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191 それでは行こうか

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


 スライドドアが閉じ微細な振動が足元から伝わってくる。


「な、なに?」


 護衛の一人が違和感に思わず声が出てしまったようだ。


「揺れたようだけど。マリア、どう思う?」


「わかりません。なんとも言えない感覚ですね」


 王女の問いに困惑の表情で答えるマリアが俺の方を見る。


「すぐにわかるさ」


 護衛の面々は何も言わなかったが、若干ぴりっとした雰囲気になっていた。

 未知の場所で未知の体験をするのは相当なストレスになるだろうし無理もない。

 ノエルは俺を信じ切っているから平然としているけど、ガンフォールも同じとはむしろ予想外だ。

 今までの経験から、これくらいはなんてことないと思っているのかノエルのように信じてくれているのか。

 後者であるならありがたいことだ。


 あまり考えにふける間もなく微振動が来た。


「あ、まただわ」


「本当ですね」


「着いたぞ」


「え、着いた?」


 チーンという音と共にスライドドアが開く。


「「「「「ええっ!?」」」」」


 目の前の光景が様変わりしたことでゲールウエザー組が目を丸くさせてハモる。


「はいはい降りようね。こいつで上に来ただけだから」


「ほう、箱を上下させておるのか」


 さすがはガンフォール。少ないヒントで正解を導き出した。


「そういうこと。何もビビるような代物じゃない」


「別の場所に飛ばされたのかと思いました」


 王女は冷やっとすることを言ってくれるよな。

 俺が転送魔法を使えると知られたらシノビマスターを送り込んだ意味が薄れてくるだろ。


「ここはさっきの格納区画の上だよ」


「そうなのですか!?」


 王女が興奮気味に聞いてくるので頷いておいた。


「こいつはエレベーターという箱形の部屋を上下させる装置だ」


「なるほど。便利なものですね」


「分かったら降りてくれるか」


 誰も降りようとしないもんな。


「残っている面子を上げてこなきゃならんのだが」


 そう言うとガンフォールが客室へと足を踏み入れる。

 中にいた一同がそれに続いたのだけれど……


「どうした?」


 ノエルが降りようとしない。

 俺から離れたくなくて服の裾を掴んでいるとかではなさそうなんだが、はて?


「面白い」


 どうやらエレベーターを気に入ってしまったようだ。


「もっと乗っていたいと?」


 コクリと頷かれてしまった。

 まあ、ノエル1人くらいなら定員に影響しないし構わないか。


「わかった」


 コクリと頷いたノエルを見てから降りた面々に声を掛けた。


「適当に座ってくつろいでてくれ」


 了解の返事を待たずに▽ボタンを押してスライドドアを閉じる。

 エレベーターが音もなく下りていき、すぐにチーンと鳴った。


「「姫様っ!」」


 スライドドアが開いた途端に魔導師組が必死の形相で呼びかけてくる。


「心配しなくても上にいるから乗りな」


 俺が人選するまでもなく残りのゲールウエザー組が2回目の面子となった。

 あとハマーとボルトもだな。

 乗り込んだのを確認してノエルに声を掛けた。


「やってみるか」


 俺の問いかけに俺を見上げて首を傾げる。


「いいの?」


「もちろん」


 返事をすると同時にニッと笑ってやると、はにかみながら頷いた。

 可愛すぎでしょうよ。

 背後から感じる空気が生温くて居心地が悪くなるんだがシャットアウトだ。

 気にしてたらノエルの可愛さを心の中で反芻できなくなる。


「やる」


 ノエルが△ボタンを押すと引き戸が閉じられ独特の振動が伝わってくる。

 今回の面子も気付いたようでなにやら言っているがスルーだ。

 到着すれば降ろしてトンボ返り。

 ボタン操作はノエルにお任せのままだ。


 そして階下でうちの面々を拾って2階へ上げる。

 うちの面々は興味深そうにしていたが、特に驚くことがない。

 色々と動画を見せているからエレベーターを知ってるもんな。


「へえ、これがエレベーターかいな」


「妙な感覚があるわね」


 レイナが指摘する妙な感覚は古いエレベーターにあったものだ。

 動作していることを認識させるため、弱めにだがあえてそうしている。

 王女のように瞬間移動したと勘違いされないようにと思ってのことだったが無意味だったな。

 後で調整し直そう。


 スライドドアが開いて客室へと足を踏み入れたのだが。


「ん、どういうこと?」


 思わず呟きが漏れた。

 着座しているのがガンフォールと王女だけだったからだが、よくよく考えれば身分差を考慮してのことだろう。


「安全上の問題があるから全員座ってくれないか」


 問題ないことは確認しているが人を乗せて飛ぶのはこれが初めてなので慎重になろうというものだ。

 空間魔法で室内は切り離してるから振動とか衝撃なんて本来なら伝わらない。

 だが、移動している感じを出すため動きに応じた微細な揺れを擬似的に発生させている。


 離陸時は特に気を遣う。

 というのも一定の速度以下の上昇下降は緩和させないようにしたからだ。

 離着陸を意識してもらうためなんだが、立たれるとふらついて倒れることもあり得る。

 怪我をしかねないし、倒れた先に誰かがいれば怪我人を増やしかねないもんな。


 だというのに護衛組の下っ端が立ったままだ。

 困惑しつつお互いの顔を見合わせているので断固拒否という訳でもなさそうなのが救いか。

 こういうときは上司の出番だろうということで青髪のショートヘアなお姉さんの方を見て視線で促した。

 俺がくどくど言っても、すんなりとは座ってもらえそうにないからだ。


「お前たち、早く席に着け。賢者様が困っておられる」


 ダイアンが目線の意図を読み取ってくれたのは幸いだ。


「下座に座れば問題なかろう」


 副隊長のリンダもフォローしてくれたお陰で騎士たちもようやく席に着いた。


「んじゃ、離陸するよ」


 壁面に設置した折りたたみ式の簡易シートに座って内線の受話器を取る。


「準備オッケー、出してくれ」


『了解。ゲールウエザー王国の王城へ向け発進します』


 コクピットからの返事を受けて受話器を壁面に戻すと同時に輸送機が浮かび上がった。

 その瞬間になんとも言えない揺れが来たが、古い雑居ビルとかで使われている旧型の狭苦しいエレベーターの感覚に似ている。

 接地していた着陸脚が地面から離れた瞬間の感覚はこんなものか。

 ほぼ全員が嫌そうな顔をしていたので改善しないとな。


「あの、賢者様」


 上昇が終わったことで俺が立ち上がると王女から声がかかった。


「凄く静かなのですが、これはもう飛んでいるのでしょうか」


「飛んでるよ。外の様子を見られるようにしよう」


 進行方向の壁面に触れて下方向のカメラの映像を映し出させた。


「「「「「おおっ!」」」」」


 角度を変えてズームさせていくとジェダイト王国が見える。


「王よ、城が見えますぞ」


 ハマーが当たり前のことを言っているが、これは仕方がない。

 上空から見下ろす形になるとは夢にも思わなかったはずだものな。


「ふむ、鳥はこんな風に見ているのじゃな」


 城壁とか王城みたいな目立つ建造物がどんどん小さくなっていく。


「あんなに小さくなりましたよ」


「あっという間ですね」


 王女やマリアがそんな感想を漏らす。

 他の面々も似たような話を口々にしている。


 その間に【天眼・遠見】スキルで格納スペースの中を確認する。

 薄暗いが、これは馬を興奮させないためにわざとこうしている。

 あの気持ち悪い離陸時の感触を味わった後でも暴れた様子はなさそうだ。


 ホッと一安心というタイミングでアラートが鳴った。

 昔のロボットアニメで使われていたやつを耳コピしたものだ。

 敵から木馬と呼ばれた揚陸艦で戦闘配備の時に鳴っていたアラートなんだけど。


「何事ですの!?」


『8時の方向より飛来する物体あり』


 コクピットからの報告が入った。

 タイミング良く王女の問いかけに応じる形になったが、そこは単なる偶然である。

 なんにせよ面倒くさそうだな。


読んでくれてありがとう。

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