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192 横槍を入れてくるのは

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

 この世界で飛行物体があるとすれば魔物以外に考えられない。


「面倒な」


 この短い一言には、よりによって王女たちを乗せている時に来るなよという意味が込められている。

 迎撃装備を見せざるを得なくなりそうだが、それを報告されると向こうでの話し合いに影響しかねないだろう。

 疫病神め。


 だが、内心で罵っているだけでは何も解決しない。

 まずは魔物の姿を確認すべく側面の壁を使ってモニター表示させた。

 ついでに内線は受話器ではなくスピーカーで通じるように変更。


「何も映ってないわよ」


 レイナがカメラの方角が合っているのかと言わんばかりにツッコミを入れてきた。


「距離があるからな」


「あっ、見えてきたで」


 そう言いながらアニスが画面を指差した。

 確かに豆粒大の何かがズームするまでもなく徐々に大きく映し出されてくる。

 到着時刻を調整するために全速力には及ばぬ速度で飛行しているとはいえ追いつけるとはね。

 もはやトレインしているような状態だからスピードアップして振り切ると、よそで被害が出そうだ。

 寝覚めが悪いから、ここで潰しておくか。


 群れっぽいが相手は何だ?

 青いボディに赤い顔が特徴的な鳥のようだが。


「何や、大きない?」


 アニスの言う通りダチョウくらいありそうに見える。

 足は長くないから地上走行は難しそうだが飛べるなら関係ないだろう。


「ワイバーンだって飛べるんだから変ではないだろう」


「あの魔物は見たことがないわよね」


 レイナが確認するようにリーシャへ声をかけている。


「山岳部に生息するタイプなんでしょ」


 ちょっと鑑定してみたが、そのようだ。

 スーパーソニックフェーゼントというらしい。

 超音速のキジかぁ。

 懐かしいレースもののアニメに出てくるライバルの覆面レーサーを思い出してしまったよ。

 あっちはキジじゃなくて騎士だけど。


「おい、ハルトよ」


 ガンフォールが渋い表情で声をかけてきた。


「あれは赤面ではないのか」


「アカヅラね」


 そういう別称があるようだ。


「超音速のキジとも言うぞ」


「なんじゃ、それは?」


「スーパーソニックフェーゼントが正しい名称なんだが?」


「そんなことより、どうするんじゃ」


 スルーされてしまった。


「どうするってトレインする訳にはいかんだろ」


「トレイン? なんじゃ、それは」


「簡単に言うと魔物を多数引き連れて他人のいる場所へ行くことかな」


「引き離せんのか」


「それをすると、あの群れを他人になすりつけることになると思うんだが」


「むぅ……」


 ガンフォールが唸ったきり黙り込む。

 今は目立たないよう山脈の上空を南下しているため南部地域のドワーフたちに迷惑を掛けてしまうからな。


「それにしたって追いつかれてはマズかろう」


 ハマーが慌てた様子で割り込んできた。

 相対速度のお陰でジリジリとしか差を詰められていないが、それでも接近してきているせいか。

 心配性なオッサンだ。

 まあ、赤面は魔物の中でもトップクラスで気性が激しいそうだし無理からぬところか。

 魔物ではないがキジ科つながりで言えば、鶏なんかも普通に喧嘩っ早くてシャモなんて闘鶏用の品種もいるくらいだし。

 赤面のように魔物化しているキジともなれば己より何倍も大きい翼竜にすら平気で喧嘩を売るという。


 おまけに攻撃方法は特攻だ。

 尖ったくちばしを武器に速さを生かしてあの大きさで突っ込んで来れば、普通は冗談ではすまない被害が出る。

 普通はね。


「別に問題ないが?」


「な、なに!?」


「あの程度の攻撃でどうにかなるようなものを俺が用意すると思うか」


「……そうだな」


 ハマーも沈黙した。


「ですが、もしこちらに対して戦意を喪失したら別の目標を襲うのでは?」


 今度はボルトか。


「心配しなくても引きつけてから一気に片を付けるさ」


「……なるほど」


 それだけで納得するとは随分と慣れたものだ。

 対してゲールウエザー組はどうだい?

 口出しこそしてこないものの、青い顔して必死の形相でこちらを見てくるじゃないか。


「んじゃあ迎撃準備と行こうかね」


 モニターの中央ぐらいに位置する椅子の向きを変えて正対し、座ってゲーム機のコントローラーを取り出す。


「何をするつもりなのでしょう?」


「さあ、何なのでしょうね」


 カチャカチャとボタンをいじるとモニターにレーダーや照準マークが表示された。

 どよめきが起きるが説明が面倒なのでスルーだ。


「操縦席、合図したら機体を停止させろ」


『了解』


 輸送機を空中で急停止させるなど普通は出来るはずもない。

 地球だと最新鋭の戦闘機でどうにか近いことができるかといったところかもな。

 失速寸前まで減速するコブラ機動とかいうテクニックがそれだ。

 後ろについた敵機を自機の前に引っ張り出すため水平飛行を維持したまま機体の姿勢を垂直近くにして元に戻すやつ。

 自分で的を大きく見せてしまうから実戦向きとは言いがたくアクロバット用の技としか思えないが。


「というわけで怪我をしないよう座席の安全装具で体が動かないようにさせてもらう」


 使わなくても誰かが怪我をするような事態にはならないが、万が一があると嫌だから念のための措置である。


「エアバッグパッドの装着を手伝ってやってくれ」


 うちの子たちに指示を出す。


「ガンフォールたちから先にな」


 俺の指示通りジェダイト組の装着に手を貸している。

 それが終われば次はゲールウエザー組だ。

 どういう格好になるかは見せたから着陸脚に仕込んだ武装のチェックに専念する。


「………………」


 特に問題なしと。


「それじゃあ特攻をかけられる前に終わらせますかね」


 コントローラーのボタン操作で数十羽はいるであろうスーパーソニックフェーゼントをロックオンしていく。


「全標的ロックオン完了」


 ここまでくるとシューティング系のゲームをやっている気分だ。


「エアバッグパッド全員装着完了」


 ルーリアが報告してきた。

 仕事が早いね、うちの子たちは。

 後は俺が仕事をするだけだ。


 引きつけて……

 もう少し……

 あとちょっと……


「今だ、停止しろ!」


 俺の合図と同時に一気にスピードが0になった。

 ギリギリまで引きつけた赤面たちが輸送機を追い越していく。

 普通ならあり得ない急制動だが、激しいGに襲われることはなかった。

 ちょっと進行方向に対して水平に揺すられる感じがあっただけだ。


「なんじゃ、少しもグッと来ないではないか」


「拍子抜けですな」


「全然でしたね」


 車の急ブレーキを経験しているジェダイト組はかなり身構えていたみたいだな。

 あまりの呆気なさに狐につままれたような顔をしている。


 そんなことより絶好のチャンスだ。

 輸送機を見失った赤面たちが減速してふらついている。

 目視で索敵しているんだろうが完全に隙だらけだ。


「ホーミングレーザー全砲門発射!」


 音声式のトリガーじゃないのに声に出しながらコントローラーのボタンを押した。

 あとレーザーとか言ってるが、それっぽく見える光属性の魔法である。

 どちらも気分の問題だ。


 8脚の着陸脚にそれぞれある3個の爪先部分からなんちゃってレーザーが発射された。

 最初はどれもあらぬ方へ向かって撃ち出されたようにしか見えなかったが、すぐに意志を持っているかのように軌道修正しロックオンした敵を追尾していく。


 後は命中を待つばかりってね。


読んでくれてありがとう。

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