリスに聞いていた厄介な人物の特徴にも合致する。

 だからという訳ではないが勝手に命名、奴は禿げ脳筋だ。


「む、元軍務大臣のビットリア卿じゃな」


 深い溜め息のおまけ付きである。


「相当な難物なのか?」


「うむ」


 ガンフォールは肯定しつつ目線を近くに戻してエリスの方を見た。


「彼は独善的ですから」


 エリスも浮かない表情である。


「潰してもいいか?」


「殺さなければ何とでもなる相手じゃろうな」


「私や陛下の交渉次第かと」


 熊男の時のようにはいかないのは面倒くさいが仕方あるまい。


 そうこうするうちに輸送機が着陸した。

 向こうの緊張感が高まりつつある中で輸送機のハッチを開く。

 波打ち際を見ているかのように近寄ろうとしていた連中が一斉に引いた。

 タイミングを見計らっているのか禿げ脳筋に動きはない。


 気にしても始まらないので護衛組に合図を送ると騎乗した彼女らが先導する形でゲールウエザー組がハッチを下りていく。

 外ではどよめきが起こっていた。

 主に下っ端らしい連中が動揺しているようで騒然となっていく様子が見て取れる。


「ガンフォール」


「今度は何じゃ」


「輸送機はこのまま仕舞うことにする」


「何!?」


「ダメ押しの演出みたいなものだ」


 ついでにシノビマスターも登場させればアリバイ成立だろう。

 上手くすれば実力行使をする前に禿げ脳筋を静かにさせられるかもしれない。


「ワシらはまだ降りてはおらぬぞ」


「大丈夫。俺たちまで仕舞うなんてことにはならないから」


 そう言ったら、なに言ってんだお前の目で見られてしまった。


「まあ見てろって」


 俺にそう言われると黙るしかない訳で。


「ふんっ」


 不機嫌そうな鼻息ひとつ残してそっぽを向いてしまった。


「そうヘソを曲げるなよ」


「曲げとらんわ」


 向きになってくるあたり曲げてた証拠だよな。

 それを見ていたエリスがクスクスと笑い始めた。


「なんじゃ、何が面白い」


「申し訳ありません」


 そう言いつつも笑いを堪え切れていない。


「本当に仲が良いのだなと思いまして」


 エリスのその言葉を聞いたガンフォールはばつが悪そうに目をそらす。

 おいおい、ジジイのツンデレは見たくないぞ。


読んでくれてありがとう。

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