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189 お披露目?

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

「ハルトよ、城門前に集合と言うから来てみたが何もないぞ」


 そう聞いてくるガンフォールだが機嫌が悪いということはないようだ。


「召喚するんじゃろ」


「ああ」


 実際は倉庫から引っ張り出すだけなんだが。


「王女たちが来てからだな」


 自転車を堪能した王女たちは汗を洗い流してから来るということで俺たちとは別行動だ。


「見せたいものがあるのでね」


「まさか自動車ではあるまいな?」


 渋い顔をしながら聞いてくる。


「だから、それはないって言っただろ」


「お主が勿体ぶるからじゃ」


「そもそも王女たちの馬車や馬を置いていく訳にいかないじゃないか」


「それもそうじゃな」


 もっともな理由にガンフォールも反論できずにいたが。


「ワシとしては自動車の方がマシな気がするんだがな」


 代わりにハマーが懸念を口にした。

 ボルトは積極的な同意はしないものの無表情である。

 貧乏くじはそれなりに引いてるから内心ではハマーに近い考えなんだろうけど。


「ほう、車の方がマシなのか。だったら車に乗っていくか?」


 とたんにブルブルと首を振って拒否するハマー。


「それは残念」


「残念なものかっ!」


 青い顔して怒鳴ってきたよ。


「まあ、心配するな。今回はそういう趣向じゃないから」


「趣向って何だ、オイ」


 ジト目で見られてしまう。


「やっぱりシャレにならんことを考えておるな」


「決めつけるなぁ」


 ちょっと空飛ぶだけじゃないか。

 それを言うと顔を真っ赤にして吠えられそうなのでギリギリまで黙っておこう。


 そこから後は王女たちの一行が来るまで雑談タイムだった。

 ノエルたちからの報告も受けないといけないし。


「ボーン兄弟の店はどうだった?」


「紙とペンが売れた」


「値段設定を高くしたのにか」


「うん」


 ちょっと驚きだ。

 試験販売のつもりでガンフォールたちに提供した値段よりずっと高い値段に設定したのになぁ。

 ハッキリ言ってぼったくりなんだが。


「引っかからないのがいいって」


「あー、それな」


 こっちの紙は製紙技術が発達してないせいでザラザラなんだった。


「なら徐々に紙を普及させても大丈夫そうか」


「値段が怖いってお兄さんたちが言ってた」


「高いもんなぁ」


「逆。安すぎるって」


「マジか」


 製紙技術を広めるための下地づくりにと思っていたのに不安材料ができてしまったな。

 一応、シャーリーやアーキンにも俺からの手紙付きでサンプルを渡してもらったけどさ。


「商人ギルドの方はどうだった?」


「安定供給されるならギルド内でも積極的に使いたいって」


「決断が早いじゃないか」


 先のことがどうなるか不透明なのに挑戦的だな。

 こういう攻めの姿勢がないと商人としては大成しないんだろうなとは思うけど。


「じゃあ、ボーン兄弟には商人ギルドにだけ売ってもらうようにするか」


 彼らの店に卸しても店頭に置かなければビビることもないだろう。

 ギルド内部だけで使うのなら価格は控えめにして徐々に下げていこう。

 いずれ外部に流出するとしても商人ギルドで使用実績があれば大きな騒ぎにはならないと思いたい。


 こんな感じでノエルたちから報告を受けているとエリスがやって来た。


「よお、お姫さんと一緒じゃないのか」


「準備が整いしだい参りますと伝言を言付かってきました」


 なるほど、メッセンジャーとして先行してきたのか。


「ところで、先生」


「なにかな」


「あの車を使われるのではないですよね」


「ああ」


「全員が乗れないからですか」


 どうやら保有する車が1台だけだと思っているようだ。

 錬成でコピーするだけだからパパッと用意できるんだけどね。

 それにバイクは皆が持ってるし。


「そうじゃなくて、どうせなら全員が遅れることなく安全に移動できた方がいいだろ」


「なにか凄いことを考えてらっしゃいませんか」


「どうだろうな」


 度肝を抜く可能性は大いにあるけど、とりあえずは曖昧に言葉を濁しておく。


「私では想像もつきませんが実に興味深いです」


 人間が空を飛ぶという発想はないだろうから思いつかなくても不思議はない。

 ただ、過度な期待をしてくれた方が俺としては都合がいい。

 思った程じゃなかったくらいの印象に留まってくれるかもしれないからだ。


「それよりも向こうで注意すべき人物はいるかい」


 もっと事前に聞いておくべきことだけど躊躇いがあったんだよね。

 古傷を抉る恐れもある訳だし。

 だから最初は聞くつもりがなかったけれど、昨日の様子を見て大丈夫そうかなと判断した。

 それと直感が働いたというのもある。


「何人かは過剰反応しそうな者がいますね」


 シノビマスターで保険をかけておいて正解だったようだ。


 名前を聞いても意味はないので人相などの特徴を聞いておく。


「すまないな。助かるよ」


「いえ、妨害されて話が流れると大勢の人が苦しむことになりかねないのですよね」


「そうならないように頑張るけどな」


 それからさほど待つことなく馬の蹄の音が聞こえてきた。

 護衛騎士が跨がる馬が先導する形で馬車が俺たちのいる門の外へと出てくる。

 意外なことに魔導師組はしんがりを務める形で馬に跨がっているようだ。

 手慣れた感じすら見受けられるところからすると貴族出身か。

 まあ、王女の護衛だしな。


「こちらへ参られよ」


 ツバキが城壁の際へと誘導する。

 御者を務めるリンダは首を傾げつつも指示に従ってくれた。

 停車した馬車の中から王女とマリア女史、それから神官ちゃんが降車してくる。



「賢者様、見たところ馬車の用意がまだのようですが」


 戸惑った様子でマリアが聞いてきた。


「ああ、大丈夫。すぐに召喚するから」


「「「「「えっ!?」」」」」


 マリア女史をはじめとするゲールウエザー組が驚くのは分かる。

 けど、ハマーやボルトが一緒になって素っ頓狂な声を出すのはどうよ?


 目くじら立てるのも何なのでスルーしておく。

 それっぽいアクションで空中にデカい魔方陣を描くと息をのむ気配が伝わってきた。


「別にドラゴンとか呼び出すわけじゃないから」


 そう言うと安堵の溜め息がそこかしこから聞こえてくる。

 龍なら間近にいるんですが?


 光の魔方陣の演出付きで倉庫からそれを引っ張り出せば、再び息をのむ空気が伝わってきた。

 魔方陣の大きさに相応しい巨体が低空で浮いているからだろう。

 まあ、自動人形に操縦させている輸送機なんだけどさ。


 輸送機はゆっくりと地面に近づいてきて脚を変形させた。

 着地して脚が巨体の重量を吸収しつつ水平を保つ。


「な、なんじゃこりゃあ─────っ!?」


 真っ先に吠えたのはハマーであった。

 往年の刑事ドラマの殉職シーンかよとツッコミ入れたくなったがミズホ組しかネタがわからんからスルーだ。

 けど、こちらが何も言わなければ言わないでギャーギャー騒いでうるさいんだよなぁ。


「やかましいわっ!」


 ガンフォールにグーで殴られて静かになったけど。


「これはこれは、主も豪快な乗り物を用意したものじゃ」


 ケタケタとシヅカが笑う。

 反応は様々だな。


 シヅカ以外のうちの子たちは苦笑しつつ「しょうがないなぁ」という雰囲気だ。

 ガンフォールは溜め息をついて呆れている。

 ボルトは最初こそ首や視線が忙しなく動いて落ち着きがなかったものの、今は諦観を感じさせる表情で黙り込んでいた。


 で、ゲールウエザー組は目が点状態。

 絵に描いたようなポカーンとした顔でみんな輸送機を見上げている。

 ドワーフの門番たちも同様だ。

 エリスもそれに近かったが、すぐに復帰したかと思うと苦笑していた。


「おっと」


 馬が怯えて恐慌状態になりかけているじゃないか。

 光属性の魔法でバフを掛ける。


「………………」


 しばし様子を見るが落ち着きを取り戻してくれたようだ。


「さて、じゃあ乗り込む準備をしようか」


 皆を促すが、衝撃的すぎたのか反応が鈍い。

 思わず苦笑が漏れてしまう。


「ちょっとデカかったかな」


「ちょっとどころなものかっ!」


 俺の呟きにハマーが噛みついてきた。


「そう言うなよ。これなら全員で一緒に移動できるんだからさ」


「限度というものがあるだろうっ」


「しょうがないだろ。馬車や馬を搭載しないといけないんだし」


「少しは自重しろと言っておるのだ!」


「えー、車じゃ分乗しないといけないし遅いし馬や馬車は積載できないぞ」


「人の話を聞けっ!」


「聞いてるじゃないか」


「何処がだっ」


 ツッコミの連続に漫才をしているような気分にさせられるんだが、そんなつもりはない。

 それよりも頭に血が上ったオッサンを止めないとな。

 残念ながら短時間でどうにかできる妙案はないんだけど。


「ハマーよ、諦めるんじゃな」


 ガンフォールがハマーを止めてくれるようだ。


「ですがっ」


「ハルトが突拍子もないことをしでかすのは、いつものことじゃろう」


「ぬぐっ」


 ガンフォールの一言で撃沈するハマーであった。

 微妙に失礼じゃね?


読んでくれてありがとう。

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